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金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 中小企業融資)

2001年05月28日 第151回 通常国会 予算委員会≪経済・外交問題集中審議≫ 【130】 - 質問

「中小企業20万〜30万社が倒産の恐れ」独自試算が反響をよぶ

 2001年5月28日の予算委員会で、佐々木憲昭議員は、独自に試算した不良債権の最終処理の対象となる中小企業数を提示。「少なくとも20万から30万社の中小企業が不良債権処理の対象になる」。年間企業倒産件数(約1万8千件)の10倍以上の中小企業が倒産する可能性があることを明らかにしました。
 金融庁などの資料をもとにした試算にたいし、柳沢金融担当大臣は「データを持ち合わせていない」とのべるにとどまり、試算を否定することはできませんでした。

 さらに佐々木議員は、「銀行が資金の回収をおこなった場合、ほとんどの中小企業が再建されず、清算に追い込まれている」と追及。柳沢金融担当大臣は、「中小企業の場合は、清算型でやるのが簡単だから、件数としては多くでる」と、これを認めました。

 佐々木議員は、「中小企業は、不況の中で大変な苦境にあるが、景気さえ持ち直せば、立派に立ち直ることができる」と指摘。「『不良債権の処理』は、結局、大量の倒産と失業を生み出し、景気を後退させ、日本経済の基盤を崩壊させる」とのべ、実体経済の基本にある家計消費をあたためる道を追求するべきだと要求しました。

20万〜30万社が処理対象 佐々木議員の試算方法 
 金融庁の資料によると、大手16行の貸出総額(278.1兆円)のうち、処理対象となる不良債権(12.7兆円)の割合は4.6%を占めます。
 一方、帝国データバンクの資料によると、同16行の総貸出先数は867万件。総貸出先数の4.6%が不良債権処理の対象と仮定すると、約40万件が処理対象企業になります。
 16行の貸出先数に占める中小企業の割合は99.5%(金融庁発表)で、統計上、中小企業の中には「個人向け貸し出し」も含まれることから、その分を除くと少なくとも20万社から30万社の中小企業が不良債権の処理対象となります。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 小泉内閣は、構造改革を当面の最大の柱だと。それで、その中心として不良債権の最終処理というのを掲げておられます。しかし、これを実行すると、大量の倒産、失業が出てくるのではないか、それが下降局面に入っている景気を一層後退させて、大変な事態をもたらすことになるのではないかという不安が国民の中に広がっております。きょうはこの点についてただしたいと思います。
 まず、平沼経済産業大臣にお聞きしたいのですが、中小企業は、企業の数でいいますと99・7%、雇用の7割、大変重要な比率を占めていまして、地域経済をいわば底辺で支えている大変大きな役割を果たしていると思いますが、この中小企業の役割について、大臣としてどのように認識をされているか、端的にお答えをいただきたいと思います。
○平沼経済産業大臣 お答えをさせていただきます。
 委員御指摘のように、今日本では企業が485万社と言われておりますけれども、そのうち中小企業というものが484万社でございまして、御指摘のとおり99・7%でございますし、また、どれだけの従業員を雇っているかといいますと、これも御指摘のとおり70%です。
 したがいまして、この経済大国、経済立国のいわゆる経済の基盤を支えている、これがまさに中小企業の役割だ、このように思っておりますし、また、その中小企業は、中小企業基本法にもうたってありますとおり、やはり日本の経済の、いろいろ就業の機会でございますとか、あるいは経済の拡大、そういった面で中枢的な役割を担っている、このように認識しております。
○佐々木(憲)委員 この大事な、中心的な役割を担っている中小企業が、今回の不良債権の処理でどうなっていくのかという問題がございます。
 塩川財務大臣にお尋ねしようと思ったのですが、ちょっと今、突然いらっしゃらないんですが。
 では、竹中経済財政大臣にお聞きをしたいんですけれども、4月27日の記者会見で、中小企業について問われまして、「日本の中小企業の中では、世界に冠たる中小企業がたくさんある」とおっしゃいながら、「ただ、一部のいわゆる非効率な中小企業が残されているということも事実ですから、その部分の効率性が高まるような措置というのは、これはある程度はとらなきゃいけない問題だと思います。」と述べておられますね。
