2000年05月19日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【112】 - 質問
金融商品販売法案で質問
2000年5月19日、大蔵委員会で、金融商品販売法案の質疑が行われ、佐々木憲昭議員は、質疑に立つとともに、党修正案の答弁も行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私は、最初に、政府が提案されました金融商品販売法案を中心にお聞きをし、最後のところで民主党修正案についてもお尋ねをしたいと思います。
政府提案の法案では、販売業者の説明義務を明示し、これに違反した場合には損害賠償責任を課すものだという説明がありましたけれども、この法案で消費者保護が本当にできるのかどうか、実効性はどうか、この点をただしたいと思います。
最初に確かめておきたいのは、金融商品の販売に関連してどんな苦情が寄せられているかという点であります。
ここに、国民生活センターが調査をし、ことしの3月に提出をいたしました金融商品に係る消費者トラブル問題調査報告書というのがございます。このはしがきによりますと、金融商品に関する苦情が各地消費生活センターに多数寄せられているということが指摘をされております。そこで、所管の経済企画庁にお聞きをしたいのですけれども、この苦情の中で、一番多いのはどういう苦情でしょうか。分類しますと、どのような苦情が一番多いか。
○金子政府参考人(経済企画庁国民生活局長) お答えいたします。
今委員御指摘の調査ですけれども、これは、全国に消費生活センターが多数あるわけですけれども、そこでいろいろな苦情を受け付けています。そのうち98年度から99年11月までに入力された金融商品に関する苦情、その分析をしたものであります。
それで、どういう苦情が多いのかということですけれども、これは証券会社、銀行、生命保険ごとによって違うと思いますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。そういうことでお答えします。
証券会社に関する苦情ですけれども、そのうち一番多い苦情というのが元本保証等の不実告知、これが全体の15・4%を占めております。その次が、リスクの説明がなかったというのが14・8%ということで、どうも説明に関する苦情が多いようであります。
それから、銀行に関する苦情でありますけれども、銀行に関しましては、商品の説明がなかったというのが28%、それから、解約をしようとしたのだけれども銀行の方がそれを拒絶したというのが16%、さらには、説明の内容がよく理解できなかったという理解不能、あるいは、事業者にいろいろ苦情処理を訴えたわけですけれども、どうも誠意が見られないとか、返すべき金をなかなか返さないといった事業者の苦情処理自体への苦情、これが各12%というようなことになっています。
それから最後に生命保険会社、この対象としては変額保険だけを扱っているわけですけれども、その変額保険に関しましては、失業しているとか金がないと言ったら、それでは借金をしろとか、あるいは資金を捻出するためにローンを組んだらどうかというようなことで組んだ、それでトラブルが多いというのが28・8%、次に、リスクの説明がなかったというのが23・1%、そういうような状況になっております。
○佐々木(憲)委員 今の御説明でも、やはり説明に関する苦情というのが大変多いということであります。商品の説明がきちんとなされていない、あるいはリスクの説明がない、事実と違う説明をした、こういうような苦情が比較的多いわけであります。
そこで、大蔵大臣にお聞きをします。
基本的なことですけれども、証券会社や銀行などの業者はいわばプロであります。プロがプロに商品を売る場合には、お互いに商品内容を熟知しているという点で、これは説明義務をわざわざ課す必要もないと思います。しかし、プロがアマに対して、一般投資家に対して金融商品を販売する場合には、もともと情報の格差は歴然としております。ですから、きちんと説明を義務づけなければならない。説明をきちんと行わないような業者には当然ペナルティーを課さなければならない。この法案の提出の前提としての考え方というのは、こういう考えでつくられているというふうに考えてよろしいですね。
○宮澤大蔵大臣 基本認識で、そのとおりでございます。
