2014年02月21日 第186回 通常国会 財務金融委員会<大臣所信質疑> 【773】 - 質問
政府・日銀は消費者物価上昇を目的にしているが国民生活が苦しくなるだけ
2014年2月21日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、消費者物価と賃金について質問しました。
佐々木議員は電気、ガス、灯油など燃料関連やパソコンなど輸入品の価格上昇を示し、「消費者物価を押し上げている要因の大部分は円安にある」と指摘。日本銀行の黒田東彦総裁は、円安要因は認めるものの景気回復も見られると強弁しました。
佐々木議員は、消費税増税も含めれば今後3年間で6〜7%物価は上昇するとの日銀の見通しを提示し、「賃金がマイナスになっているもとで、あと2年で7%以上の賃上げができるのか」と迫りました。
麻生太郎財務大臣は、政府も6.6%の物価上昇率を想定していると述べるものの、「経済の好循環に向けた環境整備に取り組んできた」と答えるにとどまりました。
佐々木議員は、政府自身が物価上昇を上回る賃上げが必要としながら、実際には非正規雇用を増やす「賃下げ政策」を進めていると批判。消費税増税の中止と家計を支える政策への転換を求めました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
消費者物価と賃金の関係について、麻生大臣と黒田日銀総裁にお聞きをしたいと思います。
昨年の6月14日に閣議決定をされました「経済財政運営と改革の基本方針について」という文書があります。以前はこれは骨太方針と呼んでいたものでありますが、そこにはこのように書かれております。
「今後、物価の上昇が想定される中、賃金や家計の所得が増加しなければ、景気回復の原動力となっている消費の拡大は息切れし、景気が腰折れすることにもなりかねない。」「2%の物価上昇の下、それを上回る賃金上昇につなげることで、消費の拡大を実現し、所得と支出、生産の好循環を形成する。」このように書いてありますけれども、麻生大臣、これは間違いありませんね。
○麻生財務・金融担当大臣 委員御指摘のとおりです。
○佐々木(憲)委員 ここで、物価上昇を上回る賃金の上昇につなげると書いているのがポイントであります。その点は後で議論をしますが、前提として、物価の現状について、日銀の黒田総裁に確認をしておきたいと思います。
アベノミクスと言われて既に1年たちますけれども、この間、消費者物価は上昇し始めております。現時点でどの程度上昇しているのか、また、その上昇した要因をどのように見ておられるか、お答えをいただきたいと思います。
○黒田参考人(日本銀行総裁) 消費者物価、いわゆる除く生鮮食品の前年比を見ますと、量的・質的金融緩和の導入前の昨年3月はマイナス0・5%であったわけですが、6月にプラスに転じた後、11月にはプラス1・2%、直近の12月にはプラス1・3%となっておりまして、1%台前半で推移しております。
こういった状況の原因というか理由としては、景気が緩やかに回復を続けるもとで、需給ギャップも少しずつ縮小してきているということを受けて、消費者物価がプラス幅を拡大しているのではないか、現にこの間、上昇品目も広がってきているというふうに見ております。
○佐々木(憲)委員 そこで、その上昇している消費者物価でありますが、円安要因、これはどの程度の割合なのか、総裁の見解をお聞きしたいと思います。
○黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が1%台前半まで上昇してきているわけでございますが、この物価上昇の背景を見ると、円安やそれに伴うエネルギー関連の押し上げが相当に影響していることは事実でございますが、景気が緩やかに回復を続けるもとで、需給ギャップが縮小しているということを受けまして、幅広い品目で改善の動きが見られたことも影響しております。
こうした改善の広がりというものは、いわゆるコアコア、食料、エネルギーを除いた消費者物価の前年比がプラス0・7%まで上昇してきているということ、それから、先ほど申し上げたとおり、上昇品目の割合が下落品目の割合をかなり上回ってきているということを見ても、はっきりとあらわれているのではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 そこで、配付した資料を見ていただきたいんですけれども、これは日銀に作成をしていただいたわけですが、物価上昇に寄与した品目ということで、消費者物価指数、昨年3月それから昨年12月の前年比、それぞれこれを比較して、大きな品目は何かということであります。
まず、電気代、これが非常に上がっているわけですね。それから、ガソリンあるいは灯油、都市ガス、こういうものが上位を占めておりまして、確かに、輸入の原燃料、これが上がっているということの反映だと思うんです。