 そこでお聞きしたいんですけれども、あなたは、不良債権の最終処理に伴う中小企業の倒産、これも効率性を高める上で必要な措置だと考えておられるんでしょうか。
○竹中経済財政政策担当大臣 中小企業というのは規模が大きいか小さいかの判断でありますから、その中には当然、非常に一生懸命、しっかりと経営しているところと、いろいろな要因で必ずしも経営がうまくいっていないところがあるわけです。
 そういったところの非効率な部分については、先ほど午前中の会議でもありましたけれども、ある意味では、私たちが持っている人的な資産とか物的な資産とかをやはり効率的に使うことによって初めて景気の回復、経済の発展があるわけですので、その過程では、実はそういった意味での資本と労働の組みかえ、それは、端的に言えば整理される企業も一部には当然出てくるわけでありますけれども、そういったことを進めるということが部分的には不可欠になってくると思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、不良債権の最終処理を今後2年から3年という短時間で進めようというわけでありますから、極めてドラスチックなことをやることになるわけで、痛みを伴うという、今、整理される企業も出てくるとおっしゃいました。そうしますと、当然、中小企業にどれだけの影響が出るか、国民に示す責任があるだろうと思うんですね。
 竹中大臣にお聞きしたいんですけれども、最終処理に伴って、どれくらいの倒産が出ると予測しておられますか。
○竹中経済財政政策担当大臣 企業の数ないしは、しかも企業の大小別、しかもさらにそれを業種別というようなことになると、これはちょっと、私たちが今持っている技術的な予測水準では不可能だというふうに思います。
 究極的には雇用の問題が重要であるということでありますので、雇用に対する影響というのを私たち、今、経済財政諮問会議で雇用を中心に議論を進めているところです。
○佐々木(憲)委員 倒産が避けられないということを先ほどおっしゃったわけでありますが、そういう政策だけはどんどん進めるけれども、その影響は後から考える、これは極めて無責任だと私は思うわけであります。
 では、あなた方が実際進めようとしている不良債権処理でどういう結果が生まれるか、具体的にお尋ねをしていきたいと思います。柳澤金融担当大臣にお聞きをしたいと思います。
 まず数字を確かめたいんですけれども、最終処理というのは、銀行のバランスシートから不良債権を切り離し、オフバランス化するということだと。その対象となる不良債権の範囲、それからその金額、それは幾らと見込んでおられますか。
○柳澤金融担当大臣 緊急経済対策に、この不良債権処理の最終処理の問題がのせられているわけでございますけれども、これはまず、破綻懸念先以下の債権について、モニタリングのもとでこれをできるだけオフバランス化するように働きかけていく、これが一つあるわけでございます。
 それともう一つは、要注意先の債権についても、こちらはむしろ健全化するようにいろいろと相談に乗っていく。この両方をやることによって不良債権のオフバランス化を進めていこう、こういうふうになっているわけでございますので、言ってみると、要注意先以下のすべての債権が対象になるとも申し得るわけでございます。
 特に御関心の、パブリックプレッシャーのもとでモニタリングをして金融機関に格別の努力をお願いするということを考えておるオフバランス化の対象としては、破綻懸念先以下に区分される債権でございまして、その金額は12・7兆円、12兆7千億円というところでございます。
○佐々木(憲)委員 次に、お聞きしたいんですけれども、この12・7兆円という範囲にとどまるのかどうかという問題であります。
 午前中の柳澤大臣の答弁にもありましたけれども、大手行の不良債権処理に伴って、協調融資をしている地銀、中小金融機関も処理せざるを得なくなると、その分、当然処理対象はふえると思うんですね。それで新たな倒産、失業がふえれば、それはそれとして消費を落ち込ませることになり、さらにそこから新たな不良債権が発生する。
