2002年05月29日 第154回 通常国会 厚生労働委員会 【173】 - 質問
医療改悪法案 国民負担増の一方で国庫負担を減らし続ける政府・「復元」の約束守れ
2002年5月29日、佐々木憲昭議員は、医療改悪法案が審議されている厚生労働委員会で、医療保険の財政問題を取り上げ、国民に空前の負担増を押しつける一方、国の負担は減らし続ける政府の姿勢をただしました。
小泉内閣が国会に提出している医療改悪法案は、サラリーマン本人の窓口負担を3割にする、あるいはボーナスからの保険料徴収を月給なみに強化するなど、国民に大変な負担増加をもたらすものとなっています。その負担は、あわせて1兆数千億円にのぼります。
この日の質疑で佐々木議員は、医療費に占める国庫負担の割合が1979年から1999年の間に30.1%から24.9%へと5.2ポイントも減ったのに対し、保険料は28.9%から30.0%へ、患者負担は11.4%から14.6%へと増えていることを示し「国の出すべき部分が後退し、その分を国民にかぶせている」と批判しました。
また、改悪によって保険料が値上げされる政府管掌健康保険の場合、国庫負担が導入された1980年には法律で国庫負担率を「16.4%から20%の範囲内にする」と決められていたことを指摘。それを1992年に13%へ引き下げ、その際に財政が悪化すれば「復元」すると政府が答弁していた事実を示し、「約束違反だ」と迫りました。
厚労省の大塚義治保険局長は「各制度とも厳しい状況下では、政管健保のみ引き上げるとバランスが失する」と答弁。佐々木議員は「全体を引き下げていることが問題。高齢化社会に向けて国庫負担を増やすべきなのに、国はその責任を放棄している」とのべ、医療保険への国庫負担を元に戻すよう求めました。
さらに佐々木議員は、坂口力厚生労働大臣(公明党)に対し、1998年には当時の公明党が「新たな患者負担増に反対します」と公約していたにもかかわらず「今度は患者負担をどんどん増やす。姿勢が180度違う」と坂口大臣の政治姿勢をただしました。坂口大臣は「大きな方向性は変わっていない」と居直りました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私は、国民医療費の負担のあり方について、坂口大臣にお伺いをしたいと思います。
提案されている法案は、サラリーマン本人の窓口負担を3割にする、あるいはボーナスからの保険料徴収を月給並みに強化する。国民、患者に大変な負担をもたらすものになっているわけであります。小泉総理は三方一両損ということを主張しました。三方というのは、保険料を負担する国民、窓口で負担する患者、それに医療機関でありますが、坂口大臣にお伺いしますけれども、負担を求める先としては、坂口大臣自身もこれしかないという認識なんでしょうか。
○坂口厚生労働大臣 医療費を納めていただいておりますその財源を見れば、これは税でお納めをいただくか、あるいは保険料でお願いをするか、さもなくば個人負担でお願いをするか、その三つでありますから、いずれにいたしましても、結果としてはそのどこかからお願いをせざるを得ない。今回の場合には、保険の方でもお願いをし、あるいは自己負担の方でもお願いをしている、こういうことではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 今、保険料か国庫負担か自己負担か、三者の構成、その割合、バランスが大事であると。そうすると、三方一両損というのは国庫負担がその中には入っていない、こういうことになりますね。そういうことになると思うのですが、いかがでしょう。
○坂口厚生労働大臣 私が申しました中には国庫負担も入っておりますが、それは国庫負担を今後ふやしていくということで入ってくるというふうに思いますが、総理がおっしゃったのは、そういう見方ではなくて、もう少し違った立場から三方一両損というふうにおっしゃったというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 つまり、国庫負担が入っていないというのが三方一両損であって、そうすると坂口大臣は、保険料、国庫負担、自己負担、こういう三者構成をおっしゃいました。それなら、今回提案されているものの中に、なぜ国庫負担だけを外したのか、その理由を説明していただきたい。
