金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 中小企業融資, 金融消費者保護)
2002年06月12日 第154回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【174】 - 質問
UFJ銀行頭取、みずほホールディングス社長に対し参考人質疑
あいつぐ一方的競売・銀行の債権回収のあり方をただす 「回収に行きすぎがないよう指導を徹底したい」と全銀協会長が答弁
2002年6月12日 、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、銀行の債権回収のあり方について、参考人として出席した寺西正司全国銀行協会会長(UFJ銀行頭取)らの見解をただしました。
佐々木議員は、RCC(整理回収機構)では、債権回収にあたる場合、「契約の拘束性の追求」とともに「人間の尊厳の確保」を重視し、一方的な競売や強制執行によるのではなく、できるだけ話し合いで解決していくという姿勢を表明していることに言及し、森金融庁長官も「RCCという国の公的サービサーがやっていることは、競争の激しい、民間の、レピュテーショナルリスクを抱えている銀行は、当然、その程度まではやってしかるべき」と国会で答弁していること示し、銀行の姿勢をただしました。
寺西全銀協会長は、「RCCの方針は民間も守るべき指針だと認識している。特に個人の場合は、契約を杓子定規にのみとらえず、個別の事情を勘案するようにしている」と答え、前田晃伸みずほホールディングス社長も、「話し合いによる解決を優先している。整理回収銀行と私どもと同じ考えだ」と表明しました。
さらに佐々木議員は、銀行がバブル時代に大型フリーローンなどと組み合わせた提案型融資をすすめ、年収の何倍もの過剰融資をおこない、貸した側の責任は棚上げして身ぐるみ剥ぐ回収に走る事例が少なくないことを指摘。貸した側の責任も考え、人間的に生きる最低のところを保証するよう求めました。
これにたいし前田みずほホールディングス社長は「相手の事情を配慮するのは当然」と答え、寺西全銀協会長は「回収に行きすぎがないよう指導を徹底したい」と約束しました。
銀行頭取に「中小企業向け貸出計画」の達成状況をただす UFJ銀行頭取は「苦しい状況」と答弁
次に、佐々木議員は、参考人として出席した寺西正司UFJ銀行頭取と前田晃伸みずほホールディングス社長にたいし、中小企業向け貸出の状況をただしました。
いま、公的資金を投入されている銀行は、「経営健全化計画」を作成し、そのひとつとして中小企業向け貸出計画の達成をかかげています。
質問の前提として、佐々木議員が各行の中小企業向け融資の位置づけについてただしたところ、前田みずほホールディングス社長は「中心マーケットとして重視している」、寺西UFJ銀行頭取は「銀行の本業そのものと位置づけている」と述べました。
そのうえで佐々木議員は、両行にたいし、今年3月末の中小企業向け貸出計画の達成状況を説明するよう求めました。
前田みずほホールディングス社長は、「詳細は精査中」としながらも、昨年3月から今年3月までに700億円増やす計画に対し、数百億円程度のプラスになっていることを明らかにしました。
一方、寺西UFJ銀行頭取は、昨年3月より1兆4千億円のマイナスとなった昨年9月時点よりも「大きく減少」し「大変苦しい状況にある」と述べました。
佐々木議員は、UFJ銀行頭取に対し、「公的資金を受け入れたときに、みずから増やす計画を立てたものだ」として、今後の対応をただしましたが、寺西氏は「(行内の)体制を再構築したい」と述べるにとどまりました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、寺西、前田両参考人にお越しをいただきまして、今の銀行の実態についていろいろお聞かせをいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
5月24日に一斉に発表されました大手銀行の7グループの3月期決算によりますと、不良債権処理額が大幅に拡大して、前期比で約1・8倍の7兆7200億円に膨らんでおります。同時に、不良債権残高は27兆1700億円と、前年比で47%増ということでございます。簡単に言いますと、処理しても処理しても不良債権はどんどん膨らんでいく、こういう実態だと思うわけです。