もっと競争が進みまして、消費者も少しずつ利口になりますと、消費者が結果として欺かれるような商品を売っておる人たちに対する批判というものが高くなって、そういう故意の、詐害とは申しませんが、説明不十分な行為がだんだんに少なくなっていくことを期待いたしますけれども、すぐにそういうわけではございませんので、基本認識は今佐々木委員の言われたとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 そこで、具体的にお聞きをしますけれども、昨年12月21日に出されました、金融審議会第一部会の第二次中間整理であります。
ここにありますが、ここでは、「業者の説明義務は、金融技術の革新、金融サービスの多様化が進展するなかで、今後、ますます重要になる」というふうに述べておりまして、説明の方法、内容について次のように提案をしております。
「説明を義務付けるべき事項は、顧客のリスク判断にとって重要な事項とすべきである。この場合のリスクとは、将来「不利益な状態」が生じる可能性をいうものと考えられ、重要事項の説明内容としては、商品の基本的な性格、仕組みにリスクが内在するときには、そのリスクをもたらす主要な要因に則して説明することが適当である。」というふうに書いてあります。これは14ページであります。
それから、この中に、「別紙 論点整理」というものがあります。この中には、「具体的には、商品の性格、仕組みの中で、契約締結後において、金融商品の売却による損失の発生等、「顧客に不利益な状態」が生じる可能性をもたらす「主要な要因」が存在する場合には、その旨と当該要因を、商品の性格、仕組みに沿いつつ説明することが必要である。」このように述べているわけでありますね。
これを受けてつくられた法案でありますから、当然これは書き込まれるものだというふうに我々は思っておりましたが、残念ながら、この法案を見ますと、第三条一項の一号、二号、三号で、元本欠損が生ずるおそれについての説明があればいいと。つまり、肝心の商品の基本的な性格、仕組み、これが外されてしまっているわけであります。これは明らかに中間整理から後退していると言わざるを得ない。なぜその点の説明義務が外されたのか、その理由をお聞かせいただきたい。
○福田政府参考人(大蔵省金融企画局長) お答えいたします。
委員が今引用されました部分をもう一度申し上げますと、「商品の基本的な性格、仕組みにリスクが内在するときには、そのリスクをもたらす主要な要因に則して説明することが適当である。」というふうに審議会で書かれてございまして、私ども、それに沿った条文と考えてございます。
すなわち、御指摘の箇所は、リスクの存在する場合にはその旨と当該要因を商品の性格や仕組みに沿って説明するということで、大多数の一般人に理解できるようなわかりやすい方法で行うことが適当であるという趣旨でございまして、商品の性格、仕組みそのものを、すべてといいますか、全般を説明義務の対象とすべきとしているわけでは必ずしもないわけでございます。
午前中の繰り返しでございますが、本法案におきます説明義務は、この義務を怠りますと、直ちに不法行為があったということで、元本割れが生じていれば、賠償すべき損害と推定される強力な民事効を伴うものでございますので、そのような観点から、説明義務の範囲は元本割れと因果関係を持つ一定の範囲のものに限定されるわけでございます。
しかし、一般的に大多数の顧客に理解できる程度のものということでございますので、現実の適用場面におきましては、元本欠損が生ずるおそれがあるという重要事項を説明する際に、それに関連する部分につきましては商品の仕組みなど当然説明されることになるということで、審議会の答申とは必ずしも矛盾していないというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 私がお聞きしたのは、この審議会の答申で書かれている商品の基本的な性格、仕組みについての説明という言葉自体も落ちているわけでありますから、その点を質問したわけであります。
元本欠損が生まれる場合は、当然商品の基本的な性格、仕組みの説明があって初めてそれがわかるわけであります、なぜその元本欠損が生まれるのか。その説明もするんだというふうに今おっしゃいました。具体的に、どのような性格の商品で、仕組みがどうなっているか、それとの関連でどのようなリスクの発生があり得るのか、そしてまた、そのリスクの程度はどうか、こういうふうに説明されて初めて元本欠損のおそれについての説明義務があったというふうに理解されなければならない。
ですから、通り一遍の元本欠損のおそれがあるという言葉を聞くだけでは、これは商品の仕組みもリスクもわからないわけでありますから、性格、仕組み、そしてその関連でどのような規模のリスクが発生するかという点についてきちっと説明をするのは当然のことだというふうに思うのです。
