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税制(庶民増税・徴税) (消費税, 大企業減税)

2011年11月07日 第179回 臨時国会 本会議 【636】 - 質問

個人・中小に重い復興増税 大企業の「負担軽減」批判

 2011年11月7日、佐々木憲昭議員は、本会議で代表質問にたち、復興財源確保法案に対し、「個人には『重い負担』、大企業には『負担軽減』だ」と批判しました。

 佐々木議員は、政府案は個人や中小企業に8.8兆円の大増税を押し付ける一方、大企業には法人税を恒久的に5%減税した上で3年間に限り付加税を課すと指摘。約260兆円にも膨れ上がった大企業の内部留保を復興財源に活用させるよう求めました。
 この間、法人税減税をしても内部留保などが増やされ、逆に給与総額は引き下げられてきたと指摘。企業の海外進出もどんどん進んだのが現実であり、「法人税減税は合理的根拠がない」とただしました。

 また佐々木議員は、野田佳彦総理が主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、閣議決定もしていない消費税率引き上げを「国際公約」したことを追及。2012年3月までに消費税増税法案を提出し成立させるとした09年度税制改正法付則104条についても、「修正するのが筋だ」(藤井裕久元財務大臣)と答えていたことを示し、「公約違反であり、国民への背信行為だ」と批判しました。
 野田総理は法人税減税について「企業の競争力の強化に資する」と合理化し、消費税増税についても「社会保障と税の一体改革は先送りできない」と固執する姿勢を示し答弁しました。