○坂口厚生労働大臣 これは国庫負担も入っているんですね。これから高齢者医療を、現在三分の一になっておりますのを2分の1に引き上げていく。これは、65歳以上にするわけですけれども、5年間の間にこれを2分の1に引き上げていく、国からの負担も多くしていく、こういうことをその中に含めているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 しかし、今度の法案は、将来の問題ではなくて、国民の負担を直接大幅にふやすという国民負担増、これが中心的な柱になっているわけであります。
小沢和秋議員が先日この委員会で指摘したように、合わせて1兆数千億円国民負担がふえる、大変なものであります。これは冷え込んでいる消費をますます冷え込ませるということになるわけで、これに対して国民各層から大変な反対の声が上がっております。当然だと思うのです。請願もたくさん寄せられております。請願の紹介議員は野党だけではありません、与党の公明党の議員や自民党の議員も紹介議員になっておられるわけであります。請願署名の数は既に2500万人を超えております。大変な数なんです。
また、反対の意見書を国に提出した地方自治体は、既に575の議会に上っております。意見書をまとめ上げた自治体が過半数を超えた県、これは、青森、岩手、福島、長野、岡山、沖縄、こういう状態でありまして、全国的に、国民負担をこれだけふやすことに対する反対の声、批判の声というのは大変なうねりになっております。
坂口大臣はこの国民の怒りをどのようにお感じでしょうか。
○坂口厚生労働大臣 医療保険の問題を考えてまいりますときに、1割よりも2割、2割よりも3割というふうに上がってまいりますと、それに対して反対が多くなってくることは十分に承知をいたしております。
しかし、現在の皆保険制度というこの保険制度を将来ともに維持していく、今後何十年というふうに、私たちの子供や孫の時代にまでこれを維持していくためには、やはり現在お願いをすべきことはお願いをし、改めるところは改めていかなければ、私はこの制度は維持できないというふうに思います。将来ともに維持をしていくためには、今皆さん方からおしかりを受けましても、これはお願いすべきところはお願いをしていきたいというふうに思っております。
医療機関に対しましても、今まで医療機関で保険点数を下げたことはございませんでしたけれども、今回は下げさせていただいて、そして医療機関にもお願いをする、そして御負担をいただく皆さん方にもお願いをする。しかしながら、お願いはいたしますけれども、軽い病気、それにはやはり3割の負担をお願いしますけれども、上限が設けられておりますから、大きい病気になれば、重い病気になれば、やはりそれなりに負担は軽くなっていく。保険制度というものの働きが正確にそこに残っているというふうに私は思っている次第でございます。
○佐々木(憲)委員 皆保険を維持するとおっしゃいますけれども、1割負担、2割負担、3割負担、無限にこれが続いていけば、皆保険そのものが崩壊するんですよ。展望が出てこないんです。
坂口さんは公明党から大臣になっておられますが、5年前の1998年、参議院選挙のときの公明の参院選挙に臨む重点政策というのがございます。これはコピーですけれども、公明新聞、98年5月11日付ですが、この中でどういうふうに書いておられるかというと、「医療費の新たな患者負担増に反対します。」こういうふうに書いておられる。
たしか坂口さんはこの時点では政審会長だったと思うんですが、いかがでしょうか。
○坂口厚生労働大臣 政審会長であったかどうかはちょっと忘れましたけれども、あるいはそういうふうなことになっていたかもしれません。
その当時の医療改革を行っている中身の中には、あるいはそういう文言があったかもしれません。
○佐々木(憲)委員 つまり、坂口さんがおつくりになった政策なんですね。
私も、坂口さんと、98年当時は金融国会で、金融問題特別委員会で野党席で並んでおりましたが、あのときはたしか政審会長だったと思っておりますが。つまり、新たな患者負担増に反対だったというのがその時点の坂口大臣の姿勢だったわけであります。