したがって、例えば最高裁の平成8年10月28日の判決でも支持されました、東京高裁の平成8年1月30日の変額保険の説明義務についての判決では、パンフレットの記載内容を概観しただけの通り一遍の説明をしただけでは説明義務を果たしたとは到底言えないとされているわけで、ことし3月15日の東京高裁の判決でも同様であります。
この中間整理で、商品の基本的な性格、仕組み、これを盛り込むべきだというふうに書かれていたのに、法案ではそれ自体が外された。今、関連では説明するとおっしゃいましたが、そういうふうな法案上の明文規定になっていない。これはなぜそうなっているのか、当然書くべきだというふうに思うのですが、いかがですか。
○福田政府参考人 これは多分に法制的な面でそうならざるを得ないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、消費者にとって一番重要なのは元本割れするかもしれないというリスクである。したがいまして、そのリスクをきちっと説明しなさいというのがこの説明義務でございますから、先ほど実例を挙げられました、パンフレットに基づいておざなりな説明をしたような場合はこれに当たらないわけでございまして、例えば外国の証券に投資する場合に、金利が名目上高くても、それは為替リスクもあればデフォルトのリスクもあるとか、いろいろあるわけでございますから、その商品の性格や仕組みに沿ってリスクの存在をきちっと説明しなければならないということでございますので、御指摘の点とそれほど実際に違うというふうには必ずしも思っておらないわけでございます。
○佐々木(憲)委員 それなら明確に書けばいいわけでありますが、そうなっていないわけですね。
ここに金融審議会第一部会中間整理に対する主なパブリックコメントというのがございます。各階層から寄せられた意見を金融審で整理した文書でありますが、この中に「説明すべき事項・内容」という項目があります。
それを見ますと、消費者団体あるいは金融被害を扱っている弁護士などは、商品の仕組みや全体像の説明をすべきだという主張をしておりますし、あるいは、金融商品の特徴、仕組み等の説明だけでなく、デメリット情報も欠かすことはできないなどの意見を寄せております。商品の基本的な性格、仕組み、これを盛り込むのは当然のことだという意見であります。
これに対して、業界側はどんな意見を出しているかといいますと、例えば全銀協は、元本毀損の可能性などにとどめるべきだ、リスクとその因果関係にまでは及ばないことを明確にすべきである、こういう意見を出しております。信託協会、生保協会などは、現場に過度の負担を強いることがないように配慮すべきであるというようなことを言って、固有の仕組みは対象とすべきでない、こういう意見を載せているわけですね。この業界の意見は、明らかに商品の基本的な性格、仕組み、この規定を外すべきだという主張をしているのですね。
したがって、政府提出の法案を見ますと、客観的に見て、消費者側の意見と業界側の意見がありましたが、業界側の意見は取り入れた、書き込まないという形で取り入れた、しかし、消費者や弁護士の意見は聞かない、あるいは切り捨てていると言わざるを得ない。なぜこういう二つの意見があるのに一方の意見だけ選択したのか、その理由を説明していただきたい。
○福田政府参考人 ただいま御紹介ありましたうちで、業界の意見そのものに従ったということは、毛頭そういうつもりはございません。
やや繰り返しになりますが、もし商品のすべてといいますか、商品性すべてを説明義務の対象といたしますと、そのまた範囲は何ぞやということになるわけでございまして、今具体的に実例はございませんけれども、この法案では、説明義務を怠れば、それをもとに損害賠償ということで強い民事効果がございますので、また、金融商品の商品性一般を説明させるということになりますと、大変その辺の問題がまたあいまいになりかねないということでございまして、実際にも必ずしもリスクの判断に直接関係ない説明の分野もあるのではないかと思うわけでございます。
○佐々木(憲)委員 ですから、リスクの判断にかかわる商品の性格、仕組み、その関係で説明をしなければならないということを私は言っているわけであります。にもかかわらず、その性格、仕組みは明記していない、ここに問題があるというふうに私は指摘をしているわけです。
ですから、4月21日の参議院の参考人質疑で桜井参考人はこう言っているのですね。
