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金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治, 雇用・労働 (不良債権処理, 閣僚等の疑惑)

2002年10月24日 第155回 臨時国会 予算委員会 【179】 - 質問

大島農水相・前秘書官口利き疑惑、工事落札後に献金10倍/悪循環に陥る小泉内閣の不良債権処理「加速方針」、中小企業つぶしやめ失業者の生活保障を

 2002年10月24日、予算委員会で、佐々木憲昭議員は、大島理森農水大臣の宮内寛・前秘書官の公共工事「口利き」疑惑をめぐって、問題となっている青森県八戸市の市立市民病院新築工事の受注業者から大島農水相へ献金がわたっている事実を追及しました。献金は、工事落札後の1996年に急増しており、佐々木議員は、「口利きの見返りといわれても仕方がない」とただしました。

 この日の質問で佐々木議員は、2つの資料を明らかにしました。
 ひとつは、大島農水大臣の政治資金収支報告書から作成した「八戸市民病院新築工事請負業者から大島理森農水大臣への献金一覧」です。大島農水相が、病院建設を請け負った18社から1995年〜97年の3年間で計1899万円の企業献金を受け取っており、工事落札後の96年に前年の10倍近い1544万円を集めていることを示す資料です。
 もうひとつは、工事の入札、落札状況をまとめた「請負業者(落札業者)一覧」です。この資料には、工事落札率が予定価格とほぼ同額の99%台という異常さがあらわれており、談合の疑いがきわめて強いことが示されています。
 佐々木議員が献金について「秘書は口利きを認めても見返りを受けなかったというが、大臣が受け取ったということになるのではないか」と迫ると、大島農水相は「法に基づいて適切に処理している」と答弁。佐々木議員は、逮捕・起訴された鈴木宗男衆院議員の政治資金規正法に基づく献金がわいろと認定されたことから、「法に基づいて処理したといっても疑惑は晴れない」「鈴木宗男議員とどこが違うのか」と追及しました。小泉純一郎首相は「大島大臣が責任を持って調査している」と答えるにとどまりました。
 佐々木議員は「調査というが秘書に聞いただけで、本人が疑惑について『犯罪を犯した』というはずがない。客観的な調査が必要だ」とのべ、前秘書官と口利き料授受を仲介したとされるコンサルタント会社役員の参考人招致を要求しました。



 次に、佐々木議員は、小泉内閣の「不良債権処理の加速」の方針が景気をいっそう悪化させ、逆に不良債権を増やす悪循環ぶりを明らかにし、中小企業つぶし政策の転換と失業者に対する緊急の生活保障を求めました。
 小泉内閣は、昨年、大手銀行の11.7兆円の不良債権を2年間で処理するとして1年間で約6兆円を処理する方針を立てていました。昨年1年間で実際に処理された不良債権額は、6.2兆円となっており、政府の当初計画通り処理はすすんでいます。ところが、今年3月末の不良債権残高は15.4兆円となり、1年間で3.7兆円の増加となっています。つまり、処理しても処理しても新しく発生するものが加わるために結果として増えていく関係になっているわけです。
 佐々木議員は、計画通りに処理しても新規の不良債権が発生し、残高が逆に増えている実態をパネルで提示し、このなかで政府が、社会保障で3兆円を超える負担増を国民に押しつけ、不良債権処理を加速させ、景気をさらに悪化させようとしていると告発しました。小泉首相は新規発生の不良債権について「予想以上のものだ」とのべ、悪循環をもたらしていると認めざるをえませんでした。
 「不良債権というのは銀行からみたもの。しかし、こうした中小企業は国民の側、日本経済全体からみれば、必要な企業だ。一生懸命努力して地域経済の発展、雇用の確保に全力をあげている」。佐々木議員は、銀行の「貸し渋り」や「貸しはがし」が強まるもとで、この1年間に東京大田区では1割の町工場が倒産・廃業に負い込まれている実態を示し、根本的な政策転換を求めました。

 また佐々木議員は失業者問題について、360万人もの完全失業者のなかで雇用保険(失業給付)の受給者が2割にすぎないこと、働く能力と意思があって求職活動を懸命にしても雇用保険が切れて生活が困窮している実態を指摘。こうした人たちへの生活保障制度の創設を求め、失業者の子どもの学費、授業料への緊急助成制度を提案しました。
 小泉純一郎首相は、雇用保険が切れた失業者に適用されている現行の離職者支援資金制度の改善(無利子化、返済期間の長期化)を迫った佐々木議員に、「厚生労働大臣のもとで検討をすすめていく」と答弁。親の失業で学費・授業料が払えない問題でも「お子さん本人が教育を受けられる制度なり、体制はきちんととっていきたい」と明言しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 青森県の八戸市民病院の公共事業に絡んで、大島大臣の秘書官が6千万から7千万の口きき料を得ていた、そういう疑惑が問題になっているわけであります。