 ですから、この要注意先も、先ほど健全化するとおっしゃいましたが、同時にまた要注意先の債権も破綻懸念先に落ちる可能性もあるわけでございます。それも政府の方針では3年以内に処理する、こういうわけでありますから、処理される不良債権というのは12・7兆円よりは当然その枠を超える、実際にはもう少し大きな規模になると思いますが、これはいかがでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 12・7兆円というのはいわば主要16行の破綻懸念先債権そのものでございまして、先ほど言ったような手続に乗せてできるだけこれを最終処理するということでありますけれども、そうしたら地域金融機関には何も関係がないのかといえば、それはそうではありませんと。
 12・7兆円の処理をするに当たって、協調融資をしているという地域金融機関がある場合には、それもいろいろ相談に当然あずかるし、その処理というときには、なかなかこれが、本当に参加して損失を負担してくれるかどうかというのは非常にいろいろ、そのあたりがまさに難しい問題なのでございますけれども、そういうそれなりの影響を受けるということが当然言い得るわけでございます。
 今先生ちょっと要注意先以上の点についても御言及になられて、その中で、破綻懸念先以下に落ちるものもあるだろう、こういうふうにおっしゃられたんですが、我々のアクションで落ちるということはまず考えられないというふうにお考えいただいていいんであろう、このように思います。
 それもいろいろ、特定の銀行、名前を挙げるわけにいきませんけれども、そういったものについてはコンサルタントだとかそういうものを編成して、これを本当に活気のある企業にしていくというようなことをこれから指導していくというような、我々も大体そんなことを望んでいるわけでございますけれども、そういう中で切り捨てられる債権もありましょうけれども、あと残るものは逆にもっともっと現在の状態よりも元気のいい企業になってもらう、そういうことを考えて、そういう形でオフバランス化される。
 今、現にオフバランス化されている債権の中にも、これはもう正常化したのでオフバランス化しましたという申告をいただいている債権も現在でもありますので、これも、これから要注意先以上についてそうした働きかけをしていく場合には、そういったことが十分期待される、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 ちょっと私が質問をしたことに答えていただいていないんですが、つまり、その12・7兆円を超える部分が生まれるだろう、協調融資も伴った処理を行うということになりますと。その点について確認をしたわけであります。
○柳澤金融担当大臣 ですから、数字は挙げることはできませんけれども、それなりに影響を受けるでしょうと言いました。しかしまた、なかなか地域金融機関の中にはこの話に乗らないよと拒否する向きもあって、そういうものが現実の経済界の中では起こっているということをちょっと言及したわけでございます。
○佐々木(憲)委員 12・7兆円を超える部分というのは、地域金融機関も含めて処理をするということになれば当然生まれてくる。その要注意債権の中で正常化するものもあるとおっしゃいましたが、しかし私は、同時に、不良債権処理をやって倒産、失業がふえるということになりますと、それに関連をして、業況が悪化して債権の状態が悪くなる部分も新たに生まれてくるというふうに思いますけれども、そういう点はいろいろな議論のあるところだと思います。
 そこで、12・7兆というのは、いわば処理対象の最低ラインというふうに考えていいと思うのですね。問題は、この12・7兆円強の処理される不良債権の中に中小企業がどの程度含まれているか、この点についてお聞きをしたいと思います。
○柳澤金融担当大臣 これは先生お申し越しでございましたので、ここに答弁があるわけでございますけれども、中小企業が占める割合はおおよそ6割台である、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 今大臣は6割台というふうに御答弁になりました。しかし、それは、金額で6割台ということですね。
 配付いたしました資料を見ていただきたいのですけれども、これは金融庁からいただいた資料と帝国データバンクの資料を載せてありますが、大手16行の貸出残高に占める中小企業の割合、これは不良債権だけではなくて全体を示したものですが、確かに65%でございます。しかし、件数で見ますと、貸出先数に占める中小企業の割合というのは99・5%でございまして、企業数ではほとんど中小企業と言えると思うのです。帝国データバンクの資料もほぼ同様でございまして、圧倒的多数が、貸出先では中小企業ということであります。
