2002年04月24日 第154回 通常国会 内閣委員会 【168】 - 質問
ヤミ金融の厳正な取り締まりを要求 「適切な措置を指導する」と警察庁答弁
2002年4月24日、内閣委員会で、佐々木憲昭議員は、深刻な被害が広がっている違法なヤミ金融の実態を明らかにし、厳正な取り締まりを求めました。
貸金業者を営むには貸金業規制法に基づき行政に登録することが必要ですが、無登録のヤミ金融業者が横行し、出資法の上限金利(年利29.2%)を超え「トーサン」(10日で3割)、「トーゴ」(10日で5割)などの違法な高金利を押しつけています。
無登録の営業は、貸金業規制法違反であり、3年以下の懲役、300万円以下の罰金が科されます。
佐々木議員は、住所、氏名、顔写真などが入ったビラや借り手の名前と実印だけが入った「白紙委任状」や「建物明渡契約書」、「入居及び鍵引渡し承諾書」などを示し、「実印や印鑑証明を取って本人に無理やり署名させ、ヤミ金融業者が後から何でも書き込める」と悪質な手口を紹介。「こういう契約書は無効ではないか」と法務省の見解を求めました。
答弁に立った法務省原田官房審議官は、「契約の内容が公序良俗に反すれば民法90条違反で無効である。契約の締結に際して強迫的な行為があれば民法の取り消しもできる。合意の範囲を超えて契約書の中身を勝手に一方の当事者が補充すれば、合意を超える部分については効力を生じない」と答弁しました。
また古田刑事局長は、「人を脅して財物を提供させれば、恐喝罪、強要罪にあたる。さらに最初の合意を超えて勝手に合意と違う内容の文書を他人名義でつくると私文書偽造、それを使えばその行使罪が成立することがある」と答えました。
佐々木議員は、「ヤミ金融は存在自体が違法なのだから、警察がただちに取り締まって処罰するのは当たり前だ」と指摘し、「現場の警察の対応はあまりにも冷たい」と被害者から寄せられた事例を示しながら、警察の徹底した取り締まりを求めました。
これに対し警察庁の黒沢生活安全局長は、「相談や届出があれば、犯罪等が明らかでないものであっても、刑罰法令に仮に抵触しない事案であっても、個々の事案に応じていろんな指導をしたり警告する。適切な措置を講じるように第一線を指導する」と答弁。
村井仁国家公安委員長も「国家公安委員会において今日の議論を披露し、相談をした上で、適切な対応をする」と答弁しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
不況が長引きまして、倒産、失業も大変深刻であります。こういう中で、サラ金から借金をしたり、あるいは違法なやみ金融にひっかかって多重債務に陥るという事例が多発しております。その結果、自己破産ですとか夜逃げ、あるいはあげくの果てに自殺というような事件もふえております。
やみ金というのは、出資法の上限金利29・2%をはるかに超えて、例えばトーサン、10日で3割ですね、あるいはトーゴ、10日で5割、こういう極めて異常な高金利で貸しているわけであります。中には、夜明けの3割、前の日に借りたら次の日の朝までに金利3割そろえて返せ、こういうものもあるわけですね。
このようなやみ金にひっかかった多重債務を初めとして、破産宣告者数はこの5年間で約3・4倍にふえております。自殺者は95年ごろからふえ始めまして、98年からは経済的理由が急増しております。こうして年間の自殺者数は合計3万人を超えるという状況ですね。
そこで、村井大臣にお伺いをいたしますけれども、このような事態をどのように認識されておられるか、御見解をまずお伺いしたいと思います。
○村井国家公安委員会委員長 この今委員御指摘のような行為というのは、恐らく無登録の貸金業者によって行われているようなケースが多いのだろうと思いますが、景気の低迷でございますとか、あるいは社会情勢を反映しまして、資金繰りに苦しんでいる債務者あるいは中小企業主などを中心に被害が拡大していることは事実だと認識しております。
こういった事犯でございますが、国民生活に深くかかわるものでございまして、また、弱い者の弱みにつけ込む非常に悪質な行為だと考えておりまして、警察といたしましては、法令に違反する行為につきましては法と事実に基づきましてきちんと対応をしていくべきものだ、このように考えておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 最近、やみ金融が東京などの大都会を中心に跳梁ばっこしていると言われておりまして、極めてゆゆしき事態であります。
そこで、金融庁にお聞きをしますけれども、本来、貸金業というのは登録した業者しかやれないはずでありますけれども、いかがでしょうか。もし登録していない業者が金融業を営んだ場合には、どのような罰則があるでしょうか。