今日の判例のもとでは、かような低レベルの説明義務は実際の被害救済に関してさしたる意味を持ちません。むしろ、判例と比べてすらはるかに低レベルの説明義務の立法化は、販売業者がいかなる顧客、いかなる商品についてもこの程度の説明さえ行えば足りると誤解し、あるいは殊さらに同法を免罪符のごとく用いるときにはかえって被害救済に有害となるおそれがあります。
こう述べているのですね。
今まで認められてきたような判例をこの法律によって引き下げることになってはならぬと思うのですけれども、そういうふうにならないという保証はありますか。
○福田政府参考人 そのようなことはないと存じます。
本法案は、この説明義務を怠りますと損害賠償責任を問われるということが明示されているわけでございまして、従来は、被害者の方は民法の信義誠実の原則などの一般則を頼りに訴訟を起こしてこられたわけでございまして、この点にかんがみますと、損害賠償という説明義務を初めて明定してございますし、そのほかにも民法の不法行為の特則を幾つか定めております。
例えば、民法上は、不法行為の要件として故意または過失が要求されておりますが、本法案では、説明義務違反について過失の有無は問わないというようなこと、それから、金融被害の典型事例は元本割れということでございますが、説明義務違反と顧客の損害との間の因果関係の存在及び損害額につきまして推定規定を置いているという点、そのほかにも幾つも民法上の特例がございまして、こういうことを踏まえますと、今までの裁判実務や判例におきまして認められつつあるものもございますが、顧客保護をより確実なものとするために新法を制定することとしたものでございますので、民法の不法行為の特則でございます以上、従来の請求等を排除したり、あるいは蓄積されてきております判例を否定する趣旨ではございません。
○佐々木(憲)委員 次に、リスクの説明範囲についてお聞きをしたいのですけれども、政府提出法案では、元本欠損が生ずるおそれについて説明するというふうになっておりますが、その範囲はどのようなものかということで、中間整理の「別紙 論点整理」ではこういうふうに言っているのですね。「具体的には、商品の性格、仕組みの中で、契約締結後において、金融商品の売却による損失の発生等、「顧客に不利益な状態」が生じる可能性をもたらす「主要な要因」が存在する場合には、その旨と当該要因を、商品の性格、仕組みに沿いつつ説明することが必要である。」
そこで、聞きたいのは、ここで言う「顧客に不利益な状態」というのは基本的にどのような状態をいうのか、このことを確認したいと思います。
○福田政府参考人 お答えいたします。
審議会の整理におきましては、以下のものということで、「収益が変動すること」、それから「出捐額の一部又は全部が毀損すること」、三番目に「出捐額を超える損失が発生すること」、すなわち「追加的な支出の負担」ということが顧客に不利益な状態というふうに書かれてございます。
○佐々木(憲)委員 ここで三点言われましたが、大事なのは、この顧客に不利益な状態ということの内容として、出捐額を超える損失が発生すること、追加的な支出の負担、これが含まれているということであります。
ところが、法案を見ますと、これは極めて限定されたものになっておりまして、元本欠損が生ずるおそれというのは、要するに、商品購入の際に顧客の支払った金額、これが商品の販売で手にする金額を上回ることになるおそれとされているわけですね。つまり、出捐額の一部または全部が毀損するということを説明すればよいというふうになっているわけであります。
しかし、現実には、今説明のあった三番目の、支払った金額だけでなくて、それ以上の追加的な負担を求められるというケースがあるわけです。この中間整理の論点整理で言われた出捐額を超える損失の発生、追加的な支出の負担、この要素を法案ではなぜ落としたのか。この理由は何ですか。
○福田政府参考人 御指摘の点でございますが、立法過程でいろいろ議論をさせていただきましたが、結論的には、これは二つとも統合してございます。本法案における元本欠損とは、今申し上げた中間整理で示されております当初の出捐金、それから、足らなくなって支払った追加的な部分もあわせた概念でございます。
すなわち、法案条文におきますと、元本欠損とは、顧客が受け取った、あるいは受け取るべき額から、金融商品購入時に支払ったか、事後追加的に支払いを求められたかにかかわらず、顧客の支払った、あるいは支払い義務の生じた額を差し引いた額がマイナスとなるということでございますので、御指摘のような、当初出捐額を超えた追加支出が必要になる場合も含まれてございます。
○佐々木(憲)委員 それが含まれているということであります。
さて、その次に、適合性原則についてお聞きをしたいと思います。
