2002年04月26日 第154回 通常国会 財務金融委員会 【169】 - 質問
金融庁検査は中小企業金融を圧迫 「政策目的に変更あるべきでない」と公庫総裁
2002年4月26日、財務金融委員会で、9つの政府系金融機関の検査を現行の主務官庁から金融庁に移行する「政府系金融機関検査権限委任法案」の質疑・採決が行われ、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。
質疑の中で佐々木議員は、政府系金融機関が債務者の状況に応じて返済条件変更に応じるのは政策目的にそった当然の対応だが、金融庁の検査ではこれが不良債権として扱われることを指摘し、金融庁検査への懸念を示しました。
これを受けて、参考人として出席した尾崎護国民生活金融公庫総裁は、「支店の職員は自分のところの不良債権が増えるのを本能的にいやがる」ことを認めつつ、今後も必要な条件変更には応じていく方針を示しました。
さらに佐々木氏は、今後も中小企業向け金融機関が政策目的を果たすことが重要だとして、金融庁検査に対する国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金の各総裁・理事長の見解をただしました。総裁・理事長らは、「政策目的に変更があるべきではない」(堤中小公庫総裁)など、公的金融の役割を踏まえた検査が行われるべきとの認識を示しました。
また佐々木氏は、今年1月にはじまった新規創業支援のための無担保無保証人融資(新創業融資制度)について、窓口で厳しくせず積極的に貸出に応じるよう要求し、尾崎国金総裁は、「新規開業支援は一番大切な仕事だと考えている」と答弁しました。
佐々木憲昭議員は、質疑の後、採決に先立って行われた討論で反対討論を行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今回提案されております法案では、9つの政府系金融機関に対して、民間金融機関と同じマニュアルによって金融庁が検査を行うということになっております。私は、リスク管理債権などの内容を、民間と政府系金融機関を同じ基準で評価していいのかどうかという点については根本的な疑問を持っておりますが、塩川財務大臣にまず確認をしておきたいのですが、政府系金融機関と民間の銀行、民間金融機関、この本質的な違いがやはりあるのではないかと思いますが、大臣の基本的な認識をお伺いしたいと思います。まず塩川大臣に。
○塩川財務大臣 根本的に違うところは、政府系金融機関といいましても、預金を預かっておりませんね。預金を直接、一般、不特定から預かっていない、ここが市中金融機関と全く違うところ、これが一つ。もう一つは、政府系金融機関は営利を目的とするんではなくして、政策目的のためにつくられたという機関ですから、その点は市中金融機関とは全く違う性質のものであるということです。
○佐々木(憲)委員 今おっしゃったことは大変重要な点だというふうに思います。
それで、この法案で新たに検査が行われるとしても、政府系金融機関のそれぞれの政策目的に沿った運営といいますか、それは変更されるものではないというふうに私は思うわけですけれども、検査があったからといって、今までの役割を変えるとか、あるいは大きく変更するということはないと思いますけれども、それはそのとおりでよろしいですね。
○谷口財務副大臣 先ほど塩川大臣がおっしゃったように、民間金融機関はコマーシャルベースで行い、政策金融機関はその政策目的を達するためにやるわけでございますから、佐々木委員がおっしゃるように、金融庁の検査が入ったところで、従来の政策目的を達するというその観点は変わらないということでございます。
○佐々木(憲)委員 それでは、きょうは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、それぞれ責任者の方に来ていただいておりますので、まず、国民生活金融公庫の尾崎総裁にお伺いをしたいと思います。
国民生活金融公庫法、ここでは、目的の中で、「一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆が必要とするものを供給し、もつて国民経済の健全な発展及び公衆衛生その他の国民生活の向上に寄与することを目的とする。」というふうに書かれておりますし、また、総裁自身が、いろいろな雑誌でこの立場に立ちまして発言をされております。
