金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 不良債権処理)
2002年10月30日 第155回 臨時国会 財務金融委員会 【180】 - 質問
国が金融危機つくり公的資金を投入 竹中プランによる不良債権処理加速を批判
2002年10月30日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は小泉内閣が進めようとしている不良債権処理加速策について、「(銀行の)体力を落とすようなことをやって、銀行に税金(公的資金)を投入する、とんでもない話だ」と批判しました。
竹中金融担当大臣が不良債権にたいする引当て強化や自己資本の算定基準を改定することで銀行の不良債権処理を加速しようとしていることについて、佐々木議員は、銀行の健全性を示す指標である自己資本比率の8%割れを引き起こすものだと指摘、「銀行にダメージを与えて、貸し渋り、貸しはがしを促すことになる」と強調しました。
竹中金融担当相は、「すべての銀行に資本割れが起こるとは想定していない」としながらも、「公的資金の話は結果である」「トータルな仕組みを最終的につめている」と、銀行への新たな公的資金投入を否定しませんでした。
また、この日の佐々木議員の質問に対し、金融庁は、これまで行ってきた銀行に対する公的資金の投入で、9.1兆円が国民負担(税金)として確定していることを明らかにしました。佐々木議員は、「大変な国民負担を負わせて銀行支援策がおこなわれたが、不良債権は増えるばかりだ。増えた不良債権を処理すればさらに倒産・失業が増える。『デフレ加速策』を政府がやっている」と指摘し、「税金を使うなら、銀行にではなく、中小企業支援にこそ使うべきだ」と強調しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、不良債権処理の問題についてお聞きをしたいと思います。
昨年、政府は大手行の11・7兆円の不良債権を2年間で処理するというふうに言いました。私が24日の予算委員会で金融庁に確かめたところ、1年間で6・2兆円処理したということであります。不良債権を減らす計画を立て、計画どおり処理しているわけですね。おくれているわけでも何でもないわけであります。それなのに竹中大臣は、不良債権処理を加速しなければならない、こう言われました。
一体なぜ加速するのか、その理由を明確にしていただきたいと思います。
○竹中金融担当大臣 これまでも、不良債権処理に向けては計画を立て、ルールをつくり、銀行もそれなりに一生懸命やってきましたし、金融庁もそれをチェックしてきたというふうに思っております。
しかしながら、二点申し上げたいと思いますが、それでも見ていますところ、当事者から見ると、銀行から見ると不良債権処理はやっているということになるわけですが、市場からの評価はそれでも相当厳しいものがある。その意味では、これはいろいろな尺度があろうかと思いますが、現状と市場の評価の間にギャップがある。そのギャップが、例えば経済危機が何月期か来るのではないかというような議論にもつながってきたということを受けて、ここはやはり政策を強化しなければいけないというのが基本的な判断でございます。
これは第二の点になりますけれども、一つ現象面で申し上げるならば、実態的な経済、実質成長率、もちろん経済は厳しいわけでありますが、それでも当初の政府経済見通しから大きく乖離している状況にはないと思いますが、一つやはりデフレ、それが深刻化をしている。
昨日も議論をさせていただきましたが、これはやはりマネーがなかなかふえないような状況にある。このマネーがなかなかふえないというその一つの大きな要因として、銀行の金融仲介機能がやはり極めて大きいものとして存在している。そうした点からも、この不良債権の処理ということを加速する、この政策を強化することが必要であるというふうに考えている次第であります。
○佐々木(憲)委員 加速をしなければならないという理由が、今の説明ではどうもよくわからないんですね。
経済危機が来るのではないかというおそれが強まっている、あるいはデフレ状況にあるのでより急がなければならないのだということでありますが、しかし、経済危機のおそれ、これはなぜ起こったのかといえば、不良債権処理の問題ではなくて政府の政策が、国民負担をふやし、不良債権処理を進めて倒産、失業をふやす、このいわばデフレ加速政策が招いた結果でありまして、デフレ加速政策をやっていながら、デフレが大変だからといってまた不良債権を処理する、不良債権を処理したらまたデフレが加速する、こういう状況になっているのではないかと思うわけであります。根本的に私は疑問に思うわけです。
竹中大臣は、たびたび、そのために公的資金を投入しなければならないとおっしゃっています。まず確認をしたいんですけれども、現行の法律の枠内ではどのようなときに公的資金の注入ができるのかという点ですが、今の預金保険法では、金融危機対応会議の議を経て、内閣総理大臣の認定を受けた金融機関のみが定められた期間内に申し込むことができる、そして資本増強を実際に行うかどうかの決定は内閣総理大臣が決定する、こういう仕組みになっていると思うんですが、そのとおりですね。