まず、大蔵大臣に最初にお聞きをしますけれども、金融商品を販売する場合には、当然、顧客のそれまでの取引の経験ですとか、あるいは顧客の財産状況、そういうものに合ったものを売るべきだし、顧客の意向に沿って販売する、これは当然のことだと思いますけれども、まずこれを確認したいと思います。
○宮澤大蔵大臣 その限りにおいて、そうだろうと思います。
○佐々木(憲)委員 ところが、実際にはこれに反する金融商品の販売の仕方というのが大変多いわけであります。
経済企画庁にお聞きしますけれども、国民生活センターのトラブル問題調査報告書に具体例が載っております。二つの具体例をここでちょっと紹介をしていただきたいのですけれども、どんな事実があるかお聞きをしたいと思います。たくさん載っておりますけれども、最初のところのものだけでも御紹介いただきたいと思います。
○金子政府参考人 二つとおっしゃるので、まず、その一つは、リスクの高い商品を好まず、投資経験の浅い51歳の主婦に対しまして、目論見書には、当ファンドへの投資は、性質上長期的なものと考えるべきであり、内在するリスクを理解している内外市場の動向に精通した投資家のみにふさわしいものであると書かれているドル建ての会社型ファンド、これを購入させてトラブルが起きたという例が一つかと思います。
もう一つは、目が不自由で障害者手帳を持つ65歳の主婦の例でありますけれども、リスクを伴うものは嫌だと言ったにもかかわらず、外国投資信託を勧誘されたということで、目の障害から、売買について書いたものを読んで自分で判断できる状態にないので、外務員が運用状況の報告を必ずするという約束のもとで購入したのだけれども、それが守られなかったということでトラブルが出ているというようなことかと思います。
○佐々木(憲)委員 今挙げられた二つの事例もそうですし、それ以外にもたくさん事例がありますが、主に女性で高齢者の方の被害が多いわけであります。
それで、経済企画庁に重ねてお聞きしますけれども、この報告書の分類の中に高齢者の取引というのがありますね。これは、高齢者の取引という分類の概念はどういうものなのか、その内容について説明していただきたい。それから、高齢者取引で苦情の多い商品、これを二つ挙げていただきたい。
○金子政府参考人 まず、高齢者の定義でありますけれども、これは70歳以上の消費者ということであります。
それで、取引を大きく分けると二つありまして、一つは、国内商品と申しますか、それは信用取引、株式投資信託、金融先物取引、ワラント、オプション取引等、リスクが高いということでリスク・リターンレベル三以上という分類をされているようですけれども、そのような商品が一つの分野です。それからもう一つは、外国の商品、これは外国債券、外国投資信託等、当然のことながら為替リスクの伴う商品、大きく分けてその二つ、それが細かいものになっていると思います。
それで、一体どういう苦情が高齢者について多いのかということですけれども、大きな分野は、一つは外国債券・社債に関するものが16・8%、次に外国投資信託に関するものが15・1%ということで、外国の証券関係のこの二つが非常に上位を占めているということが言えると思います。
○佐々木(憲)委員 今、結果についての御説明がありましたが、高齢者に外国債券・社債あるいは外国投資信託を販売するというのは、大変問題が起こりやすいわけであります。なかなかこれは理解しにくい。そういう方々に余りリスクの説明もせず販売するという事例が大変多いわけであります。それで苦情が多いということなんですね。
そこで、国際金融商品については、国民生活センターが98年の8月25日に行った調査がありますね。この国際金融商品の相談件数で、50歳以上の比率、それから60歳以上の比率、それぞれどういうふうになっておりますか。
○金子政府参考人 この調査は、先ほどの調査とはまた別途、98年8月に国民生活センターが、これも同様に全国の消費生活センターを結ぶPIO―NETというところに蓄積されたデータを分析したものでありまして、対象は、96年度、97年度、それから98年6月14日までに入力された481件、これの苦情を分析した結果であります。
それを見ますと、国際金融商品に関しての年代別ですけれども、50歳代が21・2%、60歳代が29・8%、70歳代が19・6%ということで、50歳代以上が占める比率は全体の70・6%ということになっております。
○佐々木(憲)委員 そのように高齢者の比率が大変多いわけであります。
それで、ことし3月の調査報告書を見ますと、「「商品の仕組みを理解できなかった」「投資目的を尊重しない」など、適合性に関する苦情が証券会社、銀行、生命保険会社に共通して見られた。」このように書かれているわけであります。