そこで、基本的なことからお聞きをしたいんですけれども、この不良債権にはバブル時代につくられたものがあったと思いますが、それは現在ではもう既に基本的には処理し終えたというふうに理解してよろしいのではないかと思いますが、現在抱えているのは、それ以後に発生したものである、大ざっぱに言いまして、このように考えてよろしいかどうか、お二人にそれぞれお伺いしたいと思います。
○前田参考人(株式会社みずほホールディングス取締役社長) 私の考えを申し上げます。
バブル期の不良債権処理は、もう10年以上たちまして、私はほぼ終わったと考えております。現在発生いたしております部分は、通常言われております、いろいろ帝国データバンク等の分析でも、本業不振型とか不況型とか、いわゆるそういう種類のものではないかと思われます。
ただ、きれいに分けるというのは大変難しいんですが、どちらかというと不況型と言っていいのではないかと思います。
○寺西参考人(全国銀行協会会長) お答えをいたします。
私見でございますけれども、これまでの不良債権というのは大きく申し上げて三つに分けられるのかな、このように思っております。
最初は、先生おっしゃいました不動産融資に代表されますバブル型の貸し出しということでございますが、これにつきましては、御指摘のとおり、おおむね処理が完了しているというふうに考えております。その次に起こりましたのが、ここ数年、ある意味で景気低迷とかデフレの影響によりまして、本業の業況が悪化して不良債権化している部分。それから、日本経済の産業構造の大きな転換が起こっておるわけでございますが、この大きなうねりの中で横波を受けて対応に苦慮しておる企業といったことが、その次に起こっておる不良債権ではないかな、こういうふうに思っております。この辺がここ数年に起こっていることではないかな、こんなふうに考えております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 今のお話ですと、不況型あるいは日本経済の構造的な転換の中で、不良債権が急にふえてきているということなんですが、3月期決算では、みずほの不良債権は9720億円ふえておりまして、UFJの場合は実に3兆8117億円ふえているわけですね。原因として、政府の説明によりますと、景気の後退で不良債権化している部分、それからもう一つは資産査定の厳格化で不良債権がふえた、この二つの要因を金融庁などは答弁でお答えになっているわけです。
お二人にお聞きしますけれども、不良債権の最近の増加分、この1年で結構ですけれども、その中で、資産査定の厳格化によって生まれた部分というのはどの程度の比率を占めているのか、これをお伺いしたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
ただいまの先生の御質問は実は大変難しい御質問でございまして、どの部分でふえたかというのは大変分析が難しいと申し上げざるを得ません。資産査定の厳格化で限界的にどれぐらいかというのは、自己査定というのは、既に導入いたしましてかなり期間を経ていまして精度が上がっております。
ただ、昨年は特別検査がございましたので、その部分は間違いなく若干影響したと思いますが、それ以外の部分で、割合をちょっと分解するというのは非常に難しいということをお断り申し上げたいと思います。
○寺西参考人 お答えを申し上げます。
直接お答えになるかどうかはわかりませんが、私どものグループについて少し数字を挙げて御説明をして御理解いただきたい、このように思っております。
私どものグループについて申し上げますと、2002年3月期の不良債権、これは金融再生法の開示ベースでございますが、6兆5千億円ということで、9月末期より3兆6千億ふえているということでございます。この残高の増加の主因は、市場の厳しい評価も踏まえまして従来以上に厳格な査定を行ったということとか、大口債務者に対します再建計画等の策定を行ったということが考えられます。
数字で具体的に申し上げますと、破綻懸念債権に相当いたします危険債権が1兆6千億ふえてございます。それから要管理債権、これは要注意先のうち、貸し出し条件緩和を行っておる債権等でございますけれども、1兆9千億円それぞれ増加しております。特に要管理債権の増加につきましては、実体経済が悪化している中で、返済猶予と少しでもみなされます債権につきましては、厳格に判断して金利水準にかかわらず開示することとした、こういうことが影響してございます。