○田口政府参考人(金融庁総務企画局参事官) お答えいたします。
貸金業規制法によりますと、第3条第1項におきまして、貸金業を営もうとする者は内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければならないというふうに規定されております。また、同法第11条第1項におきまして、登録を受けていない者は貸金業を営んではならないというふうに規定されております。この規定に違反いたしました場合には、同法第47条第2号によりまして、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」というふうに規定されております。
○佐々木(憲)委員 つまり、違法な存在なわけですね、やみ金融というものは。
このやみ金融を取り締まるのは金融庁なんでしょうか、それとも警察庁なんでしょうか。どちらでしょうか。
○黒澤政府参考人(警察庁生活安全局長) 警察といたしましては、従来から、無登録の貸金業等法令違反につきましては、法と証拠に基づきまして厳正に取り締まりを行っているところでございます。
なお、警察といたしましては、金融庁、財務局等の関係機関と密接に連携をいたしまして、取り締まりを推進いたしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 担当は警察庁だということであります。
そこで、金融庁にもう一度お聞きしますけれども、登録されていない業者が勝手に登録番号を使って、つまり番号を詐称するということですが、そういう形で貸金業を営むような事例があって一般の方から問い合わせがあった場合、この貸金業のこの番号は登録業者でしょうか、こういうふうに来たときに、金融庁としてはどういう対応をされるんでしょうか。
○田口政府参考人 お答えいたします。
まず、一般の方から、当該業者が登録業者かどうかということにつきまして各財務局あるいは都道府県等に問い合わせがございました場合には、各財務局で登録業者かどうかを確認してお答えをしているということでございます。
また、無登録で貸金業を営んでいる者の情報をそういう形で得ました場合には、貸金業規制法違反の疑いがあるということで、適宜捜査当局に情報提供を行っているということでございます。
○佐々木(憲)委員 それは、横の連絡を密にしているということ、それから、問い合わせがあった当事者に正確に答えると。そうしますと、一般にはどういうふうに周知されるわけでしょうか。
○田口政府参考人 金融庁におきましては、財務局登録の全業者のリストを金融庁のホームページに掲載しているところでございまして、それを通じて周知を図っているところでございます。また、東京都などにおきましても、類似の登録業者リストを掲載することによりまして、無登録業者か否かの確認をとるということができる形になってございます。
また、例えば関東財務局におきましては、無登録業者の中で関東財務局の登録番号を詐称して広告を行っている者につきましては、ホームページで公開いたしまして利用者の方に注意喚起をしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 関東財務局のホームページ、これを私は印刷して手元にありますが、こういうものですね。「悪質な貸金業者の情報について」ということで、例えば、どこどこは「登録がないにも関わらず、当局の登録番号を詐称した広告により勧誘を行っていることになります。くれぐれも御注意ください。」こういうふうに周知徹底を図っているということでありますが、警察庁に連絡をする件数というのは年に何件ぐらいあるのでしょうか。
○田口政府参考人 捜査当局への連絡の件数でございますが、私ども、無登録業者に関するものという区分では集計しておりませんが、無登録業者に関するものも含めまして、貸金業規制法等の法令に違反する疑いがあるとして捜査当局に通報いたしました件数は、平成10年度180件、11年度237件、12年度185件というふうになっております。
○佐々木(憲)委員 その数は非常に少ないという印象を受けるわけですね。実際に問い合わせをする、あるいは抗議の話が来る、そういう事例というのは全体の中の一部だとは思いますけれども、それにしても非常に少ない、被害者の数は何千何万とあるというふうにお聞きしていますので。
そこで、通報を受けた捜査当局の警察の側はこれにどう対応しているのか、これをお聞きしたいと思います。
