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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 景気回復 (法人税, 大企業減税, 量的緩和政策、超低金利政策, 関税・EPA(経済連携協定)・TPP, 「成長戦略」)

2013年06月24日 第183回 通常国会 本会議 【743】 - 質問

「内需拡大に軸足を」サミット報告に対して質問

 2013年5月24日、主要国首脳会議(サミット)報告と質疑が本会議であり、「アベノミクス」をめぐり各党が論戦を交わせました。

 質問に立った佐々木憲昭議員は、安倍総理が各国から高い評価が示されたというが、「国民の実感とはほど遠い」と強調。需要が低迷するもとで金融緩和であおっても銀行から先に資金は流れないと指摘し、家計を中心とした内需拡大に軸足を移し実体経済を活性化させる方向にかじを切るべきだと強調しました。
 首脳会議で税負担の軽減競争回避が呼びかけられたが、自民党が参院選公約で大企業のため法人税の大胆な引き下げを掲げたことは「自ら否定した引き下げ競争の先頭に立つもの」であり、大企業の「内部留保を増やすだけだ」と指摘。20兆円もの負担増となる消費税増税と社会保障改悪を中止し、最低賃金引き上げや社会保障拡充などへ抜本転換することを求めました。
 また、佐々木議員は、原発事故収束も原因究明もないまま原発輸出に奔走し、再稼働を成長戦略に位置付けることは論外だと主張。「原発事故で死亡者は出ていない」という高市自民党政調会長の発言を批判し、「大量の放射能をまき散らし何万、何十万の人を苦しめる深刻な広域災害」だと指摘。被害の全容を明らかにし、被災者支援に全面的に責任を持つよう求めました。
 環太平洋連携協定(TPP)については「農林漁業だけでなく医療、金融、環境、労働、食品安全などあらゆる面で生活と経済を破壊する」と強調。TPP反対の公約投げ捨てを厳しく批判しました。
 安倍総理は「企業の収益機会を増やし、雇用や所得拡大を実現する」と答弁、大企業を支援すればやがては国民生活にも回ってくるという破綻した考えに固執しました。