 先ほどの御答弁で、大島大臣は、これは10月18日の記者会見でもおっしゃっているわけですけれども、本人は、相談を受けて紹介したことはあるけれども、見返りに金をもらったことはないと言っていると。つまり、口はきいたが金はもらっていない、こういうふうにおっしゃったわけなんですが、そういうことですか。
○大島農林水産大臣 秘書の仕事は、御承知のように、さまざまな方が来て、さまざまな相談をします。そうしますと、そういうものとして、だれかに紹介してくださいと言って、はい、わかりましたと言って紹介する程度であった。その見返りとしてお金を得たことはない、こういうことでの報告でございました。
○佐々木(憲)委員 要するに、公共工事に絡んで口はきいたけれども、金は受け取っていない、こういう報告を受けたということです。
 では、具体的に、端的にお聞きしますけれども、大島大臣自身、先ほど原口委員の質問に対して、私は一切受け取っていないとおっしゃいました。この八戸市民病院の公共事業の受注者から、表からも裏からも一切受け取っていない、こういうことですか。
○大島農林水産大臣 裏とか表とか、それはどういう意味かわかりませんが、すべからく政治資金については、法にのっとって届け出ております。
○佐々木(憲)委員 法にのっとってということは、政治資金収支報告書には記載されるようなことはある、こういうことですか。
○大島農林水産大臣 受注者から政治資金にのっとってもらったことはないか、そういうことでございますか。
 その受注者の細かいこと、ほとんど私わからないんです。あるかもしれません、率直言って。それは調べればわかると思いますし、調べろと言えば調べてみますが、法にのっとって処理していると思います。
○佐々木(憲)委員 原口委員の質問に対しては一切ありませんとおっしゃったんですね。
 では、私の方でそれを調べましたので、今皆さんにお配りしておりますけれども、ぜひそれを見ていただきたい。
 工事が行われた時期に献金が集中しております。95年から97年の3年間だけで、関連の元請、下請会社から、政治資金収支報告書に記載されたものだけでも、大島大臣は、実に1900万円献金を受けております。しかも、落札直後の96年、ここに急増しているわけであります。これを見てもわかりますように、95年の162万から、96年になりますと1544万、約10倍の献金になっている。
 つまり、先ほどの話では、秘書が口ききをした、これはお認めになった。見返りに、秘書はもらわなかったけれども、しかし大島大臣が受け取ったということになるんじゃありませんか。これは明らかに口ききの見返りだということになるんじゃありませんか。
○大島農林水産大臣 政治資金規正法にのっとって処理されていると思います。それはそういう資料だと思います。私は、今そういうことを初めて詳細に教えていただきましたが、決してそれはその見返りとかなんとかということではなくて、法にのっとって適切に処理されているもの、このように思います。
○佐々木(憲)委員 法に基づいて報告をしたというだけでは疑惑は晴れないんです。鈴木宗男議員の場合も、法に基づいて適切に処理をして記載をした。しかし、その記載された金額が、この性格がまさに問題になって起訴され、逮捕されたわけです。ですから、問題は、この記載された金額が異常にふえている。なぜそうなのか。この献金の性格を明確にしなければならぬというふうに思うわけであります。
 しかも、重大なのは、次のところを見ていただきたいのです。八戸市民病院新築工事、工事ごとの請負業者、落札業者の一覧であります。これを見ますと、全部で12の工事区分がありますけれども、この予定価格と落札価格でありますが、何と99・6%、99・4%、99・5%、99・3%。本当に、ほとんど99%。99・1から99・9%と極めて異常な落札。しかも、それもほとんどが一回で落札している。これはまことに驚くべき状況であります。これはもう談合の疑惑が極めて濃厚であると言わざるを得ないと思うんですね。
 大島農水大臣の前秘書官が公共事業の受注に絡んで口ききをした。しかも、談合が行われた疑いがある。しかも、この時期に受注企業から大島大臣に献金が集中している。まさに献金の横流しであり、鈴木宗男議員と一体どこが違うのかということになるのです。
 総理に改めてお伺いしますけれども、本会議の答弁で、まずしっかりと事実関係を明らかにすることが重要であるというふうに述べられました。これは本人任せにせず、これだけ問題になっているんですから、きちっと責任を持った調査をすべきではないかと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 今、大島大臣が責任を持って調査を進めていると思います。
○佐々木(憲)委員 その大島大臣の調査が、結局は前秘書官に聞いただけなんです。よく聞いてみたと。
