2007年06月05日 第166回 通常国会 財務金融委員会 【401】 - 質問
保険金不払いで業務停止命令を受けた損保会社が脱法的行為
2007年6月5日午後、財務金融委員会で保険金不払い問題について質疑が行われました。
佐々木憲昭議員は、保険金不払いで業務停止命令を受けた損保会社が、業務停止をのがれる脱法的行為をおこなっていた事実を示して、調査するよう金融担当大臣にもとめました。
佐々木議員は、具体的に、東京海上日動火災の例をあげました。
東京海上日動火災は、4月2日から7月1日までの3ヶ月間、第三分野の業務停止命令を受けています。
東京海上日動火災は、ミレアグループの一員です。グループには東京海上日動あんしん生命も含まれています。ミレアグループは、公式にはグループ会社として第三分野商品の販売の自粛を表明しています。
しかし、東京海上日動火災が代理店へ配付している資料には、東京海上日動あんしん生命の生命保険商品で対応できるとなっています。東京海上日動火災の代理店のほとんどが東京海上日動あんしん生命の代理店をかねています。
東京海上日動火災は、これまでにも業務改善命令を受けており、2006年12月には第三分野の商品について、東京海上日動あんしん生命とすみ分けを徹底すること、4月1日から長期第三分野商品の新規契約の引き受けを中止すると公表しています。これは、昨年12月から、第三分野商品を東京海上日動あんしん生命に置き換えていき、4月1日からは東京海上日動火災では新規契約を受けないということです。
佐々木議員は、その後の4月2日に、第三分野の業務停止命令を受けても、行政処分の効果があるのかと指摘。東京海上日動火災が同じグループの会社とすみ分けをして、行政処分を受けた商品は、自分や取り扱わないが、グループの会社が全部行うという脱法的な行為を行っていたという疑惑がでてくると批判しました。そして、金融庁に対して、行政処分が意味のない状況になったことを知っていて行ったのか、他の保険会社でも同じようなことが行われていないか、チェックするべきではないかと質問。
山本有二金融担当大臣は、「子会社に対して親会社が自分の経営のために業務停止命令の脱法的な措置をとることがあってならないので、しっかりとした業務停止命令等の行政処分の実をあげるように検討したい」と答えました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
ことしの3月14日、損保会社10社に対しまして、業務停止命令などの行政処分が行われました。まず、その法的根拠は何か、その処分を遵守しなかった場合、最も重い処分というのはどういうものか、お答えいただきたいと思います。
○山本金融担当大臣 保険会社に対します業務停止命令は、保険業法第132条または保険業法133条を根拠として発出されております。
保険業法132条におきましては、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認めるときは、その必要の限度において、期限を付して当該保険会社の業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができるというようにされております。
次に、保険業法133条におきましては、保険会社が、法令、法令に基づく内閣総理大臣の処分、定款や事業方法書、普通保険約款等のうち特に重要なものに違反したとき、または保険業の免許に付された条件に違反したとき、または公益を害する行為をしたときに、当該保険会社の業務の全部もしくは一部の停止もしくは取締役等の解任を命じ、または保険業の免許を取り消すことができるというようにされているものでございます。
違反につきましては罰則もございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 行政処分は非常に重いものであるということですが、この行政処分を遵守しないという情報があった場合、金融担当大臣はどう対応されますか。
○山本金融担当大臣 先ほどの保険業法132条、133条を根拠として発出された業務停止命令に対して保険会社がそれを遵守しなかったということになりますと、当該保険会社の業務の全部もしくは一部の停止もしくは取締役等の解任を命じ、または保険業の免許を取り消す、あるいは2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するというようにされているわけでございます。
いずれの場合にいたしましても、当該条項を適用するか否かにつきましては、事案の重大性や悪質性、内部管理体制等を総合的に勘案いたしまして、個別に判断されるべきものでございます。
