2000年05月19日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【111】 - 答弁
金融商品販売法案に対する党修正案の答弁
2000年5月19日、大蔵委員会で、金融商品販売法案の質疑が行われ、佐々木憲昭議員は、質疑に立つとともに、党修正案の答弁も行いました。
議事録
○上田(清)委員 ありがとうございました。この問題はとりあえずこの辺で。
それでは、本題の法案についてお伺いをしたいと思いますが、せっかく前の方に佐々木憲昭議員が座っておられますので、早目にこちらから片づけをさせていただきたいと思います。
私どもも修正案を出しているところでございますし、多くの部分で共通している部分もございますが、いささか違う部分もありますので、正確に文言を読みながら確認をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
共産党案では、金融商品販売業者等と顧客との間に生じた紛争の裁判外における迅速な処理のための制度を確立するものとしているが、具体的なイメージはどのようなものか、これを伺いたい。
また、民主党の修正案では、金融商品消費者センターを設立し、裁判外紛争処理のほか、金融商品の販売等に係る説明義務の範囲、勧誘方針等に関する指針の策定、そしてまた、会員である金融商品販売業者等に対する指導、勧告等、金融商品の販売等に関する広報その他の必要な業務の三つの業務を行うものとしているが、この点について若干の疑念があるというようなことも伺っておりますので、まずこの二点からお伺いしたいと思います。
○佐々木(憲)委員 お答えいたします。
金融をめぐる消費者被害の救済体制というのが現在未整備であるために、被害者は実際には泣き寝入りをするか裁判で争うか、これしかないわけであります。しかし、裁判は大変な時間と費用を必要といたします。情報の格差もございまして、被害の立証も甚だ困難である。したがって、裁判外の救済制度をつくるということは、我々も急務だというふうに考えております。
裁判外紛争処理機構をつくる上でかなめになるのは何かということでありますが、私どもは、業界からの独立それから消費者代表の運営への参加、これが保証されるということが非常に重要だと考えております。迅速な処理それから権限、つまり、機構が金融業者に対する資料徴求権や調査権限を持つということ、それから、その裁定が業者に対して拘束力を持つ、こういうことが大変重要だというふうに思います。
民主党案にある金融商品消費者センター、これが、顧客保護とあわせて販売業務の適正化を目的に掲げたということは、私は大変積極的なことだというふうに思います。民主党案は、イギリス型のオンブズマンを念頭に置いてこの制度を金融販売業者が設立する公益法人としておられるのだと思いますけれども、今の我が国の金融機関には消費者保護の見地は極めて弱いわけであります。したがいまして、民主党提案のこの組織が、センターの掲げる目的に真に沿った活動がなされるように、運営面の保証ということが大変重要になるのではないかというふうに考えております。
以上です。
○上田(清)委員 ありがとうございます。
私ども、海江田議員を中心に、貸し手責任を問うさまざまな勉強会をやってまいりまして、その中で、決算行政監視委員会でつくられましたところの予備的調査を行いましたところ、大手銀行が肝心のさまざまなトラブルについての資料を提出しないというような状況が起きておりまして、とかくさまざまな金融商品についてトラブルが多いという実態があるということを含めて私どもさまざまな提案をしておりますので、改めてちょっと申し上げます。
まず、銀行と保険会社が組んで変額保険とローンを一体化して販売したこと、また、銀行と証券会社が組んでワラントとローンを同時に同様に販売したこと、このとき、銀行とか保険会社あるいは証券会社は、元本割れのリスクがあることを十分顧客に説明せずに、バブルが崩壊した後、多数の損害が起き、訴訟が起こっているという現実があります。
そこで、私たちは、金融商品の販売と一体となった資金の貸し付けも含めて本法律の対象にした方がいいのではなかろうか、こんなふうに考えているところですが、政府原案にはこの点がありません。この点についてはどのようにお考えか、お答えをしていただければありがたいと思います。
○佐々木(憲)委員 予備的調査に対する都銀の回答が大変悪いという点について、私どもも同じ考えでありまして、早急に全面的な資料の提供を要請したいというふうに考えております。
それから、上田議員のお話のように、政府案の場合には銀行融資を対象としていないということであります。しかし、バブル期の金融被害の大変大きな特徴の一つは、不動産担保による大型フリーローンを使った銀行の提案型融資、過剰融資でありまして、御指摘の変額保険はその典型的な例であります。
