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金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 金融機関の破綻, 中小企業融資)

2001年11月07日 第153回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【145】 - 質問

新生銀行会長への参考人質疑、会長は、強引な債権回収への「反省」と「貸出増」を約束

 2001年11月7日財務金融委員会で、新生銀行の八城政基会長らを招致して参考人質疑が行われ、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。

 新生銀行は、経営破綻した日本長期信用銀行を公的資金によって身ぎれいにしたうえで、米国投資資本に売却して誕生した銀行です。
 新生銀行は、公的資金の資本注入を受ける条件として中小企業向貸出を増やす計画を金融庁に提出していますが、今年3月末までの1年間で242億円増やすはずが、3408億円の減少となり、金融庁から業務改善命令を受けています。
 質疑のなかで佐々木議員は、新生銀行が要注意先債権を強引に回収し、破綻先を増やしているのではないかと、新生銀行の中小企業に対する融資姿勢を問題としました。
 
 佐々木議員は、八城新生銀行会長に対し、「公共的性格と私的利益の追求という銀行の持つ2つの面のなかで、私的利益の追求が優先しているのではないか。これが、中小企業向け貸出を未達成にしている大きな原因になっているのではないか」と指摘し、「経済全体にとっての金融の役割を考えて、中小企業が再建・再生できるような支援を行う姿勢に銀行が立つべきだ。それが銀行にとっても将来の利益を増やす土台を造る道になる」と求めました。
 八城会長は、「企業の中身をよく精査し、リスクが大きいものについては期日が来れば短期のものについては返済をお願いしている」と資金回収を合理化する一方で、「しかしそのやり方が性急すぎたということについては反省している」と述べました。
 また、中小企業向貸出計画の達成について、「ご発言を厳粛に受け止め、絶対に達成したい」と約束しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、両参考人にお聞きをしたいと思います。
 先ほど来、鈴木議員の質疑もありましたが、社長ということを大変強調されておられます。銀行というのは私企業でありますから、自己の利益を追求するというのは当然そういう面があると思いますね。同時にまた、金融という公共的な性格を持つ、そういう部門の運営をなさっておられるわけでありまして、そういう点では大変公共性の高い性格を持っているというふうに思うわけでございます。
 そこで、両社長にお聞きしますけれども、この私的な利益を追求する面とそれから公共的な性格を追求する面、これはどちらに重点を置いて経営をなさっていこうとされているのか、それぞれ御見解を伺いたいと思います。
○八城参考人(株式会社新生銀行代表取締役会長兼社長) お答えいたします。
 私的企業として大事なことは、銀行にとって一番大事なことは、実は自己資本が安定しているということだと思うのです。自己資本が非常に低い水準に落ちますと、銀行はつぶれます。つまり、資金の出し手がなくなってしまう。かつての長期信用銀行がなぜつぶれたかということを考えてみても、資金の出し手がなくなったということからつぶれた。そういう意味では、銀行はまずリスク管理を徹底してちゃんとやらなきゃならない。
 しかし同時に、公共的な性格としてお客様との取引がございますから、それは企業であれ個人であれ、銀行業としていたすべきことというのは、例えば必要な資金を提供する。資金の提供をするときに、お客様がどういうふうな計画を持っておられるか、そしてその資金の使途は何であるか、そして資金の返済能力はあるのか、返済計画はどうなっているのだということは基本的なことだと思うのです。あるいはこれはバブルの影響かもしれませんが、日本ではそういった大事なことが忘れられたのではないかというふうに思います。
 ですから、公共性と同時に、そのお客様の持っている資金の需要の性質等々、そういうものも十分考えて運用する必要がある。銀行はどうしても、必要な資本が毀損された場合には、一遍につぶれてしまうということは起き得るんですね。例えば10%自己資本比率があっても、何かの出来事によってこれが一遍に毀損されるということはあります。そういう意味では、やはりリスク管理は非常に大事だというふうに思っています。
○丸山参考人(株式会社あおぞら銀行代表取締役社長) 私は、極めて俗な言葉で申し上げますが、私企業として何を重視するかと言われますと、利益と申し上げたいと思います。たまたま、今、八城社長も自己資本ということを申し上げましたが、これもまたやはり利益の集積があって初めてなし得ることだと思うんですね。ですから、私は利益ということが第一だとは思いますが、しかし同時に、これはまた利益至上主義であってはならないのは言うまでもないと思います。そこに、バランスのとれた利益ということでないと世に受け入れられない、こういうことだと思います。