98年5月10日付の公明新聞にはこういうふうに書かれているんですね。当時は橋本政権ですが、「今後さらに医療保険制度や年金制度を改定して国民の負担を増やす計画をめじろ押しに進めようとしています。」「この不況の中で、国民の生活は、老後の年金はもらえるのか、医療の負担はどこまで上がるのか、十分な介護が保障されるのか、など大きな不安に覆われています。」こういうふうに公明新聞では、この重点政策の中で書いているわけですね。
ところが、現在、坂口大臣は、新たな患者負担増、3割負担を推進する、こういう立場に立っているわけであります。大臣になったら、自分自身が言ってきた、主張してきたこと、これを変えるということになりますと、つまり、国民の負担はどうでもいい、こういう立場に立ったということになるわけですが、いかがでしょう。
○坂口厚生労働大臣 国民の負担をできるだけ軽くしなければならないことは、私は今も変わっておりません。
しかし、現状からいきますと、そうは言っておれない状況になってきている。一つは高齢者が非常に多くなった、これもございますし、それから現在の経済動向もございますから、そうした中で現在の保険というものが行き詰まってきている。政管健保もしかり、そして組合健保の多くもしかり。そうしたことで、保険自体が行き詰まってきているということになるならば、それはやはり御負担をいただく以外にない。
しかし、すべてそれを保険やあるいは自己負担だけではいけなくて、そして、国庫負担の中からもそれはお願いをしていかなければならない。そうした中でこの医療保険を維持していく以外に方法がないわけであります。
だから、そこをどうするかということでございまして、それを維持していきますためには、その三者の間の割り振りというものを考えていく以外にないということでございます。
○佐々木(憲)委員 三者の間の割り振りでも、国庫負担は比率からいいますと低下をしてきて、結局は、国民、保険料、患者あるいは医療機関、こういうところにどんどんどんどん負担をふやしてきているわけですね。こういう方向しかない、果たしてそうなんでしょうか。
公明新聞の当時の、「公明は高齢社会にこう対応します」。坂口さんの政策にはこう書いているんですよ。
「取りやすいところから取る」方式の患者負担増で医療費の帳じりを合わせたい考えが明らかです。
公明は、医療費の新たな患者負担増には断じて反対です。このため、やはり行政改革や公共事業見直しを断行して税金のムダ遣いをなくし、この財源を活用して、高齢社会に対応した医療制度改革を実現する考えです。
きちっとこういう方向を出しているじゃないですか。
我々だって、この主張は、今は立場は違いますけれども、この書かれていることは賛成なんですよ。あなた方が、坂口さんが、こうすればできる、こう主張していたわけでありますから、もう行き詰まっていて出口がないから全部国民負担だ、そんな、大臣になったら自民党と全く同じことを主張するような、これは幾ら考えてもおかしいと思いませんか。
やはり公共事業見直し、あるいは腐敗、汚職問題を含めて、そういう行革の実行、この辺にメスを入れるようなことをやらないと財源も出てこない。やればできるということだと思うんです。あのときから何年もたっていないですよ、時間は。
こういうやり方をすればできると言っているんですから、何でこういう方向を選択しないんですか。
○坂口厚生労働大臣 だから今やっているんですよ。
医療制度そのものにつきましても、むだがないように大改革をやっていかないといけない。現在5千になんなんとする保険者をこのままにしておきましたら、その事務費だけでも大変なことですよ。ですから、ここを少なくしていって、そして統合化を図っていく。あるいはまた、我々の厚生労働省の関係をしております社会保険病院等の問題でございますとか、そうした規制改革、これを徹底的にやっていかなければならないというふうに思っているんです。
だから、そのほかのことにつきましても、行政改革、今断行中でございます。そういうふうにしながら、そこで財源を見つけ出してやっていかなければ、やっていく方法はあり得ない。経済がいいときはそれはいいですよ。だけれども、現在のような経済状況の中で、これからもそう大きな経済成長が認められないという状況になってくれば、そういう方法しかないんですよ。
