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財政(予算・公共事業), 医療・介護・年金 (消費税)

2011年07月13日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【619】 - 質問

「社会保障・税一体改革」案では消費税は社会保障に回らないと批判

 2011年7月13日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、前日に引き続いて、社会保障・税一体改革」案について質問しました。
 この日、佐々木議員は、政府・与党が決定した社会保障・税一体「改革」案では、消費税増税だけが押しつけられ社会保障拡充にはつながらないと追及しました。

 「改革」案は、2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%に引き上げ社会保障財源にあてるとしています。
 佐々木議員は、消費税率を上げても社会保障を充実させるなら、逆進性は解消されるという政府の説明について質しました。
 野田佳彦財務大臣は、消費税率の5%引き上げのうち、社会保障に回るのは1%分(約2.5兆円)にすぎないことを認めました。
 佐々木議員は、「拡充」と言いながら、やろうとしているのは、医療費の窓口負担の引き上げ、年金支給開始年齢の先延ばし、生活保護支給水準の引き下げなど社会保障の切り捨てに成っていると指摘しました。
 そのうえで、「今回の改革で逆進性はいっそう大きくなる」と批判しました。
 また「生涯所得でみると逆進性は縮小し累進的になる」と政府が新たに持ち出した消費税増税を正当化する論点について、野田財務大臣は「学者の研究成果の紹介」とごまかしました。
 佐々木議員は、貯蓄を取り崩して消費にあてた分を「所得」から除いて試算したもので、貯蓄の多い高額所得者層ほど、消費税負担率が大きいように見せかけていると批判し、元データを提出せよと要求しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 昨日に続きまして、一体改革成案、それと消費税の増税の問題についてお聞きをしたいと思います。
 昨日は、2010年代半ばまでに段階的に10%に引き上げる、こういう点をただしました。このことに関連をして、与謝野経済財政担当大臣は、7月7日の東京都内のシンポジウムで、こういうことを言っているんですね。恐らく、2016年くらいからあと5%とか、20年くらいにはもうちょっと上げないとやっていけない、こういう発言をされています。それから日経ヴェリタス、これは7月10日付ですけれども、この中では、この成案は、このままでは財政が破綻してしまう、ようやく血どめだけはできるという段階だ、15年を過ぎれば、消費税で考えてさらに5%ないし10%の引き上げを迫られ、欧州先進国並みの税率負担に当然近づいていくと思う、今回の5%引き上げ案はほとんど予告編にすぎない、こういう発言をされていますけれども、野田大臣も同じ考えでしょうか。
○野田財務大臣 お答えをいたします。
 今回の成案の中では、佐々木委員御指摘のとおり、2010年代半ばまでに段階的に消費税率、国、地方、10%に引き上げると。その目的は、社会保障の安定財源を確保することと同時に、財政健全化の同時達成という意味であります。
 財政運営戦略は、委員も御承知のとおりでありますけれども、2015年までに基礎的財政収支を対GDP比で今の半分にして、そして、2020年まで財政運営戦略は書いておりますが、そのときには、基礎的財政収支、対GDP比黒字化をする。
 こういう流れの中で、多分、与謝野大臣の念頭にあるのは、財政運営戦略でいえば2010年代半ばまでの措置をとっているのであって、2020年までの税制の姿もまだこれから考えていかなければいけないという意味での御指摘なんだろうというふうに受けとめております。
○佐々木(憲)委員 10%に上げること自体も大問題なわけでありまして、その先、さらに5%上げる、10%上げる、こういう発言であおって増税を推し進めようという姿勢に私は重大な問題があるというふうに思っております。
 消費税の逆進性については、野田大臣はあるというふうにお考えでしょうか。
○野田財務大臣 消費税については所得が低いほど負担感が強い、いわゆる逆進性の問題点が指摘をされていることについては、これは十分に念頭に置く必要があるというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 今度の一体改革では、逆進性を是正するということに関連をして、食料品などの軽減税率の導入が検討されたようですけれども、これは有効な方策とは言えないということで、排除をされております。
 この軽減税率の導入というのは逆進性を是正するための効果はない、こういう判断に大臣も立っておられるんでしょうか。
○野田財務大臣 逆進性の本格的な対応については、いわゆる法制化をしていくときの具体的な制度設計の中でしっかり議論していきたいというふうに思いますけれども、どちらかというと、これまでの民主党の税と社会保障の調査会の中間整理であるとか、そういうものを踏まえると、軽減税率、いわゆる複数税率よりは、いわゆる給付型の、税額控除等々の方が有効であるという考え方が出ております。
 ということが基本的にはベースにあると思いますし、一般的に諸外国を見ても、軽減税率を取り入れている場合には標準税率が高目になったりする。あるいは、軽減税率と標準税率の境目をどうするかとか、これは多分相当な議論が必要だと思うんです。例えばフランスだと、キャビアとトリュフと、もう一つ高級珍味は何でしたっけ、余り食べたことがないので。例えばキャビアが標準税率でトリュフとフォアグラが軽減税率、わからないものが随分ありますね。