○黒澤政府参考人 財務局、財務事務所とは県レベルでも連絡する場がございますし、今答弁が金融庁からございましたように、私ども、情報の連絡を受ける、あるいはその他の方法でいろいろ情報も入手することもあるわけでございまして、関係機関とも連携をいたしまして実態の把握に努めまして、法令に違反する行為につきましては、法と証拠に基づきまして厳正に対処をいたしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 最近、いろいろな新聞、雑誌など、特に夕刊紙ですとかあるいはスポーツ紙などで、大っぴらに貸金業の広告がこのように出ているわけです。こんなにたくさんあるわけですね。つまり、1日にこういうのが何ページかあるわけです。
こういう中で、例えば調べてみますと、登録番号を一応全部書いてはあるのです。しかし、この登録番号は実態と違うというのがこの中に含まれております。例えば、「一人でも多く皆様に実行します、10万円なら即オーケー、すぐ貸すお店」なんて書いて、電話番号と登録番号は一応書いてある。ところが、登録番号は全然違うのです。別な数字なんですね。ですから、全く登録番号詐称であります。
それから、例えばここに、「新店オープン、10万円なら皆様に貸します」というような広告が出ています。これも同じ、調べたら違うというようなことで、つまり、こういう広告がもうあちこちに、いわば虚偽の広告。それで、その実態を知らない人がこれにひっかかるということで、大変被害が広がっているわけですけれども、警察庁は、このような広告の中に無登録者が多数含まれている、こういう実態を把握されているんでしょうか。
○黒澤政府参考人 警察といたしましては、そういったスポーツ紙などに広告がなされておる、そういった中には、無登録の貸金業者の広告もあるということは承知をいたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、そういうものがあるという発見をした場合にはどのような対処をされるんですか。
○黒澤政府参考人 実態を解明いたしまして、無登録であるということが判明いたしますれば、それは無登録ということで違反になりますし、あるいは、それをきっかけにいろいろ捜査を進めた結果、刑罰法令に触れる、他の法令に触れるということもございますが、そういった場合に検挙等の措置を講ずる、かような対応をいたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 検挙等の事案というのは年に何件ぐらいあるんでしょうか。
○黒澤政府参考人 金融事犯といいますと、これは貸金業法でありますとか出資法でありますとか、いろいろな高金利事犯等も含めまして、詐欺も入りますが、昨年の数字で申し上げますと、事件数でございますが、全部で216の事件を検挙いたしておるところでございますが、この中で無登録事犯につきましては、99の事件を昨年は1年間で検挙いたしております。
○佐々木(憲)委員 本当に極めて少ないと思うんですね。1日でもこういう形で数件、一つの夕刊紙だけで出ているわけです。これはもうともかく年間にしますと大変な数なんですよ。にもかかわらず、その無登録について検挙した件数は99だという100にも満たない状況でありまして、これでは本当にしっかりした対応をしているのかどうかというのが疑わしいと思わざるを得ませんね。
こういうやみ金から借りますとどんなことになるかというと、返済が少しでもおくれた場合、本当に昼も夜もめちゃくちゃな電話での催促、あるいは大声を出して騒ぎ回る、脅迫して車に乗せて引っ張り回すというようなことが頻繁に起きているわけです。
お配りした資料があると思いますが、この一番最後のところをちょっと見ていただきたいんですが、例えばこういうビラですけれども、こういうものが町の中にばらまかれる、あるいはこれが電柱に張られる。
これは、真ん中にありますのは、この借りた本人の顔写真なんです。それで、どこどこ営業所に勤務する何々は多額の借り入れを行い遊び回り再三の支払い要求にも応じず云々と書いて、公共的職業につき社会のモラル何とか、よってここに糾弾するとかなんとか書いてあります。
こういうものをばらまかれますと、これはもう本人はとてもその地域で生活ができない、あるいは家庭が崩壊する、そういう状況になるわけでありまして、こういうおどしというのは当然この取り締まりの対象だと思いますけれども、これはいかがでしょうか。
○黒澤政府参考人 事案の態様、個々具体的な事実関係によりますけれども、一般論で申し上げますれば、例えば名誉毀損でありますとか信用毀損、脅迫、いろいろな罰則法令が考えられるかと思いますが、個々具体的な事案に即して、私ども積極的に対応をいたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 積極的に対応していただきたいわけですけれども、例えば、お配りした資料を見ていただきたいのですけれども、こういうことをやっているんですね。
