2010年03月17日 第174回 通常国会 財務金融委員会 【561】 - 質問
日本政策金融公庫法改定案 途上国への原発売り込み融資をやめよ
2010年3月17日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員は日本政策金融公庫法改定案に関し、途上国への原発売り込み融資をやめるよう求めました。
今回の改定案は、株式会社日本政策金融公庫の国際部門(国際協力銀行=JBIC)の業務に、「環境分野における支援」を新たに付け加えるものです。
地球温暖化防止のための「途上国支援に関する『鳩山イニシアティブ』」を実現することが目的です。
佐々木議員は、「鳩山イニシアティブ」や12日に閣議決定された地球温暖化対策基本法案に「原発推進」が盛り込まれていることを指摘しました。
そのうえで、JBICも「地球温暖化対策」として「原発推進のための融資」が行えるようになるのかただしました。
財務省の中尾武彦国際局長は「法律上は地球温暖化対策として原発開発への支援ができるのは確かだ」と認めました。
佐々木議員は、「途上国に原発を売り込みたいというメーカーの要望が濃厚に反映されたとんでもないものだ」と批判しました。
原発については、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が「安全性、核兵器拡散、核廃棄物の問題」があると指摘してるとして、政府の認識をただしました。
菅直人財務大臣は、「原子力は安全性を重視しなければならない。現政権も安全性を担保したうえで活用しようとしている」などと答えました。
佐々木議員は、原発の安全性は確立していないと主張し、改定案に反対を表明しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今度の法案は、昨年の12月17日に公表された地球温暖化防止のための途上国支援に関する鳩山イニシアチブを実現するために出されたものだと思います。法案の主な内容は、日本政策金融公庫の国際部門、国際協力銀行、JBICの業務に、環境分野における支援、すなわち、地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業を促進するため金融機能を担う、これを新たにつけ加えたということであります。
そこで、どうも気になるのは、原子力発電の推進というのがその手段の一つとなっているのではないかという点であります。
まず事実を確認したいんですけれども、途上国支援に関する鳩山イニシアチブでは原子力発電についてどう位置づけられているか、経産省に説明を求めたいと思います。
○高橋経済産業大臣政務官 御質問ありがとうございます。
我が国は、温室効果ガス削減、気候変動の悪影響への対応に意欲的に取り組む途上国に対しまして鳩山イニシアチブを打ち出したというのは、先ほどお話がございました。その中で、温室効果ガス削減の効果が原子力発電というのは非常に高いというふうに考えておりまして、世界への普及を促進し、支援をより充実させることを目指す分野として位置づけられております。
そこで、原子力発電に係る我が国の技術、経験、これはもう世界の最先端を行っておりまして、このことを提供することは、地球温暖化防止や日本の成長戦略という観点から見ても非常に重要だというふうに考えております。
経済産業省としましては、我が国の原子力産業の海外展開を積極的に支援していきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 我々は、原発というのは技術的に未確立であって、安全性が確保されていないという見方をしております。したがって、原発の新増設はやるべきではない、再生可能エネルギーの普及に合わせて、原発から計画的に撤退すべきだというのが我々の考え方であります。
もともと、この鳩山イニシアチブというのは、昨年9月22日の地球気象変動首脳会合、国連のあの会合で行った演説で提起されたものですが、ここに官邸のホームページからコピーしたものがありますけれども、この中には、どこを見ても、原発推進という言葉は一言も入っていないんですね。なぜ途上国支援になると原発推進というのが入るのか。
一説によると経済産業省が入れたと言われていますが、これは事実なんですか。きちんと説明をしていただきたいと思います。
○高橋経済産業大臣政務官 経済産業省が入れたというよりも、これは鳩山イニシアチブの中で原子力発電というのは大変重要な位置づけというふうに考えておりまして、いろいろな協議の中でこのような位置づけをさせていただいております。
共産党さんの御意見としては拝聴させていただきます。
○佐々木(憲)委員 もう一つ、確認したいんですけれども、先週閣議決定された地球温暖化対策基本法案、この中に原発はどう位置づけられているのか、条文ではどうなっているか、説明を求めたいと思います。
○大谷環境大臣政務官 16条の中に原子力の位置づけというものが述べられています。簡単に言いますと、安全の確保を旨とし、国民の理解と信頼を得て推進するものとするというふうにしてあります。
発電の段階でCO2を出さない、そういう発電をどんどんどんどんふやしていこう、その中の一つが原子力であり、原子力においては安全というものを大事にしていかなければいけませんよねというのを改めて、再度確認するような中身になっております。
○佐々木(憲)委員 原発の危険性というのは、今までもいろいろな事故が起きておりますし、環境破壊というのも起こっているわけであります。やはりそういうことをきちっと踏まえた対応をすべきだと我々は思います。