 だから、そういう議論は相当大変だろうということもあっての議論かとは思いますが、軽減税率を含めて、基本的に低所得者対策等々、逆進性をどうするかという議論は、これから具体的にさせていただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 今回の成案には、軽減税率を初めとして、逆進性対策というのは入っておりませんから。税を上げるだけなんですから。しかも、その先のことはこれから考えるというような、私は、最初に増税ありきで、低所得者対策というのは二の次、三の次になっている、そういうものだというふうに思うんです。
 従来、政府の説明は、社会保障に回すんだから、つまり、税収、消費税の増税分を社会保障に回すんだから、社会保障というのは低所得者に厚く回るということになるから逆進性の緩和に役立つ、全体として見ればですよ、消費税だけで見ると逆進性はあるがという説明をされてきたんです。
 例えば、この図を見ていただきたいんです。一ページの上の図は逆進性を示す図でありますが、これは、全部皆様方の検討の過程で出てきた資料であります。
 二ページ目に書いてあります図は、左側に低所得層、右側に高額所得層が入っております。そういうものですけれども、前提は、消費税1兆円の負担が行われた場合、それを社会保障に配分すると、低所得者、左側の方は、その負担率は、消費税は重いけれども、社会保障で回る分はそれ以上に大きい、こういうものを示してきたわけであります。
 これは間違いないと思うんですけれども、その上で、今回の税と社会保障一体改革案では、消費税の負担分がどのように社会保障の拡充に回るのか、これが問題になるわけであります。
 三枚目を見ていただきますと、これは今回の成案の内容を図で示しているわけですが、右側の方に消費税5%分がどのように配分されるかというのが書かれておりまして、消費税引き上げに伴う社会保障支出等の増が1%相当、機能強化が3%相当、機能維持が1%相当。機能強化の分、この中はまた三つに分かれております。制度改革に伴う増、高齢化等に伴う増、年金二分の一の分、こういうふうに書かれております。
 さて、そこで、これまでの社会保障の水準をさらに上乗せして各家庭に配分される、その部分というのはどの部分でしょうか。
○野田財務大臣 この図表でいうと、1%分ということだと思います。
○佐々木(憲)委員 その1%というのは、機能強化の一番上にある制度改革に伴う増、これだけが家計にプラスになるわけでありまして、それ以外は家計には回らないんですよ、簡単に言いますと。
 なぜならば、高齢化に伴う分というのは、回るといえば回るかもしらぬ。しかし、これは自然増の分でありまして、従来受け取っていたものを各家庭でさらにプラスになるということではないわけであります。年金について言いますと、今回ふえる部分ではなくて、これは財源の置きかえにすぎないわけであります。それから、一番上の消費税引き上げに伴う社会保障支出の増というのは、これは増税になりますから、社会保障関連の部分で消費税を払わなければならない、その負担分がこれだけあるということでありまして、家計に回るわけではない。
 したがって、この図でいきますと、5%上げて消費者からいただきますけれども、その分を家計に明確に返還、返す分、これは1%、若干あってもプラスアルファ、こういうことになると思うんですね。
 そうしますと、先ほど見た二枚目の、これは1兆円負担をして1兆円を家計に返すという前提で計算をしたものでありますが、今回の社会保障の拡充分というのはこういうふうにはならぬわけですね。したがって、消費税増税12・5兆円、社会保障の拡充に回るのは2・5兆、そうなるとこの図が変わってくるわけですね。上の方が五分の一に変わる。そうなれば、当然、低所得層は増税はされても受け取るものが少なくなる、こういうことになるんじゃありませんか。
○野田財務大臣 少なくとも、こういう改革をしないと家計における社会保障給付のいわゆる支援というのができなくなるという意味でやろうということであるということで、今、1%プラスアルファということがございましたが、ちょっと数値的に正確に押さえるのは難しい話でありますけれども、そういう意味での理念があるということを御理解いただいた上で、さっきの逆進性の話題に戻りますけれども、消費税の税率とか税額控除の問題だけじゃなくて、今回の成案の中では、社会保障の機能強化として低所得者対策も入っているわけでございます。ということは、そういうことも総合的に判断しながらの逆進性の議論をすべきではないかなというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 それでは、この二枚目の図にありますような、今回の増税分のうち家計に回るのはこれだけだ、その差し引きがどうなるかという結果を後で示していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○野田財務大臣 努めたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 今回のこの成案の社会保障の拡充という点を盛んに強調されますけれども、例えば、こういう内容がいろいろ盛り込まれております。例えば、医療費の窓口負担の引き上げ、年金の支給開始年齢の先延ばし、生活保護支給水準の引き下げ。これは、社会保障の拡充ではなくて、社会保障の引き下げなんですよ。私は、こんなことをやると、ますます逆進性が一層大きくなると思うんです。
