税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業), 金権・腐敗政治, 景気回復, 雇用・労働 (法人税, 大企業減税)
2010年11月04日 第176回 臨時国会 本会議 【582】 - 質問
補正予算の代表質問 内政・外交で国民は失望・落胆
2010年11月4日、佐々木憲昭議員は本会議で補正予算案に対する代表質問にたち、「危機にひんした国民の生活と営業を救済する有効な手だては見当たらない」「内政、外交、政治姿勢のどれをとっても自民党政権との基本的違いを見いだすのは不可能となった」とのべました。
佐々木議員は、民主党政権に内政・外交で失望と落胆の声が国民の中に広がっていると述べ、大企業の内部留保が増大する一方、国民の貧困化が進んでいると指摘。「大企業の内部留保を労働者、中小企業、社会に還流させ、家計消費中心の内需拡大に切り替えることが求められる」として大企業に法人税減税でなく応分の負担を求め、社会保障・医療・介護の充実を求めました。
労働者派遣法の抜本改正、最低賃金の時給1000円への引き上げ、下請け単価の引き上げなどを求めました。
菅直人総理大臣は「内部留保を投資や賃金に充てるよう申しあげている」としながら、大企業支援中心の「新経済成長戦略」の推進を表明。法人税について野田佳彦財務大臣は「国際競争力の維持・向上」から見直す必要性を表明しました。
佐々木議員は、沖縄・米軍普天間基地に代わる新基地建設や、日本農業を壊滅させるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加問題での対米追従を批判しました。
また、企業・団体献金禁止の公約に反する公共事業受注企業からの献金再開を批判。小沢一郎民主党元代表の国会招致を要求し、菅氏が「何らかの形で国会で説明すべきだ」としているが、何を説明すべきと考えているのかとただしました。
菅総理はこれに答えず、「本人の意向確認を見守る」と消極的姿勢を示しました。
議事録
○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説について質問いたします。(拍手)
政権交代後、1年と2カ月が経過しました。国民の多くは、生活の苦難から何としても抜け出したい、これまでの政治を根本から変えたい、このように願ってきました。しかし、民主党政権はその願いにこたえたでしょうか。内政面でも外交面でも、失望と落胆の声が国民の中に大きく広がっているのであります。
第一に、生活第一はどこに行ったのでしょうか。
国民の暮らしに改善の兆しはありません。この1年間に離職した労働者は724万人に上っており、新たに採用された人を40万人も上回り、雇用者総数は減り続けております。大手企業ほど非正規労働者を真っ先に切り捨てております。そのため、民間平均給与は年に24万円も減少し、五世帯に一世帯が貯蓄ゼロ、生活が苦しくて自殺する人が年に8300人を超えています。その一方、大企業は、内部留保を200兆円をはるかに超える規模で積み上げているのであります。
このような事態を招いたのは、民主党政権が、財界、大企業を応援することには力を尽くすが、国民の暮らしを直接支援する有効な手だてを講じなかったからではないでしょうか。菅総理はその責任をどう感じているのでしょうか。
菅総理が推進する新成長戦略にも、今回の補正予算案にも、危機に瀕した国民の生活と営業を救済する有効な手だてはほとんど見当たりません。
第二に、自立した外交、対等な日米関係はどこに行ったんでしょうか。
米軍の普天間基地については、最低でも県外という公約を投げ捨て、結局は、辺野古に米軍基地をつくるという最悪の選択をし、沖縄県民に押しつけようとしているのであります。県民の怒りは頂点に達しております。
日本農業に壊滅的な打撃を与えるTPPの推進を、10月の所信演説で菅総理は突如として打ち出しました。その発端は、昨年11月来日したアメリカのオバマ大統領の提案だといいます。菅内閣はこれに唯々諾々と従い、農民からごうごうたる非難と落胆の声が寄せられ、政権内部もばらばらであります。菅内閣は、それでも推進するというのでしょうか。
第三に、クリーンな政治はどこに行ったんでしょうか。
民主党は、小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件で国民の厳しい批判を浴び、企業・団体献金の禁止を公約に掲げ、公共事業を受注している企業からの献金を受けないと決めていたはずであります。ところが、最近になって、突然、受注額1億円未満の企業からの献金を受け取るということにしたのであります。これは、明らかに逆行です。一体、国民にどう説明するというのでしょうか。
