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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 不良債権処理)

2011年04月20日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【602】 - 質問

住専債権の最終処理策を盛り込んだ預金保険法案について質問

 特定住宅金融専門会社(住専)は2011年12月に最終処理の時期を迎えます。最終処理策を盛り込んだ預金保険法「改正」案はこの処理方法を定めるもの。整理回収機構の住専処理とは関係のない回収益や本来預金者保護のために設けられた預金保険料を、二次損失の負担の穴埋めに利用する仕組みになっています。

 2011年4月20日の財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は質疑に立ちました。
 佐々木議員はこの法案が「(大手行である)母体行の責任を棚上げし、二次損失の負担を軽減させるものだ」と指摘。「母体行を中心に出資した金融安定化拠出基金が負担を負うのが当然だ」と主張しました。
 さらに、この法案が整理回収機構に、民間金融機関が保有する暴力団などの反社会的組織のかかわる債権の買い取りや回収機能を与えていることをあげ、「民間金融機関の責任をあいまいにさせる」と指摘。「金融機関が厳格な対応をするために、融資した金融機関が最終的に責任を負うべきだ」と主張しました。

 この日の委員会では、採決に先立ち討論が行われ、佐々木議員は反対討論に立ちました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回提案されている法案は、破綻した特定住宅金融専門会社、いわゆる住専の債権について、二次損失と残存債権の処理方法、これを確定しようというものでございます。
 そこで、まず初めに、住専が破綻した原因はどこにあったのか、政府の見解を確認しておきたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員にお答えさせていただきます。
 住専、住宅金融専門会社は、私は、今さっきも申し上げましたように、もともとは、個人向けの住宅ローンのために金融機関等の共同出資により設立されたものでございますが、しかし、いわゆるバブル経済の中で、銀行や農協系統の融資を受けて、不動産事業向けに急速に融資を拡大していって、その後のバブル経済の崩壊とともに、不動産市況の低迷によって、不動産業者等の経営悪化に伴い、もう御存じのように、巨額の不良債権を抱えるに至ったというふうに承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 バブル崩壊のもとで、1994年から95年にかけまして土地住宅価格が急落をした。そして、住専の損失総額が6兆円以上に膨らんだわけであります。政府は、この住専と密接な関係にあった母体行であります大手銀行、あるいは地銀、農林系金融機関に債権放棄を求めた。しかし、損失を埋め切れない、こういう理由で、6850億円、公的資金を投入することを決めたわけです。
 それまで政府は、金融機関の破綻処理については銀行業界の自己責任で対応することを原則とする、そういう方針でありました。ところが、この住専処理の方針はこれとは全く違うものでありました。そこで、国民は、おかしいじゃないか、こういう声を上げたわけです。銀行の乱脈経営のしりぬぐいをなぜ一般の国民にさせるんだ、こういうことであります。
 私どもは、住専を実質的に支配している大手銀行、つまり母体行の責任をあいまいにして、乱脈経営のツケを国民に回すのはおかしい、そういう主張をしたわけであります。この税金投入に反対をしまして、最後まで我々は、母体行の責任によって解決すべきだ、こういうふうに主張してまいりました。
 公的資金投入の際に、それを執行管理する役割を担わされてきたのが預金保険機構です。預金保険法が成立したのが1971年の4月、預金保険機構の本来の目的というのは一般大衆預金の保護、これでありました。
 改めてお聞きしますけれども、最終処理においても、経営責任のある母体行に負担能力があるなら、その責任で処理をするというのが当然ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○和田内閣府大臣政務官 佐々木委員、今るる御指摘いただいたように、もともとは、こういった債権債務関係の処理につきましては、自己責任の原則というのは本来貫かれてしかるべきだというふうに私どもも考えております。
