2000年11月21日 第150回 臨時国会 大蔵委員会 【119】 - 質問
決算剰余金特例法案、個人消費、生保予定利率引下げ問題について質問
2000年11月21日、大蔵委員会は、決算剰余金特例法案の審議が行われ、佐々木憲昭議員が質問しました。
この日、質疑終局後に、討論採決が行われ、佐々木議員が反対討論を行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 審議の対象になっておりますのが剰余金の処理の特例に関する法案であります。
そこで、大蔵大臣に端的にお伺いしますが、剰余金の剰余というのは何でしょうか。言葉どおり余ったお金と言えるのか。我が国の財政は借金が歳入のかなりの部分を占めておりますので、この剰余金というのは借金の使い残しではありませんか。
○宮澤大蔵大臣 御承知のように、我が国は単年度で予算を組んでおりますので、背景はともかくといたしまして、単年度で計算をしておると思います。すなわち、その単年度の財政を、国が帳簿を最終的に締めましたときに、今の財政の計算の仕方でどれだけの使い残しがあったか。その背景にどれだけの借金をしょっておるとかいうことは別にいたしまして、そういう意味においての剰余ということであろうと思います。
○佐々木(憲)委員 使い残しというわけですが、大量の借金をしているわけでありますから、借金の使い残しという性格を持っているということは言えると私は思うのですね。ですから、当然、少なくとも半額は借金の返済に充てるというのが当たり前でありまして、ところが、この法案では、全額を財源に繰り込むというわけであります。つまり、借金の残りも返さない、その上さらに借金を重ねるというのが今度の補正予算の特徴だろうと思います。これは将来必ず禍根を残すというふうに思います。これほど無理に無理を重ねる必要はないわけで、私は、根本的に疑問に思っております。
そこで、前提の景気認識についてお伺いをしたいと思います。
大蔵大臣は財政演説の中で、企業部門は景気回復の方向であるけれども、雇用情勢は依然として厳しく、個人消費もおおむね横ばいという認識を示しておられます。このせりふは何度も聞いてまいりました。問題はその原因であります。
なぜ家計消費がふえないのか、その理由を大蔵大臣はどのように認識しておられますか。
○宮澤大蔵大臣 これは、皆様がいろいろなお立場からいろいろおっしゃっていらっしゃいますが、一つは、やはり将来に対する国民あるいは消費者の不安。それは、社会保障を初めとする将来に対する国の政策が信頼できるほどきちっと立てられていない、またそれを追求すると、どうも負担はやや重くなるのではないかというふうに思われる等々から、そういう将来についての不安というのが一番大きいのではないかとおっしゃる方が多うございます。
それから、もっと短期的には、こういうリストラの状況でございますから、雇用関係あるいは給与が目先よくなっていく、上がっていくという期待はなかなか持てない、これも事実であろうと思います。
いずれも、両方の場合に財布のひもがかたく締まってくるということにつながる、そういう一般に言われていることは、私もそう思います。
もう一つ、私がしばらく前から考えておりますことは、我が国の経済社会は、いずれにしても21世紀にはうんと変わっていかなければならない。ITとかいろいろ言われておりますことがその半面のことでございますけれども、恐らく、変わっていくその中で、雇用に関する習慣あるいは労使の関連等々も、急に西欧型になるはずはございませんけれども、しかし、いつまでも終身雇用型あるいは年功序列といったようなことがそのまま残っていくとは限らないということをお互いが何となく考え始めているということが、従来のように、企業の設備投資、利益の拡大というものがやがて家計につながっていく、雇用につながっていくという、そこのところのつながりがどうも思ったようなスピードと思ったようなスケールで起こっていないのかもしれない。
しかし、統計的には有効求人倍率はよくなっておりますし、完全失業率は5%に達したことはないわけでございますから、一つ一つではよくなっているということを労働関係当局が言いますけれども、何となく、それならばもう少し早く家計がよくなってきそうなものだという、どうも私は、後から見ないとわかりませんが、今ここで、我が国の経済社会の大きな変化の中に雇用関連も一つ入っておるのではないかということも、とつおいつ考えていることの一つでございます。
