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景気回復 (「成長戦略」)

2013年11月29日 第185回 臨時国会 財務金融委員会 【765】 - 質問

安倍政権政策は所得増加策がないと批判

 2013年11月29日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、安倍政権が目指す2年で2%の物価上昇目標について、物価上昇を上回る所得増加策がないとただしました。

 佐々木氏は、物価上昇について約8割が「困ったことだ」と回答している日銀の調査を紹介し、物価上昇に消費税の増税が加われば生活にマイナスの影響をもたらすと指摘。土居英二静岡大学名誉教授による物価上昇と消費税増税が重なった場合の家計負担の試算を示しました。

 試算では消費税8%で、平均家計で年額18万8000円(月額1万5700円)の負担増となります。佐々木議員が、これを超えるほどの所得増加の方策があるのかと問うと、麻生太郎財務金融担当大臣は「消費税引き上げ分は社会保障の充実・安定に使う。増税に伴う個人負担の軽減措置を講じる」と答弁しました。

 佐々木議員は社会保障の負担増が計画され、簡素な給付措置も1年半で1万円、月額約500円程度にすぎないと指摘し「国民所得を増やそうとする姿が見えない」と批判。所得を落ち込ませる消費税の増税をやめ、家計を応援する政策に切り替えるべきだと主張しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、アベノミクスの目標の一つに、物価を2年間で2%上げるというのがありますけれども、それに関連して麻生財務大臣にお聞きしますけれども、物価が上がるということは何でいいことなんでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 逆に言えば、持続的に物価が下がるといういわゆるデフレの状況においては、貨幣の価値が上昇するということになりますので、貨幣を保有しておくというインセンティブ、いわゆる魅力が高まっていくということにならざるを得ません。これは、今の民間の会社が含み資産何百兆ということになった背景もそのことだと思います。したがって、こういったことは、民間のいわゆる投資というものを阻害し、日本経済を衰弱させ、結果的に縮小均衡ということになっていったということは大きな問題なんだと思っております。
 デフレが継続するということになりますと、企業というものは当然のこととして収益を借入の返済とか内部留保の積み上げに充てますので、設備投資とか賃金の上昇とかいうものに全く振り向けない。もうこれは過去、この十数年間、はっきりしております。個人は賃金がふえないために消費や出費をふやさないという結果になりますので、経済全体の需要というものが低迷していくことになりますので、長期にわたり経済の成長率を著しく低下させてきたということははっきりしておると思っております。
 こういった認識がありますので、長引くデフレ不況から脱却して雇用、所得につなげていくためには、やはり強い経済というものを取り戻していかない限りはならないと思っております。したがって、私どもとしては、経済は成長する、ある程度物価も上昇していくというある程度安定した目標というものを掲げて、その実現に向けて日銀も財務省も政府も民間もみんなやっていくということにしていかないと、企業としては、設備投資をし、生産性を上げ、国際競争力を高め、いろいろなことをやっていくという努力というものをせずして何となくデフレになって縮小していったということに対する反省は大きなところだと思います。
 お断りしておきますが、佐々木先生御存じのように、デフレで好況もあればインフレで不況もありますので、デフレがいい、インフレがいいというのは一概には申せないというのは確かです。
○佐々木(憲)委員 経済成長の中で、好循環で賃金も上がり、その中で若干物価が上がっていく、そういうことであればいいんだけれども、どうも今は、デフレの反対はインフレだ、それで物価を上げるんだ、そちらが先行しているような感じがするわけです。
 どうも国民の意識と大分ずれがあるような感じがしまして、日銀の生活意識に関するアンケート調査を見ますと、物価上昇についての感想というのがあります。お配りした資料の二枚目にありますけれども、それを見ますと、どちらかといえば好ましいが3・6%、どちらとも言えないが14・5%、どちらかといえば困ったことだが80・9%ですね。圧倒的多くの国民の皆さんは、物価が上がるということは困ったことなんだ、こう答えているわけです。甚だ印象が悪いわけでございます。