 私どもの場合に、国民の皆様の負担によって再生したという事実がございます、これは新生さんも同じことですけれども。そういうことを深く認識しておりまして、それゆえにこそ、収益力のある健全な金融機関として、金融システムの安定と社会経済の発展に貢献していくという使命を痛感しております。そういうことによって公共的な立場もまた同時に果たしたい、かように思っております。
○佐々木(憲)委員 今、私企業としての利益を追求するということを通じて公共的性格を果たしていきたい、両社長それぞれ、少しニュアンスが違うかもしれませんけれども、そういうことをおっしゃったように私は感じたわけでありますが、やはり、公共的性格というものを常に意識していないとどうしても利益追求を第一に考えてしまって、その結果、融資先、特に弱い中小企業などにマイナスの影響が及んでくるという危険性を伴っているということをぜひ自覚してやっていただきたいと思うわけでございます。
 そこで、新生銀行の八城社長にお聞きしますけれども、10月4日に金融庁から業務改善命令を受けられたわけであります。中小企業向けの貸し出しの計画の達成に向けた具体的かつ実効性のある体制の確立を含む業務改善計画の提出とその実施、これを求められたわけですけれども、実態を数字で見せていただきますと、ことしの8月のフォローアップによりますと、ことし3月の計画は200億円の増加ということでありましたが、実績ではマイナス1722億円でありまして、これはもう、ほかの銀行と比べましても極めて異常な低さでございます。
 具体的かつ実効性のある体制の確立ということでありますけれども、そのためには、なぜそうなったのかという原因、ここをやはり徹底して明らかにしなければならないと思うわけであります。八城社長はこの点について、どこに一体一番問題があったのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
○八城参考人 お答えいたします。
 昨年、私は実は国会に三回招致されまして、8月であったかと思いますが、その当時、新生銀行に対していろいろな批判が出ておりまして、それはいろいろな理由がございましたけれども、それで、ある意味では新生銀行のイメージが非常に落ちたということがございます。健全な中小企業が私どもに返済をされて、借りかえをしていただけなかったというケースがございます。それから、譲渡後五週間目につぶれましたそごうに関連する中小企業もあり、特別の名前を出すのはどうかと思いますが、既に破綻したところでございますから。そういった関連企業の中小のものからの融資がなくなったということもございます。
 さらには、もっと積極的に申しますと、大企業あるいは金融機関の関連会社、子会社で、中小の企業がございますが、そういうところは、大企業自身が有利子負債を削減するという計画を立てて、関連会社から有利子負債を返したいということで減ったものがございます。ですから、複合的な理由でありますが、昨年の下期には、正常先の中小企業への融資は減っておりません。
 したがって、原因分析は十分いたしました。そして、ことしについてはその数字を絶対に達成しなければならないというふうに考え、具体的な施策をつくって現在実施中であります。
○佐々木(憲)委員 今の御説明ですと、客観的な状況の変化の上に立った相手先の事情というのをかなり説明されましたが、みずからの銀行の貸し出し姿勢としての分析、自己検討というのが極めて不十分ではないかと私は感じるわけであります。
 来年3月期の中小企業向けの貸出計画というのは2兆3532億円という計画となっておりますけれども、これは、昨年の、平成12年の3月期と比べましてプラスになっているんでしょうか、マイナスになっているんでしょうか。
○八城参考人 お答えいたします。
 13年3月の実績は2兆3350億円でございまして、14年3月末、来年度でございますが、ふえておりまして、2兆3532億でございます。(佐々木(憲)委員「その前の年の話です」と呼ぶ)前の年に比べて、来年はふえるということでございます。その前の年ですか。旧長銀でございますか。(佐々木(憲)委員「12年の3月と比べて」と呼ぶ)12年の3月は2兆6758億円でございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、2年前に比べますと3226億円のマイナスになっているわけであります。
 本来ですと、この中小企業向け融資を計画的に、計画どおり実施をしていれば、さらに来年も大きくプラスということになっていくんでしょうけれども、一度どんと落ちましたので、そこから、つまり、ことしの3月期から出発しますと、それは、落ちたところから多少は上がるかもしれないけれども、しかし、以前の、1年前の状況と比べてもまだまだ低い水準にある。つまり、マイナス3226億円の水準だということをぜひ自覚してやっていただきたいと思うわけです。つまり、本来果たすべき中小企業に対する融資という役割を軽く考えずに、ぜひきちっとやっていただきたいということを私はその数字を見て申し上げたかった点でございます。いかがでしょうか。