 それは、自分がやったことについて、自分の疑惑について、事実関係を、資料を調べるのはいいですけれども、本人が私が犯罪人ですなんということを言うはずがないわけですから、やはり客観的に調査をする。これは外務省の場合だって同じだったわけです。この問題についても、当事者の調査では全然問題は解明できない。
 そういう点で総理のリーダーシップが必要だと思いますが、今の答弁では全く丸投げでありまして、全然その究明がなされない。
 そうなりますと、やはり予算委員会で、委員長にお願いしたいわけですけれども、この問題の事実究明のために、農水大臣前秘書官の宮内寛氏、それから、現金の授受にかかわりましたA氏、我々は名前を特定しておりますけれども、当委員会に参考人として招致することを改めて求めたいと思います。
○藤井委員長 A氏というのは、これは全く、そういうことだけで理事会協議というのは――提出しました。そういうことであれば、それを前提であれば、A氏ということだけではだれのことかわからないんですから。ですから、そのことについては、今、明らかにするんですね。そうしませんと……(佐々木(憲)委員「もう名前は既に内々には理事会の中では明確になっております」と呼ぶ)わかりました。では、そういったことを前提に、理事会で協議いたします。
○佐々木(憲)委員 では、よろしくお願いしたいと思います。
 では次に、経済問題についてお尋ねをしたいと思います。
 今、国民の多くの方々は、もう本当に今のこの不景気を何とかしてほしいと強く望んでおります。世論調査でも、優先してほしい政策課題ということで、景気対策というのが一番最初に出てくるわけであります。例えば日経の10月4日付、ここでは、「優先的に処理してほしい政策課題」のトップが「景気対策」、57%であります。この声に政治がどうこたえるかというのが今問われていると思うんですね。
 小泉総理は、就任以来、不良債権の早期最終処理ということを掲げて進めてまいりましたが、その結果、失業、倒産というのが大変な事態になっております。ところが、総理の所信表明では景気対策というのはほとんど触れなかったわけでありまして、不良債権、本格的に加速ということが宣言される、結果的にはデフレ不安をあおるということになっていると思うんです。
 総理に端的にお聞きしたいんですが、この不良債権の処理というものがデフレを加速させる、そういう性格を持っているということは認識されているんでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 不良債権処理を進めると、やはり債務等の問題で企業にも倒産が起きてくる場合も出てくるでしょう。そうしますと勤めた方々が失業される。この悪循環に陥ることがないような対応策もあわせて進めていく必要がある。
 しかし、不良債権処理、この問題、今、経済再生、景気問題の足かせになっていますので、先送りするわけにはいかぬ、どうしても乗り越えなきゃならない一つの大きな壁だと思っております。
○佐々木(憲)委員 今、デフレ要因はある、つまり倒産、失業がふえるということをお認めになった。しかし、それに対応するものが必要であると。しかし、対応するものが実際に機能しているのかどうか。これは、我々は全く機能していないというふうに思うわけですが、それは後の議論として、昨年、小泉内閣は、大手銀行の11・7兆円の不良債権を2年間で処理すると言ったわけですね。この1年間では、つまり半分ですから約6兆円を処理するという計算になるわけですが、金融庁にお伺いしますけれども、処理したのはこの1年で幾らでしたか。数字を教えてください。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) お答えいたします。
 平成13年度の、主要行の破綻懸念先以下の債権、これをオフバランス化いたしました額が6・2兆円でございます。
○佐々木(憲)委員 不良債権を減らす計画を立て、そのとおり、1年間では計画どおり実施した。
 それでは、もう一つ数字を教えてください。不良債権の残高、これはどうなりましたでしょうか。数字を言ってください。
○五味政府参考人 お答えいたします。
 こうしたオフバランス化が進められました一方で、平成13年度には新規の破綻懸念先以下債権の発生が9・9兆円ございました。したがいまして、平成14年3月末における主要行の破綻懸念先以下債権の残高は15・4兆円となっております。
○佐々木(憲)委員 つまり、結論としては、昨年の3月で11・7兆だったのが、ことしの3月には15・4。3・7兆円ふえたということになるわけです。
 つまり、不良債権の処理額と新規発生の関係をグラフにいたしますと、こうなるわけでありまして、総理、処理しても処理しても新しく発生するものが加わるために、結果としてふえていく、こういう関係になっている。これはお認めになりますね、当然。
○小泉内閣総理大臣 予定どおり処理を進めても、また予測以上の新規が出ている。これが非常に、経済は生き物であるというゆえんの一つかもしれませんが、こういう問題に対してどう対応するか、これから大事な問題だと思っております。