これは「委任状」というのが一番最初にありまして、私は何々を代理人と定め左の行為をする権限を委任いたしますと。何も書いていないんですよ。つまり、だれだれを代理人と定める、だれだれという名前が空白、左の行為、その行為の中身も空白、そういうふうにして、いわば白紙の委任状に特定の借金をした個人に署名捺印させる。しかも、これをおどしをかけてやるわけです。
それから、次を見ていただければ、その借金をした人の住宅、その「入居及び鍵引渡承諾書」なんというものも、これに名前を書かせて、それでとる。年月日も何も書いていない。それから、「引渡証明書」というのがそこにある。こういうことで不動産などもお渡しいたしますというようなこと。
それから、その次をめくっていただきますと、「建物明渡契約書」、これも、実印を本人からとって、それから印鑑証明もとって、そしてその本人に無理やり署名をさせて、あとは何でも書ける。
それから、その次に「売渡書」。売り渡し書といったって、何を売り渡すのか、物件の表示も何もない。幾らでも書ける。一、何々、二、何々と全部書ける。こういうものをつくって、ともかくおどしをかけて、本人に署名だけさせる。
こういうものが一体有効なものなのかどうかというまず根本問題があるわけでありまして、これは、配付しましたのは全体の一部でして、私は手元にたくさんこういうのがあるんです。これも個人、一人についてこんなにたくさん、もういろいろな書類をつくって、実印をとって、あちこちに押すわけです。たくさん集めるわけです。これを使って勝手放題をやるということをしているわけです。
まず、法務省にお聞きをしますが、こういう契約書というのは有効なのかどうなのか。これは契約書まがいのもので無効だと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○原田政府参考人(法務省大臣官房審議官) 無登録の貸金業者が、まず金銭消費貸借契約を結ぶ、それに付随して、今御指摘のございましたような建物明け渡し契約であるとか入居及びかぎ引き渡し承諾のような紙、契約書を取り交わすということでございますが、まず、その最初の金銭消費貸借契約自体は、これは、取り締まり法規に違反する、つまり、登録を受けないで貸し付けを業としていること自体は違法でございますけれども、それによって消費貸借契約自体が直ちに無効ということにはならないと一般には解されております。
ただ、それに伴いまして、白紙委任状であるとか建物明け渡し契約書という、また別途の契約が結ばれております。これらにつきましては、やはり個別的な事案によって判断せざるを得ないと思いますが、その契約の内容がいわゆる民法に言います公の秩序、公序良俗と言われるものに反するようなことになれば、これは民法90条の規定に違反して無効になる、このように考えておりますし、さらに、このような契約の締結に際して、仮に強迫的な行為があるということになりますと、民法の取り消しということもできます。
さらに、合意の範囲を超えてこの契約書の中身を勝手に一方当事者が補充するというようなことになりますと、それは合意を超える部分については、両者の意思の合致がございませんので、その部分について効力を生じないということは当然のことであろう、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 これは本当に無効なものだと思いますし、こんなことが平然と通っていたら世の中めちゃくちゃになると私は思うんです。
そこで、本人の意思に反して、脅迫されてこういうものをつくらされた、あるいは、合意をしたとしても、その合意の範囲をはるかに超えて使われるという場合、こういう場合にはどのような罰則があるのか、これをお聞きしたいと思います。
○古田政府参考人(法務省刑事局長) 実際の行為について何らかの犯罪が成立するかは、それぞれの事実関係によることではございますが、一般的に申し上げますれば、例えば人をおどして財物を提供させる、こういうことになりますと恐喝罪に当たることもございますし、あるいはそこまで至らなくても、強要罪に当たることもまたあろうかと思います。さらに、ただいまお尋ねのような、最初の合意を超えて勝手に合意と違うような内容の文書を他人名義でつくるということになりますれば、これは私文書偽造、それを使えばその行使罪が成立することがあり得ると考えております。
○佐々木(憲)委員 こういう違法なことを、本当にかなりこれが無法な形で広がっておりまして、被害者がふえております。登録されていない貸金業を営んでいる町金、やみ金というのはその存在自体がもともと違法なんですから、警察は、それを見つけたら直ちに取り締まって処罰するというのは当たり前のことなんですけれども、ところが、どうも警察に訴えてもなかなか動いてくれないという声が、結構私聞いているんです。