また、業務停止命令の効果が子会社や代理店にも及ぶか否かにつきましては、停止命令を行う業務の内容によって異なります。例えば、保険契約の締結及び保険募集の業務について停止することと命じた場合には、当該保険会社から委託を受けている業務の範囲の中において、子会社や代理店にも影響は及ぶものというように考えております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 具体的な事例を紹介しますが、例えば東京海上日動火災、行政処分を受けました。その結果、4月2日から7月1日までの3カ月間、業務停止命令を受けたわけであります。
職員に対しまして指示書というものを出しておりまして、そこには、第三分野商品の扱いについて次のように書かれております。これは「業務停止期間中におけるお客様からの照会に対する「対応トーク例」」というものなんです。
ある保険に加入したい、こういうふうに業務停止中にお客様から言われた。その場合は「ご加入手続きをさせていただくことはできかねます」このように答えなさいと。
それから、それなら説明だけでもしてほしい、こういう要望に対しては「ご説明をさせていただくこともできかねます」と。
それなら見積もりだけでいいのでつくってほしい、これに対しては「お見積りを作成しお渡しさせていただくこともできかねます」と。
それならパンフレットやチラシだけでももらいたい、これに対しては「パンフレットやチラシ等をお渡しさせていただくこともできかねます」と。
要するに、業務停止中はこういう対応をしなさいとされているわけであります。
また同時に、「代理店の皆様へ」という文書がありまして、お問い合わせを受けたらこのように答えなさいと。「現在、東京海上日動が業務停止期間中のため、第三分野商品に関するお問い合わせには、お答えすることができません。」こういうふうに指示をしているわけです。
金融庁はこのような対応について当然報告を受けていると思いますが、いかがでしょうか。
○山本金融担当大臣 報告を受けております。
○佐々木(憲)委員 それで、当事者の東京海上日動だけではなく、この企業はミレアグループの一員であります。第三分野の商品の販売の自粛をグループ全体として国民に表明しております。例えば、東京海上日動への行政処分を受けて、グループの一員で100%子会社のあんしん生命、その会長は、公式には、グループ会社として自粛ということを表明しております。
金融庁も当然この対応を御存じだと思いますが、いかがでしょう。
○山本金融担当大臣 存じております。
○佐々木(憲)委員 グループとして自粛する、これは当然の対応だと思うんですね。
ところが、不思議だと思いますのは、東京海上日動が配付している代理店へのQアンドAというのがありまして、このQアンドAを見ますと、代理店に対しまして、東京海上日動、あんしん生命の第三分野の商品については取り扱ってもいい、こういう説明になっているわけです。
弊社とお取引いただいている代理店さん用「お客様とのご対応におけるQ&A」というのがありまして、その中に、あんしん生命の生保商品で対応できるか、これに対して、「あんしん生命委託代理店さんは、今までどおり、生保商品をご案内頂けます。」こういうふうになっているわけであります。
東京海上日動の代理店はほとんどがあんしん生命の代理店を兼ねているというふうに聞いておりまして、行政処分を受けた東京海上日動が幾ら第三分野の営業、販売を停止してグループ全体として自粛するといっても、このあんしん生命の第三分野の商品の営業、販売を同じチャネルでやっているのであれば、グループにとってはいわば痛くもかゆくもないという形になるわけで、ある意味では脱法行為のようなものになるのではないかと思います。いかがでしょうか。
○山本金融担当大臣 まず、業務停止命令と申しますものは、発生した事案の重大性、悪質性や、当該行為の背景となりました経営管理体制及び業務運営体制等を勘案した上で、保険会社におきまして、業務改善に相当の取り組みを必要とし、一定期間業務を停止させて業務改善に専念、集中させる必要が認められた場合に、当該個社に対して発出されるものでございます。
そう考えましたときに、保険会社に対して業務停止命令を発出する際には、経済的な不利益を課すことが主眼に置かれているわけではございません。このため、例えば募集業務の停止処分を受けた会社の代理店が当該会社の子会社の商品を勧めたとしましても、当該子会社に親会社と同様の体制面の不備がない場合には、直ちに問題を生じさせるものではないというように考えておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 しかし、この子会社というのは100%子会社でありまして、そして自粛をすると公式に表明しているわけであります。グループ全体としても自粛をするんだ、こう言いながら、代理店は自由でございます、こういうのでは、何のための自粛なのかよくわからない。