それから、ルームエアコンですとか携帯電話、カーナビ、パソコン、こういう電気製品が上昇しておりますが、これらはアジアの生産拠点から輸入している逆輸入というような製品が大変多いわけであります。これが円安で上昇しているということですね。例えば、パソコンの場合は7割が輸入でありまして、テレビは9割が輸入であります。その反映だと思うんですね。
この中で保険料の上昇というのがありますけれども、これは特殊要因でございます。
こういう状況を見ますと、現時点で消費者物価を押し上げている要因のかなりの部分、これは円安にあるというふうに言えるのではないかと思いますが、いかがですか。
○黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、円安が特に輸入エネルギー等を通じて消費者物価の上昇に寄与していることは事実でございます。それから、御指摘のような一部の逆輸入製品の価格というものに対する影響もあろうかと思います。全般を通じて二つの点が重要だと思います。
一つは、そういった輸入物価の上昇、為替とかあるいは国際商品市況等の理由によるコストアップというのがあったとしても、需要の状況がよくなければ、それを価格に転嫁するということが非常に難しいわけです。したがいまして、輸入品であっても、そういったものの価格が上がるということは、やはり全体的に内需を中心に経済が緩やかに拡大しているもとで起こっているという面も留意する必要があるだろう。
それから、先ほど申し上げましたとおり、いわゆるコアコア、消費者物価に輸入価格の上昇が比較的転嫁されやすい食料品とかエネルギーを除いた指標で見ましても、プラス0・7%。これはたしか1998年来ぐらいの上昇率だと思います。
そういったことも踏まえて見ますと、御指摘のとおり円安が影響していることは事実でございますが、次第に国内の需要がタイトな方向に向かっているもとで、幅広い品目で消費者物価が緩やかに上昇してきているということではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 しかし、公共料金的な面がかなり大きいんですね、電気代とかガス代というのは。これは、需要があるから価格が上がるというよりも、コストが上がるから価格を上げるということで、別に需要は変化があるわけじゃありません。そういう状況があるものですから、国民の方は大変苦しんでいるわけでございます。
商工中金の1月16日付のレポートによりますと、こう書いております。「最近の物価上昇の要因をまとめると、エネルギー価格が上昇していることに加えて、耐久消費財価格の下げ止まりや保険料の引き上げによる所が大きい。ただし、これらは為替が円安となったことや保険会社の特殊事情を背景としており、需給ギャップの改善を裏付けるものではない。」
昨年10―12月期の生鮮食品を除く総合指数は1・1%上昇しております。この点について、第一生命経済研究所の試算によりますと、為替要因がそのうち0・6ポイント分押し上げていると。半分以上が円安要因、こういう指摘でありますが、これが実態ではありませんか。
○黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、需給要因その他がいわば絡まって物価が上がっておりますので、何か、機械的に円安要因とそれ以外の要因を分離するというのは非常に難しいとは思います。
先ほど申し上げたとおり、いわゆる輸入物価の上昇が価格に比較的転嫁されやすい、そういった意味では、諸外国でもしばしばそれを取り除いたところで消費者物価上昇率を見るコアコア、食料、エネルギーを除いたものでもプラス0・7%になっている、生鮮食品だけを除いたもので見ると1・3%ぐらいになっているということです。
それを、半分強ぐらい円安要因以外であるというふうに言うこともできるかもしれませんが、先ほど申し上げたように、さまざまな要因が重なっておりますので、一概に、半分くらい円安要因で半分強ぐらいが円安以外の要因というふうに割り切ることも難しいと思います。
〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕
○佐々木(憲)委員 どのぐらいかというのはいろいろな計算の仕方があると思いますけれども、相当な要因を占めているというふうに思うんですね。
そこで、物価の上昇率、2014年度の終わりから2015年度にかけて達成する、つまり2%上昇ですね、そういうふうに言われておりますが、今後どうなるかということです。
次の資料を見ていただきたいんですが、日銀の政策委員が、それぞれ、2013年度、14年度、15年度の物価の上昇見通しを出しております。その中央値を見ますと、消費税増税の影響を除いたケースで、2013年度0・7、2014年度1・3、2015年度1・9%のそれぞれ伸びでありますが、消費税増税を入れますと、0・7%、3・3%、2・6%、こういう上昇になるだろうというふうに予想しているわけですね。
これは、経済財政諮問会議で黒田総裁がつい最近出した資料のベースになっていると思いますが、間違いありませんか。