例えば、神奈川でこういう事例がありました。ある中小企業の社長さんが、やみ金業者に親会社に連れていかれまして、売掛金をやみ金融に譲渡したという念書を、これはおどされて強制的に書かされる。ようやくそれで帰してもらえた。そこですぐ帰るとまたおどされると思って、翌々日に家に入ろうとしますと、かぎがない、かぎがあかない。しかも、中には知らない人がいる。玄関に、賃貸契約書、それからかぎを取りかえても異議申し立てをしないというような承認書とか、これもでっち上げなんですけれども、そういうコピーがべたべた張ってある。これらの契約書も承諾書も本人は何の覚えもないわけです。いわば実印をとられて勝手に押されて偽造されたというものなんですね。
そういうふうにしてつくられたものがべたべた張られて、工場に行くと工場にもかぎがかかっている。入り口には、中のものは債権担保の回収目的で売買がなされています、こう書かれている。400坪の工場の中を見ると、がらんとして、事務所の帳簿書類、印鑑、従業員のロッカー、機械、全部持ち去られていた。このことについて警察に訴えますと、それは民事なので介入できないんだといってすぐに対応しないというんですね。しかも3週間も放置された。こういう事例があります。これは私は本当にひどいと思うんです。
あるいは東京の事例で、やみ金業者が、自分の家に、借金をした本人の家に来まして、家主か隣の人に保証人になってもらえということを言って、ごねて絶対に帰らない。自宅周辺にもうろうろして張り込んでいる。それで逃げられない状態になった。そこで警察署に相談をしましたが、そんなことで警察は動けないよという対応だったと。
それから、山形の事例を言いますと、出先までつけ回したり、近所にわかるような大声を出して取り立てに回る。困って警察に相談したけれども、警察の方は、借りたものは金利が4割でも5割でも払わなければならないんだ、裁判しても、払うのを払わなければ負けるんだ、こういうふうに言われたというんですね。
どうも、現場の警察の対応というのがこういうことに対して余りにも冷たいんじゃないだろうか。先ほどの御答弁ですと、こういうものは違法であり、取り締まりの対象であり、処罰しなきゃならぬということなんですけれども、どうも現在の現場の警察官あるいは警察署はそうなっていない。警察というのは大体こんな対応をするものなんでしょうか。
○黒澤政府参考人 ただいま御指摘の事案については承知をいたしておらないわけでございまして、一般論になってしまうわけでございますけれども、私ども警察におきましては、犯罪につきまして、犯罪等による被害に遭ったものにつきましては、法と証拠に基づきまして罰則法令の適用をする、事件の検挙をするわけでございますけれども、相談や届け出に国民の方が警察に見えるわけでございますが、たとえその時点で警察にとっては犯罪等によることが明らかでないものでありましても、刑罰法令に仮に抵触しない事案につきましても、個々の事案に応じましていろいろな指導をする、あるいは警告をする、適切な措置を講ずるように第一線を指導いたしておるところでございまして、もちろん、刑罰法令に抵触する事案につきましては、迅速かつ的確な捜査を行うよう指導をいたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 そうすると、今そういうふうな姿勢でなさっているということなんですが、それは現場の方には徹底していないということなんでしょうかね。
○黒澤政府参考人 私ども、警察改革の折に民事不介入という問題をいろいろ御指摘いただいたわけでございますけれども、組織を挙げまして、一線にも指導の徹底をいたしておるところでございます。
今御指摘の事案につきましては、具体的な事案を私承知をいたしておりませんので、ここでコメント申し上げることはできませんが、今、組織を挙げて、今私が答弁したようなことで一線を指導しておるということでございます。
○佐々木(憲)委員 確かに答弁は前向きなわけですけれども、現場のところに徹底しているというふうにはどうも思えないんですね、いろいろな話を聞いていますと。しかも、先ほどの実際に検挙して処罰をしたというような件数は非常に少ないんです。実際には被害者は万という単位である。これは、そういう被害の相談を受けている弁護士の方々のお話も聞いております。そういう点でいいますと、被害はふえているんだけれども、対応がなかなか現実に合っていないのではないか。
