2013年05月16日 第183回 通常国会 連合審査会 【733】 - 質問
連合審査会で「路線バスを守るため消費税増税の中止を」と主張
2013年5月16日、消費税転嫁法案を審議するため経済産業・内閣・財務金融・消費者特別委員会の連合審査会が開かれ、佐々木憲昭議員は、地域の足である路線バスの廃線を促進する消費税増税の中止を求めました。
佐々木議員は、「消費税を運賃に転嫁すれば客が逃げて売り上げが減り、転嫁しなければ身銭を切らなければならない」という事業者の苦しみを紹介し、「客が減るから増税分の値上げができないと判断した場合は『転嫁拒否行為』にあたるのか」と質問しました。茂木敏充経産大臣は「転嫁拒否行為にはならない」と答えました。
佐々木議員は、消費税導入時には路線バス事業者の51%、税率5%引き上げ時には30%しか運賃に転嫁できなかったと指摘。事業者の4分の3が赤字で、毎年、北海道稚内市から鹿児島までの直線距離より長い路線が廃止されており、「増税は経営危機に陥らせる」とのべました。
日本バス協会が転嫁困難から軽減税率適用など消費税の負担軽減策を求めて提出した要望書にふれて対策をただすと、茂木経産大臣は「経済再生を『3本の矢』で達成する」と述べ、まともな答弁はありませんでした。
佐々木議員はOECD各国の事例を示し、一部の国が旅客運賃の付加価値税率を非課税もしくはゼロ税率としている中、「税率が10%になれば日本の消費税率が最も高くなる」と指摘。
路線バスを守るためにも消費税増税を中止すべきだと主張しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
消費税の転嫁がこれほど問題になるのは消費税を増税しようとするからでありまして、我々は、前提となっております消費税増税そのものに反対でございます。増税しなければこういう法案は必要ないというふうに思うんですね。
経産省中小企業庁が、これまで三回、消費税の転嫁問題で調査をやっております。97年、2002年、2011年の三回ですが、転嫁できないと答えた企業は、回を重ねるごとに増加しております。
一番新しい2011年の調査によりますと、消費税を増税されたら転嫁できないと答えた企業は、売上高3千万円以下では66・7%もあります。売り上げ3千万から2億円のところは56・7%、売り上げ2億円を超える企業でも44%が転嫁できない、こういうふうに答えているわけであります。
そこで、麻生大臣にお聞きしますけれども、事業者というのは転嫁できても転嫁できなくても消費税の納税義務を負っているということだと思いますが、いかがですか。
○麻生財務大臣 事業者が物を売ったりする等々の商売をして、転嫁の責任を事業者が負うということになっております。
○佐々木(憲)委員 これが消費税の一つの特徴であります。納税義務を負うのは事業者でありまして、それは極めて事業者にとっては過酷な税金であります。
中小商店の場合に限ってお聞きしますけれども、商店が消費税を転嫁できないというその理由はどこにあると見ていますか。経産大臣。
○茂木経済産業大臣 先ほど佐々木委員に言及していただいた三つの調査、一番新しい平成23年8月の調査によりますと、小売業が転嫁できない理由として大きく二つ挙げておりまして、一番大きなのが景気の低迷で51・2%、その次が事業者間の競争ということで47・3%、こういう回答が多かったと承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 消費税の増税分を上乗せしても、どうしてもお客さんが逃げていく、そういう状況のもとで、転嫁をすれば売り上げが減る。転嫁をしなければ、自分が納税義務を負っていますから、負担せざるを得ない、身銭を切る。そういう意味で、どっちにしても大変な事態なんです。
4月12日の本会議で安倍総理は、小売業者が個々の商品等にどのような小売価格を設定するかはその自主性に委ねられるところですが、みずからの小売価格を維持するために消費税の転嫁拒否等の行為を行った場合には、厳正に対処する必要があると考えています、こういう答弁がありました。
事業者が、客が減るから増税分の値上げができないと経営判断をした場合、それは転嫁拒否行為に当たるのかどうか。この点、お答えいただきたいと思います。
○茂木経済産業大臣 まず、先ほど、消費税を転嫁しにくい理由として、景気の低迷それから事業者間の競争ということを申し上げたんですが、これはあくまで全国レベルのアンケートの結果でありまして、景気がいい商店街でも、商店街がうまくいっていないところがあるんですよ、愛知あたりで。逆に、景気が悪いところでも、長崎あたりでいいところがあるんです。大型店が周りにあっても売れているところもあるということで、個々の状況によって違うということは御理解いただけると思います。