○竹中金融担当大臣 発言について誤解があるといけませんので、ぜひ申し上げさせていただきたいんですが、経済危機が来るとか、私、そんなことは発言しておりませんので、その点は誤解のないようにお願い申し上げます。
それと、公的資金投入が必要だということをたびたび口にしているという御指摘もありましたが、そういうことは、公的資金の投入が必要だというようなことは私は一度も発言していないと思います。
それと、途中でおっしゃった、経済の停滞の要因が何であるかということに関しては、そこは佐々木委員と私と見解の相違はあるのかもしれません。
しかし、いずれにしましても、政策手段が大変限られた中で、これだけ財政赤字も拡大して厳しい状況の中で、非常に細い均衡の上に立って運営しなければいけないという一つの制約の中での厳しい政策選択であるということを申し上げた上で、御質問の公的資金の注入の現行法での枠組みということでありますが、預金保険法においては、金融機関について資本増強が行われなければ信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときには、金融危機対応会議の議を経て、資本増強を行う必要がある旨の認定をすることができる、また、その認定に係る金融機関は資本増強の申し込みができるという旨の定めがございます。
○佐々木(憲)委員 先ほどの御発言ですけれども、経済危機が来るというふうにいろいろと言われていた、市場の評価とのギャップがあると。そのことはいわば、もっと経済を厳しく見る必要がある、そういう認識を言われたんだというふうに思います。
それから、公的資金の注入が必要だとは言っていないというけれども、しかし、必要な場合は現行法でためらうことなく十分に対処しなければならない、こういう趣旨の発言をされているわけですね。ですから、何か全く私が違うようなことを言ったかのようにおっしゃいましたが、大臣自身が発言されていることを紹介して質問しているわけであります。
そこで、先ほどの現行法の問題ですけれども、信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認められる場合に、内閣総理大臣が危機対応会議の議を経て決定することができる、こういう仕組みですね。つまり、現行法では、システミックリスクを引き起こす危険性があると認定された特定の金融機関が対象になるということだと思うんです。そういう理解でよろしいと思いますが、もう一度確認したいと思います。
○竹中金融担当大臣 危機が何であるかというのを特定化することは難しいわけでございますし、これはできないことだというふうに思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認められるときには、金融危機対応会議の議を経て、資本増強を行う必要がある旨の認定をすることができるということでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、システミックリスクのおそれのある場合、こういうことになるわけで、これは、私は、この法律が改正されるときに当委員会で質問をし、大臣からそのような御答弁がありましたので、間違いはないと思うんです。
ですから、小泉総理は、現状は金融危機対応会議を開く時期ではない、現時点で直ちに金融機関に公的資金を注入する段階にはないという趣旨の答弁をされています。つまり、そういう現状認識だと思うんですが、竹中大臣はどのような認識をお持ちですか。
○竹中金融担当大臣 現時点において、直ちにそういった金融危機対応会議を開くというような状況にはないというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 つまり、現時点で公的資金を投入する時期でないということは、システミックリスクの危険性が現時点であるとは言えないということだと思うんですね。
では、今準備されているという金融政策の内容についてお聞きをしたいと思います。これから発表されるというわけですが、その柱は、不良債権処理を加速するという方向に沿って出されるわけでありますが、細かなことは別としまして、中心的な柱というのは、資産査定を強化して引当金を積み上げるということと、それから税効果会計の見直し、この二つが柱だと言われていました。
税効果会計の見直しについては先送りになったようでありますけれども、いずれにしても、こういう体制をつくって不良債権処理を一気に強行する、こうなりますと、当然、大量の倒産と失業が発生をするわけであります。
これ自体、デフレ加速だと思うわけですが、同時に、それを実施すると、大手行の多くが自己資本比率が8%を下回ることになって、この自己資本比率を穴埋めするために、公的資金による資本注入を行って銀行の体力を回復させる。大体、発想、考え方というのはそういうことが骨格だというふうに理解してよろしいでしょうか。