無登録者の貸金業を放置しておくということは国民自身に非常に大きな被害を与えるということになるわけで、債務者の家庭が崩壊する、本人はもう生きていけない、生命の危機にも追いやるというような、そういう状況になるわけで、これはやはり直ちに徹底的に対応を改善すべきだと私は思うんです。そうしないと、現場の警察というのは無登録の貸金業をなくす考えがないのか、違法を放置するのかというふうにどうしても思われてしまうわけですね。
村井大臣にお聞きをしたいんですけれども、こういう状況なものですから、今東京を中心に被害が広がっております。大都市中心にずっと広がっておりますが、だんだん地方の都市にもこれは進出していっておりまして、全国的に広がっているんです。全国の警察に対しまして、やはり本省から、やみ金に対してきちっと取り締まるべきだ、直ちにそういう指示を出していただきたい。いかがでしょうか。
○村井国家公安委員会委員長 今、佐々木委員と政府参考人の皆さんとの間のやりとりをずっと拝聴しておりまして、私も過去、金融の政務次官をやらせていただきましたり、あるいは副大臣をやらせていただきましたり、委員の御指摘になられる御懸念の問題、ある程度土地カンもあるわけでございます。
一方、警察の立場から申しますと、なかなかこれは事件化が非常に難しい面もまたあるわけでございます。実際に詰めてまいりますと、一体どこまできちんとした裁判にたえる証拠を挙げることができるかというあたりの問題もございます。また、いわゆる被害者とされる方々のおっしゃることをどこまで立証できるかというような問題もございます。
そういう困難な問題がいろいろございますけれども、しかし警察として、こういう悪質な業者による被害の蔓延と申しましょうか、そういう事態を放置しておくわけにはまいらない、これは当然のことでございまして、これまでもいろいろな形でこういう事犯につきましての関心というものは、私どもとしましても注意喚起をしているところでございますけれども、かりそめにも委員御指摘のような状態がこれからも続くということのないように、私といたしましても警察当局を督励してまいりたい、こんなふうに感じながら今委員の御質疑を拝聴していたところでございます。
○佐々木(憲)委員 具体的に指示をきちっと出していただきたいと思うんです。一般的な督励というのはわかりますけれども、そうではなくて、やはり全国の末端の警察の市民に対する対応の姿勢そのものが今問われていると思いますので、具体的に指示をぜひ出していただきたい。いかがでしょうか。
○黒澤政府参考人 実は、昨今の諸情勢にかんがみまして、昨年の7月でございますけれども、警察庁から都道府県警察に対しまして、金融事犯に対する取り締まりの推進についてということで具体的に通達も発出をいたしておるところでございます。
それで、先ほど、事件数で申し上げましたけれども、これはあくまでも一つの事件という数え方でございまして、事件数でもここ数年来検挙が増加をいたしておりまして、検挙人員で見てみますと、例えば昨年は99の事件数でありますけれども219人、これが多いか少ないかの議論はあろうかとは思いますけれども、219人を検挙いたしておるところでございまして、金融事犯の検挙につきましては、ここ数年来増加の傾向にございまして、私ども、努力をいたしておるところでございますけれども、今後一層の努力をしてまいりたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 昨年7月に出したというんですけれども、改めてもう一度きちっと通達ぐらいは出すというのは今のような状況を考えますと当然だと思うんですけれども、大臣、最後にそういう決意をぜひ示していただきたいと思います。
○村井国家公安委員会委員長 委員十分御認識のとおり、警察と私ども国家公安委員会との関係というのもございますので、国家公安委員会におきまして、きょうの御議論など、いつもやっていることでございますが、国会での御議論というのを十分に御披露申し上げ、また御相談をさせていただきました上で適切な対応をとらせていただきたい、このように考える次第でございます。
○佐々木(憲)委員 もう時間が終わりますけれども、今回こういう事案がふえているということを私も再確認してびっくりしたんですが、やはり、現在の不況の非常に長期的な深刻な状況が続いているということ、それから、そういう中で銀行の貸し渋りが大変深刻だということがあります。したがって、どうしても、こういうサラ金ですとか、あるいは果ては町金ですとか、そういう違法な業者にひっかかるケースというのは非常にふえているわけです。
したがいまして、違法を違法としてきちっと取り締まるということをやらないと、やはり国民の生活、国民の営業というものが大変な不安に陥ることになりますので、今後、こういう点できちっとした指導をされるように繰り返し申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。