その上で、本法案につきましては、消費税の引き上げの際に消費税の転嫁を阻害する行為などを是正するために、事業者間の取引において、買い手側が商品の価格を決定する際に消費税分を転嫁せずに買いたたいたり、価格を決めた後で消費税分を減額することなどを違反行為といたしております。
すなわち、中小の商店が消費者に対して販売する場合、全ての商品の価格を据え置くということになりますと、転嫁を通じて消費者に負担を求めるという消費税の性格に照らして望ましいとは言えないと思いますが、当然、お店によっていろいろな販売の戦略、セールスの戦略というのがありまして、あるものを高くしたり、あるものをぐっと値引きしたりということは、個々のお店によって商売としてやられるわけでありますから、個々の商品の価格を据え置いて販売すること自体は本法案における転嫁拒否行為とはならない、このように承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 結局、簡単に言うと、事業者間の場合に転嫁拒否行為という問題が焦点になるけれども、中小商店の場合はそれとはまた違う、別の扱いになる、こういうことだと思うんです。
具体的な事例として、きょうは、路線バス、乗り合いバスの問題について取り上げたいと思います。
国交省に確認したいんですけれども、例えば、乗り合いバスの事業者について、89年の消費税導入のとき、それから97年の5%への増税のとき、それぞれ、全事業者のうちどれだけの事業者が運賃改定で転嫁を行うことができたのか、それを答えていただきたいと思います。
○若林政府参考人(国土交通省大臣官房審議官) お答え申し上げます。
乗り合いバス事業につきまして、平成元年の最初の消費税導入時におきましては、全370事業者のうち189事業者、51・1%でございます。また、平成9年の消費税率改定時には、全404事業者のうち123事業者、30・4%が運賃改定を行っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今紹介のように、平成元年には51%、平成9年に5%に上げたときは30%の事業者しか消費税を転嫁できなかった。
どういう理由かといえば、これは国交省の資料によりますけれども、輸送人員が減少を続ける中で、乗り合いバス事業者が運行する四分の三の系統が赤字系統である、事業者全体としても四分の三が赤字事業者となっている、しかも、毎年、稚内から鹿児島までの直線距離を超える約2千キロメートルの路線が完全に廃止されている、そういう状況なわけです。つまり、地方の足は今どんどん破綻に追い込まれているわけであります。
そういう中で消費税が増税された場合、非常に経営上危機に陥るというのはこれまでの事例でありまして、なかなか転嫁はできないし、かといって利益を減らして負担するということもできない、これが実態だと思うんです。
今回の消費税率の引き上げに際して、日本バス協会は消費税の転嫁についてどういう要望を上げているか、紹介していただきたい。
○若林政府参考人 お答え申し上げます。
昨年7月より本年にかけてでございますけれども、日本バス協会の会長より提出されました要望書におきましては、消費税率の改定に関しまして、まず、バスの事業の公共性を考慮した軽減税率の設定とその適用、それから、ICカードのシステム改修の助成と迅速で簡易な運賃改定手続ルールの作成、独禁法の特例による一斉転嫁の配慮について要望がなされているところでございます。
○佐々木(憲)委員 最初におっしゃった軽減税率の適用ということは、強い要望としてこれまでも出されておりまして、平成23年度事業報告書の中にもそれが書かれているわけです。
国交省が政府税調に出した資料、ここにありますけれども、これによりますと、乗り合いバスの場合、利用者の大幅な逸走が懸念されるため、逸走というのはお客さんがいなくなるということです、運賃値上げによる消費税の転嫁は事実上困難、その影響について、運賃改定を行っても利用者の逸走により相殺され、十分な増収につながっていない、マイカーや自転車、徒歩への移行やバスによる出控えなどが逸走の主な理由、こういうふうにしておりまして、国交省自身が転嫁は難しいというふうに答えているわけでございます。
そこで、稲田大臣、この特別措置法案の中では、このような転嫁ができないバス会社に対して、法律上どのような措置をとっているんでしょうか。
○稲田国務大臣 本法案は、いわば強い立場にある特定事業者を対象に、弱い立場にある中小事業者に対して転嫁拒否をする場合等を取り締まっておりますので、今委員御指摘のような場合については適用がないと思います。
○佐々木(憲)委員 実態的にこんな非常に厳しい状況にあるにもかかわらず、法案の中に対応措置がないというのが非常に問題だと思います。
昨年2月の予算委員会で、私はこの問題を取り上げましたが、当時の国土交通大臣はこういうふうに答弁しています。一昨年のことになりますが、12月の政府税制調査会において、運賃改定による税率引き上げ分の転嫁は困難である旨の懸念を表明しております。国土交通省としても、転嫁に際してどのような問題があるのか、事業者の実態を十分に把握し、また関係行政機関と密接な連携をとりつつ、徹底した対策を講じてまいります、こういう答弁であったわけであります。
