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税制(庶民増税・徴税) (消費税, 免税点引き下げ, 大企業減税, 高齢者への年金課税強化)

2010年02月16日 第174回 通常国会 本会議 【551】 - 質問

「国税法附則の消費増税条項を削れ」と要求 財務大臣明言せず

 2010年2月16日、佐々木憲昭議員は、本会議で、来年度予算案の裏づけとなる所得税法「改正」案などについて質問を行いました。
 そのなかで佐々木議員は、菅直人財務大臣が、3月にも消費税増税を含む税制改革の論議を始める意向を示していることにふれ、「消費税は4年間上げないという方針に変わりはないか」とただしました。
 鳩山由紀夫総理は「総選挙において負託された政権担当期間中において税率引き上げは行わない」と述べました。
 これにたいして、佐々木議員は「4年間上げないのであれば、自民・公明政権が昨年の国税改定法に書き込んだ付則104条をどうするかが問われる」と指摘しました。
 この付則には2011年度までに消費税の増税法案を国会に提出し、成立させることが明記されています。
 佐々木議員が前年秋の臨時国会で、当時の藤井裕久財務大臣に質問したさい、大臣は「修正するのがスジ」(11月17日)と答弁したことをあげて、この付則を撤回・削除するよう迫りました。
 ところが、菅財務大臣は「いまの鳩山政権の方針とは明らかに矛盾している」と認めたものの、削除については「しかるべき時期が来たところで判断したい」と明言しませんでした。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案等について質問します。(拍手)
 議題となった法案は、政権交代後初めて出された本予算関連の国税法案であります。問われているのは、自民・公明政権の政策を抜本的に切りかえることができているのかどうかであります。
 まず、税制の基本的な認識についてお聞きします。
 過去10年の税制改正を振り返ると、自民・公明政権は、国民に対して増税を押しつけ、他方で、大企業、大資産家には減税を行う政策を採用してきました。これが経済格差を広げる大きな要因になってきたことは明らかであります。
 例えば、年金生活者への課税強化を行いました。公的年金等控除の縮小と老年者控除の廃止は、所得税、住民税の大増税となっただけでなく、保険料や各種高齢者サービスにまで影響し、雪だるま式の負担増を高齢者世帯に押しつけました。
 また、自民・公明政権は、定率減税の廃止によって、賃金が減り続けている現役世代の可処分所得を大きく目減りさせ、生活不安を増大させました。さらに、消費税の免税点を年間売り上げ3千万円から1千万円に引き下げ、中小企業特例を縮小したことによって、小さな商店にまで消費税の実質負担が拡大し、多くの零細企業が廃業、倒産に追いやられました。
 庶民にとっては、まさに大増税と負担増が押しつけられ、暮らしと営業が大きな打撃を受けたのであります。
 その一方、大手企業はどうか。研究開発減税が繰り返されるなど、次々と法人税減税が行われてきたのであります。これが、大企業の税引き後利益を大幅にふやし、内部留保金や株式配当を空前の規模に増大させる要因となりました。
 さらに、証券優遇税制により、所得制限もなく株式譲渡や配当所得への税率を一律10%に軽減したのであります。その結果、一部の資産家は億単位で減税の恩恵を受け、所得税の実効税率は累進性を喪失している状態となってしまいました。
 自民・公明政権が推し進めてきたこのような税制改正は、国民の間に格差を拡大し、貧困を広げる要因の一つとなったのであります。
 菅財務大臣は、先日の本会議の答弁で、自民党・公明党政権が進めてきた構造改革路線について、幾つかの政策が、結果として、格差拡大するだけではなくて、日本の経済の成長路線への回復に必ずしも寄与していなかったとの認識を示しました。
 この構造改革の流れを根本的に切りかえる決意があるのかどうか、鳩山総理の基本的認識を伺いたい。
 次は、消費税の問題です。
 菅財務大臣は、消費税を含む抜本的な税制改定の議論をこの3月にも始める意向を繰り返し示しました。しかし、鳩山総理は、昨年8月、選挙中の党首討論会で、4年間上げる必要はないと述べていたのであります。
 昨年9月の三党連立政権合意書では、消費税率について、「現行の消費税5%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わない。」としています。