○黒田参考人 そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 それで、2012年度を起点として2015年度までに物価は何%上昇するか。それを見るために上昇率を単純に足してみますと、6・6%ということになるわけです。つまり、3年間で消費税を含む消費者物価の上昇率は、2015年度には六から7%程度の上昇、そういうふうに見てよろしいでしょうか。
○黒田参考人 2013年度から15年度までの消費者物価の上昇率について、御指摘のような政策委員の見通しの中央値を単純に足し上げていきますと、委員御指摘のような数字になると思います。
○佐々木(憲)委員 これは、安倍内閣の想定とほぼ同じだと考えてよろしいですか。
○麻生国務大臣 黒田総裁が述べられましたとおり、日本銀行において御指摘のありましたような物価上昇を見通しておるということは承知をいたしております。
すなわち、今年度0・7%程度、来年度3・2%の上昇、そのうち消費税率引き上げの影響を除くと1・2%の上昇を見込んでおるということで、2015年につきましてはまだ数値が示されておりませんから、政府としては2015年までの3年間の物価上昇率をお示しすることはできませんけれども、私どもとしては、基本的に、内閣府による中長期試算の経済再生ケースにおいて、消費税率の引き上げによる影響を含め、2015年度までの3年間の物価上昇率は6・6%になってくると承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 そこを押さえた上で、昨年6月14日の閣議決定の骨太方針、最初確認したように、物価上昇を上回る賃金上昇を達成しなければならないという閣議決定なんですね。
物価上昇は6%から7%、こうなりますから、3年間で賃金の上昇率がそれを上回らなければならないんです。そうしなければこの閣議決定に反する。賃金を7%上げるということは、賃金月額30万の場合は2万1千円、50万の場合は3万5千円上げなきゃならない。
昨年はどうだったかといいますと、厚労省が2月18日に発表した昨年12月の毎勤統計によりますと、基本給と残業代を合わせた決まって支給する給与は、前年同月比で0・2%マイナス、19カ月連続して前年同月を下回っているんです。2013年の平均で見ましても、現金給与総額は、前年とほぼ同水準、上がっていないんですよ。決まって支給する給与は前年比0・5%の減、所定内給与は0・6%の減であります。これは、いわばマイナスからの出発、こうなりますね。
そうしますと、2015年度までに7%の賃上げということは本当にできるのかということになるわけです。麻生大臣、本当にできるんですか。
○麻生国務大臣 政府といたしましては、景気の好循環の実現に向けて、今言われたようなお話を目指して、平成26年度の税制改正において、所得を拡大していただいた方々に対しての促進税制の拡充、また、復興特別法人税の1年前倒しでの廃止を行うとともに、政労使において、昨年の12月の20日、共通認識を取りまとめていただくなど、企業による賃上げのための環境整備に取り組んできたところであります。
具体的な賃金水準というのは、これは会社の個別の、労使間の交渉を通じて決定されるものであって、政府が介入するというのは、我々のやっている自由主義経済、資本主義では考えられませんけれども、政府としては、引き続き、賃金上昇を伴います経済の好循環が実現をしていくように最大限の努力をして取り組んでいかねばならぬと考えております。
○佐々木(憲)委員 政府は環境整備と言うわけでありますが、私どもから言わせると、その環境整備はなってないと思いますよ。
なぜなら、非正規労働者がどんどんふえて、賃金水準が下がっているんですよ。その問題に対して、正規労働者を希望する方々にそれを保障するという政策は出ていないし、これはまた逆行する方向しか出ていないんですね。あるいは、最低賃金を引き上げるのか。政府がやるべきことは、そういうことをやらなきゃならぬのに、抜本的な引き上げ策はほとんど出ていないんですね。
ですから、環境を整える、自由主義経済だ、お任せします、しかし旗だけは振りますよ、これでは、実際に実効ある賃上げ政策にはならない。したがって、このままいったら、これは閣議決定にありますように、賃金や家計の所得が増加しない場合には、消費の拡大は息切れし、景気が腰折れすると書いてある、そのとおりになるんじゃありませんか。
今やっている方向というのは国民の暮らしをどん底に突き落とすようなことになるのではないか、私はそこを非常に危惧しているわけであります。むしろ、消費税増税はもうやめて、しっかりと家計を支える、そういう方向にきちっと転換をしないとアベノミクスは破綻する、それはもう目に見えている、そう言わざるを得ない。
時間が来ましたので、以上で終わります。
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