 佐々木議員は、法人税減税や証券優遇税制の延長をやめ、米軍への「思いやり予算」や米軍基地関連予算、政党助成金の廃止などをすれば、庶民増税なしに15年間で25兆円を超える財源が確保できると強調しました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、復興財源確保法等三法案について質問します。(拍手)
 政府は、復興のため連帯して負担を分かち合うと述べていますが、実際に提案された法案の内容を見ると、全く違うものになっております。
 政府提案の復興財源スキームでは、今後、個人や中小企業に対して8・8兆円の増税を押しつけるものとなっています。ところが、大企業はどうか。まず、実質5%の法人税の減税を恒久的に行い、初めの3年に限ってわずかな付加税を課すだけであります。この3年間を取り出しても、今と比べて実質的な負担はないのではありませんか。大企業に負担は一切なく、減税が続くだけであります。
 これでは、連帯して負担を分かち合うと言いながら、個人には重い負担、大企業には負担の軽減ということになってしまうではありませんか。
 しかも、重大なのは、一人一人の被災者にきちんと財政措置が行われるのかという問題です。
 支援制度から漏れた防災集団移転の移転先の住宅建築、液状化や地盤沈下の被害を受けた宅地の復旧、事業所や店舗の再建などは、今切実に求められているのであります。
 ところが、政府は、個人の資産形成に関する負担軽減は慎重な検討が必要とする冷たい対応を行い、これらは個人責任とされているのであります。これで、どうして被災地の復旧復興ができるのでしょうか。被災者には復興増税の負担だけが押しつけられ、これらの分野で国の支援を受けられないなどということは、絶対にあってはなりません。
 総理、被災者個人への直接支援をきちんとやると約束していただきたい。明確な答弁を求めます。
 資本金10億円以上の大企業は、リーマン・ショック後も内部留保をふやし続け、今では約260兆円に達しているのであります。労働者の賃金を抑え、下請単価を買いたたき、減税や補助金の恩恵を受け、利益を蓄積してきたからであります。この上、野田内閣で法人税減税が実施されれば、この内部留保はますます膨れ上がってしまうではありませんか。
 大企業は、国から至れり尽くせりの恩恵を受け、積み上がった内部留保をもてあましているのであります。この使い道のない内部留保を、被災者のため、復興財源として有効に活用するのは当たり前ではありませんか。
 総理は、法人税減税は産業空洞化防止のためだと答弁をいたしました。しかし、日本の製造業が海外に進出する理由は何でしょうか。政府の調査でも、一番大きな理由は現地需要への対応、その次は人件費の低さであります。税金が高いという理由はほとんどありません。
 したがって、進出先に現地需要があり、低い賃金がある限り、法人税を幾ら引き下げても、海外進出に歯どめをかける対策にはなりません。実際に、この間、法人税は42%から30%まで減税を繰り返してきましたが、海外進出はますます進んでいるのではありませんか。
 財界、大企業は、利潤を求めて海外進出を続けながら、その理由を法人税にあるとすりかえ、あわよくば、さらに大きな減税を手にしようとしているのであります。国を捨てて世界に進出し、巨大な利潤を求めてグローバルに活動する多国籍企業に、なぜ、被災した国民が汗水流して納めた血税を渡さなければならないのでしょうか。
 昨年11月、国内投資促進円卓会議で、経団連の副会長は、減税分は国内における投資の拡大、雇用創出につなげていく決意、こう発言し、5年後に84兆円、10年後に104兆円と国内投資を拡大すると、大ぶろしきを広げました。こんな口先だけの約束で、当時の菅総理は、すばらしい提案をいただいたと大喜びし、法人税率の引き下げを決意したと言われています。
 しかし、法人税減税で生まれる利益はどこに行くのでしょうか。財務省の法人企業統計によれば、大企業においてふえた利益のほとんどが、内部留保、配当、役員給与にばかり分配され、労働者の賃上げには全く使われず、逆に給与総額は引き下げられてきたのであります。
 大企業への法人税減税に合理的根拠がないことは、もはや、どこから見ても明らかではありませんか。
 次に、消費税についてお聞きします。
 野田総理は、今回のG20で、今年度中に消費税増税法案を提出し、2010年代半ばまでに消費税率を5%引き上げ10%にする方針を明らかにしました。閣議決定もされていない方針を、なぜ国際公約したのでしょうか。
 消費税増税を盛り込んだ6月末の社会保障・税一体改革の成案は、閣議決定されず、閣議報告という扱いになっていたのであります。
 自見金融担当大臣は、財務金融委員会で、私の質問にこう答えました。政府・与党社会保障改革検討本部において、消費税増税に我が党の幹事長、政調会長が反対をいたしました、わざわざ閣議報告事項にしたということ、きちんと国民新党の主張を御理解いただいて御配慮いただいたと答弁しております。つまり、国民新党が同意しなかったから、消費税増税の方針は、正式に閣議決定できなかったのであります。
 自見大臣にお聞きをいたします。
 今後、消費税増税法案が閣議決定されようとしたとき、国民新党は、それに賛成するのか、それとも反対するのか。反対なら、自見大臣はどのように身を処するつもりであるのか、お答えをいただきたい。