先ほどお話ございましたように、当然のことながら、実体経済の低迷に伴う債務者の状況悪化も影響しておりまして、資産査定の厳格化のみの影響を数量的にとらえることは非常に難しい、このように思っておりますので、今の我々が置かれております現状を少し御説明して、お答えにさせていただきたい、このように思います。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 どうも余りはっきりした数字が出てこないようですけれども、金融庁の説明によりますと二つの要因がある。景気が悪くなった面と資産査定の厳格化、こういう説明をされているわけでありまして、それがどの程度の比率なのかということを知りたいと思ったのですが、どうも難しいという話であります。
そこで、もう少し別な角度で聞きますけれども、不良債権の構成でありますが、大手企業向け、中小企業向け、そして個人向け、大きく三つに分けますと、不良債権はそれぞれどの程度の構成になっているのか、比率になっているのか、これをお知らせいただきたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
今先生の言われた、きれいに分解ができているかどうかちょっと申し上げにくいんですが、私どもが保有しておりますデータで申し上げますと、ことしの3月末時点での国内店におきますリスク管理債権の融資先別の構成でございますが、大企業と中堅企業で合わせて約3割、それから中小企業で6割強、それから個人というジャンルで分けますと、ここは大体1割弱、7%ぐらい、これで大体100%という分類でございます。
○寺西参考人 お答えをいたします。
ざっくりした数字になりますが、2002年3月時点におきます私どもの不良債権の内訳、大手それから中堅企業合算で4割強、中小企業が約5割、個人向けが1割弱、ざっくり言いますとこういう分布になろう、このように思います。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 そこで、中小企業あるいは個人というのは、社会的にも大変弱い立場にありまして、景気の荒波に大変もまれやすいという状態にあります。
私は、昨年12月3日の予算委員会で、資金回収のあり方について質問をいたしましたところ、RCCの場合、回収のあり方については、二つの要因といいますか原則で当たっているというふうに答えております。
一つは契約の拘束性の追求、それでもう一つは人間の尊厳の確保という二つを挙げまして、回収に当たる場合、相手側の要望に耳を傾けて、一方的な競売だとかあるいは強制執行によるのではなくて話し合いに応ずる、できるだけ話し合いで解決していく、こういう姿勢を表明しております。簡単に言いますと、身ぐるみはいで路頭に迷わすというようなことはしないということでありました。預金保険機構の松田理事長にも、RCCの鬼追社長にも確かめましたけれども、人間の尊厳の確保というのが優先されなきゃならぬのだという答弁でありました。
問題は、銀行としてはどういう姿勢をとるかということであります。森長官にただしたところ、長官は、RCCという国の公的サービサーがやっていることは、競争の激しい、民間の、レピュテーショナルリスクを抱えている銀行は、当然、その程度まではやってしかるべきではないか、こういうふうに述べています。つまり、人間の尊厳の確保を優先するということを強調しているわけでありますが、この金融庁長官の発言について両参考人はどのように受けとめておられるか、これをお聞きしたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
整理回収機構が回収方針としてお示しになっております、契約の拘束性の追求という部分と人間の尊厳の確保と両立を図るという考え方は、私どもも承知いたしておりますし、その趣旨につきましては、私どもの考えと矛盾するものは全くございません。
私ども、お金をお貸ししているわけでございますが、延滞が起こった場合には、お客様とお話し合いによる解決を基本に、それぞれのお客さんの事情を十分に勘案しながら、誠心誠意御返済のお話し合い、それから条件を変えるとか、いろいろなことをやらせていただいております。
また、いただいた担保の処分につきましても、まずは物件所有者の方の任意で売却をお願いいたしております。やむを得ず競売の申し立てや家賃の差し押さえ等を行う場合でも、これは個別の事情を十分に勘案した上でやる、そういうぐあいに基本的に取り決めておりまして、先生のおっしゃった部分、私どもは、整理回収機構の方針とも矛盾はないと思います。同じ考えでございます。
○寺西参考人 お答えをいたします。
RCCの回収方針は、私どもの民間が回収に当たるときも守るべき指針である、このように認識をいたしております。