銀行が、相続税対策になりますよということで提案をして、訪問販売を繰り広げ、年金暮らしの高齢者に自宅を担保にした億単位の過大な融資をした。銀行は、融資を拡大するためにさまざまな商品を勧誘したわけでありまして、それは、変額保険にとどまらず、不動産共同投資商品であったり、株であったり、不動産投資であったり、さまざまでありますが、共通しておりますのは、投資や商品購入の提案とセットで、自宅などを担保に返済能力を度外視した過剰な融資を行う、こういうところにあったわけでございます。このようなバブル期の銀行の行動を踏まえれば、融資を法案の対象とするのは当然必要なことだというふうに思います。
私どもの案では、一定の商品販売と一体で行われる融資を法案の対象としております。我が党案では、説明義務の強化とあわせて適合性原則違反も損害賠償責任を伴う違反行為としております。したがって、バブル期のような提案型融資、過剰融資が行われれば、これらの規定に触れることになります。そういう意味で、被害の防止、救済につながるものというふうに確信しております。
さらに、バブル期の過剰融資、提案型融資をめぐっては、銀行が自宅を競売して資金回収を図る事例が今相次いでおります。そういう意味では銀行の貸し手責任が問われておりまして、融資に対しては、本法案に引き続き、取り立て行為規制などを含む消費者信用保護法の制定に進むべきだというふうに私どもは考えているところであります。
○上田(清)委員 ありがとうございます。
極めて発展的な考え方を述べていただきましたが、せっかくですので、私どもが提案しました金融商品の販売と一体となった銀行の資金の貸し付けも本法案の中身の対象にすべきではないかという議論について、政府側の御答弁を聞きたいのですが、いかがでしょうか。
○大野(功)大蔵政務次官 金融商品の販売と融資というのは基本的に異なるものでございます。どこが異なるか、キャッシュフローがあるということは事実でございますが、もう一つの問題点、リスクをだれがとるかという問題を考えますと、リスクのとり手がお金を出した方、融資の場合はお金を出した方がリスクをとるわけでございます。そして、銀行側がリスクをとる場合と、それから、金融商品の場合は金融商品を買った方がリスクをとる、こういうことでございます。それが第一点。
それから第二点は、金融、融資の世界というのは、言ってみれば、金利とか根担保とか取り立て行為とか、こういう問題が議論になるわけでございまして、その議論のなり方としては、いわば経済行為が社会的な問題につながってきている、こういう問題点であります。つまり、例えば商工ローンのときに問題になりましたけれども、目ん玉を売れとか腎臓を売れとか、こういう話はすべて金利が高いからなるんだというふうに直接つながってしまう。そこはきちっと区別して考えるのが融資の世界であろうと思います。そこは、金利を制限するとか、取り立て行為をきちっと整備していくとか、そういう社会問題に発展するならば刑法の世界で処理する、こういうことでございます。
この二つの問題を考えた場合に、特に第一点のリスクをだれがとるんだということを考えた場合に、私は、これは全く別の世界として処理すべき問題だと思っております。
○上田(清)委員 ちょっと、余りにもしゃくし定規に分けておられますが、御承知のとおり、現実の商品はそういうふうに分かれておりません。だからたくさんの損害賠償等々の訴訟が起きているわけでありまして、その辺の実態についてもそれぞれ各省庁が把握しておられる、そのことを先ほど岩國議員が極めて丁寧に追及をなされて、御説明をいただいておられます。
そこで、私どもが問題にしているのは、結局、そういう抱き合わせ商品的なものを厳密に分けることが非常にしにくい、そういう認識に立っているのですけれども、それでは、大野政務次官は、これまでにありました変額保険とローンの組み合わせあるいはワラントとローンの組み合わせ、そうしたものの、被害者からすれば被害、加害者からすればいろいろ食い違いだというようなことで言っておりますけれども、どれほどそういう訴訟が起きているかということについては御存じでしょうね、先ほど岩國議員が説明をされましたので。
大変な量ですよ。予備的調査でも相当明らかになったわけですけれども、半端じゃない量が全国各地で起きているわけですから、これについて、では、なぜそういう事件が起き、その問題解決はどうすればいいのかということに関して説明をいただかないと、何か、分かれていますという話じゃちょっと納得ができないんですね。なぜこういう事件が起きてしまっているのか、それについて説明をしていただきたいと思います。
○大野(功)大蔵政務次官 まず、変額保険の問題でございます。
変額保険の問題は、一番目に、商品のリスクに関する説明が十分でなかった、これはもう確実に言えることだと思います。それから二番目に、融資業者等が販売業者である保険会社と一体となってしまった。一体となって事実上勧誘販売行為を行っている。ですから、融資と金融商品の販売業者が一体となっている、そこに融資と金融商品の販売行為が一つになった、こういう二つの問題があろうと思います。
