2013年04月04日 第183回 通常国会 倫理選挙特別委員会≪参考人質疑≫ 【721】 - 質問
ネット選挙運動法案 企業・団体への解禁の問題を参考人が指摘
2013年4月4日、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会は、2日に続いて、インターネットを利用した選挙運動を解禁する問題について参考人質疑を行いました。
選挙プランナーの三浦博史氏は、ネット選挙運動解禁は「主権者たる有権者の立場に立った法改正でなければならない」と指摘。慶応義塾大大学院客員教授の夏野剛氏は、メール配信を候補者と政党だけに限るのは、「かなり複雑で、有権者にとって非常に分かりにくい」として、ネット上での自由な討論や反論を通じて健全な世論が形成されていくと述べました。
佐々木憲昭議員は、選挙権と選挙の自由は主権者である国民の基本的権利だとして、ネット選挙運動を有権者でもない企業・団体にまで広げることは問題ではないかと質問しました。
三浦氏は、「候補者を支援する企業、法人、(労働)組合、団体その他に対して、『(メール配信の)登録をする申し込みをしなさい』『お宅は100件、お宅は500件、お宅は1000件』ということが間違いなく起きる」と警告。夏野氏も、個人が「関心事項」をやりとりするメールと、企業・団体などの組織が利益を追求する活動の一環として配信するメールとは全然違うと指摘しました。
議事録
○保岡委員長 これより会議を開きます。
逢沢一郎君外五名提出、公職選挙法の一部を改正する法律案及び田嶋要君外五名提出、公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として選挙プランナー・一般社団法人日本選挙キャンペーン協会専務理事三浦博史君及び慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科客員教授夏野剛君に御出席をいただいております。
この際、両参考人に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両参考人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、三浦参考人、夏野参考人の順序で、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。
それでは、まず三浦参考人にお願いいたします。
○三浦参考人 ただいま御紹介賜りました選挙プランナーの三浦博史でございます。
大変僣越ではございますけれども、多少のお時間をいただきまして、選挙の現場に携わっている者の一人として、このたびのネット解禁について、与党案がよしとされている論点について、私なりの意見を述べたいと思います。
冒頭に、まだ決まっていないようでありますが、あすのこの委員会で、与野党間の合意がなされ、本法案が成立するかもしれないというマスコミ報道を聞き、ここにおられる全ての議員の先生方の御尽力に、心からの敬意と謝意を表したいと思います。
選挙戦におきまして、日本の常識、世界の非常識と言われるものの代表的な例の一つがネット規制であります。同時に、今回は関係ございませんけれども、世界の選挙の常識であるドア・ツー・ドア、すなわち戸別訪問禁止につきましても、これは世界の非常識に該当しますので、ぜひ近未来、御検討を賜りたいと存じます。
さて、本来、私は、ネット上での規制はできない、また、すべきではないという完全自由化論者であります。しかし、問題は、第三者というふうに位置づけられておりますが、主役たる、主権者たる有権者の立場に立った法改正でなければならないということであります。
不測の事態により、有権者に対し、想定外の迷惑をかけたり、日常のコミュニケーション事情に支障を来したり、社会的な混乱や秩序を乱すことが絶対にあってはならない。仮にあるとしましても、それを最小限にとどめるということが、私は、政治の責任の一つではないかというふうに考えております。
有権者が、今回の法改正によりまして、できる限り混乱することなく、コンプライアンスを守りつつ、また、悪質かつ巧みな投票誘導などの事態が起こらないよう十分配慮をいただいた上で、段階を踏んで完全自由化をしていくことがセカンドベストというふうに考えている次第でもございます。
それでは、論点に移りたいと思います。
まず、有料バナー広告を政党のみに限定することについてでありますが、これは第一に、テレビやラジオでのCMなど、他の有料広告との整合性の問題があると思います。