 少し振り返ってみましても、これまで自民党政権のもとで大変な改悪が行われてまいりまして、医療負担は、本人負担が1割だったのが今や3割ですし、老人医療の自己負担は、外来月400円が今は毎回1割または3割取られる。国民年金の保険料の負担も、7700円だった、それが1万5100円、さらに上がる。厚生年金の支給開始年齢も60歳から65歳におくらせてきております。介護保険の導入で、保険料の徴収が今までなかった人たちが、全国平均でさらに4300円取られる。これはその時点の少し前の数字ですけれども。それから、障害者自立支援法の問題で定率1割の応益負担、後期高齢者医療制度。挙げればもうこんな山のように、庶民負担、低所得者に対する負担というのが行われてきたんですよ。
 それで、民主党政権は、この国民の怒りに乗って、これはもう今までの政権を変えなきゃいかぬ、政治を変えるんだということで政権交代をしたんだけれども、何も直さない。直さないばかりか、消費税の増税はやるわ、社会保障もまともな拡充をやらない。これでは、今回の一体改革というものが国民の役に立つかというと、私は全く逆だというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。
 それで、もう一つお聞きしたいんですけれども、生涯所得で見ると逆進性はなくなるという議論が今回の一体改革の中で行われております。これはどうもわけがわからぬ議論でありまして、お配りした資料の一枚目の下の方に載せてありますけれども、集中検討会議に配付された資料で、生涯所得で消費税の生涯負担を割りますと累進性になると。
 所得税なら累進性というのはわかりますよ。しかし、消費税で計算すると何で累進的になるのか。理由がよくわからない。その理由を説明していただきたいと思います。
○野田財務大臣 これは内閣府が取りまとめたリサーチペーパーでございまして、消費税のいわゆる逆進性を考えるに当たって、ある一時点の所得だけではなくて、生涯所得と消費税負担といった視点からの分析も踏まえる必要があるとの観点から、海外であるとか我が国のこれまでの研究における生涯所得で見た逆進性の計測の例を紹介しているということでございます。
 例でありますので、個々の研究についてコメントをするということは差し控えたいと思いますけれども、内閣府のこのリサーチペーパーでは、生涯所得で見ると一時点の所得で見るよりも逆進性が小さくなる、生涯所得で見ると高所得者層の方がより大きな負担をしている、対生涯所得で見ても、消費税は依然逆進性を持つが、生涯所得で見た方が逆進性はやや緩和されている、そういう研究の紹介をしているということでございます。
 これについての評価はいろいろあるかと思います。
○佐々木(憲)委員 研究の成果をここで紹介するという場合は、その研究がどういう根拠に基づいてそのような結論になったのか、そのはっきりした理由を理解した上でやらないと、もうあちこちから研究を持ってきて都合のいいものを載せておくと。
 こんな累進性なんていうのは絶対にあり得ない。何でか。ここにはからくりがあるからですよ。この論文、私は、この人が書いた「論座」2005年12月号を見ました。そうしますと、例えば、現役のときの年収が500万の方は、消費税の支出が19万、したがって負担率は3・8%。70歳になると、年金所得が200万円だから、消費税は19万円だと9・5%の負担率だ、こういうふうにされているわけです。
 しかし、ここで貯蓄がどう扱われているか、これが問題なんです。つまり、貯蓄は、過去の所得で、それをためたものですよね。それを計算から外しているんですよ、これは。つまり、生涯所得で見ますと、貯蓄の多い人は、多ければ多いほど負担率は高くなるんですよ。なぜならば、それは貯蓄を取り崩す分を外していますから。年金生活になって、貯蓄を大量に取り崩して消費をする。そういう人は、貯蓄は計算に入れませんので、年金しか計算に入れませんから、当然高くなるんですよ。
 こんなでたらめなものを、ある学者がやったということで、これはおもしろい、今までの逆進性を全部否定するものであるなんといって載せること自体が、良識を疑われますよ。
 貯蓄についてどういう扱いになっているか、はっきりさせてください。
○野田財務大臣 私は、出てきたリサーチペーパーしか見ていませんので、その「論座」を読んでいませんので、後でよく拝見させていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 貯蓄について、では、後で資料で、この一ページ目の下に載せてあります図の背後にある計算、貯蓄の扱い、この統計をぜひ示していただきたいというふうに思います。それは確認していただけますか。
○野田財務大臣 リサーチペーパーを取りまとめるに当たって、内閣府が責任を持ってやったと思いますので、今の御指摘を踏まえた対応をさせていただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 ですから、今回、成案というのが出されましたけれども、増税だけがどんどん先走って、増税といっても消費税の増税ですよ。これはもう庶民にとっては耐えがたい事態になっているわけです。
 その上で、社会保障の配分は、5%のうちの1%分しか配分しないんだ。これは逆進性の解消にならない。逆に、社会保障の改悪まで入っているとすると、これは余りにも庶民の感情を逆なでするものであり、暮らしを破壊するものであると言わざるを得ないというふうに思いますので、消費税増税には絶対に反対である、財源はほかから持ってくるべきだ、このことを言って、きょうは終わりたいと思います。

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