○佐々木(憲)委員 どう対応するかというのが大事だとおっしゃった。では、こういうときに政府として何をやるかということが大変重要でありまして、デフレ要因であるということはお認めになった。
 それで今、来年度だけでも、医療、社会保障の負担増で3兆円であります。経済財政諮問会議で有識者の議員がこう言っているんですね。医療費の負担、自己負担、保険料の引き上げなどがGDPにマイナス効果を及ぼすと。それはもうそうなるわけです、負担がふえるわけですから。デフレ効果なんですね。
 しかも、不良債権を処理すると。つまり、現在15・4兆円という不良債権が過去よりふえてしまった、これをさらに処理する。そうしますと、国民の負担はふえる、失業者はふえる、倒産がふえる。こういうふうになっていきまして、これは、やってもやっても、処理してもしても、どんどん不良債権がふえ続ける。不良債権がふえたら、さらにそれを処理する。大量に処理すれば、ますます大量の失業、倒産が出る。こういう悪循環になって、不良債権は片づかないんじゃありませんか。いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 不良債権処理だけで経済が再生するとは思っておりません。いかに企業を再生させるか、また、再建可能な企業に対してどのような発展できる環境をつくるか、いろいろな対策が必要だと思っています。
 ですから、不良債権処理だけという点は考えていませんが、不良債権を処理しないと、私は、持続的な経済成長は無理ではないか、また、成長分野への健全な金融機関の融資業務等が行われないのではないか、そういうことから、やはり不良債権処理はもう欠かせない、それに伴ういろいろな作用については十分な手当てが必要だというふうに認識しております。
○佐々木(憲)委員 しかしながら、現実に行われているのは、不良債権処理だけがどんどん先行していまして、それに対応する中小企業に対する支えというのはほとんどないわけであります。また、失業者がふえる、その失業者に対する対応策、これも大幅におくれている。
 したがって、私は、今大事なのは、不良債権を、出てきたからそれをもう全部ゼロにするんだというようなことで次から次とやっていくと奈落の底に沈むような状態になってしまう、そうならないように方向転換が必要だと思うわけであります。
 そこで、不良債権というのは、銀行の帳簿から見てこれは不良債権だ、そういう性格を持っていると思うんです。しかしながら、国民の側、日本経済全体、地域経済、そういう側から見ますと、果たしてその企業というのは不必要な企業なのかというと、私は、決してそうじゃない、これらの企業は一生懸命努力して地域経済の発展、雇用の確保、そのために全力を挙げていると思うわけです。
 総理は所信表明演説で、東大阪市、東京の大田区の中小企業に触れまして、「厳しい環境の中で、我が国の中小企業は果敢な挑戦を続けています。」とおっしゃいました。その大田区では、ピーク時に9千以上ありました工場、その工場数が今では6千に減っております。東京都の工業統計調査によりますと、小泉内閣になってこの1年間で大田区の町工場は10・5%マイナスであります。つまり、小泉内閣になって不良債権処理をどんどん先行した結果、それもありまして、1割中小企業がつぶれてしまった。
 大田区の産業振興会の専務理事はこう言っているんです。すぐれた技術を持っている企業に限って決算状況がよくないところが多い。こうした資金需要がある企業には融資が行われない。先立つものがあれば回復できる中小企業がたくさんある。経営者の資質を見抜いて資金を供給してくれたプロのバンカーがかつては存在した。しかし、今は切り捨てられている。こういうふうにおっしゃっているわけです。
 ですから、技術を持っている中小企業も、赤字だということで不良債権扱いされて、みすみすつぶされていっているわけですよ。それが、先ほど言ったように、3分の2になり、1年間で1割減りという形になっているわけであります。
 やはり、不良債権だからというのでそういうふうにどんどんつぶしていくというやり方というのは、根本的にこれは改めるということが大事だと思うんですが、技術を持っている企業が生き延びる、やっていける、そういう状態をつくるというのが政治の役割じゃないんでしょうか。総理、どうなんでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 倒産する企業も私は一様ではないと思います。それぞれ事情を抱えて、倒産のしようも形も違ってくると思いますが、要は、やる気のある企業にどのように頑張ってもらうか、また金融機関も、やる気のある企業なり経営者なりを見抜いて、将来の発展性をどう考えるか、こういう点で今まで欠けていた面があるということに対しては否定はいたしません、確かにあるでしょう。
