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その他 (選挙制度)

2006年06月09日 第164回 通常国会 倫理選挙特別委員会 【358】 - 質問

公選法「改正」案「全ての人々の投票権の行使を認めるべきだ」佐々木議員主張

 2006年6月9日政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で佐々木憲昭議員会で、佐々木憲昭議員は、在外投票制度について質問しました。

 与党から提案された法案は、主としてイラクに派遣された自衛隊員に対して投票権を付与するための公職選挙法の「改正」案です。

 与党の提案理由説明では「選挙権が国民にとって重要な参政権の一つであることから、できうる限り、国民すべてが選挙権を行使できる環境を整備する必要がある」と説明しています。

 ところが法案では、対象を「特定国外派遣組織」の自衛官などや南極観測隊に限っています。
 南極観測隊についていえば、1999年に洋上投票の制度が設けられたときに、当然、想定できたものですが、当時、国会で南極観測隊の投票について、議論すらありませんでした。
 今回の「改正」は、イラクに派兵した自衛隊員に投票権の行使を保障することを優先させ、そのついでに南極観測隊にも投票権の行使の機会を与えるということになっています。

 この法案には「特定国外派遣組織」という新しい規定を導入しています。
 そのほとんどが自衛官で、こちらは投票箱まで持ち込んで国政選挙だけでなく、地方選挙も対象となる「不在者投票」扱いにしています。
 現行の「在外投票制度」は、国外に3ヶ月以上住んでいて、在外選挙人名簿に登録されている者を対象としています。イラク派遣の自衛隊は、3ヶ月ローテーションで交代していますから、「在外投票制度」では投票できません。今回提案された法案は、それを投票できるようにするというものです。しかも、政令で対象を広げることができ、一時的に海外で軍事訓練をする者も入れることができるのです。

 これまで国会では、ビジネスによる出張者も含めるべきだという議論がなされてきました。
 ビジネスで住所を移動せず数ヶ月も出張している人々はたくさんいるのに、それを対象とせず、自衛官だけ対象にするのは平等な扱いではありません。
 また、国の仕事=公務で国外に派遣される公務員も、対象になっていません。
 佐々木議員は、国外出国者が1680万人もいるなかで、ごく一部の1200人には投票権を認め、あとは対象外だというのでは、国民の選挙権を等しく認めるということにならないのではないかと指摘。
 これに対し、筆頭提案者の鳩山邦夫議員は、「将来的には日本国民であるならばだれでも日本の選挙で国であれ地方であれ投票権が行使できるようにすべき」「まずはこういうような仕組みでやってみようという意味で我々は風穴を大きくあけた」と答えました。

 昨年9月の最高裁大法廷の判決は、「国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執る」必要があるとしています。
 佐々木議員は、「コストがかかるというなら、『民主主義のコスト』だという理由で320億円もの政党助成金を出しているのをやめて、国民の投票権を保障するのがスジではないか」と主張しました。

 また、佐々木憲昭議員は、選挙権の保障という点に関連して、18歳選挙権の問題をただしました。

 佐々木議員は、「世界で、選挙権の年齢が20歳以上の国、20歳未満の国はそれぞれどれだけあるか、とくに18歳選挙権の国はいくつあるか」と質問。

 これにたいして総務省の選挙部長は、選挙権の年齢が20歳以上の国は、日本、シンガポール、マレーシアなど、20カ国、20歳未満の国は157カ国とで、そのうち18歳の国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシアなど149カ国と答えました。
 サミット参加国をみると、選挙権の年齢が20歳なのは日本だけで、他はすべて18歳です。

 日本共産党は、党創立(1922年)時から国民主権と「18歳以上の全ての男女に対する普通選挙権」を掲げてきました。
 佐々木議員は、「世界で言えば、18歳選挙権が圧倒的。18歳選挙権を実行すべきだ」と主張しました。

 今回の法案は、この間、自衛隊のイラク派兵等が長期に及ぶもとで、海外派遣自衛隊員の投票権行使の保障を中心に、今国会、会期末ぎりぎりになって法案を提出したものです。
 わが党は、自衛隊のイラク派兵は憲法違反であり反対です。そのため、即時撤退を主張してきました。そもそも海外派兵しなければ、自衛隊員の投票権の問題は発生しません。
 しかし、派遣された自衛隊員でも憲法上の個人の権利については、可能な限り保障しなければなりません。この立場から、この法案には賛成しました。