 野田総理は、閣内で反対が出ても消費税増税法案を強行するつもりでしょうか。答弁を求めます。
 もともと民主党は、政権を担当する4年間は消費税は上げない、仮に引き上げる場合には総選挙で国民の信を問うと約束していたのではありませんか。
 一昨年秋、当時の藤井財務大臣は、私の質問に対して、2012年3月までに消費税増税法案を提出して成立させるとした平成21年度税制改正法附則104条は修正するのが筋だと答弁をされていたのであります。
 財務大臣、この事実は確認できますね。
 ところが、その後、修正の必要はないという態度に変わり、さらに、消費税増税法案を強行するという方針へ大転換が行われたのであります。
 野田総理は、この方針転換の事実を認めますか。これは、明白な公約違反であり、国民への背信行為ではありませんか。
 政府の家計調査を見ても、この10年間、夫婦高齢者世帯の年金給付が大幅に減っております。その反面、保健医療、介護保険、所得税、住民税、これらの負担は大きくふえております。貯蓄を取り崩して生活しているけれども、その貯蓄も底をつくような状態になっている。これが高齢者世帯の実態であります。
 消費税増税は、年に12兆円もの過酷な庶民増税であります。復興増税と合わせると、家計と内需への打撃ははかり知れず、被災地の復興と日本経済の再建に冷水を浴びせることになります。被災者、高齢者の中から、これ以上増税されたら生活できないと、悲鳴が上がっております。
 野田総理は、この切実な声をどのように受けとめているのでしょうか。
 日本共産党は、地震・津波災害の復興財源と原発災害対策財源は、分けて考え、それぞれ別途確保する具体的な提案をしております。
 復興財源としては、米軍への思いやり予算や米軍基地関連予算、政党助成金を廃止するだけで、15年間に5兆円の財源を確保できるのであります。また、法人税減税と証券優遇税制の延長をやめれば、年間1・7兆円、15年で25兆円を超える財源が生まれるのであります。これらを実行すれば、庶民増税なしに復興財源を確保することは十分に可能であります。
 このことを強調して、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党の佐々木議員の御質問に順次お答えをしてまいります。
 まず、復旧復興のための税制措置についてのお尋ねをいただきました。
 復旧復興のための時限的な税制措置については、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うことを基本とし、個人にも企業にも過大な負担とならないよう配慮した上で、時限的に一定の御負担をお願いするものであります。
 所得税付加税については、個人の所得や各種の軽減措置など、個々の納税者の事情を反映した結果である所得税額に対して一定の付加税を課すものであり、所得の低い層には、課税されないか、負担が軽くなるような仕組みとなっております。
 法人税については、産業空洞化防止等により雇用を確保する観点から、平成23年度税制改正における実効税率の引き下げと課税ベースの拡大を実施した上で時限的に付加税を課すことにより、企業の予測可能性を担保することとしております。これにより、3年間で約2・4兆円の御負担をいただくこととしております。
 国による直接支援についての御質問をいただきました。
 被災地の復旧復興に向け、被災者の負担の軽減は重要な課題であると十分認識をしております。
 このため、第三次補正予算案に、防災集団移転の移転先の住宅建築に関して借入金の利子相当額の補助の限度額の引き上げや、液状化被害に対して官民一体となって地盤改良を行う液状化対策推進事業の創設を盛り込んでおります。
 また、事業所や店舗の再建については、既に、中小企業を対象として、仮設工場、仮設店舗を原則無料で貸し出しするとともに、地域経済の中核となる中小企業グループの施設等の復旧補助を行っているところであります。
 こうしたさまざまな工夫により、被災者の負担低減に努めてまいります。
 企業の内部留保についての御質問をいただきました。
 継続審議中の平成23年度税制改正法案においては、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進する観点から、課税ベースの拡大とあわせて法人実効税率の引き下げを行うこととしておりますが、法人実効税率引き下げに伴うキャッシュフローの増加等により、設備投資や雇用の増加が期待をされます。
 なお、先ほども申し上げましたが、法人税については、復興のための財源確保の観点から、法人実効税率引き下げ及び課税ベースの拡大を実施した上で3年間の時限措置として10%の付加税を課すこととしており、これにより、3年間で約2・4兆円の復興財源を確保することとなります。
 企業の海外進出等についての御質問をいただきました。
 御指摘のとおり、産業空洞化防止の観点からは、法人実効税率引き下げのほかにも、諸外国と比較しておくれている経済連携や、電力供給制約と電力コスト上昇懸念などへの対応など、さまざまな観点からの事業環境の改善に取り組んでいく必要があるものと認識をしております。