私ども、特に個人のお客様に対します債権の回収に当たりましては、こうした指針にのっとりまして、契約をしゃくし定規にのみとらえることなく、さまざまな個別事情も十分に勘案しながら、貸し出し条件の変更、例えて申し上げますと金利の減免とかリスケジューリング等の御相談に応じるなど、ケース・バイ・ケースの対応を行ってきてございます。
債権回収に際しまして、行き過ぎた行為のないよう引き続き指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 森長官はこういうふうにも述べているわけです。当然、銀行はレピュテーショナルリスクを自覚して、一定のモラルを持った対応というものが期待されている、仮に、銀行が、不祥事だとか、あるいは、そこまでいかなくても社会的批判を受けるようなことをやっているということが監督当局の耳に入れば、それは必ず事情を聴取しておるわけでございまして、それに基づいて適正な対応、非常に極端な場合は24条報告をかけるとか、そういうことも監督当局としてはやっております、こういうふうに述べているわけですね。
銀行は、バブル時代を振り返りますと、大型フリーローンなどと組み合わせた、いわば提案型融資というものを大規模に行った経緯がございます。それも、年収の何倍もの過剰融資を行ったとかいう事例も聞くわけであります。バブルがはじけると、貸した側の責任は一応棚上げにしまして、回収に走るという事例が少なくないように思うわけですね。話を聞きますと、銀行の場合、競売に一度かけたら絶対に取り下げないとか、話し合いに応じると口では言っても自分たちの主張は絶対に曲げないとか、ともかくしゃくし定規に、法的処理、競売、回収、場合によっては身ぐるみはいで追い出すというような事例も、私も相談を受けたことがありますね。そういうことがマスコミでも報道される事例もあります。
今、自殺者が3万人を超えるとか、ホームレスが大変ふえておりますが、こういう時代に、公共的な性格を持った銀行の役割というのはますます大きなものがあるというふうに思うんです。銀行もやはり貸し手の側の責任というのがあると思うんですね。借りた側の責任だけ問題にするんじゃなくて、やはりそういう問題というのは相互に踏まえて対応すべきだと思うんです。
回収に当たって、人間の尊厳を自覚して、やはり話し合いで解決するということを基本原則として行っていく、先ほど一般的回答がありましたが、個々の事例についても、やはり相手側の立場をよく踏まえて、人間的に生きていく最低限のところを保障するような、そのぐらいのことはしっかり現場に指導していただく、支店までその考えを徹底するということが必要だと思うんですが、その決意をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
○前田参考人 お貸し出しした方がお金を返済できない場合のやり方でございますが、銀行と個人の方という立場の違いがございますので、どうしてもそういう御指摘のような問題がございます。ただ、これは、私どもは、そうはいいましても、相手の方の御事情を十分配慮するというのは当然のことだと思っておりまして、契約に書いてあるからそのとおり形式的に適用するというような運用をやらないようにと、むしろそういう指導をいたしております。
○寺西参考人 お答えをいたします。
一部繰り返しになりますが、私どもといたしまして、回収に当たりましては、まずお客様と十分な話し合いを行い、御納得いただける点をぜひ見出せるよう、誠意を持って対応したい、このように考えております。実際、お客様の個別事情をきめ細かく勘案いたしまして、無理のない返済が可能となるよう、リスケジュール等に応じてきているケースも多数ございます。先ほど申し上げました、債権回収に際して行き過ぎた行為とならないよう、引き続き指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 では、次に、中小企業向け貸し出し計画の問題についてお聞きをしたいと思います。
今、公的資金を投入されている銀行の場合は、経営健全化計画というものを作成しまして、その中に中小企業向け貸し出し計画を掲げ、その達成を目指しているわけです。
昨年12月3日の予算委員会で、金融庁の森長官はこういうふうに言いました。中小企業向け融資というのは、金融機関、銀行にとりましては、大手であれ地域金融機関であれ、大きな稼ぎの源泉である、要管理までは何とか健全化に持っていくよう、銀行にその旨のマネジメントというものを強化するよう要請しております、破綻懸念先に落ちた場合でも、その中小企業の特性、地域の特性等も考えながら、中小企業に対してよく相談しながら物を進めるよう銀行を監督している次第でございます、こう述べているわけですね。