 そこで、確認をいたします。消費税は4年間上げないという方針に変わりはないか、明確にお答えをいただきたい。
 4年間上げないのであれば、自民・公明政権が昨年の税制改正法案に書き込んだ附則104条をどうするかが問われます。ここでは、2011年度までに消費税の増税法案を国会に提出し成立させることが書き込まれているからであります。
 藤井裕久前財務大臣は、昨年秋の臨時国会で、私の質問に答え、この附則は修正するのが筋と答えました。菅大臣はどのようにお考えでしょうか。この附則104条は撤回、削除すべきではありませんか。その上で、応能負担原則、生計費非課税原則に沿って、税制の民主的改革を進めるべきではありませんか。
 政府の平成22年度税制改正大綱は、今後の税制抜本的改革の指標とされています。
 そこで、伺いたい。
 税制改正大綱では、所得税の現状について、所得再分配機能や財源調達機能が低下しているとの認識を示しています。所得税率は累進性を持っていますが、実効税率は一定所得以上の高額所得者になればむしろ下降する状態となっており、改正は喫緊の課題であるとしております。
 累進性を取り戻すには、高額所得者に応分の負担を求め、所得税の最高税率を引き上げること、金融所得などを総合課税とすることが最も即効性があり、有効であると考えます。
 リーマン・ショックを契機に、アメリカやイギリスなどでは、既に所得税の最高税率や配当の税率の引き上げを実行しております。日本ではなぜ実行できないのか、その理由を述べていただきたい。
 税制改正大綱では、所得控除の抜本的な見直しが提起されています。
 そもそも、所得控除、とりわけ人的控除は、納税者本人とその家族の最低限度の生活を維持するための費用には課税しないという考えに基づくものであります。
 日本の最低限度の生活費について、菅大臣はどのようにお考えでありましょうか。これまで、日本の課税最低限の水準は国際的に見て低いと言われてきましたが、大臣の認識を伺います。
 今度の税制改正では、子ども手当の実施や高校授業料の無償化の財源に充てるため、扶養控除のうち、15歳以下の子供を対象とする年少扶養控除と、16歳から18歳までの特定扶養親族に対する特定扶養控除の上乗せ部分が廃止されます。この結果、18歳以下の子供を持つ子育て世代は、2011年1月から所得税、2012年6月からは住民税が増税となります。
 民主党は、すべての世帯で手当等の支給との差し引きで負担が減ると説明をしておりますが、今のままでは、授業料負担の少ない定時制、通信制の高校や特別支援学校に通う子供のいる世帯及び既に授業料の減免を受けている世帯では、負担増となるケースも発生するのではありませんか。さらに、先送りとなった配偶者控除も廃止となれば、15歳以下の子供のいる世帯でも負担増となるケースも出てくるのではないですか。お答えをいただきたい。
 また、所得税、住民税の増税は、国民健康保険の保険料や保育料など他の制度の負担増にはね返るため、実質的に負担がふえる世帯も出てくるのではありませんか。この点をどのように考えているのか、伺います。
 日本経済の正常な発展のためにも、今こそ、家計負担を軽減し、家計消費を拡大することが求められております。
 過去約10年間の平年度ベースの負担増の累積は、実に13兆円にも及んでいるのであります。庶民増税など、政府の政策により国民負担がこれだけふえれば、可処分所得は大幅に縮小し、家計の消費が大きく冷え込むのは当然ではないでしょうか。このため、日本経済は消費の落ち込みなどを主因とする内需の低迷と景気悪化を招き、需給ギャップは30兆円以上に広がりました。
 既に、アメリカやイギリスでは、ブッシュ減税の廃止、付加価値税の期限つき引き下げなどが行われ、不公平税制の是正や家計を直接支援する施策が実施されております。
 消費の落ち込みを打開するには、家計を温める施策への転換が必要であります。そのためには、過去の負担増を国民に戻す政策の抜本的転換が必要であります。総理はその必要性をどのように認識しているのか、答弁を求めまして、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 佐々木議員にお答えをいたします。
 まず、構造改革路線からの転換についての御質問でございます。
