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金融(銀行・保険・証券) (法人税, 銀行の収益性, 銀行公的資金注入, 優越的地位の乱用)

2006年06月13日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【359】 - 質問

史上最高益あげているのに 6大銀行 法人税ゼロ「社会的責任を果たせ」

 2006年6月13日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、銀行のあり方について質問しました。

 大手銀行は史上最高の利益をあげているのに、中小企業への貸し出しは96兆円も減らしています。
 また、銀行は、91年度から05年度のあいだに、貸し出しでの金利収入を経常収益比で6割から4割に減少させる一方で、手数料収入を2%から17%に急増させています。

 優越的地位の乱用で業務改善命令を出された三井住友銀行が中小企業に金融商品を押しつけ販売していたのも、手数料収入を得るためで、他の銀行も同じことをしています。
 さらに、銀行の普通預金金利は、0.001%と低く、庶民犠牲のもとで銀行が利益を上げています。

 佐々木議員は、これらのことは「金融庁が行政処分まで出して『収益向上』を強くもとめてきたことにも責任がある」と批判。

 さらに、大手銀行は、これだけ莫大な利益を上げているにもかかわらず、税金をまともに払っていません。金融庁監督局長は、主要6銀行で法人税がゼロであることを認めました。
 佐々木議員は、「税金を投入された銀行が史上最大の利益を上げているのに、自らは税金を払っていないというのでは国民は納得できない。銀行のあり方として正常だと思うか」とただしました。
 これに対し、与謝野金融担当大臣は、「日本の金融機関が、経営内容も経営姿勢も健全になってほしいという思いは佐々木議員と同じ」と答弁しました。