現行の公職選挙法におきましては、テレビやラジオでの政党による広告、政策宣伝は認められておりますが、候補者個人による選挙広告は認められておりません。政治活動については禁止されていないという御指摘もあるようですが、御承知のように、民放連等による自主規制も相まって、立候補表明以降、特定の期間に当たりましては、売名行為や選挙運動にわたる表現や出演等、厳しく規制されているのが実情と言えます。
有料バナー広告を政党のみならず候補者個人まで広げて認めるのであれば、テレビやラジオでの候補者個人の有料選挙広告も認めなければ整合性はとれないと考える次第でございます。
第二に、選挙運動費用の法定制限額があるので、問題はないのではないかという御指摘、御意見もありますが、裏を返せば、法定制限額以内であれば幾らでも有料広告ができるという解釈ともなります。
大体、先日行われた総選挙も、参議院選挙におきましても、法定制限額ぎりぎりの収支報告を出している候補者は皆無に近いのが実情であります。
一例を挙げてみますと、総務省の平成22年7月11日執行の参議院比例代表選出議員選挙における公職の候補者の選挙運動に関する収支報告書の概要によれば、187名の立候補者の平均の支出総額は1010万2888円となっています。法定選挙運動費用額は5200万円であるため、平均値とはいえ、あえて無理に推測をすれば、残りの4千万円程度を有料バナー広告に投入することも可能となるわけであります。これを候補者が実行した場合、ネット上ではかなりの露出が予想されます。
ちなみに、同年の最高額の候補者の方は、約3300万円でありました。それでも2千万円弱の余裕があると言えます。これでも12分に有料広告が可能なわけであります。
そしてもう一つは、公職選挙法の精神から逸脱するのではないかということであります。
我が国の公職選挙法は、昭和25年施行の古い法律とはいえ、徹底して機会均等の精神が貫かれていると言えます。法定制限額の設定もその一つでありますが、米国にはそうした制限がなく、例えばテレビコマーシャルの予算も、スーパーPACの外部団体を含めれば、青天井が実情であります。
しかし、我が国では、確かに時代おくれの面は否めないものの、大半の印刷物等におきましても、量的制限を課すことにより、当落が資金力の大小になるべく左右されにくくなるように配慮されていると思います。
論点となっている候補者個人の有料バナー広告を可とすることは、前述のような法定制限額以内におさまるにしましても、資金力のある候補者にとっては、少なくともサイト上に限っては、投票誘導が多少なりとも優位に働くであろうことは容易に想像がつきます。
次に、第三者によるメール配信を不可とすることが妥当と思われる論点についてですが、まず一つ目は、善意の有権者への十分な配慮がなされなければならないというふうに考えております。
完全自由化して、罰則規定、これは禁錮刑、罰金刑、公民権停止などがございますが、これが周知徹底されないうちに選挙戦に突入すれば、一般の有権者がみずからの熱い思いをメールで送信した結果、思いがけず刑事告発をされることもあり得ます。取り締まり当局の手間も、恐らく膨大なものになるに違いありません。
ネット解禁によって、投票率の向上や選挙コストの軽減、有権者の政党、候補者比較が容易になるなどのメリットが期待される反面、罰則規定やルールが十分に周知されていない第三者、特に選挙の主役である有権者が少なからず選挙違反に問われることも想定され、そうした事態は避けるべきというふうに考えております。
こうしたことを避けるためにも、まずはメールの配信を政党及び候補者個人のみにとどめ、ルールの周知徹底状況など、しばらく様子を見た上で第三者までその範囲を広げていくなど、段階的な措置で混乱を最小限にとどめる配慮が必要と考えている次第でございます。
二つ目は、過度の落選運動を回避しなければならないと思っております。
昨年の韓国における国政選挙、特に大統領選挙におきましては、ネット上で多くの悪質かつ行き過ぎた落選運動が展開されました。企業や法人、個人が特定候補への落選運動のためのメールを一斉に配信することも可能となった場合、海外のサーバーを使えば、少なくとも公示期間中、刑事告訴はもとより、削除を求める行為や事実認定は事実上不可能と思われます。
韓国では、不正な選挙運動を監視、規制するための委員会や監視団が設置されましたが、それでも大きな混乱が後半戦では生じております。