例えば、「実業界」の昨年9月号を見ますと、「民間企業は非常にはっきりした目的を持っています。それは「利益を出す」ということです。ところが政府系の特殊法人の場合、利益を出すことが必ずしも目標ではない。むしろ目標の中にそれはないんです」というふうにおっしゃっておりますし、また、「金融ジャーナル」の昨年5月号を見ますと、「マーケットでは資金が調達できない、零細で信用力のない事業者に対して、政府が手を差し延べるという点にある」「我々の存在理由は市場原理では解決できない問題に政策的配慮を与えるものであるから、市場の論理とは当然違ってくる」「リスク管理債権の増加を支店長が強く意識すると、条件変更に厳しくなってしまい、公庫本来の使命が果たされないのではないかと恐れた。仮に返済条件を緩和して立ち直るのであれば条件を緩和してあげたい」大変前向きの、政策目的に沿い、また設立の法案の目的に沿った、そういう発言をされておられます。私はこれは大変重要な姿勢だというふうに思うんですね。例えば、「金融財政事情」、昨年の8月6日号を見ましても、新しく仕事を始めるという場合でもこういう姿勢が大事だというようなことを書かれているわけですね。
そこで確認ですけれども、中小企業の支援、民間の銀行が相手にしないようなところに支援を行う、この姿勢は、今回の法案があろうがなかろうが当然変わらないと思いますし、今後もそういう方針でいかれると思いますが、確認をしておきたいと思います。
○尾崎政府参考人(国民生活金融公庫総裁) 私どもに与えられております使命は、法律上はっきり書かれておりまして、先生御指摘になりましたように、基本的には、一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に融資するということが私どもの目的であるわけでございます。そういうものは、仮に金融庁の御検査があるにいたしましても、私どもは、そういう目的のためにあるんだというのは御承知の上でおいでいただけるものと考えておりますし、私どもは法律に従って従来どおりやってまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 そこで、基本的なことをお聞きしたいんですけれども、駆け込み寺的な性格を持っている、大変困った方が、中小業者が駆け込んでくる、それに対して積極的に対応するということなんですけれども、年間にどのぐらい融資の申し込みがあるのか、そして、実際にそのうち何割ぐらいが融資をされるのか。大ざっぱでいいですけれども、その数字、わかりましたら教えていただきたいと思います。
○尾崎政府参考人 お答えいたします。
申し込みで申しますと、年間、平成12年度で申し上げますと44万件ほどございます。この申し込みは、実は申し込みをしておいて途中で取り下げる方がございますが、それは除いた数字でございます。それから、金額で申しますと3兆5千億ほどになります。それに対しまして、貸し付けをしておりますのが、件数で40万件ほど、それから、金額で2兆8千億円ほどでございます。
○佐々木(憲)委員 途中で取り下げるということなんですけれども、これは事前に資格がないよということをお話しして取り下げるということになった方々が多いんでしょうか。それは何件ぐらいあるんでしょうか、取り下げは。
○尾崎政府参考人 取り下げの件数は実は把握していないようでございます。
○佐々木(憲)委員 ちょっと私はそこが疑問に思うんですが、駆け込みをするわけですから、何件駆け込んできたかという、駆け込み寺としては当然その駆け込んだ数というのは正確に把握するというのは大事だと思うんですね。そのうちで取り下げるという人もあるかもしれぬ。これは自発的に取り下げる場合もあるでしょうし、あなたはちょっと最初から無理だから申し込み自体は御遠慮いただきたいといって取り下げる場合もあるかもしれない。
実は、私もいろいろな話を聞いていまして、必ずしも駆け込んだらすぐ融資というふうにはならないという話も聞いていますので、一体その実態はどうなのかということを正確に把握するというのは、やはり国金として当然ここはきちっとするべきだと思うんですね。つまり、駆け込んだ数がわからないというんじゃちょっと困るわけで、その数は当然しっかりと把握していただくということで今後お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○尾崎政府参考人 私ども、日々支店の店先で、あるいは電話で、あるいは書類による申し込みというようなことで仕事をしているわけでございますが、申し込みということではなくて、本当にただ御相談においでになる方とか、申し込みというおつもりでおいでになって説明を聞いておやめになる方とか、本当に一遍申し込みをなさって、途中でほかに資金の融通がついたりして取り下げをなさるとかいうようなケースもございまして、実は、そのどの段階から申し込みとして把握するかというのはなかなか難しい問題がございます。