安倍内閣としては、徹底した対策ということになりますと、どのような対策を講ずることになっているのか、具体的な説明をいただきたいと思います。
○茂木経済産業大臣 先ほども、消費税を転嫁しにくい一番の理由として、景気の低迷という話をさせていただきました。
安倍内閣の最優先課題は、経済の再生そして景気の回復を、三本の矢を同時に力強く射込むことによって達成していく。大胆な金融緩和、機動的な財政運営、民間投資を喚起する成長戦略、既に動き出しております。これによりまして、まず景気の底上げをしていく、このことが個々の事業にとっても、また業界にとっても必要なことなんだと思います。
先生とは消費税に対する基本的なスタンスが違っておりますので、なかなかかみ合わない部分はあるんですけれども、例えば商店街もバス事業も消費税の影響はあります。しかし、それ以上に商店街の構造的な問題、バス事業の構造的な問題を改善しないと、消費税が何%であるということで全て今の状態が維持できる、このようには考えておりません。
○佐々木(憲)委員 確かに私は根本的な考えが違いまして、経済を再生させるという場合に何が必要か、それは国民の消費をどう拡大するかが基本であって、消費税を増税したら全体が活性化するかのような発想には我々は立っておりません。
昨年の予算委員会ではこういう答弁があったんです。税率5%というのは世界の中で三つぐらいしかない、転嫁の問題はあると思いますけれども、あらゆる国が克服しているテーマであります、こういうふうな答弁だったんです。
では、ほかの国の状況を、乗り合いバスの関連でお聞きします。
例えば、OECD諸国では、EU指令において旅客運賃は軽減税率の対象としている。バス協会の要望にも軽減税率の要望がありますが、ヨーロッパではこれが実行されているわけであります。
そこで、イギリス、フランス、ドイツ、デンマークと日本の比較をしたいんですけれども、それぞれの国の基本税率と実際の税率を紹介していただきたいと思います。
○山口財務副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。
今御質問の件でありますが、イギリス、フランス、ドイツ、デンマークにおける付加価値税、これを御紹介いたしたいと思います。
イギリスが標準税率は20%、フランスが19・6%、ドイツが19%、デンマークは25%というふうになっておるわけで、また、乗り合いバスの運賃に適用される付加価値税の税率、これは国によって一定の輸送距離以下である等の条件はありますが、一般的なケースとして、イギリスは0%、フランスは7%、ドイツは7%、そしてデンマークは非課税というふうなことでございます。
○佐々木(憲)委員 今紹介がありましたように、世界は税率が高い、ヨーロッパの基本税率が高いという紹介はいろいろあるんですけれども、例えば、日本が5%から10%にする、その10%は丸々乗り合いバスの事業者にかかるわけであります。ところが、ほかの国は、イギリス0%、フランス7%、ドイツ7%、デンマーク非課税。日本より全部低いんですよ。
これは、日本の地域のバス路線を守る、そういう立場からいうと、特別な手だてが必要ではないか。こういう状況を踏まえますと、やはり、日本の乗り合いバスなど地域の経済の一番ベースになるところをしっかりと支える、そういう税制も検討するということが必要だと思うんですけれども、麻生大臣、そういうおつもりは全くありませんか。
○麻生財務大臣 検討に値するとは思いますけれども、今お答えできる段階にはございません。
○佐々木(憲)委員 えらいまたあっさりとした、冷たい答弁でありました。
日本も、生活関連ですとか生活必需品、そういうものに対しては特別に、私は全体の増税に反対ですけれども、現在の消費税だってそこは下げるべきだと思っているんですよ。税金はちゃんと、お金のあるところ、内部留保がたくさんあるところ、利益のあるところから払ってもらうというのが本来の筋である、こういうふうに考えるわけです。
今、燃料代も上がっている、あるいは施設費用に消費税率10%がさらに加わると、これはバスの料金だけではなくて、事業全体の負担がふえるわけであります。
8割近い事業者が赤字である、そういうときに、これを何も配慮せず、非常に冷たい態度で一律に10%だ、これは余りにも過酷だと言わざるを得ないわけでございます。(発言する者あり)そうだという声がありますけれども、軽減税率を仮に導入しても、こういう客観状況を考えますと、路線バスの廃止を促進するだけです。
ですから、消費税の引き上げなどということはこの際断念する、そういうことが求められているというふうに思うわけです。我々としては、このような消費税増税、血も涙もないやり方については中止すべきである、撤回すべきである、改めてこのことを主張して、終わりたいと思います。