私が一番大切な論点と思っているのは、情報の信憑性、信頼性という問題であります。
テレビ、ラジオ、新聞などの媒体については、有権者はその情報発信源から発信される情報に対し、自己評価とはいえ、一定の信頼性、信憑性のランクづけや判断が可能であります。政党や候補者個人から発信された情報についても、先入観に基づくかもしれませんが、個人差はあるといっても、一定の信頼性や信憑性は得られると思われます。
しかし、その範囲を第三者にまで広げた場合、特に、第三者には企業、法人等も含まれるため、恐らく企業、法人が特定の候補者支援の一環として、選挙運動に関するメールを配信する対象者を獲得するための運動が組織的に繰り広げられ、仮にそれを断った場合の社会的問題や、それを承諾した場合でも、大量の選挙運動に関するメールが対象者に届くという事態も予測され、政党や候補者からのメールが開きにくくなったり、日常のメールのやりとりにも支障を来すことにもなりかねません。大量の選挙運動メールが短期間に集中して届くことで、メールが見られなくなる、信用しなくなるといった、一時的な負の社会現象を生むおそれも懸念されます。
まだまだ申し上げたいことはございますが、大切なことは、主権者たる有権者の立場に立った法改正でなければならないということであります。
我が国では、東日本大震災時に世界から称賛された秩序ある治安維持の状況を見てもわかりますように、さまざまな予防策を講じておくことにより、大きな混乱や弊害を生まないものと確信しております。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○保岡委員長 ありがとうございました。
次に、夏野参考人にお願いいたします。
○夏野参考人 御紹介にあずかりました慶應大学の夏野でございます。
私は、皆さんもう御存じかもしれませんが、ずっとネット業界におりまして、また、今回大きな話題になっているメールについても、さんざんひどい目に遭ってきたといいますか、いろいろな対処をしてきた、そういう経験もございますので、そういうバックグラウンドをもとに、きょうはメーンに、インターネットにおける電子メールの第三者への解禁について、与党案と野党案の一番の違いはこのメールの扱いというふうに伺っておりますので、こちらについての意見を述べさせていただきたいと思います。
その前に、ここにいらっしゃる皆さんは、ネット選挙運動の解禁に向けてポジティブなスタンスを持っていらっしゃる方が多いと思うんですけれども、その方々には釈迦に説法ですが、ぜひ一言申し上げたいのは、この15年間に日本の社会あるいは世界がどれだけIT技術によって進化したかということに思いをはせていただきたいんです。
例えば航空券は、今や国内線の航空券の70%以上が、個人がウエブで決済する時代になっている。これは、航空会社のビジネスモデルが根本から実は変わっているんですね。あるいは証券会社の証券取引は、ほぼ全部ウエブ上で行われるようになりました。
15年前の常識は、個別に営業マンが電話をしてやっている世界、もう今はなくなってしまいました。今、例えばショッピングモールなんというところに行きますと、地方の酒屋さんが高級なワインを日本全国に向けて売っている時代です。これは、商圏というものがもうなくなってしまったんですね。全ての事業形態、全てのビジネスが、ITによって、この15年間で激変しているんです。
しかしながら、今回話題になっている公職選挙法も含めて、社会の制度、あるいは日本の企業も、年功序列、終身雇用、新卒一括採用を初めとして、20年前、30年前と同じことをやっていることが、私は、この20年間の日本が元気がない最大の理由だと思っているんです。
これは、ほかの国を見ていただければ、御存じのように、例えばアメリカ、別にほかの国が全ていいわけではありませんけれども、ほかの国はそれなりに、社会の制度にどんどんITとか状況の変化というのを反映させているのに対して、日本の社会システム、あるいは会社の仕組み、民間もかなりおくれています。民間の仕組み、あるいは大学の教育制度も含めて、余りにこのITというもの、あるいは新しいものを受け入れるのをゆっくりやってきた、余りやってこなかった。これが日本の未来にどれだけの影響を与えるかということをぜひ念頭に置きながら、きょうのお話をお聞きいただければというふうに思っております。
