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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (法人税, 大企業減税, 災害支援)

2013年11月01日 第185回 臨時国会 財務金融委員会 【748】 - 質問

復興特別法人税の前倒し廃止を中止し雇用制度の改善が必要、復興の妨げとなっている税制の問題点を指摘

 2013年11月1日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、復興関連税制について質問しました。
 佐々木議員は、復興特別法人税の前倒し廃止を中止し、非正規雇用から正規雇用へ転換する仕組みづくり、最低賃金の引き上げなど雇用制度の改善が必要だと主張しました。

 佐々木議員は、復興特別税が国民には所得税・住民税に上乗せされている一方、企業には実質5%の法人税減税を恒久的に行った上で3年に限り復興特別法人税が課されており、実質的な負担増が無いことを指摘。「どう見ても不公平だ」と強調しました。
 佐々木議員は、与党税制大綱が復興特別法人税の廃止について、賃金上昇につなげられる「方策」と「見通し」を確認することを前提としている点について言及。多数の企業が減税分の利益を賃金よりも内部留保に回すとしているロイターの調査結果を示し、法人税を下げても「賃金上昇につながることにはならない」と指摘しました。
 麻生太郎財務大臣は「政府が企業に対して給料をいくらにしろなんて言える立場にない」と弁明しました。
 佐々木議員は、労働者の賃金が減少している原因は低賃金の非正規雇用が増加している点にあると指摘。復興特別法人税の前倒し廃止をやめ、非正規雇用の待遇改善や最低賃金の引き上げこそ、政府がとるべき「方策」だと強調しました。

 つづいて、佐々木議員は、岩手県で昨年設立された三陸漁業生産組合の事例を紹介し、復興の妨げとなっている税制の問題点を指摘し、改善を要求しました。
 同組合は、公益財団法人のヤマト福祉財団から寄付を受けて工場を建設しましたが、税務申告の際、受けた寄付が収入とみなされ、法人税など合計約1600万円が課税されました。納税のため、設備投資や運転資金が不足し資金繰りに苦心し、家を建てるための資金を拠出している組合員もいます。
 佐々木議員は「税制が復興の足を引っ張っている」との組合員の怒りの声を突きつけ、是正を求めました。
 麻生財務大臣は「支援金のみ特別扱いすることはできない。いろいろな制度を利用していただく」と答弁。佐々木議員は「一般の寄付と税金を区別した仕組みにしたことが今回のような状態を生み出している。財務省が指定したヤマト福祉財団からの寄付だ。税と同じようにみなして扱うようにしていくことが本当の支援ではないか」と強調しました。麻生大臣は「考えなければならないことはある。今後の検討課題になる」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、復興関連税制についてお聞きしたいと思います。
 まず、確認をいたしますが、復興特別法人税で企業も負担を分かち合っていると言われますけれども、その実態は、実質5%の法人税の減税を恒久的にまず行って、初めの3年に限って同等の付加税、復興特別法人税を課すという仕組みですね。ですから、最初の3年間、それは以前と比べて企業に実質的な負担増はない、こういう仕組みだと思いますが、確認をしておきたいと思います。
○古川財務副大臣 お答えいたします。
 経緯としては、そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 その一方、国民の側から見ますと、所得税は、25年間、つまり、2013年1月から納税額に2・1%を上乗せする税であります。住民税は、10年間、すなわち、2014年6月から個人住民税に年間1千円を上乗せする、こういう仕組みになっているわけですね。
 もともと、連帯して負担を分かち合うと言いながら、個人には、実質的に増税になっております。企業は、実質的に増税ではない。その上で、3年後に法人税を減税すると言っていたものを、今、前倒しで、2年で減税をいたします、こういうことを検討しているというわけですね。これはどう見ても私は不公平だと思うんですよ。
 麻生副総理にお聞きしますけれども、9月20日の記者会見で、法人だけ下げるというなら、なかなか世間は通りにくいだろうな、こういうふうに述べておられますが、今でもこの考えは同じですか。