 このアンケートの結果についての大臣の印象はいかがですか。
○麻生国務大臣 先生の資料を拝借して恐縮ですけれども、その下の段の物価下落についての感想というのも非常に参考になると存じました。
 これは、きのうまで一本97円だった大根が、きょう行ったら95円になっていた、次の週に行ったら93円になっていた、使い前がふえる、難しい言葉で言えば可処分所得がふえたというのはええこっちゃないかと多くの奥さん方は思われた、私はそうだと思います。ハンドバッグを買おうと思っていたけれども、もうちょっと待ったらまた安くなるかしらと、事実、1月待ったら安くなった、あともう2月待ったらまたさらに安くなった、あらまあということだったのが現実だと思っております。
 しかし、回り回ってよく考えてみれば、大根をつくっている農家の実入りは減り、当然のこととしてそれを売っておりますスーパーマーケットの売り上げも減り、利益も減ることになり、回り回って亭主の給料も下がり、会社も倒産ということになっていっておりましたので、やはりデフレの場合は、インフレと違って、緩やかに体温が低下してやがて死んでいくという形で、静かに死んでいくという感じの経済だと思っております。
 インフレとはちょうど真逆に動いておりますので、このような二番目の表の意識というのを多くの方が持たれておるというのは、自分で稼いでおられない、使っておられる方々から見れば、この意識というのはよくわかるところであります。
○佐々木(憲)委員 これは、所得がそれほどふえていないのに物価が上がると生活が下がりますから、そういう意識がここにちゃんと反映しているわけであります。したがって、物価だけ上げていくということが、結果として生活が下がるということになると困るな、これはもう普通の感覚だと思うんですね。
 具体的にこの間どの品目が上がっているかというのが一枚目の表、これは日銀で作成していただいたものでありますが、上昇しているのは、ガソリン、電気代、テレビ、ルームエアコン、自動車保険料、これは任意の保険料、都市ガス代、自動車保険料、自賠責の方ですね、ハンバーガー、灯油。こういうふうに、公共料金的なものが非常に上がっているわけです。
 こういうものが上がっている原因については、大臣はどのように認識されていますか。
○浅川政府参考人(財務省大臣官房総括審議官) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、生鮮食品を除くいわゆるコアベースの消費者物価指数の前年比に対する寄与度を、例えばことしの3月と9月で比較しました場合には、その寄与度の拡大幅が大きい品目として、上から、ガソリン、電気代、テレビ、ルームエアコン等が挙げられるわけでございます。
 これらの品目の寄与度が拡大したその背景でございますが、基本的には、円安傾向の中でエネルギー等の輸入価格が上昇しているほか、下落が続いてきた耐久消費財、この価格に下げどまりの動きがある等があると承知しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 一番生活に必要な、これから冬にかけて、灯油代も上がる、ガソリン代も上がる、電気代も上がってくると、生活が大変だ、こういう声も聞こえてくるわけですね。
 円安によって輸入物価が上がるためにこういう事態が発生しているということなんですけれども、本来、円安にした目的は、輸出をふやすというのが目的だったのではないかと思うんですけれども、この間の輸出の増加は一体どうなっているんでしょうか。
○麻生国務大臣 これはG20においても説明申し上げたところではありますが、いわゆる日本銀行による量的もしくは質的金融の緩和というものは、間違いなく、2%の物価目標を達成する目的で、いわゆるデフレ不況からの脱却というものを目指してやったのであって、円安はその副次的に生まれたものでありますから、円安に誘導して貿易収支をよくしようとかいうようなもので考えたわけではないということが一番大事なところだと思っております。
 足元の輸出の動向という点だと思いますが、これは、アジア、アメリカ、EUというように大きく三つぐらいに分けますと、おおむね横ばいになっております一方で、いわゆる新興国、資源国向け輸出等々は需要減速というものがかなりはっきりしてきておりまして、弱含んでおります。