○佐々木(憲)委員 全く答弁になっていないですね。経済がいいときはいい、98年と今はどう違うんですか。98年のときには大変な事態だったじゃないですか。あのときは日本経済が本当に沈没するかどうかと。金融危機が生まれ、大きな銀行は倒産し、証券会社もつぶれるという状況なんですよ。そういうときに出した公明の政策は、こうすればできる、財源はできると言っていたじゃないですか。
あなたが今やっていることは全然逆で、国民の負担はふやすと。あのときは、国民負担増は反対ですと言っていたんですよ、反対と言っていたのに、今度は、どんどんふやしますと。全く逆の方向じゃないですか。
大体そういう姿勢が、本当に私はあきれ返りますけれども、全く180度違う。負担増に反対、負担増どうぞ、これは180度違う。これは明らかですね。これはお認めになりますね。
○坂口厚生労働大臣 大きな方向性は変わっておりません。
これは、我々がこの医療制度を、どうこれを維持していくかということを中心に考えなければなりません。皆さんはこの現状をどうクリアするかということだけしかお考えになっていないけれども、現状だけではなくて、将来に向けて、将来もこの保険制度を維持して、この制度を私たちの子供や孫の時代にまでこれを通用するようにしていこうと思えば、それなりのことをやはり考えていかなければならないわけでありまして、いかにしてそこで皆の負担を少なくしながらやっていくかという、その制度改革、あるいはまたむだの改革等も一緒に行いながら、今必死にやっているわけで、それは全然その当時の基本的な考え方というのは私は変わっておりません。
○佐々木(憲)委員 基本的な考え方が180度違うんですよ。負担をさせないというのと負担をさせるというのは、180度違うじゃないですか。そうでしょう。こんなの、だれが見たってはっきりしているんですよ、これは。
将来の方向は、国がきちっと責任を持つ、そういう方向で財源も出すようにしていかないと支えられないというのが我々の展望で、公明だってそう言っていたじゃないですか。そういう方向を出すべきだというのが国民世論なんですから、国民に負担をどんどんかぶせることだけが政策じゃないですよ。
では、具体的に、それでは三者構成、保険料、患者負担、国庫負担、この割合はどうだったか、少し数字を検証してみましょう。
まず、国庫負担の国民医療費に占める割合、20年前の数字と今の数字を出してください、保険局長。
○大塚政府参考人(厚生労働省保険局長) 20年前と最近、直近の数字ですと、制度そのものが大きく変わっておりますから、数字にそれぞれの意味が、同じレベルでは議論できないと思いますが、数字のお尋ねでございますから計数を申し上げます。
1979年、20年前ですからそうなりますが、国民医療費に占める国庫負担の割合は30・1%でございます。最直近ですと、11年でございますが24・9%。
単純に数字を出しますと、そういう計数でございます。
○佐々木(憲)委員 国庫負担はマイナス5・2ポイント、大幅に減っているわけであります。
では、国民負担のうち、保険料負担割合はどうでしょうか。特に、被保険者負担はどうか。同じ時期、比較してください。
○大塚政府参考人 いわゆる保険料負担で申し上げますと、総額で申し上げますと、同じ時期にでございますが、53・0%が、平成11年度52・5%でございます。
○佐々木(憲)委員 被保険者負担の部分だけ言ってください。
○大塚政府参考人 恐れ入ります、国保、健保それぞれ、これは全体なものですから、数字が正確に直ちに出ませんけれども、極めて大ざっぱに申しますと、大ざっぱでございますけれども、保険料負担のうちの半分、被用者保険では半分、それから、国保はそのままでございますから、これらのうちの何%かは、ただいまちょっと被保険者負担だけでは数字を持ち合わせておりません。
○佐々木(憲)委員 では、私の方から言いますと、被保険者負担は28・9%だったんです。これが99年では30%にふえております。
では、窓口負担、患者負担の比率、これはどうなっていますか。
○大塚政府参考人 いわゆる患者負担でございますけれども、11・4%が20年前でございます。平成11年度14・6%でございます。