○麻生財務大臣 私の感想を述べた点について、それが言質をとりたいというつもりで言っておられるのかどうかよくわかりませんけれども、基本的に感情論としてはそういった感情が多いというのは、先ほどの安住先生の質問やらその他の方々の質問も同様の趣旨だと思いますので、共産党、佐々木憲昭さんに限らず、多くの方がそう思っておられるのかな、私自身はそう思っております。
 ただ、これは一応、今、12月までの間に検討することになっておるという状況であることも御理解いただければと存じます。
○佐々木(憲)委員 そこで、与党の民間投資活性化等のための税制改正大綱、与党税制大綱ですけれども、そこには「足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に、復興特別法人税の1年前倒しでの廃止について検討する。」というふうに書かれておりまして、その上で、「復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏まえたうえで、12月中に結論を得る。」と書かれております。
 非常にわかりにくい言い方なんですが、これはなぜこんな文章を書き込んだんですか。
○古川財務副大臣 お答えいたします。
 委員御質問は、25年10月1日の閣議決定の内容ということでございますが、御案内のとおり、賃金上昇と申しますのは、主体的にそれぞれの企業が行うものでありまして、財務当局あるいは税務当局が直接的に何かができる、そういうものではないのでございます。
 しかし一方で、政府として取り組んでおります今回のこの対策の中で、賃金の上昇というのは大変大きな要因を担っておるわけでして、経済産業省でありますとか他の関係省庁とのさまざまな協力のもとに政策目標を達成していきたい、こういう観点からこのような文章ができておるものだと考えております。
○佐々木(憲)委員 政府として直接できるものではないと言いながら、確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認する、こういう前提になっているわけですね。
 この方策と見通しというのはどうやって確認するんでしょうか。
○古川財務副大臣 この閣議決定の文章そのとおり、具体的にどうやって確認するかということはこの文章の中に書かれておりません。12月の結論を目指す過程において、さまざま議論をされていくものだろうと思っています。そして、第一義的には、先ほど申し上げましたように、経済産業省でありますとか直接的な政策にタッチし得るところが中心になって何らかの方針を示してくれるものだ、このように考えております。
 私どもとしては、その議論を見守り、待ちたい、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 どうもはっきりしないんですけれども。
 10月のロイター企業調査というのがありまして、報道によりますと、復興特別法人税が前倒し廃止となっても、その分のキャッシュフローを賃金に振り向けると回答した企業は5%にすぎません。一番多いのは、内部留保にとどめる、これが30%に上っているわけです。これでは確実に賃金上昇につながるということにはならないと思うんですね。
 これは、12月までに具体的な方策と見通しを確認しなければならぬわけです。これはなかなか大変だと思うんですが、どうやってやるんですか。企業にお願いするだけではなかなかそうはならないと思うんですが、いかがでしょう、大臣。
○麻生財務大臣 これは、日本は共産主義じゃありませんので、全体主義でもないし、社会主義でもないし、政府が企業に対して給料を幾らにしろなんということを言える立場にないのはもう御存じのとおりです。
 したがいまして、私どもとしては、政労使という場で、関係省庁などでこの廃止を検討する趣旨を、これは趣旨がわかってもらえないと法人税だけ前倒しで廃止されたとしても、その趣旨を理解してそれに対応していただきたいということを引き続き申し上げて積極的に要請をしておりますし、現実として、ベアで応えられようとしている企業がそこに出られた企業で出ておりますので、それなりの効果は上がっているとは存じます。
 いずれにしても、私どもとしては、引き続き、強制力を発揮するわけではなくて、いろいろな形でお願いをさせていただく。少なくとも賃金上昇に結びつかないとなかなか御理解を得にくいところでもありますし、加えて、賃金上昇というものが出てこないと消費税が3%上がったのに対応するということも、実質賃金というものは1995年以来下がっておりますので、そういった意味では、きちんとそこのところは対応しなきゃいかぬところだ、私どももそう思っております。