○竹中金融担当大臣 柱としては、何度も申し上げておりますように、資産査定をしっかりとやる、自己資本が十分かを見直す、さらに銀行のガバナンスを発揮してもらう、その結果として、銀行の収益力が高まるようにしてもらう。さらには、けさからも少し話題になりましたけれども、企業再生の仕組みをそれと表裏一体の問題として絡めていく、そういうことではなかろうかと思います。
そこで、どういうシナリオが起こるかということでありますが、それはデフレを加速させるという指摘がございました。短期的にはさまざまなことがあり得ると思いますが、これは、しかし同時に、本当に銀行の経営がしっかりして、本当に資金を必要としている優良な企業にきちっとお金が行き渡るようになるというプラスの面が当然のことながらあるわけでありまして、そういう点も評価しなければいけない。
結果的に、その結果どのようなことが、どのような調整が銀行の部門に起こっていくかということでございますけれども、今佐々木委員がおっしゃいましたような、そんな極端なことがこの社会で起こるというふうには、私は現時点では考えておりません。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、公的資金を投入するような状況は起こらないと。竹中プラン、そういうふうに言わせていただきますと、それを実行しても公的資金を投入するような状況にならない、そういう判断なんですか。
○竹中金融担当大臣 私が申し上げたのは、佐々木委員が御指摘になったように、ほとんどすべての銀行で資本割れが生じるというような、そういう事態は想定しておりませんということでございます。公的資本の話がどうなるかというのは、これは結果であって、予断を持って申し上げるべきことではないというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 それは、すべての銀行に資本割れが起こるというふうに私は言ったわけじゃありません。幾つかの銀行が8%割れになるという可能性というのは当然出てくると思うんですね。そのときに、公的資金を投入するということを想定されているわけですね。
○竹中金融担当大臣 その全体の枠組み、先ほど申し上げましたように、資産査定をきっちりして、自己資本の質を見直す、ガバナンスをそれにしっかりとやっていく、そういうものをどのように組み立てていくかという議論を今最終的に詰めているところでございます。
○佐々木(憲)委員 ですから、私が聞いているのは、資本割れが起こる銀行が幾つか出てきた場合に、そこには公的資金を入れるのか入れないのか、このことを聞いているわけです。
○竹中金融担当大臣 そういう点も含めて、トータルな仕組みを今最終的に詰めているところでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、公的資金投入の可能性を否定されなかったわけであります。
そうなりますと、現在の状況でいいますと、システミックリスクを起こすような可能性、そういう状況ではないと先ほどお認めになりました。しかし、竹中プランを実行すると、結果的に銀行の資本が、自己資本比率が低下して、体力が弱まる。銀行の体力が弱まって、システミックリスクのおそれが強まる。つまり、あなた方のやり方が金融不安、金融のシステミックリスクの危険性をつくり出している、こういうことになると言わざるを得ないと思うんですね。
私は、それは非常に危険なやり方だと思うんです。つまり、金融システムを安定化させるとか銀行を強くするためというふうに言いますが、やっていることは、銀行にダメージを与えて、その結果、銀行が貸し渋り、貸しはがしに走らざるを得ない。そういうことを促すものになり、あげくの果てに金融システムを不安定にする、そういうことをやろうとしているというふうに言わざるを得ない。しかも、その上に、体力が落ちた銀行に税金を投入する、とんでもない話だと思うんですね。私は、その基本的な考え方自体を、発想そのものを根本的に改める必要があると思う。いかがですか。
○竹中金融担当大臣 銀行を中心とする金融システムは、社会のインフラとして大変重要な役割を担っております。そこが、今、さらに構造改革を進めるために必要な強い基盤を必要としている中で、銀行を強くしていくということが我々があくまで目指しているところであります。その結果として、銀行から融資を受ける、銀行に預金を預ける企業や人たちが経済活動をより容易にするということを目指しているわけでございまして、そのための方法を今さまざまな観点から検討をしているわけです。
○佐々木(憲)委員 銀行を強くすると言いながら、実際にやっているのは銀行を弱くすることをやっているんですね。
厳しい資産査定を実行し、不良債権がどんどんふえていく。それに対して引当金をどんどん積み上げていく。そうすれば、銀行の体力は落ちる。自己資本比率は低下する、8%割れになる。そうなった場合に、税金を投入するという場合は、ただ8%割れになっただけじゃ投入できないんです。先ほど言われたように、地域の金融そのものが不安定になる、システミックリスクを起こすようなおそれがある、そういう状況になったときに公的資金を入れるわけですね。