 いわゆる小泉構造改革、先ほどもすべてを否定するわけではないということは申し上げましたけれども、グローバルエコノミーが浸透して、結果として行き過ぎた市場原理主義が格差の拡大をもたらした、そして国民の大変大きな不安の増大をもたらした、これはまことに事実だと思っております。
 したがいまして、国民の皆様方の総意をもって政権交代を果たし、そのつめ跡を直していくのが、先ほども申し上げましたように新政権の大きな役割だ、そのように任じているところでございます。国民の皆様方のお暮らしを守る、いわゆる命を守る政治というものを実現してまいりたいと思っておるところでございます。
 消費税についての御質問でございます。
 財政健全化というものは大変重要な課題であることは論をまちませんが、財源が足りないから、ならば直ちに消費税を上げる、そのようなことを考えるわけではありません。まずは徹底した予算の見直し、歳出の削減、こういったことを行っていきながら、財源の確保を図っていかなければならないと思っております。
 あわせて、消費税のあり方について、今後、税制全般のあり方、あるいは社会保障制度をどのように抜本改革していく必要があるのか、そういったことを検討していかなければなりません。その議論とともにこの消費税のあり方も議論していくことが肝要だ、そのように考えております。
 したがいまして、三党連立政権の合意にあるように、この政権担当期間の間、私ども、消費税率の引き上げを行わない、この方針に変わりはありません。
 それから、所得税の最高税率、配当の税率についての御質問でございます。
 所得税につきましては、所得再配分機能というものの回復の観点から、私どもは、高所得者に有利な控除というあり方から、いわゆる所得の少ない方、いわゆる支援の相対的に必要な方々に有利な手当の方向にまずは切りかえをしていくということを考えているところでございます。
 配当所得につきましては、上場株式等の配当などに適用されます20%の税率というものを、現下、大変経済情勢が厳しい、そのような環境にかんがみて、時限的に10%とする優遇措置を講じているところではございますが、これから、配当の課税のあり方とか、あるいは所得税のあり方も、今後、税制調査会で真剣に議論していく必要があろうか、そのように考えております。
 家計を温める政策への転換についてお尋ねがございました。
 先ほども申し上げましたけれども、この新内閣としては、控除から手当という方向の考え方のもとで、支援の必要な方々に対して有利になるように、所得の再配分機能というものを強化したところでもございます。
 また、「コンクリートから人へ」という理念のもとで、無駄あるいは非効率が指摘されていた、公共事業すべてではありませんが、そういった公共事業を削減して、子ども手当、あるいは高校の実質無償化、あるいは社会保障、雇用対策、医療の充実、こういった国民のお暮らしに直結をする分野へ予算の重点配分を行ってきたところでございます。
 こういうような資源配分を、いわゆる命を大切にする予算という方向に見直していくことによって家計を直接支援する、そして、国民のお暮らし、生活が第一だという政治を実現してまいりたいと考えているところでございます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
○財務大臣(菅直人君) 佐々木議員にお答えをいたします。
 まず、消費税の問題についてでありますが、先ほど来答弁をし、また総理からも答弁をしていただいていますように、三党連立政権合意書において、消費税は、5%は据え置くということで、この政権担当期間中においてそういったことは行わないということについては、変わりがありません。
 その上で、22年度の税制大綱において、所得税あるいは法人税、加えて消費税や、場合によったら環境税も含めた、そういった議論を本格的に始める時期が来ているのではないかということで、申し上げたところであります。
 税制改正法附則104条についての御質問をいただきました。
 確かに、この附則104条は前の政権のもとでの条文であり、今の鳩山政権の方針とは明らかに矛盾をいたしております。確かに、撤回、削除ということも考える可能性も私はあり得るかと思いますが、そのことをどの段階でどのようにやるかについては、しかるべき時期が来たところで判断をしていきたい、このように考えているところであります。
