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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 不良債権処理, 金融機関の破綻, 中小企業融資, ペイオフ解禁)

2002年11月07日 第155回 臨時国会 本会議 【181】 - 質問

預金保険法等改正案の代表質問 小泉内閣は不良債権を最も増やした内閣

 2002年11月7日、本会議で、流動性預金の全額保護措置を2年間延期することなどをもりこんだ「預金保険法一部改正案」など金融3法案が審議入りし、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。

 法案質疑に先立って、佐々木議員は、小泉総理が10月30日にとりまとめた「経済対策」による不良債権処理加速策について論じました。
 佐々木議員は、「最終需要を拡大せずに不良債権処理をやれば、処理しても処理してもその残高が増え続けるというのが、これまでの実績」だとして、最重点課題として不良債権処理をかかげデフレを加速させた小泉総理が、これまでの内閣でいちばん大きな不良債権をつくった総理大臣だとその責任を追及しました。
 さらに佐々木議員は、「政府が決めた不良債権処理の加速とは、失業と倒産の加速でありデフレの加速だ。小泉内閣の政策が不況をいっそう深刻化させ、不良債権を増やし経済全体にとりかえしのつかないダメージを与えるという認識は、総理にはまったくないのか」とただしました。また、銀行への公的資金投入について、倒産と失業を増やすために血税を使うのではなく、ぎりぎりのところで頑張っている中小企業を支援し、失業者を救うためにこそ使うべきだと求めました。
 小泉総理は、「日本経済再生のため、その終結に向けて不良債権処理を確実に進めていくことが私の責務」、「不良債権の処理は、金融機関の収益力の改善や貸出先企業の経営資源の有効利用などを通じて、新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながる」と答弁しました。

 提案されている「預金保険法改正案」について、佐々木議員は、「深刻な不況と信用不安のもとで、現在は、ペイオフ解禁の条件にないことは明白」だと述べたうえで、「しかし、今回の延期措置は、小泉内閣がすすめる不良債権「早期最終処理」の集中処理期間に対応して2年間に限定したものとなっているところに問題がある」と強調。「ペイオフ解禁は、経済の立て直し政策によって景気を回復させることを大前提におこなうべき。ともかく機械的に2年間という期限を切って解禁するというやりかたは、きわめて乱暴であり無責任」と述べました。