東京海上日動は、3月14日付の行政処分を受けまして、「第三分野商品の保険金に関する再発防止策」というのをホームページで出しております。そのホームページを見ますと、「2007年4月1日から、原則、保険期間10年以上の下記損害保険長期第三分野商品に関する新規契約のお引き受けを中止し、短期性商品を中心に経営資源を集中的に投下することにいたしました。」その次に、「今後、長期性第三分野商品につきましては、原則、東京海上日動あんしん生命でお引き受けさせていただきます。」こういうふうに書かれているわけです。
つまり、これは、4月1日からこういうふうにします、企業戦略として、グループ会社のあんしん生命に損害保険長期第三分野商品を引き受けさせるというふうになっているわけです。それも4月1日からなんですね。営業停止は4月2日からなんですよ。業務停止の影響を削減するために、意図的に、戦略的にこういう方向をとったとしか考えられないわけであります。
こういうことを、行政処分をする段階で既に金融庁は知っていたんじゃないんですか。
○山本金融担当大臣 その点については存じ上げておりません。
○佐々木(憲)委員 知らないとすれば、このホームページも見ていないということになるわけで、一体何をしているのかということになるわけです。
東京海上日動は、2006年、つまり昨年12月8日に、「損保長期第三分野商品に関する新規契約の引受中止について」というのを発表しております。内容は、第三分野商品について、東京海上日動あんしん生命と生損保商品販売のすみ分けをさらに徹底するということ、それに従って、ことし4月1日から長期第三分野商品の新規契約の引き受けを中止する。ですから、もう既に昨年12月8日に、あんしん生命にみんな置きかえていくんだということをやっているわけですよ。4月1日から、もう第三分野の商品の新規契約は引き受けませんと。
だから、引き受けないということを知っていながら行政処分しても、これは何のための行政処分かということになるわけです。金融庁はこれを知らないでやっていたとしたら、完全に東京海上日動の戦略にはめられたという形になるわけであります。行政処分を受けたほかの損保あるいは生保、こういうことがないのか、大変私は気になるわけであります。
まず、この東京海上日動の実際の12月8日付の方針、そして4月1日からの経営のやり方、そのことを踏まえて、4月2日から行われている行政処分、一体どういう効果があるのか、もう一度再検討すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○山本金融担当大臣 昨年12月8日に、東京海上日動が、損保長期第三分野商品に関する新規契約の引受中止についての社内の決定をしたことを存じております。また、短期性商品を中心に、御指摘のあんしん生命で引き受けさせるということも社の方針で決めておることでもございました。
こうした中で、我々としましては個社に関するコメントは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、一般論として申し上げれば、金融庁としましては、業務停止命令等の行政処分を受けた会社の子会社が親会社と同様の問題を引き起こすことのないように適切に監督を行っていく所存であることを御報告申し上げます。
○佐々木(憲)委員 これは、東京海上日動というものが100%子会社とすみ分けをして、そして、行政処分を受けた商品は、自分はやらないが子会社に全部やらせるんだという作戦を最初から組んでいたわけですよ。だから、どちらかというと、行政処分を受けることを想定してすみ分けを始めていたと言わざるを得ないんです。行政処分をしたって意味がない。
いわば脱法的な行為を行っていたという疑惑が当然ここで出てくるわけでありますから、これはどういう経緯でそういう戦略を組んだのか、そして、行政処分が意味のないような状況になったその理由は一体どういうところにあるのか。そのことを知っていながらやったとすれば、金融庁はぐるだと言わざるを得ない。おかしいですよ、そんなのは。しかも、これは一社だけなのか。ほかの損保も生保も子会社を使ってこういう脱法をやっているんじゃないかと疑わざるを得ないんです。
したがって、この行政処分の実効性については当然もう一度チェックをしてみるというのが当たり前だと思うんですが、大臣、いかがですか。
○山本金融担当大臣 一般論で申し上げれば、損保におきます第三分野についての募集管理、支払いということについては、先ほどの質問にもございましたとおり、十分熟練しているわけではございません。その意味において、生保でこれを引き受けるという考え方というのは一般的なものであろうかと思いますが、先ほど佐々木委員の御指摘のとおり、行政処分の実を上げるべき考え方をとれば、子会社に対してあえて親会社が自分の経営のためにこうした業務停止命令の脱法的な措置をとるということであってはなりませんので、しっかりとした業務停止命令等の行政処分の実を上げるべく検討してまいりたいというように思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。