 したがいまして、全体のところで弱含んでいると認識いたしておりますので、円安になったからといって、私どもとして見れば、石油代金というものも、これは原発がとまったおかげで3兆7、8千、4兆円ぐらいのものが、現金が出ておりますので、さらに石油、ガス等々を急激に輸入することにならざるを得ませんでしたので、そういった意味では、いわゆる円安になれば、ガソリン、石油の部分が高くなった分さらに出し前はふえるということになろうと思いますので、その意味では、マイナスに響いたというのは否めない事実だと存じます。
    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕
○佐々木(憲)委員 最近、貿易収支が黒字から赤字に転化したというのがニュースになっていますけれども、輸出はそれほど伸びていないんですよね。
 私は、対外的な、外国側の需要というものがふえたとか減ったとかというのはそれはあると思いますが、より構造的に見ていく場合は、日本の大企業が海外に出ていって多国籍企業化しているということが背景にある、このことをよく見なきゃいけないと思っております。
 国際協力銀行、JBICが公表している我が国製造業企業の海外事業展開に関する調査というのがありまして、これを見ますと、海外生産比率は、全業種で2011年度31・3%、15年度には37・7%に上昇する、こういう見通しを出しております。特に海外生産比率が高いのが電機・電子で15年度に50・6%、自動車は41・8%に伸ばす、こういう計画だ。どんどん海外生産の方がふえているわけですね。
 進出先の需要があると、そこに工場をつくる、そして、低賃金労働力あるいはコストの低い原材料を利用する。そういう形で国際的な生産拠点をあちこちにつくって、部品を組み合わせて、最もコストの低い、そういう製品をつくって世界に販売していく。こういう国際的な生産のシステムというものがつくり上げられているわけですね。
 そういう中で、日本の製造拠点というのが相対的に空洞化が進んできている。その結果、外国の生産拠点からの販売に軸足がどんどん移っていって、円安になっても輸出がなかなか伸びない、そういう傾向が出てきているのではないかというふうに思うわけです。
 したがって、内需をどう拡大するか、これがポイントになると思うんですが、麻生さんはどのようにお考えですか。
○麻生国務大臣 これは、企業の海外拠点に向かっての移転が進んでおりますために、円安方向に為替が動いても輸出は緩やかにしか増加していないという指摘があることは十分に承知をいたしております。事実、製造業の海外生産比率を見ますと、2000年11・1%でありますが、2012年では17・7%という形で、生産の比率が高まってきておりますのは間違いない事実だと思っております。
 しかし、同時に、足元の輸出の伸びが鈍化している背景はこれだけではなくて、アフリカ等々いろいろ新興国がありますけれども、新興国におきます需要の減速というものが海外景気に影響を大きく与えている、私どもはそう理解をいたしております。
 輸出の先行きということになりますと、これは確実に見通せるというものはあるわけではございませんが、いずれにしても、アメリカも、かつてほどの確実な伸びではありませんけれども、この数カ月間の報告内容を見ておれば、主要地域の景気は全体としては底がたく推移し始めたと思っておりますので、これで、円安方向への動きによります輸出というものによって、数量は伸びなくても、国内の企業の利益というものはふえてきておりますので、そういった意味におきましては、効果としては次第に上がっていくであろうというように考えております。
○佐々木(憲)委員 そこで、私は、内需の中で家計消費というのが非常に重要だと思っていまして、GDPの6割を占めておりますそれが伸びていくということが、全体として国内の需要が、市場が広がって、設備投資にもつながっていく、こう思うわけです。
 ところが、安倍内閣がやっているのは、家計消費をこれから温める方向じゃなくて冷やす方向に行っているんじゃないか。2年後に2%物価を上げる、そういう目標を立てて、しかも来年の4月には消費税の増税をやるというわけでしょう。これが二つ合わさりますと、かなり生活にマイナスの影響が出るわけです。
 お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、これは静岡大学の教授が試算したもので、産業連関表も利用しながら分析をしたものであります。輸入物価の上昇によって消費者物価が2・6%上昇する、為替レートをどう想定するかによって若干違うかもしれませんが、電気代、ガス代の上昇が顕著であります。これは日銀の資料と符合するわけです。