 佐々木議員は、「今後、国内外にいる全ての人々の投票権の行使を認めるべきだ」と指摘して質問を終わりました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 先ほどの提案理由説明によりますと、選挙権が国民にとって重要な参政権の一つであることから、でき得る限り国民すべてが実際に選挙権を行使できる環境を整備する必要がある、このような説明がありました。ところが、この法案を見ますと、主な対象を、特定国外派遣組織の自衛官、それから南極観測隊に限られているわけです。
 そこで事実を確認したいんですが、この南極観測隊について言えば、1999年、洋上投票の制度が設けられたときに当然これは想定できたものではないかと思うんですが、当時、国会で南極観測隊の投票についての議論があったのかどうか、選挙部長に答えていただきたい。
○久保政府参考人(総務省自治行政局選挙部長) ファクシミリ装置を用いて投票を送信するということを認めた洋上投票制度は、先ほどもお話に出ておりましたけれども、平成11年、議員立法によって設けられております。
 その際の提案理由では、「船舶が外洋を航行中である場合は、現行の制度では、不在者投票用紙の送致が困難である」という問題があるとの指摘がなされておりまして、そのために設けられたというわけでございますが、平成11年の7月26日に衆議院の委員会で御審議があり、8月6日に参議院の委員会で質疑が行われておりますけれども、この提案理由あるいはその質疑の中身をちょっと見てみましたけれども、南極観測隊については、特に御議論、言及がなかったというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 特定国外派遣組織と言いますが、このほとんどが自衛官であります。こちらは投票箱まで持ち込んで、国政選挙だけではなくて地方選挙も対象となる不在者投票として扱われる、こういう位置づけですね。しかし、南極観測隊は衆議院総選挙、参議院通常選挙に限られる、洋上投票の扱い。何でこういう差別をつけるんですか。
○佐藤茂樹議員 多分、佐々木委員は今回の不在者投票制度において結果として自衛隊が非常に多いことを気にされている向きもあるかと思うんですけれども、今、私どもは、先ほどから答弁者も述べておりますけれども、法律に基づいて派遣されている特定国外派遣組織という考え方になっております。今は五本の法律で、どうしても中身を見ると結果的に自衛隊の比率は多いんですけれども、それは、今後も法律に基づいて派遣されていく特定国外派遣組織というのは、自衛隊に限らず、いろいろな方がこれから国際貢献をしていく組織として出されていくものであるがゆえに、私どもは、何らかの基準をつくるために、法律に基づいてという考え方にさせていただきました。
 現行行われている公職選挙法上の技術的な制度として、特定国外派遣組織については、不在者投票という仕組みを採用したために国政選挙、地方選挙を問わず対象とさせていただいたわけでございます。
 南極地域観測隊につきましては、要するに南極地域という、これは特殊な地域事情によるわけでございまして、南極地域からの移動が極めて困難であります。事実上ほとんど不可能なんですね。年に何回か行き来するという、そういう形しかできない。それで、投票期間内に、選挙期間内に帰国しての投票というのはもちろんなかなか難しい。また、投票用紙の送致を伴う通常の方法ができれば不在者投票もできないことはないんですけれども、そういう投票用紙の送致を行うこともなかなか難しい。ですから、今現在の日本の選挙制度の中で活用できるものは何か。そのときに考えましたものは、遠洋漁業等に従事する指定船舶の船員と同様の方法をとるしかない。これは、平成11年に議員立法で特殊例外的に認められた洋上投票という制度を拡充することによって今現在は対応するしかない。そういう判断をさせていただいて、今回このような形にさせていただいたということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 今の説明は、地理的な理由、それから技術的な理由ということを挙げられましたけれども、それは理由にならないと思うんですね。この科学技術の発達した時代にいろいろな方法はあるはずであります。選挙の公正公平を確保して、国民に投票する機会を平等に保障するという視点にきっちり立てば、それは方法は可能だと私は思うわけです。それをわざわざ区別をして出してきた、それが問題だと言っているわけです。
 現行の在外投票制度は、国外に3カ月以上住んでいて在外選挙人名簿に登録されている者を対象としております。イラク派遣の自衛隊は3カ月のローテーションで交代している。もともと、3カ月ですから投票権は発生しない。今回提案された法案では、そこに投票権を与えるというものであります。しかも、政令で対象を広げることができる。例えば一時的に訓練で海外に派遣されている自衛隊の場合も、短期間でもこれに入ることが可能となる。
 そういうことになっているわけで、今までは国会の中で、先ほどもありましたが、ビジネスによる出張者も含めるべきだという議論がなされていた。ビジネスで住所を異動せず数カ月出張している人はたくさんいるわけです。なぜそういう人たちを対象にしないのか。この法案ではそれを排除して自衛官だけ対象にする、これは平等の原則に反するのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○大野功統議員 なぜ自衛隊員ばかり投票権行使を拡大するのか、こういう御質問でございます。
 問題の発端は、昨年の山形県の知事選で、山形県の駐屯地から――サマワへ派遣された者約600人でございますが、そのうち300人が知事選の投票権行使ができませんでした。それから、兵庫県は350人の者が兵庫県知事選の投票ができませんでした。国のために行っているのにどうしてこういうふうな現象が起こるんだろうか、こういうことも一つ我々が考えなきゃいけない問題であります。(佐々木(憲)委員「ビジネスマンはどうするんですか、どういうふうに違うんですか」と呼ぶ)それから始まっているんです、それから始まっている。