両参考人にお聞きしますけれども、融資先の中小企業の位置づけですね。金融庁長官はもうけの大きな源泉であるというふうな位置づけをされていますけれども、中小企業をどのように位置づけているか、まずこの位置づけについてお伺いしたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
私ども、4月1日からスタートいたしました二つの銀行のうち、みずほ銀行は、主として中小企業、個人のお取引をメーンマーケットとする専門の銀行でございまして、そういう意味では、その中で中小企業というのはまさに中心のマーケットでございます。大変重視をいたしております。
○寺西参考人 お答えをいたします。
中小企業向けの貸し出しということにつきまして、ある意味で、健全化計画の達成という観点のみならず、私どもの銀行の収益基盤の強化という観点からも非常に重要な経営課題、このように認識しておりまして、まさしく銀行の本業そのものという認識でございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 そこで、この中小企業向け貸し出しの計画をそれぞれ出されているわけでありますが、みずほの場合は、昨年3月からことし3月までの中小企業向け貸し出し計画では700億円ふやすということになっておりました。昨年9月時点では、3月に比べて508億円の増というふうになっております。ことし3月にはこの目標は達成されたのかどうか。どの程度の水準になっているか、数字を示していただきたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
経営健全化計画に基づきまして、私ども、中小企業向け貸し出しを増強するということをお約束いたしております。
それで、3月末の数字でございますが、現在残高は精査中でございますが、私が速報ベースで聞いている限りでは、プラスの数字になっていると思われます。正確な数字は、大変恐縮ですが、今精査中でございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 プラスになっているということですが、どの程度プラスになっているんでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
大変恐縮です、数字そのものは、私、いまだ精査していないものですから申し上げられませんが、数百億円程度のプラスになっていると思われます。
○佐々木(憲)委員 UFJの場合は、増加計画は500億円プラスということでありますが、昨年9月の達成状況を見ますとマイナス1兆4547億円ということで、昨年の3月から9月の間に大幅に逆に低下しているんですね。しかも、見ますと、これはかなり飛び抜けたマイナスでありまして、ことしの3月にはこのマイナス分を克服してさらに500億円の上積みをしなければならない、こういう計画になっていたはずでありますが、これは達成されたんでしょうか。実際の数字はどうなっていますでしょうか。
○寺西参考人 お答えを申し上げます。
健全化計画ベースの貸し出し計数につきましては今精査中でございまして、御容赦いただきたいと思いますが、既に決算発表で公表した個人も含めたベースで申し上げますと、中小企業向け貸し出しは前年比非常に大きく減少しておりまして、大変苦しい状況にあるということは事実でございます。
言いわけがましくなりますが、厳しい環境が続く中で資金需要が低迷していることとか、お客様が財務体力の改善努力に伴って貸し出しの圧縮の動きがあるとか、約定返済の進行などが原因になっているとかというようなことがございますが、いずれにせよ、中小企業向けの貸し出しは前年比大きく減少しており、大変苦しい状況にある、こういうことでございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 先ほどは、中小企業というのはまさに経営の中核、中心であるというふうにおっしゃいましたけれども、その中心に対する貸し出し計画、みずからお立てになった計画自体もこんなに大幅にマイナスになっていると。1兆7千億ぐらいマイナスになっているんでしょうか。数字はどの程度マイナスなんでしょうか。