そこで具体的に、今度提案されている日本政策金融公庫法案、この中ではどうなっているかということですが、途上国政府が原子力発電を行おうとするとき、これまでの、従来のJBICはどういう基準があって、融資の条件というのはどうなっていたのか、まず、これを説明していただきたいと思います。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) お答えいたします。
委員御指摘のように、国際協力銀行はこれまでも、輸出金融の一環、我が国産業の競争力の維持向上という観点から、わずかでございますけれども、原子力関連機器の輸出に対する融資を行ってまいっております。例えば19年度には、4千万円程度でございますけれども、メキシコにおける原子力発電所のタービンなどを輸出する際の金融をつけておるわけですけれども、経済産業省から安全確保の確認を受けた上で、一々確認を受けた上で必要な融資を行ってきているということでございます。
○佐々木(憲)委員 私は基準を聞いたんですが。
このJBICのパンフレットによりますと、資源の確保、それから競争力の維持向上、国際金融秩序混乱への対処、この三つの基準があって、原発の輸出に対する融資というのは、この二つ目の国際競争力というものの中に入る、それ以外の理由は対象にならない、こう理解をしておりますが、それでよろしいですか。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 これまでは、この基準に合致するかどうかというのが前提であったと思います。途上国の原発推進への融資というのは、そういう枠組みの中でのみ可能であった。我々はそういう枠組みそのものに反対でありますが。
しかし、今度出されたこの法案は、地球温暖化対策というものが四つ目の基準として盛り込まれているというふうに理解しております。そうすると、途上国政府が原子力発電を推進したいという場合、これまでは融資は地球温暖化という名目ではできなかった、しかし、この改正によって、その対象というのが、地球温暖化という枠に、その条件に合えば融資ができる、そういう意味では対象、目的が広がった、こういうことになりますか。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) お答えを申し上げます。
先生もおっしゃいましたように、四つ目の基準として地球環境対策に資するものということでございますから、法律だけ見ますと、途上国自身が実施する原子力関係のプロジェクトも融資できるように読めるわけでございますけれども、原子力については、複雑かつ膨大なリスクを抱えているという観点から、日本企業が関与しないものも今回は融資できるわけですけれども、そういう場合もあるという、途上国自身のプロジェクトに関しては、安全性確保の確認が困難になることから、国際協力銀行の内規などにおいて、支援の対象とはしないことを考えておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 温暖化対策という名目で、途上国が日本の技術あるいはほかの国の技術を利用して原発を推進する、その場合に、一定の条件があれば、今回新たに、今までできなかった融資が可能になる、そういうことですね。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) 改めてお答えいたします。
今申し上げましたように、日本企業がかかわっていない場合でも、地球温暖化対策の場合については融資を行えるということ、相手国の政府がやる事業について融資を行えるということでございますけれども、この原子力関係に関しましては、日本企業が関与していない場合には十分な安全性の確保が確認できないということでございますから、原子力発電については支援しないということになると考えております。
○佐々木(憲)委員 原発は新たに今回のこの融資の対象からは外れる、こういう解釈になるんですか。
私が事前に聞いておりますところによりますと、三つの基準で、今まではその基準に合うかどうかが問題であったと。温暖化対策ということが新たに加わりますから、その温暖化対策ということに合致すれば、対象としては今までよりもその部分が広がる、こういう理解じゃないんですか。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) 委員おっしゃるとおりでございますけれども、原子力に関しては支援をしないということを政策として進めていくということでございます。(発言する者あり)いや、安全の確認が、日本企業が関与しない、相手国、途上国政府の単独の事業として、独自の事業としてやっていくものについては確認ができないということでございますから、いろいろなプロジェクトがありますけれども、原子力関係については、今回の広げた部分では支援していかないということを決めておるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 ということは、結局、日本企業が関与している、こういう前提であれば、大いにこの融資の対象として、地球温暖化という名目で推進する、そういうことになりますね。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) お答えいたします。