○佐々木(憲)委員 大体これまでも法人税は下がってきているわけですね。内部留保もどんどんふえているわけです。そういう状況でありながら、賃金は下がり続けているわけですね。
 やはり、なぜそうなっているのかということをよく究明しないといけない。ただ法人税を下げたら賃上げにつながりますよということにはならないわけでありまして、私たちから言わせますと、お願いベースではだめだと思うんですよ。やはり制度そのものを改善していくということをやっていかないと。
 例えば、中小企業に対して、国の支援を強めながら、最低賃金を時給千円に引き上げるというようなことをやる。あるいは、今賃金が下がり続けている一つの要因として、非正規雇用の賃金が非常に低い、その非正規雇用がどんどんふえてきている、こういうのがあるわけですね。
 したがって、雇用の法制度上の問題ですね。例えば、非正規雇用の待遇の改善、さらに、非正規雇用の方々が正規雇用に転換できるような仕組みを法的にどのようにつくっていくか、こういうことをやるのが政府のいわば方策なわけですよ。それをきちっとやるということがなければ、実際にこの減税が賃上げに直結していかない、そういうふうに私は思うわけです。
 したがって、これは、もし12月まで、あともう一カ月少ししかありませんけれども、この間に方策が見つからない、確証が得られないという場合には、こんな不平等な、こういう減税はやらない、前倒しはしない、そういうことになるわけですね。
○麻生財務大臣 復興特別法人税の前倒し廃止ということの検討につきましては、賃金を確実に上昇につなげられる方策と見通しを確認することなどを踏まえて12月中に結論を得ると閣議決定になっておりますね。その閣議決定に沿って対応していくことになろうと存じます。
○佐々木(憲)委員 などというのが強調されて、何か含みを持たせて言っているようですけれども、これは確認するということが前提のはずなので、それはちょっと私は無理だと思うんですよ。だから、こんな前倒しなんてやめた方がいい、このことを申し上げたいと思います。やるなら、抜本的に賃上げの方策を堂々と政策として実行していただきたい。
 次に、現地の復興支援、これと税制との関連についてお聞きしたいと思います。
 安倍総理は、10月15日の所信演説でこう述べました。「東日本大震災からの1日も早い復興に向けて、取り組みをさらに加速してまいります。」「果敢にチャレンジする企業を安倍内閣は応援します。」
 当然、麻生大臣もこの考えと同じだと思いますが、確認をしておきたいと思います。
○麻生財務大臣 その定義を、ちょっともう一回、あれですけれども、チャレンジする企業を応援していく、それは当然です。
○佐々木(憲)委員 そこで、具体的な事例を紹介したいと思います。チャレンジしている企業が一体どういう状況にあるか。
 岩手県に、三陸漁業生産組合というのがあります。この組合は、もうかる漁業に変えないと復興しても担い手がいなくなるという思いで生産組合を立ち上げて、生産から加工、販売まで手がける第六次産業化にチャレンジしているところであります。
 三陸漁業生産組合は、東日本大震災後の昨年5月17日、岩手県大船渡市三陸町で、十名の漁師で設立されております。この組合は、公益財団法人ヤマト福祉財団から約1億8千万円の寄附を受け、製氷機、高性能冷蔵庫を備えた加工場を建設いたしました。
 ところが、翌年の税務申告で、この寄附が収入とみなされるということで、2012年分の法人税など、合計約1600万円が課税されたということなんです。昨年度の実質的な利益は、わずか約200万円です。組合を立ち上げた途端に、まだ利益がほとんど出ていないのに税金だけがどおんとかかってくる、こういうわけですね。出ばなをくじかれるわけであります。
 そのために、何とかこの税金を払おうということに今度は苦心惨たんでありまして、組合員の皆さんは、漁具の購入のために残していた2千万円を税金に充てるということで、そうなると、設備投資とか運転資金が今度は不足してくるわけです。経営が非常に苦しくなっているわけなんです。被災した組合員の中で、例えば家を建てるために資金をためていた方がそれを拠出して、お金を出し合って、資金繰りを何とかしようとしているところでありますが、これは、復興どころか、この税制のために、復興の足を引っ張っているんじゃないかということで、現地のこの組合員の方は非常に怒っているわけです。
 まず確認しておきたいことは、国や県などの自治体からの補助金、助成金の場合は同じような仕掛けになっているのかどうか、そこを確認しておきたいと思います。
○麻生財務大臣 佐々木先生、これは、いわゆる被災している法人と新設法人の差というのが出てきているんだと思うんですね、基本的には。