電子メールの第三者への解禁に絞ってお話をさせていただきますけれども、御存じのように、インターネットはもう既に生活基盤になっています。お手元の資料を見ていただければおわかりのように、二ページ目です、インターネット上のアプリケーションで一番使われているのがメールという状況です。ただ、もちろん、ここには世代間の格差がございまして、極端な話を言ってしまいますと、50代以上と40代以下では全然使用形態が違うのも事実です。
ただ、先ほどのお話にもありましたような、これからお話しする迷惑メール等に関しても、実は、使っていない方にはほとんど迷惑はかからないという現実もあるのが今回の迷惑メールです。ですから、そういう意味でいうと、電話等に比べれば全然ましかもしれません。街宣車に比べれば全然ましかもしれません。そういうようなこともあります。
個人間のインターネットのコミュニケーションは本当に変貌しています。メールに関して言いますと、これだけ広く使われておりますけれども、最近は商業用のいわゆるメールというのもかなりふえてきましたので、個人ベースでいいますと、皆さんが常に検討されていらっしゃるSNS等も含めて、そういった代替物も使いながら、いわゆる50以下のユーザーというのは、メールだけではない、複合的な方法で個人間のコミュニケーションをしているというのが現在の現実でございます。
ここの中で、公職選挙法改正に向けた与党案における、選挙運動用電子メールの解禁主体を候補者、政党等に限るということは、実は、これだけ個人がたくさんのコミュニケーションをしている中では、かなり複雑な、あるいは有権者にとって非常にわかりにくい内容になる可能性があるということをぜひ今回御指摘させていただきたいと思っているんです。
例えば、誰々さんが当選した方がいいんじゃないかなと、ツイッターでつぶやいてもいいのに、メールで送ったらだめというのは、これは非常にわかりにくいですね。あるいは、みんなで投票しようよ、誰々さんに投票しようよなんということを、口頭で言ってもいいし、ツイッターで言ってもいいし、フェイスブックで言ってもいいけれども、メールはだめ、これはよくわからないですね。そういうことが起こり得るということでございます。
この与党案が第三者への解禁を見送った理由は三点あるとお伺いしています。
一点目は、成り済ましや誹謗中傷の取り締まりが困難であるということなのでございますけれども、これは、実は電子メールに限った話ではございません。SNS、ツイッターやフェイスブックでも成り済ましの問題はたくさんありますし、皆さん、恐らく、同じ名前のツイッターのアカウントで全然知らない人がやっているというのを発見された方はいらっしゃると思うんですけれども、これは電子メールに特別な話ではないということですね。にせアカウントというのは常に存在し得る話なので、これがいいとはもちろん申しませんけれども、メールに限った話ではないということは御理解いただきたいと思います。
それから、先ほど三浦さんもおっしゃっていました迷惑メールの被害拡大ですけれども、実は、日本は、携帯に対する迷惑メールが物すごく多く発生したのが2001年ごろでございまして、このころから、各ISP、特にメールサーバーを管理している人たちというのは、かなり迷惑メール対策をやってきています。これは業者によってやり方が全部異なっていますし、そのロジックは公開されておりません。公開すると、それをくぐりますので。ただ、大量送信メールと言われるものに対しては、ユーザー保護の観点から、かなりいろいろな対策が進んでいるというふうに認識していただいて結構だと思います。
これは実際に、今、商業用の迷惑メールというのがたくさん存在する現実に対処するためになっております。ですから、これが全て選挙用のメールにそのまま適用できるとは考えておりませんけれども、大量送信で一般消費者の国民生活に影響が出るようなことが一時的に起こったとしても、これに対する技術的な対処方法というのは存在しているということは事実としてあると思います。
ただ、それでも、悪意を持ってやろうと思う人間がかいくぐってくるのは現実としてございます。ですから、完全にこれを排除することはできません。できませんが、それよりも、一般の国民が簡単にコミュニケーションツールを使って政治に対して議論するというメリットとの比較で考えると、私は、一般の国民が自由にITツールを使って議論することの方が国民的なメリットが大きいんじゃないかというふうに思っております。
そして、最後の論点は、事前承諾がないメール配信による逮捕者続出の懸念というのが三点目にあるというふうにお伺いしています。