○佐々木(憲)委員 今おっしゃいましたように、現状の認識では私もかなり共通の認識を持っております。民間の企業のリストラ、雇用不安、これが消費を減らす一つの原因だというふうに思います。それは、企業の利益が拡大をする反面、拡大をするというのは、リストラを当面強力にやるということで、売り上げがそれほど伸びないけれども利益がふえている、しかし反面では雇用が減り、雇用不安が広がり、その結果消費が冷え込む、こういう関係になっている。
それともう一つは、将来に対する不安。今大蔵大臣がおっしゃいましたように、社会保障に対する国の政策に対して信頼感が持てなくなっているのではないか。今度の補正予算を見ましても、年金ですとか介護、医療、直接これを改善する内容は盛り込まれておりませんので、したがって、この補正予算の効果は極めて私は疑問だというふうに思っております。
そこで、相沢金融担当大臣にお伺いをしますが、将来の不安という点で、保険の問題もかなり大きな要素としてあるのではないか。相沢大臣は、生保の契約者の予定利率の引き下げを検討するということを繰り返しおっしゃっておられます。この発言は、数千万人の契約者が大変驚いておりますし、また将来に対する不安として重くのしかかっております。
生命保険というのは、国の社会保障政策が不十分だということで、それを補完する性格も持っているわけであります。したがって、かなり無理をして生命保険に入るという方が多いわけでありますが、その資産を急に減額されるということになりますと、これは突然財産を奪われるようなものでありまして、将来設計が狂わされるわけであります。
したがって、相沢大臣の発言は、まさに将来不安をあおり、保険への不信をあおるという結果になり、そのことが景気回復をおくらせる要因にもつながるのではないか、そういうふうに私は思いますが、全くそのようには思われませんか。
○相沢金融再生委員会委員長 もし、そのように思われますと、全く私の意図しているところと逆さまになるわけでありまして、私は金融再生委員会委員長を拝命いたしましてまだ百余日でございますけれども、御案内のように、生保につきましても、日産、東邦、そして第100、大正、それに最近では千代田、また協栄と、実に六社も相次いで言うなれば破綻するという状況にあるわけであります。
これがやはり生命保険に対する一般の信頼感を失わせることになりまして、新規契約はふえない、解約がふえる、契約残高も減ってくる、いよいよ保険会社としても経営が苦しくなる。その上に、御案内のように、保険の予定利率にまで運用利回りが達しない。最近で申しますと、運用予定利回りが3・74になっていますけれども、実際は2・4%ぐらいにしか回っていない。いわゆる逆ざやでございます。これは、生保26社でいいますと、昨年が1兆6154億だと思いますが、そういうような数字がありますものですから、私は、生保でこのような破綻が今後続けて起きないためには、やはりこの逆ざやを何とか解消することも一つの選択肢として考えていかなきゃならぬのじゃないか。無論、そのほか経費も節減していかなきゃなりません。いわゆる費差益というものをふやしていかなきゃなりません。
そんなことがありますから、私は、ちょっと時間の関係がありまして、これ以上多く申しませんが、その予定利率の引き下げも一つの選択肢として、何とか生保が破綻をしないでいける方法はないかということを考えているのでございます。
○佐々木(憲)委員 今の発言は、保険契約者の犠牲の上で保険会社を守るような立場でありまして、これは私は容認できません。
予定利率の引き下げということが仮に法案化されて出たということになりますと、しかも、これを与党がごり押しするようなことになりますと、これは保険に対して解約が一気に進むという危険性さえあるのです。そうなりますと、解約の結果、破綻を促進するという可能性さえ生まれるわけでありまして、国民の不安をあおり、かつ解約を促進し、そのことが保険会社の破綻の引き金を引くという危険性さえあるわけでありますから、私は、そういう発言を繰り返すことはやめていただきたいと最後に申し上げまして、終わります。
○相沢金融再生委員会委員長 ちょっと、言いっ放しで、私も、おっしゃることを了承したようなことになってはまずいのであれですが、ちょっと意図が違うのでありまして、私は、そういうように保険に対する信頼を失わせることになると、これは保険会社にとってまずいということじゃなくて、破綻をしましたら、やはり保険契約者にとっても大変不利な状況になるわけなんです。ですから、そういうことが引き続いて起きないようにというのが私の気持ちでございます。
○佐々木(憲)委員 終わります。