 また大臣は「銀行には、金融仲介業という社会的責任がある。銀行はリスクを背負うという気概が必要であり、そうでなくては国民的な信頼は得られない」とのべました。

 佐々木議員は、「銀行はリスクをとって中小企業・地域経済に融資し、公的な役割を果たすべきだ」と主張しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 与謝野大臣に、銀行の問題についてお伺いしたいと思うんです。
 大手銀行の利益は史上最高ということで、6大グループの3月期の当期純利益というのは3兆円を超えたと。前年度が5751億円ですから、6倍弱。本当に急増でありますが、その理由、これをどのように受けとめておられるか、お聞きをしたいと思います。
○与謝野金融担当大臣 やはり、今まで返ってこないと思っていた貸出先、これが経済の好転とともに返ってくるだろうということになったということと、基本的には、資金コストが非常に低い、すなわち預金者に対する支払い金利がほぼゼロに近い、これが収益条件に貢献していると思っております。
○佐々木(憲)委員 本来の融資で堅実に利益が上がっているというのではなくて、引当金の戻し金が一時的に入った、あるいは、手数料の収入など、本来業務外の収入が非常に多い、こういうことがあったのではないかというふうに思うんです。
 お配りした資料を見ていただきたいんですが、今おっしゃったように、貸出金利での収入といいますか、これは、以前は大体この6割ぐらいが、経常収益に対して大きな比率を占めていた。ところが現在は、3割台、4割台という。ところがその一方で、手数料の収入だけは、以前は2%、3%台だったのが今17%、これは大変増加をしているわけであります。このように、収益が上がった原因として、戻し金もありますけれども、手数料収入などの利益が非常にふえた。
 それからもう一つは、2枚目を見ていただきたいんですが、今大臣がおっしゃったように、預金者への利払いが非常に減っておりまして、大幅なダウン、もちろんゼロ金利というような状況を背景にして、普通預金の金利は0.001%、これも大変な、底をはうような状況で、まさに預金者の犠牲のもとで、全体として国民負担のもとで利益が上がっているのではないかというふうに思うわけです。
 そこで、問題は、この金融庁の指導内容です。
 金融庁は、収益が上がらないのは問題だということで、平成15年3月期の収益目標と実績が乖離しているという理由で、例えば、みずほフィナンシャルグループ、UFJホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、三井トラスト・ホールディングス、住友信託、こういうところに行政処分まで行って、業務改善命令を出している。
 したがって、低金利の中で本来の業務で利益が上がらない状況の中で、ともかく利益を上げろとしりをたたくわけですから、当然、役務収益といいますか、手数料収益その他のところで何とかこれを伸ばさなければならないという事態が発生した、そういうことではないかと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょう。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) いわゆる公的資金注入行に対しましては、公的資金を投入したということにかんがみまして、その確実な返済ということに向けて、各銀行が収益をきちんと上げていくということも重要なチェック項目の一つでございます。また、この経営健全化計画の中では、例えば中小企業向け貸し出しが伸びていないといったことで処分をしたケースもあるわけでございますけれども、いずれにせよ、そういった公的資金を注入しているということにかんがみて収益の状況をチェックする、こういう枠組みであるわけでございます。
 全体として、金融機関は、リスクをとって金融仲介を行い、その報酬として資金利ざやが上がってくる、これが基本でございますので、そういうところで収益が上がってくるということが本来の姿であることはもちろんであろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 その本来の姿がそうなっておらない中で収益を上げろという指導が行われて、その結果、行き過ぎると、三井住友銀行のように、優越的地位の濫用で金融商品を押しつけるという形で法違反まで発生する。
 先日、17年10月以降18年3月までの預金、融資等に関する相談等の受け付け件数、4727件ということで報告がありました。その中で、銀行の優越的地位を利用して行った金融商品の販売に関する情報提供件数、これは何件あるか、それから業態別の内訳、これを示していただきたい。
○中江政府参考人(金融庁総務企画局総括審議官) お答えいたします。
 今委員御指摘の、昨年10月以降本年3月までの間に、預金、融資等に関する相談といたしまして4727件受け付けておりますが、このうち、委員御質問の、銀行の優越的地位の濫用に当たるものとして利用者から申し出を受けているものは、66件となっております。
 これを業態別に見ますと、この66件のうち、主要行が50件、地域銀行が4件、その他の銀行が2件、協同組織金融機関が4件、金融機関名が提示されていないものが6件となっております。
○佐々木(憲)委員 圧倒的多数が、主要行がこのような優越的地位の濫用を行っていたと。私は、この66件というのは、実態はもっと多いと思いますけれども、ともかく、そのうちの50件、これは主要行だ、大手銀行だと。
 そうすると、この前処分を受けた三井住友銀行というのはこの中の一部だと思うんですが、三井住友以外にも、こういう優越的地位の濫用を行った銀行というのはあるはずなんですね。それは一体どうなっているんですか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 他の銀行ももちろん含まれておりますけれども、個別の引用は控えさせていただきたいと思います。
 私ども、この利用者相談室に入ってきます利用者からの苦情等は、非常に貴重な情報であると思っております。例えば、特定の銀行に関して苦情が集中している、こういった場合には、そういった銀行に対して優先的に検証をしていく、こういった対応で臨んでおります。
○佐々木(憲)委員 他の銀行もあるというわけですね。それなのに、三井住友銀行だけが行政処分を受けた。なぜ、ほかの銀行は優越的地位の濫用に当たらないという判断をしたのでしょうか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 三井住友の場合には、公正取引委員会の処分ということと、それから、この利用者相談室に寄せられました情報というのを、いわば合わせわざで確認したということでございます。
 この利用者相談室に入ってまいります情報というのは、それだけでは直ちに行政処分の根拠とはなりにくいわけでございまして、例えば、具体的な問題があれば、それを銀行に対してヒアリング等をして確認する、さらに、重大な問題があるという場合であれば、より強い権限を行使して事実確認を行う、そういった事実認識に基づいて処分を行うということでございます。