つまり、適合性原則違反というのが金融商品販売においては極めて重要な問題点になっているということなんですが、大蔵省もそういう認識をお持ちだと思うのですが、そういう認識をきちっと持っていますか。
○大野(功)大蔵政務次官 大変難しい問題だと思います。
適合性といいますと、年齢、知識、経験、財産の有無、そういう問題をどういうふうに商取引と結びつけていくかということでございますが、基本的には、我々が目指している社会というのは、全く透明な世界、情報が阻害されないで入る世界、そこで自己責任で競争が行われる世界でございます。しかしながら、そういう世界に至っていないものですから今回の法律がぜひとも必要だ。それはなぜかといいますと、佐々木先生も冒頭おっしゃいましたように、プロが素人をだますような事態がたびたび起こるからでございます。したがいまして、我々はこの法律を、新しいそういう透明な世界をつくるための前提条件、このように考えております。
しかしながら、適合性という問題を考えてみますと、書き方が非常に難しい。つまり、例えば65歳以上の方にはデリバティブを売ってはならない、このようなことを書かなきゃいけないんだろうか、それから、このような知識といった場合、非常に主観的な書き方になりはしないだろうか、経験については、ではどういう経験を重んじていくのだろうか、こういう問題が出てくるわけでございます。しかも、そうなってきますと、法律が一体どういうことを予見してつくられているのか、これがちょっとぼやけてくる可能性も出てくるわけでございまして、それが一つの問題点。
もう一つの問題点は、やはり、あなたはどういう経験を持っていますか、あなたの財産は幾らですかというところまで踏み込んでいきますと、プライバシーの問題に踏み込んでしまうのではないか、こういう問題も出てくるわけでございます。
さらに、もう一つ申し上げるならば、適合性原則に違反したことのみをもって、例えば販売業者に損害賠償責任を負わせる、このような立法になっていこうかと思いますけれども、何か事が起こりますと、裁判にかかって、そういう法律構成でございますと、すべての場合にとは言いませんが、なりがちなのは、やはり責任がないところに責任をつくってしまう可能性が出てくる、こういう問題も出てこようかと思います。
さらに、そういうことになりますと、先ほど自己責任原則ということを申し上げましたけれども、自己責任原則がやや緩んでしまって、何だかそこにおかしな問題が出てくるんじゃないか、こういう問題がございます。
したがいまして、法律の構成は、民法の一般法、つまり故意、過失、法律違反という一つの問題と、立証責任というもう一つの問題、この二つの問題について、特例的に違法性は問わない、それから立証責任も、説明をした、しないというところだけに限っておりまして、因果関係については立証責任をとらない、そこをきちっと定めている、こういう物の考え方でございます。
○佐々木(憲)委員 今の大野政務次官の答弁は、かなり後ろ向きの答弁に聞こえますね。
適合性原則については、既に証券取引法、投資信託法などでは明定されているわけです。政府自身も、金融取引の中で適合性原則が重要だとおっしゃってきた。先ほども宮澤大蔵大臣は基本的な考え方をお述べになりました。
今問題なのは、今までも議論がありましたが、この原則が、証券など個別の商品だけでなくて、銀行融資や商品先物取引など幅広い分野でますます必要になっているということでありますから、当然、この原則を前向きに適用していく、そういう法律にするというのが本来の姿勢でなければならないのですが、どうも今の答弁は、何かやりたくない、やりたくないみたいな話で、これはもう全然方向が違っているのじゃありませんか。
○大野(功)大蔵政務次官 法律的側面を御説明申し上げましたので、やや後ろ向きに響いたのかもしれませんが、一つ御確認申し上げたいのは、まず、そのような場合でも、適合性の原則というのは、裁判にかかれば、これは今度民法の信義誠実の原則の側面からきちっと裁判官は判定してくれる。ただし、初めから法律にはそこを書きにくいなという御説明を申し上げているわけです。
適合性という問題を裁判所で取り上げれば、いろいろな問題があると思いますが、それは民法上の信義誠実に反する、こういう裁判官の心証であれば、それは損害賠償の対象になる、このことはもう当然のことでございますので申し上げなかったのでありますが、法律的側面からいえば、適合性というのは非常に書きにくいものである、このことを御理解いただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 民法の信義誠実の原則で業者の損害賠償責任を問えるというのは、今までもあったことであります。