今後、細かい実施上の詰めをしていかなければいけませんけれども、日本の企業がどのように関与していくのか、程度の問題であるとか、そういうことも含めて慎重に検討していくことになると思います。
○佐々木(憲)委員 慎重に検討するかどうかというのは別として、枠としては広がると。
つまり、今まで、国際競争力強化、そういう基準に合うかどうかが唯一の原発支援の融資の基準だったわけです。それに日本企業が加わり、かつ、温暖化というものが、そのためのものですよということであれば、競争力とかなんとかというのは一応おいても、新たに支援ができる、こういう枠組みになったということですね。
○中尾政府参考人(財務省国際局長) 改めてお答えいたします。
今回の改正は、四つ目の目的を加えたわけでございますので、一般的に、日本企業が関与しない、つまり国際競争力の維持向上に関連しない融資も行えるわけでございますけれども、この環境問題の中で途上国が独自に行う事業のうち、原子力発電については、日本企業が関与する部分について融資するということが今後あるかもしれませんけれども、そういう意味では、今までと変わりない扱いと申しますか、日本企業が関係しない部分についての原子力については広げないということでございます。
○佐々木(憲)委員 今の説明で、何かいろいろなことを言っていますが、結局、日本企業が参加することが前提であると。今までは競争力強化という前提がなければ融資はできなかった。しかしこれからは、温暖化対策という名目がつけ加わって、新たな目的として、それがあれば日本企業が参加をして推進する、こういうことじゃないですか。だから、答弁で明確になったんですよ、今までよりはその部分が拡大されるわけであります。
そういう意味でいいますと、今度の法案というのは、先ほどから議論がありますように、日本の原発を大いに売り込めというような、これは財界側、原発メーカーの要望もあって、それに対して対応するという側面が非常に濃厚なものであって、我々としてはこんなことは認めるわけにいかない。
原子力発電というのは、何かクリーンなエネルギーのような宣伝がされていますけれども、これはとんでもない話でありまして、放射能汚染という深刻な環境破壊を引き起こす危険性を持っております。1986年のチェルノブイリ原発事故では、深刻な放射能汚染が国境を越えて広がりました。原子炉周辺30キロメートル、いまだに原則立入禁止となっております。
また、新潟県の中越沖地震で、東京電力の柏崎刈羽原発の事故、これは記憶に新しいわけですけれども、年間3千万トンのCO2を新たに出したわけです。事故が起こったら原発がCO2の発生源となる、そういう事例なんですね。
日本では、東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発というのがあります。原発の地下や近くに活断層が次々と確認されております。まさに、地震による重大事故の危険性があるわけですね。
それに加えて、原発の使用済み燃料、放射性廃棄物の処分、その方法もまだ未確立であります。使用済み燃料は極めて強い放射能を持っておりまして、その危険性は数万年も持続をするわけであります。政府としては今まで、地下深くに埋設するから大丈夫だと言いますけれども、これは長期にわたって何万年も安全性が保証されるというようなことは考えられないわけであります。
菅大臣にお聞きしますけれども、IPCCも、原発には安全性、核兵器拡散、核廃棄物の問題がある、こういうふうに指摘をされているわけです。菅大臣は、そういう認識はありますか。
○菅財務大臣 IPCCの具体的な指摘について、今頭の中にあるわけではありませんが、原子力発電所あるいは原子力というものが、今言われたようなチェルノブイリとかスリーマイルとか、いろいろな意味で、その安全性を非常に重視しなければならないものであるという認識は持っております。そしてまた現政府も、原子力については、安全性というものをしっかり担保した上でそれを活用していこう、そういう姿勢にある、このように認識をいたしております。
○佐々木(憲)委員 安全性については、我々と今の政府の認識というのはかなり離れておりまして、我々は非常に危険性を認識しておりますので、この法案には賛成することはできません。
温暖化対策のためには、一つは省エネを徹底するということですね。日本の技術を途上国にも大いに普及するということ、それから、化石燃料とか原発から脱却して再生可能エネルギーに転換していく、そういう方向を重視しなければならないというふうに我々は思います。
この法案は、今途上国に対して各国が原発売り込みの大合戦をやっておりまして、国を挙げて行われているものに乗っかって国内企業の受注支援として利用する、そういう可能性を広げるものでありまして、我々は、昨年の総選挙でもそういう方向には反対をしております。
私どもの政策では、それまでの自民党、公明党の政権が原子力立国を掲げて原発の輸出あるいは技術協力を進めてきているけれども、国の内外で安全を無視した原発の新増設を進めることはやめるべきだ、こういうことを訴えました。政権がかわっても、この立場は我々は変わりません。
したがいまして、今度の法案というのは、危険性を国際的に広げる、そういう役割を拡大するものであって、私たちは法案に反対をいたしますし、現在準備されている附帯決議の中に、そういう日本の高度な技術をパッケージとして輸出するような話も書いてありますから、原発を含むこういうものについては賛成することはできないということを最後に表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。