 しかし、今回、この住専問題の処理を平成8年当時に考える際には、その規模もかなりになりましたし、諸々の影響、余波を考えてみますと、これが日本全体の金融システムの安定性を脅かすのではないか、そしてまた、内外からの我が国の金融機関全体の信頼性を損ねるのではないか、こういった懸念を生じる事態だというふうに判断したものですから、これを一刻も早く、まあ15年かかりましたが、少なくとも最大限早く処理することが行政としての務めであろうというところから、その早期解決を図るために、それぞれの、国負担分、民間負担分をその当時考えられるだけ考え抜いて、決めて、取り組んだものでございます。
 今御指摘の、最終処理に当たって、大手行、母体行と言われているような大手銀行に体力があるのであれば、そのとき決めたことをさらに乗り越えて負担を増加せしめてもよいのではないか、このような御指摘ではないかと思います。
 そのような考え方を全く一概に否定するものではございませんが、私どもからすれば、決まったことをきちんとそれぞれの当事者が適正に行い、終わることが、最もこの処理を早く終えて、次のステップに向けて、つまり、我が国金融システムは二度とこういうことを起こさないように対処しておりますというメッセージを発するのに最適だろうと考えた次第でございます。
○佐々木(憲)委員 早く処理するというのはわかるんですけれども、問題はやり方なんです。
 では、具体的にお聞きしたいんですけれども、住専処理の今回の法案では、一次損失処理には6850億円、これは国税から投入した、二次損失の処理でも損失額の半分を国が出す、こういう仕組みになっていますよね。何で半分国が出すんですか。
○和田内閣府大臣政務官 実際に、平成8年当時に法的に決められたものがかなりの部分でございますが、民間においてできるだけの負担をしっかりと出してもらおうという趣旨はその当時もかなり議論された上で行われたものだというふうに認識しております。
 ということから、その当時の事情として、ぎりぎりのところまで民間金融機関として負担していただいたという認識を持った上で、この部分を折半するという原則を貫いているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 ぎりぎりとは思わないですね。これは、当時、母体行の責任はちゃんととれるはずだったんですよ。それをやらないで、半分は国民に、こういうやり方をしたのが間違いであったと我々は思っております。
 では、それだけの負担ができないのか、具体的に聞いていきますが、この法案処理によりますと、二次損失は1兆3900億円ですね。整理回収機構の住専勘定で回収した債権の利益は、一つは、簿価を超えて回収した利益が2200億円、それから二つ目に、累積利益2800億円、これは合わせて5千億円ですね。したがって、この差額は8900億円、こういう計算になりますね。確認しておきます。
○和田内閣府大臣政務官 今御指摘いただいたところは、私どももそのとおり認識しております。
○佐々木(憲)委員 問題は、これをどう処理するかですね。
 そこで、お配りした資料を見ていただきたいんですが、これは金融庁作成の処理のスキームであります。
 図の右下と左下に金融安定化拠出基金というのがありますね。これは第一基金とそれから第二基金と言われるもので、第二基金は新金融安定化基金と言われているものであります。もともとこれは二次損失に備えたものではなかったんですか。
○和田内閣府大臣政務官 まず、配付いただいた資料の左下にあります新金融安定化基金の方は、先ほどちょっと別の質疑でもお答えしましたが、もともとの法制上、仕組みを考えておったところに、追加的に、世論の声もあって、もう少し、もう一段民間金融機関の方で負担してしかるべきということで議論が起こった結果、こういったものができているわけでございます。
 というわけで、必然的に、最初の法制上、要するに仕組んでいくところの概念には入っておりませんでしたので、そういった意味におきまして、委員御指摘のように、二次損失に備えたものとなっていくわけでございます。
○佐々木(憲)委員 第一基金について、右側の図ですけれども、この右下にあるように、基金の運用益1400億円がありまして、基金総額は1兆70億円、合計1兆1470億円があるわけです。それだけでも十分に二次損失を補てんできる額になるわけです。
 それなのに、なぜ住専と関係のない整理回収機構の協定後勘定から1800億円を住専勘定に繰り入れるんでしょうか。