ただ、おっしゃいますように、やはり全体の姿をできるだけコンクリートにつかんでおくべきではないかという御指摘はそのとおりだと思います。そのように努力をいたしたいと思いますが、非常に漠然としている部分がございまして、なかなかきっちりとした統計というような姿にはならないと思いますけれども、できるだけその努力をして仕事をしてまいりたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 では次に、中小企業金融公庫の堤総裁にお伺いしますけれども、法律では、「中小企業者の行う事業の振興に必要な長期資金であつて、一般の金融機関が供給することを困難とするものを供給することを目的とする」このように書かれておりまして、やはり民間の銀行が貸せない長期資金を大いに中小企業に貸すということが政策目的として掲げられております。
また、「金融ジャーナル」の昨年5月号を拝見しますと、民間の場合は市場原理で行われているために、内容のよい企業のみに貸すという選別性がはっきりした、質的貸し渋りという形がある、こういうふうにおっしゃって、公庫は民間金融機関がリスクテークしない分野にしか携わっていないんだというふうにその立場を述べておられるわけであります。「現在の環境では、公庫のような補完金融が必要だと思われる」こういうふうに述べておられるわけです。
やはり、この立場は今後とも私は大事だと思いますが、今回のこの融資先の債権内容を民間と同じように、同じ基準で検査をするということになっていきますけれども、その辺の姿勢というのは変わるんでしょうか、変わらないんでしょうか、確認をしたいと思います。
○堤政府参考人(中小企業金融公庫総裁) お答え申し上げます。
基本的枠組みはもう既にできておりますし、我々が中小企業のために仕事をするというのはもう約50年の歴史がございます。そういう中で、検査のやり方が変わったからということで、我々は政策実施機関でございますし、政府の政策としてどうなるかということには常に動かされるのが当然でございますけれども、我々としてはそういう大きな変更があるとは思っておりませんし、あるべきではないとすら考えております。
○佐々木(憲)委員 それでは次に、商工中金の江崎理事長にお伺いしますが、商工中金の場合も、これは協同組合的な内容ではありますけれども、「主トシテ中小規模ノ事業者ヲ構成員トスル団体ニ対スル金融ノ円滑ヲ図ル為必要ナル業務ヲ営ムコトヲ目的トス」、こういうふうに法律には書かれているわけです。
同じような質問でありますけれども、この点についてどのように、今回の検査が行われても変わらないのか、それともこれが影響を受けるのか、この点をお聞きしたいと思います。
○江崎参考人(商工組合中央金庫理事長) 商工中金でございますけれども、商工中金は、従来から、金融庁の公表しておられます検査マニュアルに準拠して既に自己査定を、これは平成11年度からですが、やっております。それから、さらにそういったものについて監査法人のチェックなども受けているということでございますので、金融庁の検査が実施されることになりましても、この検査結果が大きく変わるということはないんだろうというふうに思っております。
私ども、従来から、景気低迷が長期化するとか厳しい経営を余儀なくされている中で、中小企業のために、長期資金だけではなくて短期資金も含めまして総合的な金融サービスを提供することによりまして、セーフティーネットですとかあるいは経営革新といったような、重要な政策的役割を果たすというふうに思っておりますけれども、金融庁の検査が実施されることになりましても、こういう中小企業のための金融の円滑化という政策目的に沿った業務の運営方針を変えることにはならないと思いますし、また変えてはいけないんではないか、このように思っております。
○佐々木(憲)委員 今、中小企業関連の3つの政府系金融機関の総裁、理事長にお伺いをしたわけですけれども、やはり政策的な目標、すなわち中小企業に対する支援、民間の銀行ができない、あるいは相手にしない、そういう中小企業を大いに支援していきたい、こういうお話でありました。