第一の商品リスクに関する説明が十分でないということでございますけれども、今回は、この法律によりまして、その点については、元本欠損のおそれがあるんだ、これは説明責任としてきちっと第三条で書いてございます。そういうふうに環境は整備されていくものと思います。
問題は第二点であります。第二点は、業法上の免許等があるなしにかかわりませず、融資業者等が事実上販売の代理、媒介、このようなこととしてみなされる行為を行った場合には、本法案の販売業者等としての変額保険に関するリスクの説明義務が課されることになるわけでございます。したがいまして、違反に対する損害賠償責任を負わなきゃいけない、こういう問題の立て方でございます。
このように、変額保険の問題につきましては、私どもは、本法案により、お客様の保護という点では充実されたものと考えます。
○上田(清)委員 もとより、説明義務の問題について、これまでの法体系の中で相当前に進んだ部分は認めるところでありますが、抱き合わせ商品等についての物の考え方についていま一つ納得ができない部分がありますが、後でまたそれはさせていただきたいと思います。
それでは、佐々木議員に最後にお伺いします。
ここは共産党の修正案で際立ったところかなと思われますが、顧客に対して重要事項を説明する際に、重要事項を記載した書面の交付を義務化するという点について、ある意味では相当厳しいと思われますが、どのような理由からこのような修正案を出されたのか、お伺いしたいと思います。
○佐々木(憲)委員 お答えいたします。
金融商品の販売の中で、業者と顧客の関係というのはいわばプロとアマの関係と言われております。したがって、顧客を保護するためには、リスクがあるということを形式的に説明すればよいとするのではなくて、業者に対しては、リスクの内容、どんな内容なのか、それからその程度はどうか、こういうものを含めて顧客がよく理解するまで説明する、そういう義務を課す必要があると考えております。
その中で、顧客の十分な理解を得るためには、重要事項について記載した書面を併用するということが大事で、書面を併用した説明というのが我々の考えであります。過去の被害事例でも、電話勧誘による口頭説明で、有利だということを強調するといった実態がありましたし、そういう意味でも書面交付の義務というのは大変重要だというふうに考えます。
大蔵省の答弁等をお聞きいたしますと、書面交付義務を課すと、書面交付をもって説明義務を果たしたというケースが生まれかねないというふうに言われていますけれども、これは我々からいえば、言い逃れにすぎないと思うのであります。
我が党案は、書面を交付して、そしてまた説明するということを義務づけ、書面交付がなければ、口頭のみでは説明義務を果たしたことにならないというふうに規定しているわけであります。このように規定すれば、大蔵省の言うような懸念は生まれないわけでございます。
なお、我が党は、契約前の勧誘時のこのような書面交付とあわせまして、契約締結後に遅滞なく契約内容の書面を交付する、契約書の交付ということを義務づけております。これは、過去の被害実例の中で、契約書面が業者の手元にだけ残って顧客には残らないという実態がありまして、損害賠償請求裁判が、契約書の提出を請求するというところから始めなければならないという実情があるということで、そういう点を踏まえて我々は提起しているわけでございます。契約前と契約後の二つの書面交付の義務ということが必要だというのが日本共産党の提案の内容でございます。
○上田(清)委員 ありがとうございました。
それでは、修正案についての御説明は結構でございます。ありがとうございました。
それでは、幾つも疑問点はあるのですが、一点だけ。
私は、リスクの説明についての立証義務は、やはり金融商品の販売業者が負うべきだというふうに考えております。それはなぜかということについては、突然ですけれども、今御出席の方々に幾つかお尋ねしようと思います。
宮澤大蔵大臣は、本当に政界の中枢でずっと御活躍ですので、家事に関して、私的な部門に関してはほとんどないと思われますのでお聞きしませんが、きょう政府参考人で来ておられる森事務局長、乾監督部長あるいは福田金融企画局長、せっかく出てきておられますので出番をつくってあげますけれども、家庭生活の中では結構それなりに、ああだこうだというお話もあるかと思います。
例えば、生命保険なら生命保険の契約をされたとき、日債銀の奉加帳のときみたいに、日生みたいにしっかり応接録をとったりしませんね。契約書の部分で、どんなリスクがあるかというようなことを聞かれるかもしれませんが、メモをとって説明者にサインをさせたりはしませんね。何かそういうしつこい対応をされたことはございますか。まず、森事務局長。