○和田内閣府大臣政務官 最初に少し触れたつもりでございますが、いろいろな考え方がおありの中で、民間金融機関の負担部分をできるだけふやすべしというお話は、最初の法制定当時からあったところでございます。
 しかし、法制定当時に、ぎりぎりの努力をした上でこの半分半分という負担を決めていることから、ここから先、15年経過した現在、その負担割合を動かして、民間金融機関に負担させてこれの処理の決着を図るということよりも、それぞれの、当事者として国と民間がしっかりと自分の責任部分を果たすということが最適であろうと判断したわけでございます。
○佐々木(憲)委員 だから、要するに、協定後勘定からわざわざ入れる必要はないというふうに思うわけです。
 もう一つおかしいのは、この右の下にあるように、二次損失の負担をした後で、預金保険機構の一般勘定、つまり預金保険料からも3100億円を金融安定化拠出基金に繰り入れることになっているんです。預金保険料というのは、本来、預金者保護のために使われるものであって、二次処理に使うのは筋が違うんじゃないでしょうか。
○和田内閣府大臣政務官 今御指摘の部分は、表で書いてあります預金保険機構の一般勘定の方から住専勘定の方に3100億円繰り入れるというところの御指摘だと思います。
 これ自体、住宅金融専門会社の債権債務の処理が極めて困難な中でどのように処理していくかということですが、我が国における金融の機能における内外の信頼が大きく低下することが懸念されていたということでございますので、金融システム全体が揺るぐような重大な危機だという認識があったわけでございます。
 そういった意味におきまして、預金保険機構の能力を全部活用しながら処理していくということを考えておりまして、住専処理法第九条第三項において、一般勘定から金融安定化拠出基金に繰り入れをすることができるという条項がきちっと盛り込まれておりますので、それに従って処理しておるつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 私が聞いているのは、仕組みがこうだからこうしているんですというだけの話ではなくて、ここにこういうふうにお金があるんだから、基金にあるわけですから、それを使えばできるでしょう、それなのになぜこっちの趣旨の違う勘定から、別な勘定に頼るのか、こういうことを聞いているわけです。
 それで、安定化拠出基金への出資額というのは、当時は、大手銀行は8割、8060億円を負担していたわけです。
 三枚目の資料の右にありますように、現在の拠出割合でも、都市銀行、信託銀行、長期信用銀行の合計で7879億円、78・2%、約8割ですね。これを使って責任を持って負担するというのが私は当然だと思うんです。それをしないで預金保険から流用するというのは、これは筋が違う。
 預金保険料収納額を見ますと、2009年度で大手銀行の保険料負担割合というのは35・3%なんです。つまり、3100億円を預金保険料から流用すると、大手銀行の負担割合は8割だったのが3割に減る、こういうことになるわけです。そういう計算になりますね。
○和田内閣府大臣政務官 申しわけございません。今ちょっと即座に御指摘の数字の方を追い切れなかったのですが、御趣旨は、大手銀行の方に金融安定化拠出基金の拠出状況として78・2%もの保険料を取っているのであるから、そこを使うべしとおっしゃっていただいたのでしょうか。
 そこは、私ども、国、行政でございますので、実際の、預金保険機構にそれぞれの保険料を納めていらっしゃる民間金融機関におかれて、どなたがどれだけ負担されるかというのは、民間サイドでお決めになるということに尽きるのではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 そういうことではなくて、つまり、拠出基金というものがありますが、この中の拠出分の8割は大手が出しているわけです。それをきちっと使わずに、残しておいて、それで、一般勘定を経由して預金保険料から流用するという形になっているわけです。つまり、8割の負担をしなけりゃならぬかったのに、3割5分の負担で、どちらかというと、比率的に言えば、ほかの銀行の負担をかりて処理する、そういう形になるのではないかということを言ったわけです。私は、こういうやり方は、結局、大手銀行の負担を減らす仕組みだとしか思えないんですよ。
 現在の預金保険制度では、自見大臣にお聞きしますけれども、ゆうちょ銀行も含まれているわけですよ。ゆうちょ銀行は、最大の預金保険料の支払い行なんです。最大なんです。預金保険料による一般勘定に二次損失の穴埋めをさせるとなりますと、ゆうちょ銀行にも負担させるということになるんですね。自見大臣は、どうなんですか、ゆうちょ銀行は住専にどういう責任を負っているんですか。
