2013年04月02日 第183回 通常国会 倫理選挙特別委員会 【719】 - 質問
ネット選挙運動法案 顧客名簿でメール可能 企業・団体への解禁批判
2013年4月2日、インターネットを利用した選挙運動を解禁する法案の質疑が、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で始まりました。自民、公明、維新3党の法案と、民主、みんな両党の法案が提出されています。
佐々木憲昭議員は、両案とも企業・団体にネット選挙運動を認めることの問題点をただしました。
佐々木議員は「選挙権と選挙の自由は、主権者たる国民の基本的権利だ」と述べ、「選挙の主役はだれなのか」と質問。公明党の遠山清彦議員は「候補者」と「有権者」だと答弁。民主党の田嶋要議員も「主役は有権者だ」と認めました。
自公維3党案は政党と候補者とそれ以外の第三者にホームページなどのウェブサイト上での選挙運動を解禁し、民主・みんな案はウェブサイトに加えメールでの選挙運動も「すべての者」に解禁しています。
佐々木議員は、解禁の対象に「企業・団体も含むのか」と質問。いずれも「含んでいる」(維新・浦野靖人議員)、「企業・団体を含むという点は同じだ」(田嶋氏)と答弁しました。
佐々木議員は、民主・みんな案では大量の顧客名簿をもとに大企業が大量の選挙運動メールを送ることができると追及すると、田嶋氏は、目的外利用はできないが顧客から拒否の連絡がない限り「送れる」と認めました。
佐々木議員は、現行の公選法では候補者や政党以外の企業・団体は選挙期間中の街頭宣伝やビラ配布などは禁止されているが、ネット上では企業・団体に選挙運動が解禁されると、「国民の選挙運動の自由が逆に阻害される」と指摘。「主役=主権者以外の企業・団体が選挙運動に入り込んで、自由にできるようにすることには反対だ」と主張しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、誰に対して解禁するかという問題であります。
私どもは、選挙権と選挙の自由というのは、主権者である国民の基本的権利であり、本来、有権者個人に自由な選挙運動が保障されるべきだと考えております。したがって、有権者個人に対して、ウエブサイトや電子メールを選挙で利用できるようにすべきだというふうに思います。
この点でそれぞれの提案者に確認をしたいんですが、ネット選挙運動の主役は一体誰なのか、それぞれお答えをいただきたいと思います。
○遠山議員(公明党) お答え申し上げます。
ネット選挙の主役は誰かということでございますが、これは、選挙を通じて公職を得ようとしております候補者と、また、公職にある者を選ぶ有権者に尽きる、このように思っております。
○田嶋議員(民主党) 主役は誰かということでございますけれども、これは、やはり国民主権のもとでございますので、基本的には有権者、一人一人が一票を持っている、憲法上で保障されたその権限の行使ということで、主役は有権者である。
しかし、その有権者の中の限られた方々が被選挙人として選挙に出るわけでございますので、彼らも主役にはなろうかというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 大変重要な、基本的なことでありますが、その点については我々も同じ考えでございます。
そこで、具体的な法案の内容ですけれども、自、公、維新の案は、趣旨説明の中で、「候補者、政党等以外の者、すなわち第三者のウエブサイト等による選挙運動も解禁する」、こういうふうになっております。第三者の中には企業、団体を含むのかどうか。
それから、民主、みんな案は、提案理由説明の中で、「電子メールを利用する方法も含めて、一般有権者、政党、候補者全ての者がインターネット選挙運動を行えるように」とありますけれども、全ての者、この中に企業、団体を含むのか。この点をお伺いしたいと思います。
○浦野議員(維新の会) 本改正案では、インターネットによる選挙運動のうち、ウエブサイト等による選挙運動について、候補者や政党などだけでなく、一般有権者を含めた全ての者に解禁するということとしておりますので、当然、この中に企業、団体も含んでおります。
○田嶋議員(民主党) 私どもの法案は、加えて、メールに関しても全ての者に解禁でございますので、企業、団体を含むという点では同じでございます。
なお、私どもは、第三者という言いぶりはやめようということで、やはり、先ほどの、主体は誰か、主役は誰かという観点に立って、一般有権者というふうに呼んでおります。
○佐々木(憲)委員 両案ともこの解禁の対象として、企業、団体も含む、こういうことなんですね。そうしますと、主役以外のものが入ってくるということになるわけですよ。これは非常に問題があると私は思います。
具体的にもうちょっと聞きますけれども、先ほど、無秩序に、例えば選挙運動のためのメールを送ることは問題がある、そういうふうにお答えになった方がいます。これは当たり前のことでありますが、もうちょっと具体的に言うと、こういうことはどうなんでしょうか。
ある会社が、顧客名簿に基づいて、今度はこういう商品が開発されました、あるいは、こういうサービスができますよ、そういうメールを顧客に対して大量に通常送っているわけですね。その顧客は企業に自分のアドレスを登録している。こういう場合、その大量の顧客名簿に基づいて、選挙期間中は選挙運動のメールも送らせていただきますと、通常のメールの最後のところにそういうことが書かれている。受け取りを拒否する方は、これに対してノーという拒否の返事をいただきたい、こういうふうにするわけですね。こういうやり方は、民主、みんなの案では可能なのか、この点を確認したいと思います。
○田嶋議員(民主党) 基本的に、ルールとして私どもが設けているのは、表示義務を設けている。そして、もう要らないというふうに断る場合、オプトアウトという言い方をいたしますが、そこには繰り返しは送っちゃいけないということでございますので、それ以外であれば送れます。
○佐々木(憲)委員 つまり可能となるということですね。
そうすると、そういう商品案内のメールが定期的に来ている、また来たなということで、最後まで読まないで拒否はしなかった。そうすると、次は選挙運動用のメールが来たと。私は来てもいいとは返事をしなかったのに何で来たのかな、こういうことにならざるを得ない。