○佐々木(憲)委員 結局、国庫負担は、全体の中で30・1%から24・9%、つまり国の責任はどんどんどんどん縮小して、そしてその反面で国民の負担がどんどんふえてきた、国民と患者負担合わせて40・3から44・6、大変なふえ方であります。
では、もう少し具体的にお聞きしましょう。
老人医療の場合はどうか。有料化された1983年度から今日までの間に、国庫負担率、これはどのように変化していますか。
○大塚政府参考人 お尋ねの趣旨は、制度的な、老人医療制度に対する負担の割合というのは変わっておらないわけですから、おっしゃいますのは、例えば国民健康保険あるいは健康保険からの拠出金に対する補助、あるいは国庫負担を含めてという趣旨でございましょうか。(佐々木(憲)委員「そうです」と呼ぶ)
そういう前提で御答弁申し上げますと、これも本当に制度が大きく変わっておりますから、単純な比較というわけにはまいりませんけれども、数字だけで申し上げますと、昭和58年度、これが実質的に老人保健制度が動き出した時期でございますが、国庫負担の割合が44・9%でございます。これは、最直近の予算ベースで申し上げますと、平成14年度予算ベースで31・5%でございます。
○佐々木(憲)委員 結局、この老人医療費に占める国の負担も、44・9から31・5、大幅にこれも減っているわけですね。つまり、国の出すべき部分が後退しているわけですから、その足りない分を、あるいは、全体として高齢化が進む、その部分の負担をすべて国民にかぶせていく、こういうやり方をこれまでしてきたということが明らかであります。
では、政府管掌健康保険、政管健保の場合はどうでしょう。
1980年度から2000年度の間に、給付費に占める国庫負担、これは何%から何%になっていますか。
○大塚政府参考人 1980年、昭和55年でございますが、昭和56年の数字を、恐縮ですが、ほとんど変わっておらないと思いますので申し上げますと、国庫補助率、当時、56年度から固定をいたしましたので、16・4%の給付費に対する補助率でございます。
今日におきましては、その後の改正がございまして、いわゆる現役世代の給付費に対する国庫負担は、現在の制度で13・0%、ただし、老人保健拠出金に対する補助は16・4%と変わっておりません。
○佐々木(憲)委員 政管健保に国庫負担が導入された80年ですね、1980年。このとき、国庫負担率についてはどのような決められ方をしていましたでしょうか。
○大塚政府参考人 少しさかのぼった経緯になるわけでございますけれども、さらにさかのぼりますと、かつて定額補助といった時代があるわけでございますけれども、昭和48年に保険給付費の定率の10%の国庫補助というのが一つございます。
それから、保険料の引き上げに際しては国庫補助率を引き上げるという、いわゆる連動制というのが当時導入をされまして、保険料率を1%引き上げる際には国庫補助率を0・8%引き上げるというのが、昭和48年から55年までの基本的な枠組みでございました。
56年に16・4%と、先ほど申し上げましたが、国庫補助の仕組み、補助率を固定して以降、今日に至っておりますが、これも先ほど申し上げましたけれども、現役世代に対する補助率につきましては、平成4年に見直しをいたしまして、16・4%を13%。
大筋はそういう経過をたどって今日に至っております。
○佐々木(憲)委員 私は、導入されたときにどういう決められ方をしたかということを聞いたわけですが、そのときは16・4%から20%の範囲内にする、しかし当分の間は16・4%で出発する、これは法律で決まっていたわけでしょう。最低限の負担として決められたのが16・4%なんですよ。それを92年に今言ったように13%に減らした。
当時、山下大臣は平成4年3月10日、こういう答弁をしているんです。万一財政状況が悪化した場合の措置については、その事態に応じまして国庫負担の復元について検討させていただく、つまり、16・4%から20%の間国庫負担でやりますよ、こういう約束をしていながら、そしてまた、16・4%で出発をして、大変な状況になればそれを引き上げます、国庫負担をふやします、こういうふうに答弁をしていたわけですね。