小沢氏について言えば、我々は、証人喚問で4億円の原資等の説明を求めております。菅総理も、何らかの形で国会で説明することが必要と答弁されました。総理自身は、何を説明すべきだと考えているのか、この場で明らかにしていただきたい。
次に、経済政策の基本にかかわる問題についてです。
内部留保の中核である利益剰余金と資本剰余金は、合わせて227兆円、10年間で73%もふえております。大企業は投資先のない空前の金余りなのに、国民の中では貧困化が進んでおります。大企業は、利益を株主配当や役員報酬に回し、海外向けの投資をふやし、海外で利益を上げても国内には還流させておりません。国内産業、雇用、税の空洞化を一層進めております。総理は、これをどのように認識されていますか。
今問われているのは、大企業にため込まれた巨大な内部留保を、国内の労働者、中小企業、社会に適切に還流させ、家計消費中心の内需拡大に切りかえることであります。
そのためには何が必要か。
まず第一に、大企業に応分の負担を求めることであります。
法人税の減税なぞは論外であります。下げ過ぎた法人税を少なくとも10年前に戻す、税率は累進課税にし、中小企業には負担をかけない、このようにして、内部留保を国庫に還流させ、それを財源に社会保障、医療、介護を充実させることが必要であります。こうしてこそ、所得の再分配機能を復活させることができるのであります。財務大臣の答弁を求めます。
第二は、労働者を使い捨てる大企業の横暴を抑えることです。そのためにも、労働法制を抜本的に改正し、非正規雇用を正規雇用に切りかえる、中小企業への支援をふやしながら、最低賃金を千円に引き上げることなどが必要です。
第三は、大企業による下請単価の不当な切り下げを許さず、適切な引き上げを行うよう指導し、下請中小企業の経営を安定させることであります。
三点について、明確な答弁を求めます。
民主党政権の1年を振り返ると、内政、外交、政治姿勢のどれをとっても、自民党政権との基本的違いを見出すのは不可能となりました。
日本共産党は、財界、アメリカ言いなり政治から国民が主人公となる政治への根本的な転換を求めて闘い続けることを表明し、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(菅直人君) 佐々木議員にお答えをいたします。
まずは、国民の暮らしを支援する有効な手だてを講じていないのではないかという御指摘であります。
日本経済を本格的な成長軌道に乗せ、豊かな暮らしを実現するには、安定した需要や雇用を創出するとともに、産業競争力の強化とあわせて、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。こうした認識のもと、新成長戦略を策定し、現在、その実施の段階に入っております。
具体的には、新成長戦略を実現し、経済の先行き悪化懸念に対応するため、来年度に向けて、三段構えで成長と雇用に重点を置いた経済対策を切れ目なく推進しているところであります。
既に、ステップワンとして、予備費を活用した緊急的な対応を実施し、ステップツーとして、補正予算の編成を含む緊急総合経済対策を決定し、現在、それに基づく補正予算の審議をお願いしているところであります。こうした政策を通じて、雇用と需要を創出し、国民の生活を守っていく考えであります。
なお、大企業の内部留保が200兆円以上積み上がっているという御指摘がありました。
私も、企業が多くの内部留保を抱えて投資を余りしていない状況に対しては、もっと投資をするように、場合によってはもっと賃金に振り当てるように、そういうことは機会があるごとに経団連初め経営団体にも申し上げております。
ただ、実際の数字を調べてみますと、200兆円と言われるものの中で、資本金1億円未満の中小企業に留保されているものが126兆円でありまして、1億円以上のものは、その差額ですから、70数兆円というのが事務方が調べてきている数字でありまして、そうでないというのであれば、また予算委員会でもどうぞ御質疑をいただきたいと思います。
TPPと日米関係についての御質問をいただきました。
私は、いつも申し上げていますように、日本の農業の活性化及び再生というものと貿易の自由化というものをいかにして両立させるかということが重要だと考えております。
我が国農業従事者の平均年齢は65・8歳であり、このままでは経済の自由化とかいう問題を抜きにしてもなかなか立ち行かなくなるわけで、若い人が農業に参画できるようにして農業を活性化していかなければならないと考えております。そのことと私の内閣が掲げている国を開くということとの両立の道筋をつけていかなければならないと考えております。
国民に理解していただくための中身が必要であり、現在、党、内閣、さらには国民の皆さんと議論しながら、一定の方向性を出していきたいと考えております。