 法人実効税率の引き下げについても、新成長戦略の一環として他の施策とあわせ講じることにより、企業の国際競争力の強化や我が国の立地環境の向上に資するものであり、デフレ脱却と雇用拡大につながるものと考えております。
 企業の利益の分配について御質問をいただきました。
 繰り返しになりますが、法人実効税率の引き下げについては、産業界も昨年行動目標を明らかにしているように、これに伴う企業のキャッシュフローの増加等による設備投資や雇用の増加を期待しているところであります。
 いずれにしても、我が国の成長を促進する観点から、法人実効税率引き下げを初めさまざまな施策を講じ、我が国の雇用や投資を促進してまいりたいと考えております。
 社会保障・税一体改革成案を国際公約とする件についてのお尋ねでございます。
 一体改革成案については、政権発足後の9月に閣議決定した基本方針においてこれを早急に具体化するとの方針を示しているところであり、また、一体改革についての私の考え方は、新内閣発足後、最初の所信表明演説やその後の国会審議において、既に申し上げているところであります。
 今般のG20で合意したカンヌ・アクションプランにおいては、従来からの方針を踏まえ、2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げることなどの方針を定めた一体改革成案を具体化し、これを実現するための所要の法律案を2011年度内に提出する旨を記載したところであります。
 消費税を含む税制抜本改革の法案についての御質問をいただきました。
 社会保障・税一体改革成案は、本年6月の政府・与党社会保障改革検討本部での決定に当たり、政府はもとより、連立与党としても、この成案をもとに各党協議を進めることについて了承が得られております。
 若い世代を含め、国民が将来に不安を持たないようにするため、社会保障のための安定財源を確保し、あわせて財政健全化を同時に達成するための社会保障と税の一体改革は、先送りできない課題であります。
 消費税を含む税制抜本改革の具体的な内容を定める法案については、社会保障・税一体改革成案に基づき、平成21年度税制改正法附則第104条に示された道筋に従って、本年度中の法案提出に向けて準備を進めてまいります。
 附則104条をめぐる政府のスタンス等についての御質問をいただきました。
 附則104条の規定は、平成23年度までに消費税を含む税制抜本改革法案を国会に提出することを政府に義務づけています。
 政府としては法律を尊重する責務を負っており、一体改革成案では、この附則104条に示された道筋に従って、本年度中に法案を提出することとしております。
 消費税の具体的な税率の引き上げ時期等については、今後、政府・与党内の議論及び与野党協議等を踏まえ、改革の具体化を図る中で決定したいと考えており、実施する前には総選挙で民意を問うべきものと考えております。
 国民負担の増加と経済への影響についてのお尋ねがございました。
 復旧復興のための時限的な税制措置については、歳出削減や税外収入をできる限り活用することで全体の負担を抑制するとともに、所得税付加税については、たばこ税や23年度税制改正を活用することでその負担を抑制しています。
 また、復興のための歳出については、短期間に集中的な投資が行われること、社会保障・税一体改革については、社会保障の安定強化と財政健全化を同時に達成することで、国民生活の安定や雇用、消費の拡大につながると考えられることなども含めて考慮をしていく必要があるものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
○財務大臣(安住淳君) 藤井財務大臣の発言について、私に質問がございました。
 一昨年11月17日の衆議院財務金融委員会において、当時の藤井財務大臣が、附則104条について、「法律である以上は、あらゆる人間がそれに従うというふうに考えておりますが、でき得れば修正をするのが筋だと思っております」と答弁したことは事実でございます。
 しかし、その後、政府・与党において社会保障と税の一体改革について検討が進められ、その議論の結果、本年6月に取りまとめられた社会保障・税一体改革成案において、平成21年度税制改正法附則104条に示された道筋に従って、平成23年度中に必要な法制上の措置を講ずるということになったということでございます。
 以上でございます。(拍手)
○金融担当大臣(自見庄三郎君) 佐々木議員にお答えをさせていただきます。
 6月末の社会保障・税一体改革成案については、安住財務大臣が、国会の場で、今後与野党協議等に入って正式に提案するときの材料とすべく、閣議決定ではなく閣議報告とした旨答弁されたというふうに承知をいたしております。
 今後、消費税増税法案が閣議決定されようとしたときの賛否については、仮定の話であり、お答えすることは適当でないというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、消費税をめぐる税制のあり方については、重要な問題であり、民意も踏まえて、多面的、多角的な検討をしていく必要があるというふうに考えております。(拍手)

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