これは、事前承諾を得るということが前提になっているメールの送信なので、第三者が事前承諾を得ずに、たまたま友達にこういうメールを送ってしまって、最悪は公民権の停止を含むようなことになるのではないかという懸念でございますけれども、これについては、私は、事前承諾というものを個人に求める時点でかなり無理があるんじゃないかなというふうに思っています。
議論の中心が、政党及び候補者あるいは組織としてメールを送る人たちに対してどういう規制をするかという議論で行われたということは重々認識しておりますけれども、第三者という概念の中には、一般国民の普通の個人が自分の友人あるいは関係者に何かコミュニケーションするということが入ってしまいますので、そこで、誰々さんがいいんじゃないかなというメールを私信として送ったものが、最悪は刑事罰になるということになりますと、これはとても一般国民としては理解がしがたく、なおかつ、その規制に誰もがひっかかる可能性があるわけですね。そのような規制は、私は、合理的かつやむを得ない最低限のものとは言いがたいと思いますので、最悪の場合、憲法第21条の通信の自由とか表現の自由というものと抵触する可能性があるんじゃないかとまで私は思っております。
そういう面でいいますと、このような理由から、第三者への選挙運動メールの解禁というものを私は強く希望したいと思っています。第三者のメールには、事前承諾も不要と考えております。候補者や政党等が第三者に成り済ますことで文書図画の頒布を免れるような行為には、現状の罰則規定でも十分に対応できると考えておりますので、解禁を希望している次第です。
ただ、それでも第三者への選挙運動メールを解禁しないということであれば、逆に、具体的な選挙運動メールというものの規定、一体どこまでが許されてどこまでが許されないのかというのを明示していただかないと、例えば、私自身、判断がつかないグレーゾーンというのが広がってしまう可能性があります。
より複雑な規制や仕組みというものを設けることは国民の利益につながりませんので、ぜひこの点は御留意いただいて、今後の議論につなげていただければなというふうに思っております。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○保岡委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
…中略…
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
お二人の参考人には、3月に行われたシンポジウムで御一緒させていただきまして、大変有意義な議論をさせていただきました。本当にありがとうございます。
きょうは、私、有権者に対してネット選挙運動の解禁というのは非常に大事なことであるという立場で質問させていただきたいと思います。
選挙権と選挙の自由というのは、主権者国民の基本的権利であるというふうに思っております。本来、自由な選挙運動というのは有権者に保障されて当たり前だというふうに思います。したがって、今回、有権者個人がウエブサイトあるいは電子メールを使った選挙運動ができる、これは非常に画期的な前進だと思っております。
今の現状をもう言うまでもなく、選挙運動に入りますと、ホームページの更新がぱたっととまるとか、ウエブサイトだけではなく、論戦が非常に制約されてしまう、こういう問題があります。そういう意味で、まずは、少なくともネット上の選挙運動を自由にというのは、非常に大事なことだというふうに思います。
そこで、これが解禁されていきますと、例えばウエブサイトの上で、有権者みずから、誰々候補に一票を、こういうことを呼びかけることができますし、候補者を集めて公開討論会、こういうこともネット上でできるようになるわけですね。有権者同士で選挙の争点について情報交換をするイベントもできる。大変可能性が広がるわけであります。それから、大事なことは、政党と候補者が国民から寄せられる意見に対して個別に答えることができる、そういう双方向性というのがあると思うんです。
そこで、この解禁によってどういう世界が広がるか、百倍おもしろくなるというふうにおっしゃいましたけれども、私もそういうことを期待したいんですが、ネットの場合の解禁の特性といいますか、そういうものを踏まえて、どういう可能性が広がるか、有権者の政治参加がどういうふうに広がっていくか、お二人の御意見をまず最初にお聞かせいただきたいと思います。
○三浦参考人 前の発言と少し矛盾するかもしれませんが、大きく変わる可能性があると思います。