 問題は、消費税増税で物価が押し上がっていく、その結果、平均家庭で、例えば消費税8%になった時点で、円安の影響による物価上昇と合わせると、年間18万8千円、月額にして1万5700円の負担増、こういう試算をしているわけですね。これはかなりきついわけであります。年収200万未満のワーキングプアの場合、消費税8%のとき6・1%増、こういうことになります。これは大変な事態でありまして、これを乗り越えるほどの所得の増加がなければ、生活が下がるわけです。
 そこでお聞きしたいんですけれども、具体的に、これを乗り越える所得増加の方策はどのようなものを政府は用意しているのか、お答えいただきたいと思います。
    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕
○麻生国務大臣 この消費税の引き上げによって得られた財源というのは、基本的に、社会保障の充実、安定化というものに使うということで、まず国民生活に還元されるということになります。さらに、消費税の引き上げに伴う個人の負担というものの軽減策といたしましては、住宅ローンの減税とか、また簡素な給付措置等々によって、家計へも十分に配慮するということといたしておるところでもあります。
 したがって、消費税の引き上げに関しましては、負担増のみというものを議論するのは適切ではないのではないか。
 なお、御指摘のとおり、所得の増加を伴った経済の好循環を実現するというのが重要だということは、私どももそう認識をいたしております。したがいまして、先般確定をいたしました経済政策パッケージにおきましても、所得拡大促進税制というものを拡充し、また、政労使の連携により賃金上昇を含む共通認識を醸成するなどの施策を、これまでこの十カ月間、たびたび、政府としてやるのはいかがなものかというところも含めまして、やらせていただきました。
 民間の企業の賃金に政府が介入するという話ですから、いかがなものかと、私どもは率直に、後世でいろいろ批判が出るだろうなと思ってはおりますけれども、事は、賃金をぜひ上げていただかない限りにはということでお願いをさせていただいておりますが、いずれにいたしましても、社会保障の持続性と安心というものを確保していかなければなりません。
 したがって、所得の増とか消費の拡大を伴う経済の好循環を実現していかないと、これは物価だけ上がることになるじゃないかという御指摘はまことに正しいので、私どもも、その点を踏まえて対応してまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 今いろいろお答えになったんですけれども、具体的に、国民の所得をふやしていく、そういう姿が見えないです。
 社会保障に還元するといいますけれども、実態は公共事業がふえて、社会保障に全額還元するように見えるけれども、それは表向きだけであって、置きかえられていくわけでありまして、結果として、社会保障に回る分は非常に少ない。その上に、医療も負担がふえるんですよ。介護も負担がふえる。年金も支給が減る、負担がふえる。こういう計画がずっと続いているんじゃないですか。その部分で何か所得がふえるという方策はありませんしね。
 それから、簡素な給付措置といいますけれども、これは、1年半の間に1万円とか、あるいは年金生活者に1万5千円という話でしょう。一カ月にしたら500円少しですよね。これを、平均家庭で月に1万5千円の負担というような状況を考えると、その程度のスズメの涙のようなばらまきでは全然話にならない。
 やはり来年4月から所得は確実に落ち込んでいくんです、この増税によって。我々は、この増税をやめるべきだ、こういうふうに思っているわけです。内閣参与の浜田教授も、消費税増税をやめたら国民の所得がふえると言っているんですよ。
 そういうことをよく考えて、内需を拡大していくのを家計中心に考える、そういう発想に思い切って切りかえないと、このまま突き進んでいきますと、これはスタグフレーションになります。インフレが進んで、経済が停滞し、家計がマイナスになって、また失業者がふえていく、こんなことを繰り返してはならないということを最後に指摘いたしまして、質問を終わります。

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