○寺西参考人 細かな精査ができておりませんが、先ほど申し上げました、個人も含めてでございますので少し計数が整合性がとれないかもしれませんが、個人も含めますと、かなり私ども、9月末比で申し上げますと、1兆6、7千億円のマイナスになっておるということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、公的資金を受け入れるときに、その見返り、見返りといいますか、その際に経営健全化計画を提出する、その中に中小企業向けはこれだけふやしますと、みずからお立てになった計画でありまして、これがこんなに減っても、これはしようがないということなのか。これは、なぜそうなったのか、その理由、それから今後どのようにして中小企業向けの融資をふやすおつもりなのか、その点についてお聞きしたいと思います。
○寺西参考人 お答えを申し上げます。
中小企業貸しの減少につきましては、大変重要なことだと重く受けとめております。先ほど申し上げました、中小企業に対する貸し出しというのは我々の本業という認識であるということでございます。
そういった意味で、組織を挙げていろいろ努力をしてまいったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に厳しい経済環境が続く中で、何とか増強したいといろいろな手だてをやってまいりましたが、その経営努力が功を奏さないということでございまして、深く反省をいたしているところでございます。
今後、行内の取り組み体制の再強化を図り、健全な中小企業の資金需要によりきめ細かく対応してまいるなど、中小企業との取引推進に責任を持って取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 どうもはっきりした方向性が見えないと私は思うんですね。
それで、一方で不良債権処理ということを掲げて、それを推進していくわけでありますから、当然、この景気が悪い状況のもとで、営業状態の悪いところにはなるべく貸したくないということになって、貸し渋りあるいは貸しはがしというような状況がかなり進行しているんじゃないか、一方で貸し出し計画、ふやす計画を立てても、それが足かせになって達成できないんじゃないか、私はどうもそういうふうに想像するんですけれども、その辺はどのように考えておられるでしょうか。実際の感じをお聞かせいただきたいと思います。
○寺西参考人 お答えをいたします。
私ども、先ほども申し上げました、中小企業を含めまして融資というのは私どもの本業ということで、新しいファンドを創設する、固定ファンドを創設する、それから営業店に対してもきめ細かな指導をやって中小企業枠をふやそうというような経営努力をいろいろと積み重ねてきたわけでございますが、一方で、お客様の返済圧力も非常に強うございまして、なかなか私どもがふやそうとした施策が生きてこないというのが現状でございます。
ただ、手をこまねいているわけにもございませんので、もう一度体制を再構築いたしまして、何とかこういったことが可能になるように、もう一度経営努力を傾けて努力をしてまいりたい、このように考えております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 前田社長にもお伺いしますけれども、不良債権処理を一方で進めながら貸し出し計画を達成するというのは、かなりの自己矛盾に陥る面があると思うんですけれども、それはどのように克服して貸し出しをふやすということをされているのか、その考え方、手法についてお聞きしたいと思います。
○前田参考人 お答え申し上げます。
今先生がおっしゃいましたように、現在、国内景気が長期低迷いたしておりまして、中小企業の資金需要は非常に少なくなっております。それから、売り上げの減少もございます。それから、有利子負債を圧縮するなどの全体の傾向がございます。
この中におきまして、今先生がおっしゃいました二つのこと、まず、不良債権を処理するというこの部分につきましては、既に不良債権したことにつきましては、銀行といたしまして、引き当てはいたしましても、その後、最終的な処理を、これは2年、3年ルールがございましてやるというのは、最大限の努力をさせていただきたい。それから、新しく中小企業のお貸出先を開拓するというのは、これは一つ銀行の使命でございますので、これは二つのことは矛盾がなくて、むしろ同時に並行でやるべきものだと思います。これが、私どもみずほ銀行の役割課題そのものでございます。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。