 被災している法人ですと、今まで持っていた分のいわゆる負債が起きますので、それと相殺するというようなことはできるんですが、新設だと、1億7千万円というものは、丸々、法人として新設ですから、それは収益と同じことになりますので、これは益金としていわゆる課税所得というものを計算されるということになるんだというように、今の場合も、これは支援金であろうと同じ扱いになろうと存じます。今、新設法人の場合はいわゆる納税が生じることになるんですが、これは、法人が事業により得た収入と外部の団体から受けた支援金で、支援金のみを特別扱いするというのは困難だ、基本的にはそう思っております。
 ただ、これは、このヤマト法人から受けられた岩手の方々のところを詳しく知っているわけではありませんけれども、復興特区というような形にみなされている地域であろうと思いますが、そういうところでは5年間無税というような税制も用意されておりますし、いろいろな対応はできるんだと思います。復興特区の税制とか、準備金の額を限度として新たに取得した建物については即時償却ができるとか、いろいろな形で行うことは可能なものですから、いわゆる個別の例ですけれども、私どもとしては、基本的にはそういった形で、復興支援をするために外から、全く善意の第三者からそこに支援金が行っているからといって、それは益金じゃないですねとはなかなか言えないんですが、それをもらったときには、それに今申し上げたようないろいろな制度というものを利用していただけるということになろうと存じます。
 今、個別の例ですので、ちょっとその現場がよくわかりませんので、それ以上お答えのしようがありません。
○佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、国や県などの補助金、助成金の場合は別枠なんです。これは、税金ではないものですから、もとは寄附金ですから、扱いが変わってくるわけです。
 今言われたように、いろいろな方策というものがあると言いますけれども、実は、圧縮記帳のようなやり方というのは適用されないわけであります。特区で特別償却が一応認められていると今説明がありました。配付資料でもわかりますように、設備投資は100%、建物、構造物が25%しかないんですね。全ての投資が100%償却できるわけではありません。
 このヤマト福祉財団というのは、この資料のように、財務省が告示で指定した七つの指定寄附金の対象の一つであります。この指定寄附金の対象になっている以上、この仕組み上、何か、税金とは違うからという理由でここだけ外してというのではなくて、やはり支援をするというのであれば、財務省が指定した財団のようなところからの寄附は税と同じようにみなして扱う、こういうふうにしていくのが本当の支援じゃないでしょうか。
 何か、一般の寄附と税金とは区別した仕掛けにすること自体が今回のような状況を生み出しておりますので、ぜひ仕組みの面でよく検討していただきたいというふうに思います。
 財務大臣、最後の御答弁をお願いしたいと思います。
○麻生財務大臣 これはもう既に調べられた上でのお話だと思いますので、圧縮記帳の制度と言われましたけれども、これは補助金に限られておりますので、支援金は対象とはならない、もう御存じのとおりです。
 したがいまして、そういった意味で、これだけ、支援金のみを特別扱いしろというようなところがなかなかできないものですから、先ほど申し上げたような形で、特区にあってはというような形で税制、制度を考えたということでありまして、いわゆる再投資準備金として積み立てた場合においては5年間無税としますとか、いろいろな形で今そういったものをつくっておるところであります。
 いずれにしても、こういった形できちんとして、そこだけ別というので特区というのも考えましたけれども、それ以外に、全般にわたってと言われると、これはなかなか、支援金だけ全部別とか被災地だけ別とかいうとまたいろいろ話が難しい面も出てきますので、私どもとしては、こういったものに関しましても、被災しておられる方々にとって力になれるような方法というのは基本的な考え方で持っておりますので、いろいろな面を今後とも考えねばならぬところもあろうと思いますけれども、今現在でと言われれば、お答え申し上げたとおりということになろうと存じます。今後の検討課題にはなろうと存じます。
○佐々木(憲)委員 チャレンジする企業を支援するというのが方針ということですので、チャレンジの出ばなをくじくような仕掛けがあればそれを是正していくというのは当然だと思いますので、今後の検討を期待したいと思います。
 以上で終わります。

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