 そこで、これをベースにして考えてみたいと思うのです。処理対象となる不良債権12・7兆というのは、この16行の貸出総額278・1兆円の4・6%なんですね、計算をしますと。この比率というのは、金額ベースの比率であります。つまり、全体の貸出債権のうちの不良債権の比率は、金額で4・6%ということになります。
 そこで、貸出先の件数はどうかということでありますが、総貸出先数は、帝国データバンクの資料では、16行ベースで867万件でございます。ですから、その4・6%、単純計算をいたしますと約40万件になるわけですね。ですから、件数で申しますと、これが処理対象ということになりますが、その中の99・5%が中小企業でございます。
 ただ、統計上、この中小企業の中には個人向け貸し出しもありまして、住宅ローンなども入っております。金額でいいますと、約3割が個人向けというふうに言われております。その分を除いて考えますと、少なくとも20万から30万の中小企業、これが処理対象となる、そういうことになると思いますが、柳澤大臣、大体そういう計算が成り立つのではないでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 これは件数的には、我々、なかなかデータが備えられておらないものですから、中小企業等、この等はまさに個人向けということでございまして、それが一体どのくらいの比率にあるか、今先生は、大体5割ないしは40%ぐらいですか、そのぐらいにお考えになられたようですが、ちょっと私ども、この計数の持ち合わせがございません。
○佐々木(憲)委員 今、持ち合わせがないとおっしゃいましたが、こういう計算が成り立つということを否定はされなかったわけでございます。
 そうなりますと、大部分の中小企業が清算型の倒産に追い込まれはしないだろうかということであります。
 この資料の次の2を見ていただきたいのですけれども、東京商工リサーチの調査で2000年の全国企業倒産白書、これを見ますと、民事再生法や会社更生法などの再建型というのは、昨年1年間で618件にすぎません。銀行取引停止処分や破産、特別清算などの消滅型、清算型ですね、これは1万8151件でございます。これだけで消滅型が大体97%近い、96、7%でございます。銀行が回収に走ると、圧倒的多数の企業は、再建されずに清算に追い込まれるというのが実態であります。ですから、20万から30万の中小企業は処理対象になる。こういうことを前提としますと、これらのほとんどが清算型に追い込まれてしまうのではないかと思いますが、柳澤大臣はどのようにお考えでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 先生が言っておられることを全面的に否定するデータはこっちに持ち合わせておりませんが、常識的に承知をしているところでは、やはり中小企業の場合には、清算型がとかくスピードを持って実現化してしまうことが多いということでございます。
 というのは、やはり小規模なものですから、清算型ということでやろうとすると、どちらかというと簡単というか、それで非常に件数として多く出てくる。それに反して、全体的に再建型というのはなかなか話し合いに時間がかかるという面もありますが、そういうようなことが一つあるということ。
 それからもう一つは、中小企業といえども、やはりのれん、技術、こういうような、いわば本当にその存在に企業としての価値があるというようなものについては、私ども、いろいろ企業実態等に配慮してという文言を入れさせていただいておりますけれども、こういうものについては、これを簡単に世の中から葬ってしまうということについては果たして経済社会のあり方としてどうかというようなことを考えながらこれを進めていこうというふうに考えている。
 この二点だけちょっと、御答弁というわけにはまいりませんけれども、申させていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 清算型にどんどん追い込んでいく、単純にそういうふうにしたくはないけれどもという、そういうお気持ちはわかりますが、しかし、過去の実績からいいまして、実態的にいいまして、つまり再生する企業というのは3%程度なんですよ。