議事録

○佐々木憲昭君 日本共産党を代表して、安倍総理のサミット報告に対し質問します。(拍手)
 総理は、日本の経済政策に対し各国から高い評価と強い期待が示されたと述べていますが、国民の実感とはほど遠いものがあります。
 以下、具体的にお聞きします。
 第一は、株価と円安についてであります。
 安倍内閣の成果だと誇っていた株価は、5月に急落し、その後も乱高下を繰り返しております。外国人投資家が、昨年秋以来、大量に買い越して株価をつり上げ、利食い売りで多額のもうけを上げ、株価を暴落させたのであります。
 結局、ヘッジファンドなどの、外国投資家の餌食になっただけではありませんか。つられて株に投資した国民は、株の暴落で大きな損害を受けました。
 株価の水準を決めるのは、最終的には、企業の収益予想であります。需要が低迷し、実体経済の改善もないのに、幾ら金融緩和で雰囲気をあおっても、銀行から先に資金は流れません。この際、家計を中心とした内需拡大に軸足を移し、実体経済を活性化させる方向にかじを切るべきではありませんか。
 円安による原材料高騰と生活用品の値上がりは、国民の生活と営業を直撃しております。とりわけ被害の大きな業種に対する損害補填をどうするのか、具体的に明らかにしていただきたい。
 第二は、税制についてです。
 総理は、各国が、税源獲得を目指した税負担の軽減競争を避け、協調して各国の税制の調和を図ることが不可欠であるとG8各国に呼びかけました。
 しかし、自民党の参院選挙公約では、「思い切った投資減税を行い、法人税の大胆な引き下げを実行します」と書き込みました。これでは、みずから否定した法人税引き下げ競争の先頭に立つようなものではありませんか。
 企業が設備投資を決める要因は何か。内閣府が行った企業行動に関するアンケート調査によりますと、一番多いのが、内外の需要動向であり、税金が軽くなったら投資をするなどという回答はありません。減税しても、設備投資は盛り上がらず、麻生大臣が薄気味悪いぐらいと表現した266兆円もの巨額の内部留保がさらに積み上がるだけではありませんか。
 大企業や高額所得者には減税するが、庶民には消費税の大増税を押しつける、これが安倍内閣の税制政策であります。この際、消費を低迷させる消費税増税は中止すべきではありませんか。
 消費税増税だけではありません。
 今後2年間で6兆円を超える社会保障の負担増が待ち構えており、消費税増税と合わせ、20兆円もの負担増になるのであります。しかも、成長戦略には、人減らしが可能な多様な正社員の導入、残業代ゼロの裁量労働、派遣労働の拡大などが盛り込まれているのであります。これでは、内需を冷やすばかりではありませんか。
 社会保障の拡充、中小企業対策の拡充と最低賃金の引き上げ、ベースアップの実現、非正規雇用の待遇改善と正社員化、この方向に政策を抜本転換すべきであります。答弁を求めます。
 第三は、原発問題です。
 総理が原発輸出に奔走しているのは、余りにも異常であります。5月の連休に、百以上の企業を引き連れてトップセールスを行いましたが、いまだ原発事故が収束しておらず、原因も究明されていないのに、どうして、安全な原発を提供できるなどと言えるのでしょうか。しかも、成長戦略の中に再稼働を位置づけるなど論外であります。
 この間、原発事故で死亡者は出ていないという与党政策責任者の発言が問題になりましたが、原発事故とは、大量の放射能をまき散らすことによって何万、何十万という人々を長期にわたって苦しめる、深刻で特異な広域災害であります。今なお、15万人の人々が、先の見えない避難を強いられ、苦しめられているのであります。
 政府は、そうした原発事故被害の全容を明らかにし、被災者支援に全面的に責任を持つ姿勢が問われているのであります。
 第四は、TPPについてです。
 G8コミュニケでは、TPPの合意に向けた大きな進展を期待するとしています。TPPの新規参加に当たっては、既に参加している国々の合意を受け入れ、再協議は行わないという念書の受け入れを義務づけられることになっていますが、政府は、現時点で受け取っているかどうか、明らかにされたい。
 米国政府が今月10日に締め切った、日本のTPP交渉参加に対するパブリックコメントには、強い立場にある米国多国籍企業の要求が並んでおります。総理は、これらの要求に応じるつもりなのでしょうか。
 米保険協会などの業界団体は、日米間の非関税措置の懸案事項を話し合う日米並行交渉を期待していると述べています。どのような交渉を行っているのか、明らかにしていただきたい。
 TPPは、アメリカと多国籍企業のために、日本の農業のみならず、医療、金融、環境、労働、食品安全など、あらゆる面で生活と経済を破壊するものであり、我が党は、TPP参加に断固反対であります。
 昨年末の総選挙で、自民党議員の多くは、TPP絶対反対、ぶれない党などと言って当選しているのであります。安倍内閣のTPP交渉参加は、国民への約束を踏みにじるものではありませんか。
 以上、明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。
 金融資本市場の動向と、輸入物価の上昇への対応を含めた今後の経済運営についてお尋ねがありました。
 金融資本市場の動向についてコメントすることは、総理大臣としては差し控えさせていただきます。
 我が国経済については、安倍内閣発足後の2013年1―3月期の実質GDP成長率が前期比年率4・1%となるなど、実体経済の足取りはしっかりしてきており、景気は着実に持ち直しています。
 また、先ほど私から御報告したとおり、G8サミットにおいても、各国首脳から、我が国の経済政策について、強い期待と高い評価が寄せられたところです。
 政府としては、引き続き、三本の矢により、企業の収益機会をふやし、雇用や所得の拡大を実現することで、民需主導の持続的な経済成長を目指していきます。