一番大事なことは、有権者から見て、政党に対しても候補者に対しても比較ができる。そして、恐らく今後は、候補者の方々は二枚舌ができなくなる。ある会合で何々について賛成、ある会合では私は実は反対です、こういったことはもう即ネット上で検証されてしまう。そういう意味で、有権者からすると、そういったことも比較しやすくなりますし、そして、百倍かどうかわかりませんけれども、楽しく、おもしろくなるというようなことについても、非常に有意義であると考えております。
○夏野参考人 先ほど申し上げたように、一つは、国民の政治意識が高まっておもしろくなるというお話と、地方議会、地方選挙が盛り上がるというお話がありますが、もう一つの側面として、やはり、若者の投票率が低いというのは、先ほども申しましたようにいろいろな理由はあるんですけれども、この若者の政治への無関心というものの解決にはかなり貢献するだろうということと、それからもう一つは、割と高年齢世代のネットリテラシーの改善にも実は役に立つんじゃないか。やはり、高年代層の政治に関する関心というのは非常に高いものがあるので、しかも、先ほど来申し上げているように、タブレットあるいはスマートフォンによって簡単にインターネットに接続できるようになっていますから、ここの使用率も上がるということが期待されると思っています。
○佐々木(憲)委員 それで、問題は、実際に国民から審判を受ける政党、候補者、これがさまざまな発信ができる。もちろん二つの案には対象が、メールを解禁するかしないか、これが大きな違いだと思うんです。
そこで、メールの問題ですけれども、先ほどの議論の中で、メールの特性として、大量に送るということが可能になる、場合によっては何万とか何十万とか。こういうことができるのは、これは個人はなかなか難しいわけでありまして、個人として名簿を持って送る相手というのは私信の類になるわけですけれども、非常に限られておりますね。
そういたしますと、例えば第三者が、その中に企業もあれば団体もあれば個人もある、そういうくくりで、そこに解禁ということになりますと、当然、大量に名簿を持っていて送ることができる者とそうでない者の違いというものが生まれると思うのですね。
先ほど三浦参考人からお話をお伺いいたしました。その中で、第三者にまで広げた場合、特に、第三者には企業、法人等も含まれるため、恐らく企業、法人が特定の候補者支援の一環として、選挙運動に関するメールを配信する対象者を獲得するための運動が組織的に繰り広げられ、仮にそれを断った場合の社会的問題、それを承諾した場合でも、大量の選挙運動に関するメールが対象者に届くという事態も予想され、政党や候補者からのメールが開きにくくなり、日常のメールのやりとりにも支障を来すことにもなりかねません、こういう御指摘がありました。もうちょっとこの点を、わかりやすく我々にお示しいただきたいということ。
それから、夏野参考人に対して、メールの場合の、個人のやりとりの場合と企業が持っている名簿を使った送信という場合は、やはりかなり力量が違うといいますか格差が出てくると思うんですが、その辺は、選挙運動に与える影響をどうお考えなのか。
お二人、どうぞよろしくお願いします。
○三浦参考人 今の佐々木先生の御質問でございますけれども、第三者というふうに、その中に主権者たる有権者も企業も団体その他も入っておりますけれども、私が懸念するのは、特に企業、法人等でございます。
私のような立場の人間であっても、これがオーケーになれば、先生方の、候補者を支援いただいている企業、法人、組合、団体その他に対して、例えばA候補の、ちゃんとしたメール登録をする、通知をする、申し込みをしなさい、おたくは百件、おたくは500件、おたくは千件ということは間違いなく起きると思います。
ですから、そうしたことが一般の有権者に対してどういう影響があるかということを懸念した場合に、第三者でくくられた企業や団体やその他組合、法人等、そこについても今回は見送っていただいて、様子を見て、そしてしかるべき時期に自由化していただきたいというふうに考えている次第でございます。
○夏野参考人 佐々木先生がおっしゃるように、私も、個人のメールと組織が送るメールというのは実は全然違うものだというふうに思っております。
個人のメールは、前回のときにも申し上げましたが、やはりより私信に近い形で、いわば、選挙運動というよりは、世の中に起こっていることのいわゆる関心事項を単にやりとりしているという性格が強いですし、組織が利用する場合には、それは、組織的な活動、組織のメリットに属した活動の一環としてやられるケースが多いと思うんです。