さてそこで、それではその具体的な政策、例えば平沼プランというのがありますね。つまり、今日本の中小企業というのはつぶれる方が多くて、新しく生まれるのはそれより数が少ないために、全体として企業数が減っております。そこのところを減らないように、創業が大いに活性化するという目的でこれがつくられているというふうに思いますけれども、この平沼プランの概要を、中小企業庁の小脇次長、来ておられると思いますけれども、説明をしていただきたいと思います。
○小脇政府参考人(中小企業庁次長) お答え申し上げます。
新産業の創出あるいは雇用の拡大のためには、開業、創業の促進、拡大が極めて重要な課題というふうに私ども認識をしております。
こうした観点から、昨年5月に取りまとめられましたいわゆる平沼プランにおきまして、開業創業倍増プログラムといたしまして、新規開業を5年間で現在の年間18万社から36万社へと倍増させることを目標といたしまして、資金調達面、あるいは人材育成面、あるいは需要開拓面等々、多様な支援を強力に推進することといたしております。
具体的な政策としては、まず、資金調達面での支援といたしまして、従前の融資制度を見直しまして、新たな融資制度といたしまして、担保の有無あるいは過去の勤務要件などの形式的要件によらないで、いわゆるビジネスプラン、事業計画の内容を審査いたしまして、すぐれたものであれば無担保かつ第三者保証、そして本人保証もとらないで国民生活金融公庫が融資を行う制度、これを本年1月から実施いたしているところでございます。
また、創業者に対します民間金融機関からの融資を円滑に進める、こういう観点から、信用保証協会によります新事業創出関連保証につきまして、昨年秋の臨時国会におきます法律改正によりまして、保証限度額を1千万から1500万に引き上げたところでございます。
さらに、国内の成長初期段階にあります創業・ベンチャー企業への民間からの投資を促進するための呼び水といたしまして、中小企業総合事業団によります投資事業組合への出資制度、これを平成11年から実施しているところでございます。
さらに、人材育成面での支援としては、商工会、商工会議所等におきまして、創業塾、創業セミナー等を開催いたしておりまして、平成13年度では約2万人の方が受講いただいております。本年度は対象者を倍増いたしまして、約4万人を対象として実施する予定でございます。
さらに、需要開拓面の措置といたしましては、創業者の販路開拓を後押しする、こういう観点から、創業者の試作品の展示でありますベンチャーフェア、これを開催いたすとともに、創業希望者が投資家に対しまして事業計画を発表する場でありますベンチャープラザ、これを全国各地で展開しているところでございます。
そのほか、平沼プランに基づきまして、いわゆる産業クラスター計画や中小企業の技術開発を支援いたしますSBIR制度等々を推進しておりまして、今後とも、こうした施策を積極的に実施することによりまして、開業、創業の推進、拡大のため全力を挙げてまいりたい、このように考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 その平沼プランの中でも、大変私は大事だと思いますのは、創業をするという場合は、なかなかこれは最初から担保が十分あるわけでもありません。また、保証人も簡単につけるということもできない。そういう個人あるいは一定の集団が新しい企業を立ち上げる、その場合には、無担保無保証人というのが大変重要な手段になると思うんですね。
昨年7月から150万上限として制度ができたということなんですが、ことしに入って550万に引き上げられた。この予算というのは幾ら組まれているのか、それから何件の利用を積算の根拠として見込んでおられるか、これをお聞きしたいと思います。
○小脇政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま先生御指摘の国民生活金融公庫の新しい融資制度でございますけれども、13年度の補正予算で97億円の措置をいただいたところでございます。そして、この制度に関しましては、私ども積極的にPRに努めておりまして、既に100万部のパンフレットも印刷、配布をいたしておるところでございまして、私ども、この制度によりまして、3年間で約1万社の開業、創業が見込まれる、このように考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 3年で1万社というと、年間3千強ということになりますね。これはなかなか、全体の数からいいますと非常に比率が低いのではないかという感じを受けておりまして、100万部パンフを出しても年間3千というんじゃ、ちょっと少な過ぎるような感じがいたします。