新成長戦略で決定したとおり、11月の、横浜で私が議長を務めるAPECまでに、包括的経済連携に関する基本方針を策定することといたしております。その関連で、関係閣僚間で、日本を取り巻く国際経済情勢や国内産業の現状及び見通しなどを踏まえ、しっかりと議論をしていただいております。
普天間飛行場の移設問題については、本年5月の日米合意を踏まえて取り組むとともに、沖縄の負担軽減策も着実に進めていかなければならないと考えております。
今後とも、日米両国は、基本的価値と戦略的利益を共有する同盟国として、それぞれの責任と役割を分担しながら、二国間のみならず、アジア太平洋地域情勢及びグローバルな課題について、緊密な連携のもとで、ともに役割を果たしていく覚悟であります。
次に、企業・団体献金と小沢氏の説明に関する質問をいただきました。
民主党としては、企業・団体献金によって政策が左右される、もしくは、そのような疑いを招くことがあれば問題であり、そのようなことがないよう、企業・団体献金を減らし、個人献金の促進ということを求めてきております。
そういった中で、総選挙マニフェストにおいては、3年の経過措置を経て企業・団体献金を全面的に禁止することを掲げ、あわせて、それまでの間の暫定措置として、国や自治体と1件1億円以上の契約関係にある企業などの献金を禁止するという制度改正を提案いたしております。
このたびの党の方針は、制度改正以前における暫定措置であり、企業・団体献金の禁止を制度化する方針そのものには変更はありません。内容においても、今申し上げたような意味で、マニフェストに矛盾するものではありません。
また、小沢議員の国会での説明についてお尋ねがありましたが、小沢議員御自身が、国会で決めた決定に私はいつでも従うと表明されております。
いずれにしても、政治家の説明責任については、まず本人の意思が第一であり、現在、幹事長を中心として、本人の意向確認を含む環境整備について努力を行っていただいているところでありまして、その努力を見守りたい、このように思っております。
大企業の金余りと空洞化についての御質問をいただきました。
先ほど申し上げましたように、企業の内部留保がかなりある段階で、もっと投資やあるいは賃金に引き当てるという方向性は、私自身も、そうあるべきだという立場で臨んでいるところであります。
その中で、例えば設備投資に関しても、1970年代の初頭は、大体、設備の平均の年齢といいますか、7年程度であったのに対して、現在は13年間と、設備の老朽化が進んでいて、思い切った投資が進んでいない。一方で、生産性の低下にも懸念が持たれております。
将来、我が国の産業競争力強化を図るためには、これらの資金を国内投資や国内競争力の強化に資するような海外の資源確保などに誘導する必要があると思っております。
このため、日本国内投資促進プログラムの策定を経済産業大臣に指示し、国内投資の促進に向けて官民の行動計画を取りまとめることといたしております。現在、幅広く産業界などに参加をいただいて、国内投資促進円卓会議での議論を重ねているところであります。
次に、労働法制の抜本改正と最低賃金引き上げについての御質問をいただきました。
非正規労働者のうち、派遣労働者については、行き過ぎた規制緩和を適正化し、派遣労働者を保護するための抜本的改正を行う法案を提出いたしているところであります。
有期契約労働者についても、その雇用の安定や公正な待遇が図られるよう、必要な施策について検討を開始したところであります。
最低賃金の引き上げについては、最も影響を受ける中小企業に対して適切な支援策を講じていかなければなりません。今後とも、雇用、経済への影響には配慮し、労使関係者との調整を丁寧に行いながら、最低賃金の引き上げに取り組んでまいりたいと考えます。
こうした対策に加えて、そもそも、雇用をふやすことを通じて賃金水準が上がるよう、経済構造を変える必要があります。政府が先頭に立って雇用をふやすべく、三段構えの経済対策を推進しているところであります。
なお、残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
○財務大臣(野田佳彦君) 佐々木議員からは、法人税を10年前に戻せといった御提案などを含めて、私の見解を問うという質問の御趣旨だったと思います。
法人課税については、まずは成長戦略との整合性や企業の国際的な競争力の維持向上、国際的な協調などを勘案しつつ、見直していく必要があると考えています。
論外という御指摘がございましたけれども、法人実効税率の引き下げについては、課税ベースの拡大等により、財源確保とあわせて平成23年度予算編成、税制改正作業の中で検討し、結論を得ることとしています。
今後、税制調査会において、国内の雇用や設備投資の増加、我が国企業の海外流出の抑制、海外企業の我が国への立地の増加といった観点から、その効果についてしっかり検討していく必要があると考えています。
御質問ありがとうございました。(拍手)