○自見金融担当大臣 佐々木議員御存じのように、15年前、ゆうちょ銀行というのは存在しませんでした。国の三事業の郵貯、簡保、郵便ということでございまして、当時は存在しなかったわけでございます。
 今は郵政の法律が変わりまして、今、ゆうちょ銀行というのは銀行法に従う一般の金融機関でございまして、ゆうちょ銀行も含めた民間内での調整の結果、住専処理法においてまさに一般勘定からの繰り入れができるといった趣旨を踏まえて、当初からの枠組みにのっとり、金融安定化拠出基金の運用益等に加え、一般勘定からの金融安定化拠出基金への繰り入れを行うことにより対処するということで、まとまったということでございます。
 そういったことで、確かに、株は今100%をまだ国家が持っておりますけれども、銀行法に従うということでございまして、そういった民間内の調整の結果としてそういう結果でございますから、我々はそのことを尊重して、住専の最終キャリアを円滑にまとめることが適当であるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 全く責任のないゆうちょ銀行に住専のツケを回す、こういうやり方に、自見大臣ともあろうものが、何という、唯々諾々とこういうものを提案するというのは、私はおかしいと思いますよ。筋が通りません。
 基金の元本部分であります9070億円というのは、二次損失の処理後は一体どういうふうになるんでしょうか。
○和田内閣府大臣政務官 今、9070億円のこれからの処理についてのお問い合わせでございますが、基本的には、金融安定化拠出基金の残余の額を拠出者の拠出金の額の割合に応じてプロラタで分配するということになります。
○佐々木(憲)委員 要するに、この拠出基金をできるだけ使わないようにして、残しておいて、一方では協定後勘定から繰り入れる、一方では一般勘定を経由して預金保険料から流用する形にする等々で、要するに、残った部分をできるだけ減らさないようにして、それをもとの銀行にどんと戻してあげる、こういうことでありますからね。私は、これは、本来責任を持つべき母体行である大手銀行の負担というものを軽減する、そういうスキームにしか見えません。到底これは認められない。
 次に、第二基金についても、私はこれも活用すべきだと思っているんですよ。運用益1600億円と元本7932億円、合計9530億円、これだけあるわけですね。さらに、債権の回収及び利益5千億円、これは先ほど指摘をした点です。そして、第一基金の1兆1470億円。これを全部合わせますと、ちょうど2兆6千億円になるんです。
 したがって、二次損失というのは1兆3900億円ですから、1兆2100億円もの余剰金が生まれるんです。このスキーム全体を見ても、この基金を使ってきちっと処理すれば、おつりが来るという計算になるわけですね。これは、住専の一次損失に対する国の補助金6850億円をはるかに上回る、そういう資金であります。
 したがって、私は、住専の最終処理に当たって、当然こういうものも利用して処理をする、これが本来の、銀行の枠の中での自己責任の処理の仕方であるというふうに思うわけです。
 金融システムの安定を根拠に国民の税金を投入したんですから、もう今や安定しているわけですから、これは当然その状況のもとで、これだけの基金があれば、それを使って補てんをして、そして、まだおつりがあるわけですから、一次損失の6850億円も当然国に返還をする、国民に返還する、こういうことができるはずなんですよ。
 それをやらないというのが、私は非常に重大な問題があると思っておりまして、当時決めたんだからしようがないというんじゃだめなんです。政権交代もしているわけだし、座り込みもやったわけでしょう。そういう方々が、今それをもうすっかり何か忘れて、大臣はまあ別としてですよ。そういう与党の民主党が、民主党の中にもそういう方がたくさんいらっしゃるわけです。委員長もそういう座り込みをやったらしいんですけれども、そういう状況のもとで、以前、ずっと前に決めたもの、15年前に決めたものを、いまだに、いや、あれはもうやむを得ないんだと。それはちょっと筋が通らないんじゃないでしょうか。
 やはり私は、今、財政赤字がこれだけ拡大しておりますし、震災対応に多額の費用がかかる、こういうときに、これだけの資金については、既にあるわけですから、それをきちっと利用して、そしてまた余ったら返還を求めるというのが本当の政治のあり方だというふうに思いますので、最後にそのことを指摘して、質問を終わらせていただきます。

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