 また、税制改正の民主党的改革についての御質問ですけれども、まずは、鳩山政権として、税制抜本改革の実現に向けてのビジョンを、先ほど申し上げたように、しっかりと幅広く検討していきたいということで、今回、専門家委員会も税調の中に置かせていただくことになりました。
 その際、22年度税制改正大綱でお示ししたとおり、まずは納税者の立場に立って、公平、透明、納得の三原則を基本とし、その上で、厳しい財政状況を踏まえつつ、支え合う社会の実現に必要な財源を確保し、経済社会の構造変化に対応した新しい税制の構築を目指してまいりたい、このように考えているところであります。
 また、所得税の人的控除についての御質問をいただきました。
 この中で、所得税の人的控除として課税対象から除外されるべき最低限度の生活費相当額についてどのように考えるかということでありますが、この最低限度の生活費相当額が具体的に何を指すのか、必ずしも明確ではないように思います。
 所得税においては、すべての納税者に認められる基礎控除のほか、個々の納税者の担税力を減殺させる事情がある場合、これを調整するための人的控除等が設けられております。そして、これらの控除額を積み上げた結果、こういった課税最低限が定まるわけであります。
 所得税については、累次の改正により税率その他適用範囲の拡大が行われるとともに、各種控除の累次にわたる拡充によって課税最低限の引き上げが行われてきており、所得再配分機能が低下している状況にあります。
 こうした状況のもと、所得再配分機能の回復の観点から、高額所得者に有利な所得控除という制度から手当への切りかえなどを行うということを今進めているところです。これによって相対的に支援の必要な低所得者の方に手厚い支援が結果として可能になる、このように考えているところであります。
 また、この所得控除の累積額である課税最低限について、日本の水準は国際的に低いという批判をいただいております。
 課税最低限は、納税者の大半を占める給与所得者について、その水準以下では課税されず、その水準を超えると課税が始まる給与水準を示す指標のことでありますけれども、この課税最低限については、どのような家族類型で比較するかということや為替レートの変動などの影響があって、一概に国際的に比較するということは難しい面もあります。そういう中で、他の国との比較を見ておりますと、我が国の課税最低限が、主要国との比較において必ずしも最も低いと言われるような水準になっているとは考えておりません。
 次に、控除の廃止によって負担増の世帯が生ずるのではないかという質問をいただきました。
 年少扶養控除の廃止及び特定扶養控除の上乗せ部分を廃止することについて、所得税は23年度分から、個人住民税は24年度分から適用されることになります。
 中学校修了までの子供を扶養する世帯については、22年度においては基本的に負担増となる世帯はない、このように認識をいたしております。23年度以降については、子ども手当の支給額によるため現時点で詳細なことをお答えする状況にはありませんけれども、23年度における子ども手当の支給は、マニフェストに掲げた目標を実現していくということで全力を挙げなければならない、このように思っております。
 また、税制改正大綱において、高校の実質無償化に伴う特定扶養控除の縮減により現行よりも負担増となる家計については、適切な対応を検討することとされております。
 なお、配偶者控除については、税制改正大綱において、「考え方等について広く意見を聴取しつつ整理を行った上で、今後、その見直しに取り組む」とされており、今後、これに沿って見直しを行っていきたい、このように考えております。
 最後に、所得税、住民税の増税は、国民健康保険の保険料や保育料など、他の制度の負担増にはね返ってくるため、実質的に負担がふえる世帯が出てくるのではないかという御指摘をいただいております。
 昨年末に閣議決定した税制改正大綱において、こういったことも念頭に置いて、国民健康保険料や保育料等の制度を所管する府省は、「所得控除から手当へ」との考え方のもとで、扶養控除の見直しの趣旨を踏まえて負担基準の見直しなどの適切な措置を講ずる、こういうことにいたしております。
 そういった意味で、端的に言えば、こういったことが大きな負担増にならないように各府省において措置が講ぜられるもの、このように理解しております。
 以上です。(拍手)

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