それでは、これを実際に実行していく国民生活金融公庫の尾崎総裁にお伺いしますけれども、年間、今までの実績でどのぐらいの実績を上げているか。枠は一応、今説明がありましたように、つくられました。特に無担保無保証、私は重要だと思いますけれども、それを実際に実行していく場合、国金がどの程度、具体的に何件貸すか、これがかぎになると思うんですね。その点でまず実績を示していただきたい。
○尾崎政府参考人 13年度の実績でございますが、先生御指摘ございましたように、13年の7月から150万円という限度額で始めまして、補正で充実されまして、14年の1月から550万という限度額になったわけでありますが、二つに分けて申し上げたいと思います。
7月から12月までの半年間でございますが、申し込みは59件、貸し付けが34件でございました。それが、充実が図られて以来、1月から3月の三カ月間で申し込みが688件、つまり、その前の半年と比べて半分の期間で11倍に申し込みがなりました。それから、貸し付けで293件ということでございます。
まだ始まったばかりで、平年度化してこれからどういう姿になるのか、ちょっと予測できないところがございますが、私ども一生懸命PRに努めて、御利用をいただきたいというように考えております。特別に目標額幾らということを置かずに、今努力をしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今の数字ですけれども、申し込みが昨年は59件、実際に実績としては34ですね。ことしに入って3カ月間で688の申し込みがあって、実現が293。比率でいいますと、ことしに入ってからの方がかなり厳しくなっている。件数はふえていますけれども、申込件数に比較する実績といたしますと。
それで問題は、先ほどありましたように、申し込み以前にいわば取り下げというのもあるんじゃないかというふうに思いますが、それは数字は把握されてないと先ほどおっしゃいましたが、ぜひ、積極的に貸し出すという姿勢が私は重要だと思います。
その点で、例えば、平沼大臣が昨年の12月5日に経済産業委員会で答弁をされていまして、この制度を活用して新規事業の立ち上げを倍増にしたい、柔軟に、迅速に、果断に、そして、新しく業を起こそうとする方々にはその意欲に十分おこたえする、こういうことで運用していきたいというふうに答弁されておりますので、これは無担保無保証人ということで大変期待をされているわけですが、問題は、窓口で余り厳しくしますと、せっかく可能性のあるところを、創業をしたいという事業者を抑えることになりまして、本来、果断に、積極的にという大臣の主張されていることとも違ってくるとこれは大変困りますので、その点の今後の姿勢についてお伺いしたいと思います。
○尾崎政府参考人 新規開業支援は、私ども一番大切な仕事だと考えておりまして、実はもう既に平成7年度末に新規開業支援室というものを設立いたしまして、自来いろいろ事例を積み上げながら、全く過去の実績もない、信用というものもまだできていない、担保もない、あるのは創業者の意欲だけというような企業に一体どのように貸していったらいいかという、いわば事例を積み重ねながら努力をしてまいりまして、今そういう従来やっております方式で、13年度約2万9千件の貸し出しをいたしております。
先ほど申し上げましたのは、新しくできました保証人なしという、つまり、保証人もとらないんだけれどもリスクを金利の上乗せでカバーしよう、そういう新しい試みについてだけでございます。
それから、ちょっと私、先ほど一言本当は言葉が足りなかったのでございますが、3月末までに申し込みのあったもので貸し付け決定が今年度にずれ込んでいるものがございますので、申し込みの件数と貸し付けの件数の比率だけをとられますと、最近の部分がちょっと数字が落ちてしまう。ちょっとそれを申し上げるのを忘れまして、失礼をいたしました。
そのような努力を重ねてきて、そして、実は従来の例から考えて、保証人もいらっしゃらないという方がおられる。それでリスクプレミアムを見るということを考えた。私ども、それを始めましたら、今度政府の方からも積極的な支援をいただいたということで、大変喜んでいる次第でございます。