この金融商品販売法というものを提案する以上、その内容をどのように法律の中に形づくっていくか、ここが大事なわけで、それが難しいからやめましたというのでは、何のためにこの法律を出したのかということになるわけです。
例えば、この間、消費者保護のないもとで、86年からスタートした変額保険がトラブルを激増させてきた。そのため、業界も、自主ルールをつくり、販売資格をつくったりしてやらざるを得ない。大蔵省も、ハイリスク商品だということで、募集上の留意事項を通達で定める、こういうことをやった。さらに大蔵省は、ローン一体ではだめと二回にわたって口頭指導をした。ところが、こういうことをやっても、それでも被害が続出をしたわけです。多くの被害者はいまだに救済されない。非常に長い裁判で苦労している。
ところが、今度の法案によりますと、この点については全く前進がないわけで、自主ルールでやりますということになっているわけですね。これでは今までと事態は変わらないと思いますね。ルール違反があっても社内処分だという程度になりますし、この法律で損害賠償を直接問うということにならないわけで、これはこの法律による被害の救済につながらないわけです。
適合性の原則を法案に明確に書き込む、違反したときは損害賠償の対象にする、こうすべきではありませんか。
○大野(功)大蔵政務次官 まず、法律上書いてございます、適合性の原則を全然無視しているわけではありません。これを決めなさい、策定しなさい、それからそれを公表しなさい、それに違反した場合は過料でございますと。あとどういうふうにするのかが、自主ルールというか、販売業者のコンプライアンスに任されているわけでございます。
そういう問題と、もう一つはやはり民間の苦情処理の問題、これを少し考えていかなきゃいけないということは午前の議論でも申し上げた次第でございますけれども、その民間の苦情処理の形につきましては、例えば、午前中にも申し上げましたけれども、イギリスのオンブズマンの例等もございます。これから金融審議会でその辺は真剣に考えていかなければいけない問題だと思います。
○佐々木(憲)委員 全国証券問題研究会の調査では、適合性原則違反を違法要素の一つとして証券会社の損害賠償責任を肯定した判例は20件に達していると言われておりますし、最近は、京都地裁、平成11年9月13日の判決、岡山地裁、平成11年9月30日の判決など、適合性原則違反で証券会社に損害賠償を命じる判決が相次いでおります。
ですから、当然、法案でもその点を踏まえて適合性原則を明確に書き込むということが私は極めて大事だと思っておりまして、そういう点で、日本共産党の修正案にはその点を書き込んでおりますので、ぜひ参考にしていただきたいというふうに思います。
それから次に、立証責任の問題についてお聞きをしたいのですけれども、これまでの例では、顧客が説明を受けないということを立証することになると非常に困難だ、大変重い負担になっておりまして、裁判が長期化する原因にもなっております。それで政府にお聞きしますが、今度の法案ではこの立証責任というのは解決されるんでしょうか。
○大野(功)大蔵政務次官 民法の一般原則というのは立証責任は必ず原告側ということでございますが、今回は、説明がなかったという立証責任を原告に負わせておりますから、この点では民法の立証責任、一般原則どおりでございます。
しかし、先ほどもちょっと触れましたけれども、新たに民法、つまり不法行為でございますが、その特則として販売業者の説明義務を類型化、明示している、こういうことでございますので、実質的に説明義務をきちっと履行したことを反証する販売業者の責任が重くなっている、ここが問題でございます。販売業者が反証する責任が重くなっている、こういうことでございますので、説明がなかったという原告側の立証負担は軽減されている、このように思います。さらに、因果関係の立証責任もないわけでございます。
もう一つ、説明がなかったかどうかの立証責任を仮に原告側から被告側、つまり販売業者の方に転換した場合、移した場合、業者が必ずきちっと説明したことを立証しなければならないことになりますけれども、その場合は、消費者の購入した金融商品に元本欠損が起これば、原則として業者に損害賠償責任が生ずるような法律構成になってしまいます。したがいまして、そこはちょっとバランスを欠くのじゃないかなというふうに感じます。