ですから、公的資金を入れるという結果をもたらすというのは、銀行が大変なダメージを受けて、信用不安を引き起こすような状況になったときでありますから、そういうことを当然想定しているわけでしょう。公的資金を入れるという可能性を、必要な場合にはためらうことなく十分に投入するという話を今までされてきたんですね。
私は、こういう政策というのは根本的におかしいんじゃないかと思うんですよ。むしろ大事なことは、税金を使うなら、銀行に使うんじゃなくて中小企業支援に使うべきだ。同じ税金を使うなら、そういう使い方をしなければ銀行の体力増強にならない、結果的には。
大体、今まで政府は公的資金に関して何度も、言っていたことと現実にやってきたこと、これが乖離をしているといいますか、約束をほごにしてきた。例えば、1996年に公的資金投入の枠をつくったわけですが、あのときに、信組以外には入れないというふうに言っていたんじゃありませんか、あの時点の約束は。どうだったですか。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 私の理解では、96年、信組以外には入れないとおっしゃいましたが、そういう仕組みではなかったように記憶しておりますけれども……。
○佐々木(憲)委員 これはもう明確に、当時の銀行局長の答弁が私の手元にもありますが、当時、信組は体力がないので、信組以外には入れないけれども信組には入れるんだ、信組だけなんだ、こういうことが国会で答弁をされていたわけであります。
98年になりますと、この答弁が覆されまして、特例業務勘定を預金保険機構につくって、一般金融機関も対象にした破綻処理の仕組みがつくられました。10兆円の政府保証に加えて、7兆円の交付国債を使って公的資金の投入が行われたわけであります。これに金融機能安定化緊急措置法によって資本増強、資本注入も合わせますと、30兆円の銀行支援の枠組みがこの段階でつくられたということであります。このとき政府は、これで十分なんだと言っていたわけであります。
ところが、98年の10月になりますと、金融国会のときですけれども、あのとき60兆円の金融支援策がつくられた。現在は70兆円の枠組みであります。このようにして、公的資金投入の仕組みは非常に、最初の公式の政府答弁がどんどん覆されまして、複雑怪奇に枠が広がり、対象も広がるということになってきたわけです。その結果、国民負担はふえる一方であります。
数字を確認したいんですけれども、これまで、銀行に対する公的資金投入は幾ら行われたか、国民負担が確定しているのは幾らか、これについてお答えいただきたい。
○五味政府参考人 お答えいたします。
14年3月末現在でございますが、預金保険機構による主な資金援助の実施状況といたしましては、金銭贈与が16・5兆円、それから破綻金融機関からの資産買い取りが5・6兆円、資本増強が10・4兆円などとなっております。このうち、ペイオフコストを超える資金援助のために手当てをされました13兆円の交付国債、これにつきましては、14年3月末までに、その使用額、償還額の累計が9・1兆円となっております。この9・1兆円というのが現段階で国民負担として確定している数字でございます。
○佐々木(憲)委員 大体30兆円投入されたけれども、9・1兆円が国民負担として確定した。これは大変な負担なんですよ、国民一人当たりにして何万円にもなるわけですからね。そういう大変な負担を国民に負わせて、銀行に対して支援策が行われた、税金投入が行われた。しかしながら、全く銀行の状況は改善しない。不良債権はふえるばかりである。ふえた不良債権をさらに処理する、さらに処理すれば倒産、失業がもっとふえて、デフレががんがん加速される、加速されればさらに不良債権がふえる。ですから、不良債権の残高がこの間どんどんふえているじゃありませんか。ふえた不良債権の処理を加速すれば、失業、倒産の加速がもっとふえるじゃありませんか。そういうデフレ加速策を政府がやっているわけですよ。
私は、こういうやり方というのは、根本的に逆の方向を向いていると言わざるを得ないと思います。やはり今のやり方というのは、私は間違っていると。不良債権処理はデフレ要因であるとお認めになりました。その上に、来年は3兆2千億円という国民負担、医療の問題やそれら全部含めまして。それはまた消費を冷やすわけです。
ですから、今政府がやろうとしている方向というのは、完全に日本経済を破綻させる方向だ。竹中プランは金融を破綻させる方向だ。何か金融を応援するかのようなことを言いながら、結果的にシステムを弱めて金融機能を低下させる。その次にどういう展望が出てくるか、全くその展望さえ、必ずよくなるという説明が合理的にできない。私は、そういう政策を改めるように申し上げまして、ちょっと時間が来ましたので、以上で終わりたいと思います。