 ですから、不良債権処理で20万、30万という中小企業が資金回収に追い込まれる、あるいは売り払われる、こういう対象として倒産に追い込まれていきますと、これはかなりの部分が再生できない、9割以上は消滅する、こういう大変重大な事態になるのじゃないか。
 この10年来、倒産はふえ続けております。昨年の年間倒産は1990年の三倍でございます。年間の倒産件数は1万8千件でありますから、その十倍もの中小企業を倒産させるというような政策を経済政策の名で進めるということは、極めて異常だと私は思うのです。
 中小企業の役割を平沼大臣は、大事だと、非常に基幹的な経済を支える部分として大事にしなければならぬというふうにおっしゃいましたが、どうも実際には中小企業の役割を否定することになるのじゃないだろうか。また、それは日本経済の基盤そのものを掘り崩すことにもなってしまう。
 中小企業は、デジカメですとかプリント基板ですとか半導体、DVDあるいは携帯電話、こういうIT産業の先端を担いまして、日本の物づくりを支えてきている部分が大変多いわけであります。それが、今の不況の中で受注がばったりなくなったとか、大変な苦境に追い込まれているわけでございます。その部分というのは、景気がよくなればまた持ち直すというような部分でもあるわけですね。
 しかし、今度の不良債権処理で一挙に処理を進めるというふうになりますと、その部分が崩壊してしまう、大変危険な状況になるのではないか。仮に債権放棄をしたという場合でも、ゼネコンの不採算部門、これは下請が切り捨てられるとか、あるいはリストラで雇用削減につながる、連鎖倒産も生まれる、こういうことも想定されるわけですね。まさに、こういうことをやっていくと、終わりなき最終処理ということになっていくのではないだろうか。
 政府は、今の日本を、デフレ状態にある、このように認定をされているわけですね。最終処理を進めると景気を当面後退させるということになるのではないかと思いますけれども、この点、平沼大臣、どのようにお考えでしょうか。
○平沼経済産業大臣 お答えさせていただきます。
 やはり、企業サイドの不良債権でありますとか、産業サイドの不良債務というものを処理していかないと、日本の経済の再生ができない。それを果敢にやる。その場合には、今佐々木委員御指摘のように、痛みが伴うことは私は事実だと思っています。
 ちょうど平成10年のときにバブルが崩壊して、そして金融機関、大変な貸し渋りが起こりました。そのときに一番大きな被害を受けたのは、委員も御承知のように、中小零細企業の方々でありました。そのために、国といたしましては、民間金融機関というのが、いろいろBIS規制ですとか、自分たち自身の体質改善のために貸し渋りというのが顕著でございましたから、これは御承知のように、当初20兆円の特別保証、さらにそれを10兆上乗せして30兆で特別保証をさせていただきました。
 その結果、利用してくださった方が、この3月31日で締め切りますと187万を超える。こういう中小企業の方々が現に利用していただいて、その中でやはり倒産も防げたし、雇用もある面では御承知のように確保できたと思っています。そして、保証させていただいたのも、10兆上乗せしてよかったなと思っているんですけれども、まだ若干ふえる可能性があると思いますけれども、その中で、30兆のうち29兆を超える保証、こういうこともさせていただきました。
 したがいまして、私どもといたしましては、特別保証制度は一応貸し渋りということで焦点を絞ってやりましたので、一応その使命は終わった、こういうふうに思っております。
 しかし、こういう不良債権、不良債務を処理するに当たっては、やはり痛みを伴いますから、それに対する、今申し上げたような形の中でセーフティーネットを構築して、まじめに業をやっておられる、そういう中小企業の方々に対しては、やはりしっかりと対応させていただかなければならないということで、これももう委員よく御承知だと思いますけれども、一般保証の制度の枠を拡大させていただくとか、あるいは連鎖倒産をするような状況に追い込まれたときは、その8千万円をさらに倍して1億6千万円の保証まではさせていただきますとか、その他この他きめ細かい対応をさせていただく。