 我々は、海外の、投票権を考える場合に、あらゆる人に投票権を行使してもらいたい、こういう気持ちはあります。しかし、先生御存じのとおり、ただいま現在でも101万人の永住者がおる、在外者がいる。在外者は幸い国政選挙は救われます。ビジネスマンあるいは海外に出張している者につきましても、これは年間に、先ほども鳩山筆頭から御説明しましたとおり、1680万人の人間が一年間で海外へ出ているわけですね。
 選挙というのはどういうことを考えたらいいのか。平等、公正にやらなきゃいけない、それから実施が可能でなきゃいけない、こういうことがあるわけでございます。我々は、最初の哲学は、一つはまず法律で、将来理想像は先生がおっしゃるようなことかもしれません、しかし、法律で投票権の行使を奪ってしまっている、そういう方の投票権行使を復活させてあげるというのが政治家の責務じゃないだろうか、政治の責務じゃないだろうか、ここから出発をしているわけです。
 我々はあらゆる場合を想定して検討しました。海外ロケも、それから公務員の出張も、国際会議の出張、国会議員の海外視察、いろいろなことを検討しましたが、今回は、今申し上げたような考え方、そして選挙で一番大切ないわゆる公平な選挙、正しい公正な選挙、そして実行可能性、こういうことで考えておるわけでございまして、その点につきまして、当該組織において選挙人の範囲が確定できること、それから、本人の確認、それからその長が不在者投票の管理者としてしっかりしていること、こういうことが条件となります。
○佐々木(憲)委員 質問したことに端的に答えていただければいい、背景説明はわかっておりますので。あらゆる人に行使してもらいたいというのは、私もそうだと思うのです。それなら、なぜそういうふうにしなかったのかということを聞いているわけであります。
 今公務員も検討したというふうに言いました。ビジネスマンだって当然検討の対象になる。鳩山提案者にお聞きしますが、将来、当然公務員もビジネスマンも対象にしていく、そういう可能性を広げるべきだと思うんですが、そういう決意はありますか。
○鳩山邦夫議員 大野功統提案者から御説明申し上げましたように、我々この問題を検討し始めたときに、国外にいる人で住民票は国内に置いたままはどういう種類があるだろうかと、本当にオリンピックの選手団から、いろいろなあらゆるケースを想定したわけですね。
 だから、将来的には日本国民であるならばだれでも日本の選挙で国であれ地方であれ投票権が行使できるようにすべきと思いますが、公正あるいは適正な執行というようなことを考えますと、まずはこういうような仕組みでやってみようという意味で我々は風穴を大きくあけたというふうに自負いたしております。
○佐々木(憲)委員 ともかく、現在一時的に国外に滞在する選挙人については1680万人ですね、その中で今回対象はいわば1400人ですよ、本当に微々たるものなんです。これは一歩といえば一歩でしょう。しかし、まだまだ対象を広げなければならないというふうに思います。といいますのは、昨年九月の最高裁大法廷の判決で、国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置をとる必要があるというふうに出ているわけですね。当然そうすべきであります。
 先ほどコストの問題がいろいろ議論になっておりましたが、これは民主主義のコストだ。そういう点でいえば、政党助成金が320億円出ているんですから、それならそれをやめて国民の投票権を保障するのが筋ではないかと我々は思うんです。
 そこで、最後に、選挙権の保障という点でいいますと、18歳選挙権の問題というのもございます。確認をしたいんですが、世界で選挙権年齢が20歳以上の国、20歳未満の国はそれぞれどれだけあるか、特に18歳選挙権の国は幾つあるか、選挙部長、お答えいただきたい。
○久保政府参考人(総務省自治行政局選挙部長) 平成16年12月10日現在の国立国会図書館の資料などによりますと、177カ国の下院選挙におけます選挙権年齢につきまして申し上げますと、20歳以上の国は日本、シンガポール、マレーシアなど20カ国でございます。20歳未満の国は157カ国でございまして、うち18歳の国はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシア等149カ国となっているものと承知しております。
○佐々木(憲)委員 いわば20歳以上の選挙権というのがある国というのは非常に少数派なんですよね、世界で言えば。18歳選挙権が圧倒的ですから。そういう意味で、我々は18歳選挙権を当然実行すべきだというふうに思っております。これは各党でも当然そういう方向で賛成していただくべきだというふうに私は思うんですけれども、今回のこの法案は、そこまで展望して国民の選挙権を広げていく第一歩というふうに位置づけなければならないというふうに思っております。
 今回の法案は、自衛隊のイラク派兵が長期に及ぶもとで、海外派遣自衛隊員の選挙権付与を中心に今国会の会期末のぎりぎりになって法案を提出されている、ここに問題があるわけです。我が党は、自衛隊のイラク派兵は憲法違反であり反対でありますが、そしてまた即時撤退を主張しております。そもそも海外へ派兵しなければ自衛隊の選挙権の問題は発生しないんです。派遣された自衛隊員でも、憲法上の個人の権利については可能な限り保障しなきゃならないというふうに我々も思いますけれども、今後、さらに国民の投票権を広げていくという立場に立って、お互いにその点で前向きにやっていければなというふうに思いますので、その点を主張いたしまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

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