○八城参考人 先生の今の御発言は厳粛に受けとめておりますので、絶対に達成をしたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 それから、中小企業を含めた全体の貸し出しの状況を見ますと、増加計画に比べて1兆1千億円弱、これも低いわけであります。これは何を意味するのか。ほかの銀行と比べましても、これだけ大幅に貸し出しが減っているというのはないわけでございまして、かなり大規模な資金の回収を図ってきたのではないか、こういうふうに見ざるを得ないわけでありますが、この点は、どういう方針でこのように貸し出しを減らしてこられたんでしょうか。
○八城参考人 譲渡時において、要管理債権以下悪いものが全体の貸出債権の約2割近くありました。そして、現在でもその数字は減っていません。これは、普通、他行の平均は6%でございますから、三倍以上の不良債権があるということです。したがって、我々は数字を伸ばそうと思っても、確実にリスクが高くてふやせないものもあるわけです。ですから、その中身が大分違うということを一つ御理解いただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 8月のフォローアップによりますと、要管理債権は8015億円から4530億円に、約半分近く減っているわけですね。これに対して、破綻更生債権及びこれに準ずる債権、いわば破綻先でありますが、これが2891億円から4729億円にふえていると。
 これを見ますと、いわば要管理先債権、要注意先債権とぴったりではないかもしれませんけれども、その債権が相当大幅に減っているということは、これは要管理先と言われる相手に対して相当厳しい回収をやったとしか思えないわけでありまして、その結果破綻先がふえたんじゃないか、こういうことが想定されるわけですけれども、そういう事実はありませんか。
○八城参考人 解除権を行使しますと、行使された債権は、例えば100億の債権であれば、要管理でありますと初年度では27%引当金がありましたから、その差額が預金保険機構から来ます。その債権が、したがって、RCCに預金保険機構を通じて行くというふうに私は理解しております。解除権の行使が、総額におきまして約5500億近くあったと思います、したがって、この債権が減ってくるということになります。
○佐々木(憲)委員 どうもいろいろな報道を見ますと、利益が上がっている企業なんだけれどもも、借りかえを拒否されて延滞損害金を14%上乗せした例があったというふうにも書かれております。そういう事例もあるんですか。
○八城参考人 延滞金というのは原則として14%ですが、そういう事例があるということは、私は現在の時点では知りません。
 しかしながら、利益が出ていても、例えば債務超過である、あるいは累積損失が続いているという場合には、これは破綻懸念になるわけです。したがって、我々はよくお客様の財務内容を精査しています。その結果、破綻懸念であれば、要管理から落ちていくという場合があります。
 先生も御承知のように、先ほどほかの議員の先生にお答え申し上げましたが、マイカルは正常債権でした。ことしの6月末になって初めて要注意になったわけですから、一概に要管理、要注意といっても中身をよく精査しなきゃならない。その場合に、リスクが非常に高いというものについては、短期の融資については期限での御返済をお願いするという場合がございます。
○佐々木(憲)委員 そこのところが、中小企業などにとっては大変厳しい取り立てがあったというふうに言われる点だと思うんですね。
 つまり、公共的な性格を持つ金融という事業と、それから私的企業としての利益を追求する面と、どちらに重点かということを考えた場合に、どうも私的企業としての利潤追求を第一に考えた行動をとっておられるのではないのか。この点が、中小企業向けについては計画を未達成にしている大きな要因となっているのではないのか。
 利益が上がっているにもかかわらず、破綻懸念になるというふうに先ほどおっしゃいましたが、それは、中小企業にとっては今、大変な深刻な不況の中で四苦八苦しているわけでありまして、そういうときに、やはり利益が上がったり上がらなかったりというのはあるわけです。しかも、経営にとってはなかなか環境は厳しい。そういうものを、これは将来危ないぞというふうにどんどんレッテルを張って処理をする、回収を図るということになっていきますと、中小企業にとっては、これは大変な銀行だということになるわけであります。
 もっとやはり経済全体にとっての金融の役割ということを考えていくとすれば、これらの中小企業に対して、中小企業が本当に再建できるような、再生できるような支援を行うという姿勢に銀行自身が立つということが私は大事だと思うんです。そのことが、その中小企業からの利益を得ていく道でもある、将来の利益をふやしていく、その前提を、土台をつくっていく道でもあるというふうに私は思うわけでございます。