 しかし、こういう大きな時代の流れに乗って、時代の流れに、どうやって変化に対応できるかというのは、全体の政府の環境づくりももちろん大事でありますが、同時に、その変化を見越して、企業がどういう形で新たな改革に挑んでいくかという面も必要だと思いまして、その面、産業再編あるいは企業再生、両面から活力を発揮できるような支援体制をとるのも政府としては大事だと思っております。
 ただし、これからの大きな時代の流れにあって、廃業あるいは倒産しなきゃならない企業と、新規に会社を立ち上げる企業というものも一方では出ておりますので、そういう意欲をどう駆り立てていくかという面もやはり見ていなきゃならないのではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 新規に企業が起こってくるということは大変大事なことでありますが、実際には、今まで廃業と新規の企業とを比較しますと、廃業の方がこの数年間ずっとふえてきているんですね。新規に立ち上がる企業というのは非常に減っているわけです。
 ここが重大でありまして、やはり可能性のある企業を応援していく、その中小企業の経営者の能力、あるいは持っている技術、そこを評価する、こういうことに根本的に変えていかないと、ともかく赤字だ、赤字が出ているからこの赤字を何とかしなきゃならぬ、その赤字を抱えている企業、3年以上たつとこれは不良債権だというようなことでどんどんどんどん切り捨てていったら、日本の中小企業の可能性を、芽を摘んでしまうということになるわけでありまして、そこをやはりよく考えていただきたい。
 RCCに送って、RCCが再生機能があるといっても、実際に6万社を超える企業がRCCに昨年以降送られたけれども、再建の軌道に乗ったのは87社ですよ、6万の中の。ですから、そういう意味では、先行しているのは何かといったら、企業をつぶすこと、それが先行しているんです。そこを変えなきゃならぬというふうに思うわけであります。
 そこで、デフレが深刻な事態になっているわけでありまして、小泉内閣はかつてないほどの膨大な不良債権を処理しようというわけでありますけれども、現時点で15・4兆円の不良債権がある。新しく発生する分も含めて、これから何兆円の不良債権を処理するのか。例えば今年度、一体幾ら処理する計画なのか。これを金融庁、答弁してください。
○五味政府参考人 お答えいたします。
 今後の不良債権の処理額といいますのは、債権者、債務者の間の問題でございますので、確たることを申し上げることは困難でございますけれども、例えば、非常に機械的な試算をしてみるとどうなるかということで御紹介をいたします。
 破綻懸念先以下の債権につきまして、オフバランス化のルール、これは既存分であれば2年、新規発生分であれば3年でオフバランスをするという原則、あるいは5割8割ルールと言われておりますが、ことしの4月に要請をいたしましたものなど、こういったルールにのっとりまして計算をしてみますと、平成14年度中に10兆円前後の破綻懸念先以下債権についてオフバランス化につながる措置、これはもちろん企業再建も含んででございますが、オフバランス化につながる措置が講じられるという計算結果になります。
○佐々木(憲)委員 昨年は6・2兆円処理をした。6・2兆円ですよね。では、ことしは幾らか。10兆円処理しなきゃならない。大変な規模なんです。しかも、新規発生がこの中には入っておりません。今あるものだけ処理しても10兆円だと。これは大変な失業、倒産を生み出すことにならざるを得ないんじゃないか。
 竹中大臣は、昨年、12・7兆円の不良債権最終処理で39万から60万の離職者が出る、こういうふうにおっしゃいましたね。では、今後一体どれだけの離職者が生まれるのか、数字を出してください。
○竹中金融担当大臣 引用の御数字は、内閣府の勉強会で東大の西村教授らが試算された一つの過去の平均値に基づく雇用と債務、債権の関係を引用されていると思われます。
 基本的には、その場合にオフバランス化される債務、債権がどのぐらいになってくるのかということ、これはまさに、そういうことも念頭に置きながら今政策の枠組みをつくっているわけでございますから、それそのものを正確に議論するのは大変難しいと思います。
 それと、西村教授の数字は当時の一つの平均値として出されておりますので、それそのものを機械的に当てはめることはもちろんできるわけでございますけれども、そうした点も含めて、政策の枠組みをどのようにしていくかということをしっかりと今議論しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 全く無責任で、計算さえしていない。つまり、これだけ去年よりもことしは大規模に処理をするんだから、倒産、失業は今まで以上にふえるんですよ。今まで以上にふえるのに、去年は出した数字もことしは出さない。大規模に失業、倒産を生み出すという政策は明確だけれども、やってみないと結果はわからないと。
 総理、これは大変無責任だと思いますよ。総理はやってみなきゃわからぬということをよく言いますけれども、こんなことをどんどんやっていったら、国民は倒産と失業の中で大変な苦しみに遭うと言わざるを得ないと思うんです。
