税制(庶民増税・徴税), 景気回復 (消費税, 社会保障・税一体改革)
2013年03月14日 第183回 通常国会 本会議 【710】 - 質問
所得税法審議入り「賃上げし負担増の中止を」
2013年3月14日、佐々木憲昭議員は、国税法案について代表質問に立ちました。
佐々木議員は、デフレ不況打開のため「政府がなすべきは、賃金を引き上げ、社会保障負担を大幅に軽減し、消費税増税を中止することだ」とのべ、家計を直接あたためる政策への転換を求めました。
佐々木議員は、昨年11月に自公民3党が密室談合で、向こう3年間、特例公債を自由に発行できる公債特例法を成立させたこと、予算の単年度主義を定めた憲法ならびに財政法に違反するものだと批判。戦費調達のため大量に国債発行して国家財政と国民生活を破たんさせた教訓に背くとのべました。
来年4月からの消費税増税と医療、介護などの社会保障負担増は合わせて20兆円にものぼり、家計消費に重大な打撃を与え、内需を冷やすものだと強調。消費税増税逃れのため、親会社は下請け業者に単価の引き下げを強制する一方、多くの中小業者は身銭を切るか廃業に追い込まれていると述べ、「消費税大増税をやめ、免税点を引き上げ、簡易課税制度を拡充せよ」と迫りました。
佐々木議員は、安倍内閣が2%の物価上昇達成を口実に、際限のない金融緩和と不用・不急の大型公共事業を拡大していることについて「GDPの60%を占める家計を冷やしながら、いくら公共事業を増やしても景気対策として効果がない」と批判。国債を日銀が大量に引き受けざるを得なくなり「不況下での物価上昇、スダクフレーションへの道だ」と批判。「政策を抜本的に見直し、大胆な家計支援策を実行すべきだ」と述べました。
安倍総理は、大型公共事業の大盤振る舞いをしながら「消費税は社会保障につかう」などと破たんした主張を繰り返し、国民生活を脅かす物価高騰の危険性についても「ハイパーインフレーションを引き起こした国はない」と開き直りました。
議事録
○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、国税法案について質問します。(拍手)
本来なら、きょうは、税法とともに公債特例法案の審議がなされているはずであります。しかし、昨年秋、民自公三党合意によって、3年間、特例公債を自由に発行できるようにしたため、この国会では国税法案のみが議題となっているわけであります。これは極めて異常です。
憲法83条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定め、86条は、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」と、予算の単年度主義を規定しているのであります。
その上で、財政法第四条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」としております。
この規定は、過去の戦争で、戦費調達のために大量に国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験を踏まえ、定められたものであります。
総理は、この歴史の教訓をどのように受けとめていますか。特例公債発行自由化法は、憲法並びに財政法第四条に真っ向から違反するものではありませんか。
次に、消費税についてです。
三党合意に基づいて、消費税は、来年4月から二段階で10%まで引き上げられようとしております。増税分だけで13・5兆円。実に、法人税収の1・6倍もの増税が実施されるのであります。戦後、これほどの大増税が実施されたことがあったでしょうか。
さらに、年金、医療、介護など社会保障の負担増も合わせると、20兆円に及ぶのであります。これは、GDP、国内総生産の6割を占める家計消費に重大な打撃となることは明らかではありませんか。
この大増税は内需を冷やす要因になる、そういう認識はありますか。
多くの中小業者は、消費税を価格に転嫁できず、身銭を切って納めるか、滞納せざるを得なくなり、倒産や廃業に追い込まれております。
親会社が、消費税の転嫁を免れるため、下請業者に製品単価の引き下げを強制しております。政府は、踏み込んだ転嫁対策をとるといいますが、親会社が、消費税を負担する形をとりながら、製品単価の不当な引き下げで巧妙に転嫁逃れをする、この手口をどのように見分けるつもりでしょうか。
また、小売業者の場合は、大手企業と競争すれば、転嫁どころか、身銭を切るしかないのが現実であります。
その解決策はあるのか。それは、消費税大増税をやめ、免税点を前に戻し、簡易課税制度を拡充することであります。お答えください。
安倍内閣が、このまま国民負担をふやし、可処分所得を減らし続けるなら、内需を一層低迷させます。そのため、2%の物価上昇達成を理由に、金融緩和とともに、不要不急の大型公共事業をますます拡大せざるを得なくなるのではありませんか。
公共投資がGDPに占める比率は、わずか4%にすぎません。約60%を占める家計を冷やしながら、幾ら公共事業をふやしても、景気対策としては効果がありません。