 また、これまでの為替相場の動向については、全体としては景気にプラスの影響をもたらすと考えていますが、輸入価格の上昇による家計や企業への影響については、引き続き注視してまいります。
 このうち、燃油価格高騰の影響を受けやすい漁業などについては、燃料価格の高騰時に補填する事業を実施しており、適切に対応してまいります。
 法人税の引き下げ等についてお尋ねがありました。
 G8の場で私が申し上げたことは、税源獲得を目指した各国による税負担の軽減競争によって国際的租税回避が助長される事態は避けるべきということです。
 日本経済の再興を図るためには、企業の内部留保として眠る膨大な資金を、将来の価値を生み出す投資へと向かわせる必要があります。
 このため、日本再興戦略においては、生産設備や事業の新陳代謝を促す枠組みを構築し、これに応じて積極姿勢に転じた企業を、思い切った投資減税等によって、大胆に支援していくこととしたところであります。
 消費税率の引き上げについてのお尋ねがありました。
 今般の一体改革による消費税率引き上げは、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認性のために行うものです。
 民間企業の契約の実態など国民生活等への影響を考えて、引き上げの半年前に、附則第18条にのっとって、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案して判断してまいります。
 いずれにせよ、三本の矢で、長引くデフレから脱却し、日本経済の再生に全力を挙げてまいります。
 社会保障の充実、中小企業への対策の拡充などについてお尋ねがありました。
 社会保障・税一体改革では、消費税率引き上げによる増収分により、社会保障の充実と安定化を図ることとしています。
 中小企業、小規模事業者対策については、平成24年度補正予算及び25年度予算により、大規模かつ切れ目ない対策を講じており、例えば、1万社の物づくり企業の試作開発等を支援しています。
 また、日本再興戦略に沿って、最低賃金を引き上げていく環境整備のためにも、企業の収益を向上させ、それが雇用の拡大や賃金の上昇をもたらすような好循環を目指していきます。
 さらに、企業内での希望に応じた正社員化や人材育成といったキャリアアップの支援など、非正規雇用の方々の雇用の安定や処遇の改善のための施策に取り組んでいきます。
 原発の再稼働と、原発輸出についてお尋ねがありました。
 原発については、安全第一が原則です。その安全性は、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、事故の教訓を踏まえた、世界でも最も厳しい新規制基準を満たさない限り、再稼働はありません。
 原発輸出については、東京電力福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えています。
 今般の中東や東欧への訪問においても、各国から我が国の原子力技術への高い期待が示されたところであり、原発輸出については、こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ、我が国の技術を提供していく考えです。
 福島第一原発の廃炉や除染、賠償等の、福島の復興についてお尋ねがありました。
 福島の復興を加速化するためにも、廃炉、除染、賠償などの取り組みを安全、確実に進めることが大前提です。こうした認識のもと、国内外の英知を結集し、国が前面に出て廃炉や除染を進めてまいります。
 その上で、住民の健康管理に万全を期し、生活再建等を図るために必要な取り組みについて責任を持って行うとともに、賠償や復興政策等の一体的な取り組みを進めてまいります。
 我が国のTPP交渉参加についてお尋ねがありました。
 我が国同様に後から参加したメキシコ、カナダを含め、いずれの交渉参加国も、御指摘の念書については立場を明らかにしていません。
 そうした中、報道されているような書簡のようなものがあるかどうかを含め、外交上の個別のやりとりの詳細を明らかにすることは、現TPP交渉参加国との信頼関係に照らし、また、今後の情報収集や交渉に支障を来すおそれがあることから、差し控えます。
 また、御指摘の米国政府官報告示による意見募集については、提出された意見は米国政府に対するものであり、個々の意見に対し、我が国として具体的にコメントする立場にはありません。
 いずれにせよ、TPP交渉及び並行して行われる日米交渉においては、我が国としては、強い交渉力を持って、主張するべきことははっきりと主張して、国益を最大限に実現するよう全力を尽くす考えであります。
 TPPと公約についてのお尋ねがありました。
 我々は、さきの衆議院選挙で、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対するという公約を掲げ、また、それ以外にも、J―ファイルに五つの判断基準を示し、政権に復帰しました。我々が選挙でお約束をしたことは、たがえてはならないと考えています。
 2月のオバマ大統領との首脳会談を踏まえ、私は、TPPでは、聖域なき関税撤廃が前提とされるものではないとの認識に至りました。それ以外のJ―ファイルで掲げた五項目については、交渉参加の条件ではなく、交渉の中で必ず守らなければならないものとして念頭に入れておくべきものであり、交渉の中において実現をしなければなりません。
 TPPについては、我が国としては、強い交渉力を持って、主張するべきことははっきりと主張して、国益を最大限に実現するよう全力を尽くす考えであります。
 以上であります。(拍手)

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