 今、失業者はどんな状態になっているかということで、8月の統計を見ましても、約360万ですね。就職活動をあきらめた、もう就職なかなか見つからないとあきらめた失業者を含めますと1千万人を超えると言われているんですね。完全失業者の中で、雇用保険、失業給付を受給している人はわずか19・3、つまり2割です。2割しか失業給付を受けられていない。
 働く能力と意思があり、求職活動を一生懸命しているけれども、雇用保険が切れて収入がなくて生活に困っている、こういう失業者に対して生きていけるようにするというのが国の責任じゃないかと思うわけであります。私は、このような方々のために何らかの生活保障制度を創設すべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
○坂口厚生労働大臣 今お話がありましたように、失業者が360万前後あることは、この8月の数字を見ましてもそのとおりでございます。
 雇用保険制度その他が現在あるわけでございますが、2割とおっしゃいましたけれども、私の見た感じは3割はおもらいになっているというふうに思います。雇用保険制度、これは御承知のとおり、労使の間でいろいろ議論をしていただいて、そして決めていただいているわけでございますから、できる限り雇用保険に多くの人がかかっていただけるようにしなければならないというふうに思っております。
 パートの問題等につきましても、やはり検討していかなきゃならないというふうに思っているわけでございますが、しかし、自営業の皆さんでございますとかそうした皆さんは現在のところ入っていないわけでございますし、自営業等の皆さん方に対しましては離職者支援資金を現在出しているところでございまして、そうしたものによって、ひとつ、できるだけカバーをしていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今、離職者支援資金というお話がありましたね。私もこういう制度があるのは知っているんですけれども、あくまでこれは貸付制度なんです。
 つまり、3%の利子つきで、もちろん一定の猶予期間はあるとしても5年で返済しなきゃならぬ、こういうものでありまして、今、失業しまして本当に将来の展望が描けなくなっている、そういう方に利子つきの融資で果たして生活が支えられるのか、あるいはそういう希望がかなえられるのか。実績を見ましても、なかなかこれは低いわけですね。
 やはり、今大事なのは、このような離職者支援資金について、こういう方々のために制度をもう少し弾力的に改善していく。例えば、利子を無利子に引き下げるとか、あるいはこの返済期間を長期に引き延ばすとか、もっと利用しやすいように変えていくということが私は大事だと思います。総理、この点のいろいろな改善、もっときちっとやっていくということが私は大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 今後、どのような具体策がいいかというのは、厚労大臣を中心に検討していただいております。
○佐々木(憲)委員 しっかり検討して、安心して生活できるような状況に持っていくということが国の役割だと私は思うわけであります。
 それからもう一つ、例えば、大変つらいわけですね。親が失業する、そうすると子供が学校に通えなくなる、学費が払えなくなる。本当に能力のある若者が今学校に行けなくなって大変な状況だということで、訴えがたくさんあるわけです。これを救済するというのもやはり政治の責任だと思うわけですけれども、例えば、失業者の子供の学費、授業料の援助ですね、緊急援助。あるいは住宅ローンの払いなんかも大変なことなんですけれども、こういう方々のために家庭と家族を維持するというそのための支援、やはりセーフティーネットと言っているわけですから、きちっとこれは支えていく、充実していくという決意を総理に最後にお伺いしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 日本は教育に力を今までも入れてまいりました。現在におきましても、親御さんがやむを得ず職を失った、あるいは離れざるを得なくてお子さんの学費に困ったという場合につきましても、御本人が教育を受けたいという意欲があるのならば必ず支援できる制度が設けられ、今拡充しております。そういう意味において、日本における、教育を重視していく姿勢にはこれからも変わりありませんし、今後、すべての国民が、親御さんがたとえ資金的な教育支援ができない家庭におきましても、お子さん本人が教育を受ける意欲があるならば必ず教育を受けられるという制度なり体制はきちんととっていきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 終わります。

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