さらに、個々の事案ごとの事情を問わずに、法律上一律に説明の不存在、これを推定することを根拠づけるだけの普遍的な経験則というのはまだまだ存在しないのではないか。そういうふうな推定規定を設けた場合に、お客様、消費者の立証負担の軽減という目的を超えまして、第一の問題は、本来責任のないところに責任をつくり出してしまうおそれがある。第二の問題として、消費者、購入者の方のモラルハザードを助長する可能性もある。こういう問題がいろいろあると思います。
午前中も申し上げましたが、裁判で、ないということを立証するのは極めて難しいことは事実でございますので、それは裁判上、先ほどの適合性の原則も含めて裁判官の心証にお任せする、こういう形でございます。
○佐々木(憲)委員 バランスを欠くとか責任のないところに責任を求めるのは無理だとか、そういう立場が実際に業界寄りだと言われる理由になるのですよ。
業界側の、例えば日本生命保険調査部の課長が「金融財政事情」の4月17日付に書いていますけれども、従来と同じだと。ですから、業界側のリスクが相当程度回避可能だ、この法律では全然痛みを感じませんよ、そういうことを当事者が言っているわけですからね。そこで、私どもは販売業者に立証責任を求めるというのは大変必要だと思っております。
そこで、民主党の修正案についてお聞きしますが、民主党の修正案は、販売業者に重要事項の説明を行ったことの立証責任を負わせていますね。これは私は大変内容がよろしいというふうに賛成をするわけでありますが、修正案に立証責任の転換を盛り込んだ考え方について御説明をいただきたいと思います。
○北橋委員 お時間が迫っているようでございますので簡潔に申し上げますが、委員が御評価をいただいたことにまず感謝を申し上げたいと思います。
いずれにしましても、政府原案によりますと、顧客の方が説明を受けなかったということを立証しなければならないわけですが、そもそも、ないことを直接証明するというのは事実上極めて困難、不可能に近いことでございまして、あることを証明できないことがないことを間接的に証明することになるわけです。
そのような観点から申し上げますと、顧客に立証責任を負わせることは、顧客にとって著しく不利であると言わざるを得ないと思います。また、そもそも一般的に顧客の方は、金融商品の取引について素人であられる場合が多く、書類などもきちんと手元に保管していない場合も少なくないと聞いております。
政府の今回の立案の過程において、民法の特則を設け、立証の軽減に努力をした跡はわかるわけでございますが、しかし、私どもは、消費者を保護する見地からいたしまして、御党の御指摘のように、立証責任はプロである金融業者の方が負うのが筋ではないかと考えております。
○佐々木(憲)委員 最後にもう一点だけ、民主党にお伺いします。
この民主党の修正案は、金融商品消費者センターを設立するということにしているようであります。被害者が紛争の解決を裁判に頼ってもなかなか難しいという現状のもとで、顧客保護を目的に掲げるこのような組織をつくることは大変積極的な面があると私は思います。
このセンターの設立に当たって大事な点は、業界からの独立、それから消費者代表の運営への参加というのが大変重要だと思うのですね。この点で、提案者としての御見解を伺いたいと思います。
○北橋委員 佐々木先生御指摘のとおり、私どもが考えております金融商品消費者センター、この性格は、金融販売業者のいわゆる業界互助団体のようなものであっては意味がないと考えます。その意味で、金融販売業者からの独立性が担保されたものでなければならない。
その点、イギリスを見ますと、金融ビッグバンの本場イギリスにおきましては、顧客と金融機関の紛争処理があった場合に、オンブズマンの制度が機能いたしております。金融機関は、強制加入のもとでその団体に入り、そのオンブズマンの決定に従うという、極めて消費者保護が徹底された制度が機能しておりますが、そのオンブズマンに係るコストも、イギリスでは金融機関が負担をしている、このように聞いております。
そこで、私ども民主党が立案する中におきましては、この消費者センターが、紛争解決のあっせんの申し立てを受けた場合に、学識経験を有する者であって、その申し立てに係る争いの当事者と特別の利害関係のない者をあっせん委員として選任する、そして当該あっせん委員によるあっせんに付するということにいたしております。また、あっせん委員については、参考人から広く意見を聴取するということを念頭に置いております。その中で、先生御指摘のような、消費者団体の御意見を十分反映していくことが極めて重要と考えております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。