この路線を切りかえない限り、政府は、ますます大規模な公共事業の拡大に走り、多額の国債を発行することになります。膨れ上がった国債を市中消化できなければ、事実上、日銀が大量に引き受けざるを得ません。結局は、財政規律を失い、過剰な通貨供給を招くのであります。
このままでいけば、通貨価値の下落に伴うインフレーションを呼び込むことになるのではありませんか。これは、不況下での物価上昇、すなわちスタグフレーションへの道であります。この道は絶対に歩んではなりません。
今、政府がなすべきは、家計を直接温める政策への転換であります。賃金を大幅に引き上げ、年金、医療、介護などの社会保障負担を大幅に軽減し、消費税増税を中止することであります。
政策を根本的に見直し、大胆な家計支援策を実施するよう改めて求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。
公債発行と予算の単年度主義についてのお尋ねがありました。
戦前戦中における巨額の公債発行への反省も踏まえれば、歯どめのない借金財政は厳に避けるべきであり、今後、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めてまいります。
また、憲法が定める財政民主主義や予算単年度主義の原則のもとで、予算については、毎年度国会で御審議いただき、また特例公債も、従来同様、毎年度、発行限度額を予算総則に規定し、国会で御審議いただくこととされており、政府としては、引き続き、予算審議において丁寧な説明を行ってまいります。
消費税による負担増と経済の関係についてのお尋ねがありました。
今般の一体改革による消費税率引き上げは、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認維持のために行うものであり、御指摘のように、消費税率引き上げ分は13・5兆円を見込んでおりますが、その額は、全額社会保障財源化され、国民に還元される点も考慮する必要があり、負担増のみに着目することはいかがかと思います。
また、法律で来年4月に引き上げることが決まっておりますが、機械的に何が何でも引き上げるということではなく、一体改革の目的に沿って、税収を確保できることが重要と考えています。
本年秋に、附則第18条にのっとって、名目及び実質の経済成長率等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案して判断をしていくことになります。
いずれにしても、三本の矢で、長引くデフレから脱却をし、雇用や所得の増加を伴う経済成長を目指してまいります。
消費税の転嫁対策等についてお尋ねがありました。
消費税の円滑かつ適正な転嫁に支障が生じないよう、是正、監視、取り締まりに必要な体制を整備する等、強力かつ実効性のある転嫁対策に取り組んでまいります。
今般の消費税率の引き上げは、増大する社会保障の持続性と安心の確保、国の信認維持のために行うものです。
免税点制度や簡易課税制度については、課税の適正化の観点から累次の改正が行われてきたところでありますが、今般の改革においては、中小事業者の事務負担にも配慮し、これらの制度を維持することとされております。御理解をいただきたいと思います。
2%の物価安定目標達成や、公共投資を含めた今後のマクロ経済財政運営の方向性についてお尋ねがありました。
三本の矢を同時に射込むことにより、内需低迷を回避し、デフレ脱却と、雇用や所得の増加を伴う景気回復を実現します。
デフレは、さまざまな原因があるものの、基本的に貨幣現象であり、日本銀行が、2%の物価安定目標を、責任を持ってできるだけ早期に実現することを期待しています。
また、24年度補正予算においては、景気の底割れを回避し、経済の先行き懸念に対して強力なてこ入れを行う観点から、大型の補正予算を措置し、この中で、真に必要な公共事業を盛り込んだところでありますが、25年度予算については、財政健全化目標を踏まえ、公債発行をできる限り抑制いたしました。
いつまでも財政出動を続けることはできないため、今後、成長戦略を矢継ぎ早に実行し、民需主導の持続的な経済成長を実現していくとともに、経済財政諮問会議において、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について検討を進めることとしております。
なお、インフレ目標を設定するということは、物価上昇が目標を大きく超える場合には、引き締めにより、適切にコントロールをしていくということであります。
現に、インフレ目標を設定した国が、例えばこの10年間にハイパーインフレーションに陥ったような例は把握しておりません。ハイパーインフレーションは、戦後の我が国やドイツで生産機能が失われた状況において起きたように、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済財政状況において直ちに発生することは、まずないと考えております。
以上であります。(拍手)