したがって、企業が大量の顧客名簿を持っている、それを利用できる、つまり、第三者の中にそれが入ってくるということになりますと、そういう事態が発生するわけですよ。これは、個人ではそんなことはあり得ないわけです。
したがって、私は、そういうところに主役でない企業、団体が入るのは問題があるというふうに思っております。
自民、公明、維新の案は、ウエブ上はオーケーだけれどもメールはだめ、民主、みんな案は両方ともオーケーだ、こうなってきますね。そうすると、今言ったような問題は、自民、公明案では一体どういうふうになるんでしょうか。
○橋本(岳)議員(自民党) お答えをいたします。
先ほど浦野議員が答弁をしましたとおり、私どもといたしましては、企業、団体についても、第三者という言葉で表現をするのが適当かどうかという議論はありますけれども、に含まれるものというふうに考えております。
これは判例がございまして、八幡製鉄事件というものの判例が、最高裁判決、昭和45年6月24日というものがございます。「憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。」このように判例でなっております。
そういう意味で、政治活動あるいは選挙運動について、企業、団体についてこれを禁止するというような理由、いわれは、この判例に反するということになろうかと思っております。
その上で、私どもの案につきましては、議員御指摘のとおり、ウエブ等での選挙運動は解禁をさせていただきたい。ただ、メールについては、企業、団体は候補者でも政党などでもございませんので、それに含まれない団体ということになりますが、それにつきましては、メールでの選挙運動は今回は解禁をしないということでございます。
○佐々木(憲)委員 今、判例を言われましたけれども、現行公選法上は、法律で定められた手段だけで選挙運動を認めているわけです。街頭宣伝とか演説会、ビラ、この場合はこうできますよ、それ以外の選挙運動は実質的に制限、規制する、こういう仕組みになっていますね。現行法の体系のもとでは、企業の選挙運動を禁止とは書かれていなくても、実質的に選挙運動のツールを持っていない。したがって、選挙運動はできないわけであります。
したがって、今回、解禁というふうになってしまうと、ネット選挙運動に限って異なる扱いになっていくわけで、そこが非常に私は危惧をしているところであります。
そもそも、企業が営業活動で手に入れた大量の顧客名簿を利用して、誰々さんを当選させよう、どの党を当選させよう、そういう選挙運動ができるようになると、これは大変影響が大きいわけですね。ですから、そんなことが可能になるということは、私は非常に問題だと思うんですけれども、この点での、主役以外の選挙運動について何らかの規制というか歯どめがないといけないと思います。そうしないと、国民の選挙運動の自由が逆に阻害されてしまう、そういうふうに思います。
それぞれの提案者はこの点についてはどういう歯どめを考えておられるのか、お聞かせいただきたい。
○橋本(岳)議員(自民党) お答えをいたします。
先ほど田嶋議員が答弁をしましたけれども、商取引のために顧客名簿などを集めるということはまず一般的であろうと思います。そのことを使って選挙運動をするということ自体が個人情報保護法に当たるという問題がまずあろうかと思っております。
その上で、私どもの案では、先ほど答弁を申しましたとおり、電子メールを持っているよね、ではそこにメールを送っていいかというと、候補者でも政党などにも当たらないと思いますので、これはできないという整理になります。
○田嶋議員(民主党) この点は大変自、公、維新案と共通するところが多いわけでございますが、先ほども答弁しましたとおり、目的外の使用でありますので、その本人の了解を得ずしてそういうことをやれば、当然、非常識にもなりますけれども、それは禁じられているということになります。
○佐々木(憲)委員 名簿の問題でいいますと、例えば、名簿業者というものがありますよね。大変大量のメールアドレスを持っている。そこから名簿を買い取って、それを選挙運動のために使う、こういうことは可能になるんでしょうか、禁止なんでしょうか。それぞれお答えいただきたい。
○遠山議員(公明党) 法案の中で、電子メールアドレスについてみずから通知した者に対して、送信の同意を得た者というふうに二重に条件をつけて、その条件がクリアになった方にしか送れませんので、答えは、名簿業者から買った名簿に基づいて選挙運動用メールを送ることはできないように、法のたてつけ上、なっております。
○田嶋議員(民主党) 同じでございます。
○佐々木(憲)委員 私は、主役以外の企業、団体が選挙運動に入り込んで、それを自由にやれるようにするということには反対でございます。それは、やはり主権者個人が主役であって、憲法に保障された基本的人権の一つであるというふうに考えております。
もう時間がなくなりました。それで、一点だけ確認をいたします。
有料ネット広告について、民主、みんなの案は選挙運動用の有料ネット広告を候補者、政党に解禁すると提案していたんですが、法案では、選挙運動用は禁止し、政治活動用を政党と候補者に認める、こういうふうに変えたんでしょうか。これ、理由は何でしょうか。
○田嶋議員(民主党) ちょっと定かではありませんが、どういう変更ですか、特段変えてございません。
候補者本人も、いわゆるバナー広告をすることによって、選挙運動をやっているウエブサイトに直接飛ぶような形のバナー広告は候補者本人も認めようというところが自、公、維新案との違いでございます。
○佐々木(憲)委員 では、自公案はどういう違いがあるんですか。
○平井議員(自民党) 協議会にもずっと参加していただいていたので、ここの違いのところは御理解だと思いますが、自公案は、要するに候補者と政党、確認団体のみに認める……(発言する者あり)申しわけありません。
つまり、今テレビや新聞で選挙期間中にやっているものとの並びにしたのが我々自公維案でございます。
○佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。