 それで、三井住友以外の銀行への対応というお尋ねでございますので、これはことしの1月5日でございますけれども、私どもからすべての預金取扱金融機関に対しまして、「取引等の適切性確保への取組みについて」、こういう文書を発出いたしまして、要請を行っております。その中で、体制面の検証、それから問題の是正を行う、これは優越的地位の濫用に関してでございますけれども、こういったことを促すということと、あわせて、金融庁としては、各金融機関がみずからこうした取り組みを行ったことを前提として、通常の検査監督のサイクルの中で対応していくという、このことも明確に銀行に伝達をしたところでございます。
 いずれにいたしましても、利用者相談室に寄せられた情報というのは、内容をきちんと分析し、事実関係を確認して、通常の検査監督の中で検証していく、こういう流れの中で活用をさせていただいているということでございます。
○佐々木(憲)委員 次に、中小企業に対する融資の問題についてお伺いしたいと思うんですが、配付いたしました資料の3枚目を見ていただきたいんですけれども、これは全国、国内銀行の統計ですが、中小企業に対する融資というのはピーク時に比べて96兆円減少しているんです。100兆円近い大変な減り方です。大企業に対しては30兆円の減少ということですが、大企業は資金調達の方法がいろいろありますから、そういう点でいいますと、この中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしというものがこの間問題になってきましたが、これは大変大きなものがあったというふうに思います。
 銀行の側に言わせると資金需要がないんだと言うんですが、実際は、優良な顧客に対してはもう集中して奪い合うような状況がある。しかし、本当に融資が必要なところにはなかなか貸してくれない。まさにそういう状況が生まれているわけであります。
 大臣が記者会見で、リスクをとって本来の銀行の役割を果たすべきだというふうにおっしゃいましたが、これは現在の銀行の実態というものなんですね。本来の役割からいうとまだ十分な役割を果たしていないと私は思います。
 大臣はどのようにお感じでしょうか。
○与謝野金融担当大臣 バブルがはじけた以降、銀行は非常に萎縮をすると申しますか、とにかく自分の庭先だけはきれいにしようということがその優先事項ではなかったかというふうに思うこともありまして、そういう意味では、銀行は、本当にリスクをとって金融仲介を行うという、本来銀行がなすべき仕事をなせるように、経営状態も健全にしなければならないし、経営姿勢もまたそうあってほしいと私は思っております。
○佐々木(憲)委員 もう一つは税金なんです。法人税ですね。これはほとんど払っていない、ゼロであるという指摘があります。利益が史上最高という状況の中で、何で法人税がゼロなんですか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 18年3月期の主要行における納税額、法人税は、御指摘のとおり発生しておりません。これは、過年度における赤字決算や不良債権処理等によりまして、税務上の繰越欠損金の残高が積み上がっているということで、この18年3月期において課税所得が発生していないということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、このような仕組みをつくったこと自体に私は問題があったというふうに思いますけれども、国民全体から見ますと非常に不思議な現象なんですよ。史上空前の利益がこんなに上がっている。引当金として積み増し過ぎていたのが戻ってきた、いわば利益を積み上げておいて損金として処理していたものが戻ってきた、それがあって莫大な利益が出ている、同時に、手数料その他でたくさんの利益が上がってきている、そういう状況で史上空前の利益になっているわけです。
 法人税を一円も払わない、これはちょっと、大臣、もちろん仕組みはそうだと言われればそうかもしれないが、国民から見たら、自分たちの税金はあの大変なときに銀行にどんどんと注入した、まだ全部返ってきていない、銀行は利益はばんばん上がっているけれども税金は払わない、果たしてこれで本来の銀行のあり方として正常なんだろうかと思うのは普通だと思うんですが、どのようにお感じですか。
○与謝野金融担当大臣 法人税のうち、外形標準課税は外形標準でかけるわけですけれども、先生が今言及された法人税は利益にかけるものですから、税法上利益が上がらないものから税を取るというのは多分無理だろうと思っております。
 かてて加えて、何か損金で処理したというふうに表現されましたけれども、実際は、なかなかストレートの損金処理はできなくて、無税償却ができなくて、有税で引き当てているという場合が非常に多いわけでございます。
○佐々木(憲)委員 もちろん、過去、引き当てる場合、有税引き当てというのをやっているというのは知っておりますが、いずれにしましても、これだけ史上空前の利益が上がるような状況が生まれ、一方ではそれを先走って法令違反まで犯すような金融商品の販売もやる、それから、例えばサラ金と提携して大変な高利を消費者金融で上げている、あるいは、本来銀行が果たさなければならないさまざまな例えばサービスの提供、銀行の支店そのものも今どんどん減っているわけですね、目の前から銀行が消えていく、そういう状況が続いているわけです。
 半人前と大臣はおっしゃいましたが、本来、一人前の銀行というのはどういう銀行なのか。これは当然公共的性格をしっかりと果たす銀行でなければならないと私は思うんです。本来的な業務であるところの融資、しかもそれはリスクをとった融資を、特に中小企業や地域経済にしっかりと提供できるような、そういう銀行でなければならないと思うんですね。しかも、これだけたくさんの利益が上がっているんですから、先ほども少し議論がありましたが、預金者に対して預金金利を上げることによって還元をする、それから、さまざまな新しい金融商品を無理やり販売するなんということは慎んでいく、こういう方向を今後追求していくということが大事だと思います。
 今まで、不良債権処理という名目がありまして、利益を上げろ上げろと言ってきた。しかし、今後は、今こういう地点に立って、新しく、やはり銀行に対する政策、方針、指導というものは転換をしていかなきゃならぬというふうに思いますが、最後に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○与謝野金融担当大臣 日本の金融機関、大手行含めあらゆる金融機関が、やはり経営内容も経営姿勢も健全になってほしいと思う気持ちは、多分佐々木先生と私は一緒だと思っております。
 かてて加えまして、やはり金融仲介をするという社会的責任があると思っておりまして、それはやはり自分の担えるリスクはちゃんと背負って立つ、そういう気概がやはり金融機関にも求められているんだろう。自分の庭先だけお掃除してそれで済む、そういう姿勢ではやはり国民的な評価は受けないんだろうというふうに私は思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので終わります。

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