ところが、13%に大きく減らしてしまった。つまりこれは、80年当時の法定事項を大きく逸脱した、いわば約束違反だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○大塚政府参考人 おっしゃいますように、政府管掌健康保険に対する国庫補助の率は、その時々に応じて、先ほども申し上げましたが変遷をたどってきております。
そもそも政管健保にどのような趣旨で国庫補助をするかということになるわけでございますけれども、我が国の国民皆保険制度を維持していくために、国保それから被用者保険では政管がそれぞれ一種の受け皿になっておりますし、また現実にも、加入者の実態から見まして一種の財政力格差が生じるおそれがあるということで、国保及び被用者保険につきましては、政管に一定の国庫補助を導入する。
したがいまして、それぞれのバランスを考える、制度の推移を考えながら検討する必要があるわけでございますが、今日各制度とも大変厳しい状況、これは先ほど来お話が出ておるとおりでございまして、現状の政管健保の補助率を政管のみに限って引き上げるということは非常に困難な状況である、またバランスを失するのではないかという考え方でございます。
○佐々木(憲)委員 政管のみ引き上げるという言い方をしましたけれども、全部引き下げているんですよ。全部引き下げていることが問題なんですよ。そうでしょう。つまり、国が本来もっと責任を持って高齢化社会に向けて国庫負担をふやしていく、そういうことをしないと保険財政そのものもやっていけない、これが今の状況なんです。それを、こちらも減らした、だから政管健保もあわせて減らす、それでバランスがとれるというんですが、そんな国民負担ばかりふやして何のバランスですか。国庫負担の方はどんどんどんどん軽くなって、責任を放棄している。
坂口大臣、お伺いしますが、今ずっと数字を紹介していただきましたが、この間、国民医療費に占める国の比率というのが低下をして、そして国民の負担の側は、保険料なりあるいは窓口負担、こういうものがどんどんふえてきた。これはバランスが崩れているというふうにお思いになりませんか。
○坂口厚生労働大臣 今、議論はパーセントでされておりますけれども、しかし、現実の額そのものはどんどんとふえてきておるわけです。だから、どんどんとふえてきているという現実を見てほしいと思うんです。パーセントとすれば、それは全体の高齢者のパーセントがふえてくるんですから、だから、それに合わせてそのパーセントをふやしていくということになれば、これは大変な医療に対する額になってしまう。
だからそこは、全体の予算のバランスがあるわけですから、全体の額はふやしていくけれども、高齢者の増加に従って、それに対して全体のパーセントとしては下がってくる、それはしかしやむを得ないことだと思うんですね。世の中は医療だけじゃないんですから、年金もあればほかのことも、介護もあるし全体があるわけですから。額としてはふやしている、それは間違いありません。
○佐々木(憲)委員 年金だって、国民の負担がふえる、国の責任は放棄する。医療だってそういうことをやってきたんじゃないですか。額がふえるのは当たり前ですよ、高齢化社会なんだから。全体としてふえていくんです。ふえていくときに、国がしっかりとそれを支えるということをやらなきゃ、何のための国家財政ですか。何のための政治なんですか。
今振り返ってみても、1997年9月から、サラリーマンの医療費本人負担はそれまでの1割から2割にふやした。当時は高齢者の負担もふやされた。また、政管健保の保険料も引き上げられた。もうあのときは総額2兆円の負担増です。消費税率も引き上げられた。9兆円の負担増。消費大不況になったじゃないですか。さらに一昨年、2000年11月には、自民党、公明党など政権与党は、高齢患者などに一層負担を求める健康保険法の改悪を行いました。その上に今回の大改悪なんですよ。
厚生労働省は、3割負担による受診抑制で医療費を約3800億円減らせる、これは2003年度そう見込んでいるらしいんだけれども、こんなやり方は国際的に見ても極めて異常ですよ。一体、窓口負担をふやすことで医療費を抑制している国というのは世界にありますか。あったら挙げてください。