ただ、悩ましいのは、独立した事業としてどうも成立しないんじゃないかというようなものもあったりいたしますから、それに御用立てして、それがだめになりますと、今度は納税者の負担になる話でございますので、そこの、どうしたらいいのかというところが大変我々つらいところでございますし、また、そこで我々の努力をといいますか、我々のノウハウを発揮していかなくてはいけない部分であるというように考えております。
○佐々木(憲)委員 その点、ぜひ積極的に、もちろん、全く見込みのないところに貸すというようなことを申し上げているわけじゃありませんで、やはり可能性を十分酌み尽くすという姿勢で、ぜひ前向きに、積極的に対応していただきたいというふうに思います。
さてそこで、今回の金融検査との関連でお聞きをしたいんですけれども、ディスクロージャー誌を見ますと、2001年の国民生活金融公庫レポートですが、この中の56ページのところに、「貸出条件緩和債権について」という部分がありまして、ここで、民間金融機関と比較をしまして、バランスシートの健全化を民間の場合は重視するようになって、バランスシートの健全化といいますと、貸し出し姿勢を慎重にすることになると。いわゆる貸し渋りという現象を生みました、当公庫は貸し渋り対策として、この金融変革期のショックを和らげるセーフティーネットの役割を求められてきましたと。つまり、民間金融機関が貸し渋りという状況のもとで、国金としてはセーフティーネットの役割を求められた。その場合、政策目的を果たすための措置として行う返済条件の変更と、民間金融機関の貸し出し条件緩和債権とは、性格が異なり、同一視することはできません、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
これは私、大変重要なことだと思うんです。つまり、同じ基準でいきますと、民間銀行でいいますとこれは不良債権の部類じゃないか、こういうふうになりますけれども、しかし、政府系金融機関として政策目的に沿って貸し出すものがそういうふうに条件変更を行う、これはもう私は、その企業を助け、民間ができないことを行う、大変目的に沿った対応だろうと思うんですね。しかし、この新しい基準でいきますと、質が無視されて、どうしても量で比べられるという傾向が出てくるんではないか。この点について総裁はどのような見解をお持ちでしょうか。
○尾崎政府参考人 民間の金融機関、いわゆる銀行問題というのが、目下、現下の日本経済の最大の問題だということを考えてみますと、金融機関がそれぞれのバランスシートをしっかりしたものにしようという努力はやはり必要なんだろうと思うわけですね。その結果として、どうしてもリスクの多いところには貸さなくなる。それは私どもが働かなくてはいけない状況に今あるということだと思っておりまして、そのための努力を続けているわけであります。
新たに貸すというだけではなくて、既に貸したお客様についても同じ問題があるわけでございます。そういう方々に対してのその条件変更につきましても、やはりよく事情を伺いまして、条件変更をすれば返していただけるということもあるわけですから、それを私どもそのような姿勢で取り組んでまいりました。
ところが、それがリスク管理債権に入るということになりますと、私恐れましたのは、各支店の職員がやはりどうしても自分のところのリスク管理債権がふえるのは本能的に嫌がりますから、そのために条件緩和が厳しくなってはいけないと思いまして、実は、この方式で算定するようにと言われました最初の年、抵抗をしまして、1年間発表しなかったことがあるんです。ただ、その後、政府保証債やら財投機関債を出さなくてはいけないことになりましたから、そういう債券をお持ちいただく方のためにディスクローズが必要だと思いまして、現在は出しております。
しかし、私どもの条件緩和債権というのはこういう性格のものだということをよく世の中に説明して、そこは御理解をいただく。そして、従来どおりの条件緩和についての姿勢は改めないということでいきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 この点、大変重要な点で、新しく検査が金融庁主導でやられて、民間と同じ基準でいくというふうになりますと、どうしても一定の圧力がかかる。したがって、我々は、こういうやり方というのはやはり一律にすべきではないというふうに思っておりまして、今回のこの法案についても、そういう危険性が非常にふえますし、政府系金融機関の本来の役割を圧迫することになるんじゃないかということで、立場として反対という立場を表明して、時間ですので、以上で終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。