 そしてさらに、そういう一時的な痛みの中で失業者が出てくる、その失業者をやはり救済する受け皿も同時につくらなきゃいけない。こういうことで、この25日に立ち上がりましたいわゆる産業構造改革・雇用対策本部で、15から成る、特に新規産業と雇用に力点を置いたそういう政策も私は打ち出させていただきました。
 そういうことで、痛みを伴うことは御指摘のとおりですけれども、やはり国としては、国のいわゆる経済の基盤を支えてくださっている中小零細企業にはきめ細かい対応をして、痛みを少なくする、そういうセーフティーネットを構築し雇用を吸収する、そういう政策もやっていきたい、このように思っています。
○佐々木(憲)委員 今、大臣の答弁で、痛みを伴うけれどもやるんだということでありますから、当面のデフレ状態、景気の急速な下降局面を加速する作用を及ぼすということは否定できないわけであります。
 そこで、セーフティーネットのお話をされましたけれども、倒産を防ぐセーフティーネットは今度提案されているんだろうか。倒産したらそれで終わりであります。
 つまり、先ほど30兆円の中小企業金融安定化特別保証制度のお話をされましたね。しかし、これは3月でもう終わっているんです。それで、12月に一般保証の限度額を引き上げる、枠の拡大をされた。これは一般保証であります。今度新たに不良債権処理として出されてきたこの政策に対応する中小企業を救うセーフティーネットはありません。出ていないわけです、新しく。
 ですから、いろいろ、ああであればいいな、こうであればいいなというお話は抽象的にはありますけれども、具体的に、今こういう形で実行していくと、中小企業の倒産が非常に激しく進んで、経済の活力そのものが失われるんじゃないだろうか。新しく企業が起こるという話もありますけれども、しかし、こういう中で本当に新しい企業が生まれるのかどうか。
 倒産件数は急増していますから、そういう中で不良債権処理でさらに20万、30万という会社がつぶれるというようなことになれば、しかも倒産以上に、廃業の数というのはその20倍あるわけです、産地中心に調査しますとね。一体どこで新しい企業が生まれるのか、全然保証はないわけであります。
 中小企業白書によりますと、企業数はこの8年間約38万社減っております。中小企業は37万社減っております。あなた方がふやすと言っているサービス産業でも、開業自身が非常に大きく減っております。
 この資料を見ていただきたいんですけれども、開業率と廃業率を見ますと、廃業する企業の方が開業よりもどんどんふえておりまして、そういう点でいいますと、まさにセーフティーネットどころか、中小企業はどんどん犠牲を押しつけられている。今でも大変な痛みを強いられているのに、さらに痛みを我慢しろ、こういう政策というのは、これは大変冷たい政策であり、経済にとってもマイナスになるんじゃないだろうか。
 東京大田区の中小業者、中小企業の経営者の話を私たち聞きますけれども、4月から仕事がなくなった、不良債権処理をやられるとばたばた倒産する、こう訴えているんです。あなた方の政策を実行していくと、再起不可能な中小企業を大量に発生させることになる。一方では、ゼネコンあるいは大手流通業界には、いわば大企業には債権放棄で借金棒引きだ、まあ、それはリストラを前提としてやる。大銀行に対しては巨額の税金投入をやる。こういうやり方は私は余りにも逆立ちしていると思います。
 一体、経済対策という名で、倒産や失業が出るのは当然だ、あるいは大量に発生させる政策というのを実行している国があるだろうか。アメリカではつい先日、減税政策が可決されました。まさに減税による個人消費の拡大であります。ヨーロッパでは労働時間の短縮によって雇用拡大であります。これが経済政策の名で実際に実行されているわけであります。
 しかし、日本だけが、倒産、失業を生み出すということを政策の柱にしている。日本のような国はありません。将来の展望は果たしてあるのか、全然その保証はない。私は、今大事なのは、実体経済の基本にある家計消費、ここをどう温めるか、そういう政治にやはり切りかえていくということが大事だと思うのですね。景気を回復軌道に乗せる、そうしてこそ不良債権も優良債権に変わる、こういう立場で日本の経済を再生させるということが大事であって、これを徹底的に追求するというのが本来の政策のあり方だということを申し上げまして、もう時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

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