○大塚政府参考人 医療費を抑制するために窓口負担を上げるというのは、私どももそれを目的と考えているつもりは毛頭ございませんが、諸外国におきましても、増加する医療費にどう対応するかというのは、我が国のみならず先進諸国共通の悩みであり、課題であると私どもは認識しております。
それぞれ、国によりまして制度、歴史が違いますからいろいろとございますけれども、例えばドイツ。ドイツは比較的一部負担、患者負担が少ない国として知られておりますけれども、ドイツにおきましても、93年あるいは94年に入院時の一部負担金の引き上げを連続して行っておりますし、フランスにおきましても、やはり同じように、入院時の一部負担金、これは定額でございますが、これを引き上げる。93年、95年と引き上げを行っておりますし、外来時の自己負担、これは95年に3割、30%に引き上げるといった例がございます。
その目的、効果、ねらい、それぞれの国によってではございますけれども、受診抑制をねらっての患者負担、これは我が国も含めてそれを考えておるわけではございません。
○佐々木(憲)委員 あなた方がそういう報告書を出しているんですよ。今回の3割負担が実現すれば受診抑制につながって医療費を3800億円減らせるんだと、自分たちで言っているじゃないですか。こんなことをやっている国は世界にないですよ。
イギリスの事例についてお聞きをしたいんですが、イギリスでは、政府が全額を負担している国民医療制度、NHSの予算について、今どんな方針を出していますか。
○大塚政府参考人 イギリスにおきましても、ここのところさまざまな改革が実行されておりますけれども、イギリスの国民医療制度、いわゆるナショナル・ヘルス・サービスでございますけれども、長年にわたります投資不足ということが言われておりまして、設備あるいはマンパワーの不足が深刻だと。具体的には、患者さんたちの入院あるいは外来も含めて、一種の長期間待機が恒常化しているという深刻な問題があると言われております。
本年4月、イギリス政府は、予算の演説におきまして、2002年度から2007年度の5年間、医療費予算を、これはナショナル・ヘルス・サービスですからまさに税で負担をしているわけでございますけれども、毎年実質7・4%増を目指すということを方針として掲げております。
当然、この場合には財源が問題になるわけでございまして、英国政府は、この予算増のための必要財源を確保するために、国民保険料、これは国民保険、年金その他の総合的な保険の財政の方の保険料でございますが、そちらに財源を求め、2003年4月から事業主、被用者それぞれ1%の保険料率の引き上げをする、こういう大変厳しい財源対策も含めまして、医療費予算の増額を図る。
その最大のねらいというのは、先ほど申し上げましたけれども、待機期間の解消あるいは縮小ということにあるようでございまして、外来につきましては2005年末までに3カ月待ちを目標、入院は六カ月待ち、それ以下という意味でございますが、そういった目標を幾つか立てまして、NHS改革を進めようとしているというふうに聞いております。
○佐々木(憲)委員 つまり、イギリスでは、来年度予算で公共支出計画というものを出しておりますが、5年間で予算を実質で43%増額する。そのために、毎年実質で7・4%増、日本円にして現在の12兆円の予算を19兆円に高めようとしているわけです。これによって、GDP比で7・7%にすぎなかった医療支出を3年後に8・4%、5年後に9・4%にまで拡大して、EU諸国の現在の平均8%を上回る水準にしようとしている。大変力強い宣言をしているわけです。
ところが日本では、国庫負担を減らし続ける、国民負担、患者負担はふえ続ける。大体、国庫負担を減らして国民、患者負担をどんどんふやしていく、こんな国というのはほとんど例がない。イギリスのように、本来なら国がもっと責任を持つ……
○森委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、結論を急いでください。
○佐々木(憲)委員 そういう方向に転換をするということが私は必要だと思います。国庫負担をもとの水準に戻せば、十分これは国民負担なしで、今回の法案など出さなくてもやっていけるということを指摘して、時間が参りましたので、以上で終わります。