やはり、特定電子メール法等ができてきて、そもそも、メールアドレスを集めるときに、要は、ユーザーがメールアドレスを登録するときに、そこで期待していたことと全く関係ないことについてメールを送るというのは実は制限されておりまして、ここは選挙に関係なく、例えば、ショッピングサイトで登録しているにもかかわらず、全く違うものが宣伝されるということは、もし起こった場合には、それは規制の対象になっているわけですね。
ということで考えると、そちらの方のルールを強化していく方がむしろ大事で、選挙ということにフォーカスして組織と個人というふうにやるよりは、組織が、もともと期待していない内容のメールを自分の持っている電子メールアドレスのリストに対して送るということを、いかに罰則を強化、あるいは運用をきちんと強化していくかという文脈の中でむしろやっていった方が、社会のためには利益になると思うんです。
選挙という文脈で考えたときには、先ほども私が申し上げましたけれども、やはり個人が自由にきちんとコミュニケーションできることを制限するというのは非常に問題があるというふうに思っていまして、これは利害とは関係ないところで行われるケースも多いので、ですから、ここは分けて考えていただきたいなというのが私の意見でございます。
○佐々木(憲)委員 それと、もう一点は、現在の選挙法では、いろいろなことが規制され過ぎておりまして、戸別訪問はできない、それから特定の承認された範囲内でのビラしかまけない、あるいは音の宣伝もいろいろな規制がある、こうなっておりまして、我々は、べからず集というふうに言っているんですけれども。今回は、その中のネット選挙運動に限っては自由化する、こういう方向ですね。
そういたしますと、現実の世界との関係で、非常にアンバランスが起こってくるわけですね。立会演説会は、ある場所を借りてやろうとしたら、それはできませんよ、しかし、ネットの上では、立会演説会はどうぞ御自由に、こんなふうになるわけです。
そういう意味で、今の日本の公職選挙法が持っている、自由に選挙の運動ができないという、その点もやはりこれを機会に見直して自由化していく、これが非常に大事な方向だと私は思っておりますので、お二人の参考人からも、どういうふうに考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
○三浦参考人 今の佐々木先生の御指摘でありますけれども、ネットだけどんどん自由化していって、ほかの量的制限等が制限されたままだと、まして戸別訪問を含めて、それは確かにおかしいと思いますが、自由化すればいいとも思っておりません。
それは、米国の例を含めてですけれども、アメリカの場合には、二大政党制ですから、民主党のA候補が大量に物を出したりネット選挙を繰り広げると、共和党のB候補は、それに対してほとんど反撃できる同じような資金力、人力を持っております。
残念ながら、日本ではそうでありませんから、全ての政党、候補は均等ではありませんので、余りにも自由にできるとなると、やはり資金力がある政党、候補者が有利になりやすいといったこともありますので、ある程度の制限は必要かと考えております。
○夏野参考人 私も、現在の公職選挙法が、いわゆる金権選挙をいかになくしていくかということを主眼にあらゆる規制を盛り込んできた歴史というのは非常に評価するものではあるんですけれども、しかしながら、時代に合っているかということでいうと、用語を含めて、もう少し時代に合った形にしていくべきではないかというふうに個人的に思っております。
特に、今回はネットということで公職選挙法がありましたが、ほかにも、例えば、ジュースを出すのに、コーヒーを出したらだめで、ペットボトルの口をあけて出すとか、こういったことが、本当に有効性があるのかという観点から一つずつやるべきであると思いますし、もっといいますと、では、取り締まりそのもの、違反を誰が摘発するのかに関しても、選挙になりますとかなりこれは専門性が高くなってきますので、そうすると、例えばですけれども、証券取引委員会のような形で、そういう専門の機関を置いた方がいいのかもしれないというようなことも含めて議論していただく方がいい時期にもう来ているんじゃないか、そういうふうに個人的には思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りました。
以上で終わります。ありがとうございました。