 どうも、一昨日の朝日新聞で、八城社長はこう述べておられるんですね、「日本の文化は困っている人を助けるのがやさしい銀行だが、それでは銀行が破たんし、預金者が困ることになる」と。つまり、困っている企業に対して優しい銀行というのはよくない銀行であると。つまり、厳しくやらなきゃいかぬ、そうしないとこちらが倒れる、こういう発言をされているわけですけれども、果たしてそれほど、新生銀行というのは倒れるような銀行なんだろうか。
 例えば、ことしの3月期の業務純益あるいは経常利益、当期利益、これはかなりな規模になっていると思うんですね。あるいは株についても配当ということをされているわけであります。ですから、みずからの利益はかなり上がっているわけでありますから、その点で中小企業に対してはもっときちっとした、優しい対応というのか、中小企業の経営を支援する、そういう姿勢に立つ必要があるんじゃないかと思いますけれども、その点については今どのようにお感じになっておられますか。
○八城参考人 中小企業の経営がうまくいくように支援するということは当然のことでございますけれども、私が先ほど申し上げたのは、利益が出ているにもかかわらず回収をしているというのは私が言ったことではございませんで、利益が出ている場合でも、場合によっては業況は非常に悪くなっていて、しかも債務超過になっているという場合もあるわけです。ですから、個別の企業の中身について精査をして、それが企業として再生できるなら当然協力をしなきゃならないというふうに考えています。
 それから、もう一つ、朝日新聞の記事をクオートされましたけれども、朝日新聞で私が言っておりますのは、日本ではとかくバランスシートの右と左の左側の話ばかり出てくる、右の方はどうなるんだろうか、これも、個人である、預金者の保護ということが大事ではないだろうかという意味で申し上げたんです。
 もしも解除権がなかったとすると、計算上でありますが、ことしの3月末までに、丸1年間の間にどれだけ損失が出たか。担保を全部勘案した後の話ですが、1600億円損失が出ている計算になります。ということは、業務純益の相当、何倍になりますか、健全化計画で出した八倍の損失が出ている。資本金は普通株が1200億円ですから、完全になくなっているという状態であります。
 そういう意味で、銀行としての健全性をやはり考えなければならない、したがって、お客様についてできることはいたしますけれども、リスクが余りにも大き過ぎるものについては、期日に来れば短期のものについてはお返しをいただくようにお願いをしている、ただ、そのやり方については性急過ぎたということを冒頭に申し上げたわけで、それについては十分反省もしているし、何回もお話をして、いろいろと提案もこちらからもさせていただくということでございます。
○佐々木(憲)委員 瑕疵担保特約についてお聞きしたいんですけれども、八城社長は、リップルウッドによる旧長銀買収は特約の実行が前提となっており、これは曲げられないと。それから、別な新聞によりますと、瑕疵担保特約の行使は当然だ、契約があるのに実行しないのでは株主に説明がつかない、こういうふうにおっしゃっていて、先ほども、マイカルはリップルウッドに買収されたときは正常債権であった、それがことしの6月で要注意先になったと。先ほどのお話ですと、破綻先とはまだ認定していないということでしたね。
 そうしますと、マイカルの場合は2割以上の減価という条件に達しているのかどうかというのが一つと、それから、この瑕疵担保特約をこれに対して実行するおつもりはあるのかどうか、この点お聞きしたいと思います。
○八城参考人 破綻をしたということは、瑕疵担保条項の瑕疵に当たります。したがって、解除権を行使することになります。
○佐々木(憲)委員 我々は、この瑕疵担保特約自体も、これは国民の税金を投入する一つの仕掛けであって、この仕掛け自体は非常に問題があるという立場でこれまで議論をしてまいりました。また、公的資金をこれほどつぎ込んで、身ぎれいにして外国資本に売り渡すというようなやり方も、これ自体非常に問題がある。したがって、銀行業界全体として、こういう破綻した銀行についての処理は、みずからの負担とみずからの責任で行う、これは銀行業界として。そういう立場を我々は主張してまいりました。
 現在、こういう形で新生銀行、あおぞら銀行というのが生まれているわけですけれども、しかし私たちは、現状こういうお二つの銀行が生まれ、その銀行はどういう役割を果たすのかという点で、これは今さら否定できない状況ですから、したがって、その銀行が公共的な性格をできるだけ果たすようにということと、つまり中小企業に向けてしっかりした融資をやっていただきたいということと、それから、公的資金を使うようなこういう仕掛けは、できるだけ早くこれはやめていただきたい。社長に言ってもしようがないわけでありますが、これは国が、つまり国会が決めたわけですけれども、そういう仕組み自体はやはりやめるべきだということを我々考えているわけでありまして、それは、今後この委員会でいろいろな形で我々も議論をしていきたいというふうに思っております。
 きょうは大変ありがとうございました。

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