 また、佐々木議員は、「金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案」について、地域金融機関に対して、中小企業支援よりも収益力の強化を求め、不況で苦しんでいる中小企業の経営難に追い打ちをかけるものだと指摘。自己資本比率や金融検査マニュアルで画一的な基準を押しつけるのではなく、地域経済や地域の中小企業への貢献度によって金融機関を評価するよう行政の転換を求めました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました預金保険法改正案等三法案について、小泉総理に質問をいたします。(拍手)
 初めに、政府が10月30日に決めた経済対策についてお聞きします。
 この対策の中心内容は、不良債権処理を一気に加速させるというものであります。しかし、最終需要を拡大せずに不良債権処理をやれば、処理しても処理してもその残高がふえ続けるというのがこれまでの実績ではないでしょうか。
 96年度の経済成長は3%台で、不良債権の新規発生額は2兆円でありました。しかし、橋本内閣のもとで消費税増税など9兆円の負担増が強行された97年度は新規発生額が15兆円、98年度は16兆円と増加したのであります。その後、小渕内閣、森内閣時代には、1、2%の経済成長となり、不良債権の新規発生は年に10兆円、9兆円と減りました。
 ところが、構造改革を掲げて登場した小泉内閣ではどうでしょうか。最重点課題として不良債権処理を掲げ、デフレを加速させました。そのため、経済成長率は最悪のマイナス1・9%に転落しました。そして、新規の不良債権発生額は実に17兆円を記録したのであります。
 小泉総理、あなたは、これまでの内閣で一番大きな不良債権をつくった総理大臣であります。一体その責任をどのように感じているのか、答弁を求めます。(拍手)
 総理は、ふえた不良債権をさらに処理するとしています。政府の金融再生プログラムによれば、そのために、まず、特別検査の再実施によって銀行の資産査定を厳格化し、それに見合う引当金を積ませるなどの措置をとるとしています。
 そうなると、当然、経営難や資本不足に陥る銀行も出てきます。そのような銀行を特別支援金融機関とみなし、融資先のうち健全な債権は新勘定に、不良債権は再生勘定へと分類する。そして、この不良債権を大規模にRCC、債権回収機構などに売り払うというのであります。他方で、再生の可能性がある企業は産業再生機構に移すというのでありますが、一体、どのような基準で、だれがこれらの区分けをするのでしょうか。答弁を求めます。
 再生機能を付与されたRCCのこれまでの実績を見ましても、再生とは名ばかりで、不良債権とみなされた中小企業のほとんどがつぶされているのであります。小泉内閣になって、6万社を超える企業がRCCに送られましたが、再生の仕組みに乗ったのは、たった87件ではありませんか。
 再検査で不良債権とみなされた大手企業の場合も、つぶされるか、徹底的なリストラで大量の失業、倒産を生み出すことになるのであります。
 政府が決めた不良債権処理の加速とは、失業と倒産の加速であり、デフレの加速であります。小泉内閣の政策が不況を一層深刻化させ、不良債権をふやし、経済全体に取り返しのつかないダメージを与えるという認識は、総理には全くないのでしょうか。答弁を求めます。
 昨日、我が党の志位委員長が党首討論で指摘したように、小泉内閣になって、その前の4年分の貸しはがしが一気に起きているのであります。
 金融再生プログラムによって再検査を実施して不良債権処理を加速すれば、これまで健全とみなされた中小企業も含めて、中小企業全体に対する貸しはがしが猛烈に進むことになり、貸出金利の引き上げが大手を振ってまかり通ることになるのであります。
 総理は、しばしば、金融システムの安定化とか、銀行を強くするためと言っておられます。しかし、このようなやり方は、銀行の体力を弱め、金融システム全体を一層不安定にするのではありませんか。そのような危険な政策を、なぜ、この最悪の不況期に強行しなければならないのでしょうか。明確な答弁を求めます。
 しかも、重大なことは、体力の落ちた銀行に対し、公的資金を投入するというのであります。公的資金とは、せんじ詰めれば、国民の税金で、血税であります。結局、政府がやっていることは、倒産と失業をふやすために血税を使うということではありませんか。そのような税金の使い方があるでしょうか。国民の税金は、ぎりぎりのところで頑張っている中小企業を支援し、失業者を救うためにこそ使うべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 次に、提案されている法案に即してお聞きします。
 まず、預金保険法改正案についてであります。
 深刻な不況と信用不安のもとで、現在はペイオフ解禁の条件にないことは明白であります。しかし、今回の延期措置は、小泉内閣が進める不良債権早期最終処理の集中処理期間に対応して2年間に限定したものになっているところに問題があります。
 ペイオフ解禁は、経済の立て直し政策によって景気を回復させることを大前提に行うべきであります。ともかく機械的に2年間という期限を切って解禁するというやり方は、極めて乱暴であり、無責任であります。なぜそうなるのか。それは、不良債権処理の加速による企業つぶし、金融機関の淘汰、再編の方針と結びつけて出されているからではありませんか。答弁を求めます。
 法案は、資金決済を保護するためとして、ペイオフ全面解禁後も全額保護される決済用預金の新設を盛り込んでおります。
 しかし、今、全国で課題となっているマンション管理組合の長期にわたる修繕積立金の保護や、自治体公金預金の地域金融機関からの流出に対応するものになっておりません。また、解禁後の保護の上限を1千万円に据え置いているため、老後の生活資金の保護の点でも十分ではありません。一体これらにどう対応するのか、明確な答弁を求めます。
 地域において金融不安をつくり出し、預金者の金融機関に対する信頼を失わせるような事態をつくり出したのは、一体だれでしょうか。それは、自己資本比率と金融検査マニュアルをてこに金融機関の整理、淘汰を進めてきた政府自身ではありませんか。小泉内閣が誕生してから51の信金、信組と2つの地銀を破綻させ、地域金融機関の再編を強引に進めてきたのであります。
 提案されている金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案は、これをさらに促進するため、地域金融機関に対して収益力の強化を求め、合併によって地域金融機関の整理、淘汰、再編を促すものであります。
 地域金融機関に対して中小企業支援よりも収益力の強化を求めることは、不況で苦しんでいる中小企業の経営難に追い打ちをかけるものであります。ひいては、収益力強化どころか、地域金融機関の経営基盤を掘り崩すことになるのであります。それは、地域の金融システムそのものを弱体化させることにつながるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 塩川財務大臣は、9月9日の経済財政諮問会議で、「信用金庫は300以上あるが、資本金1千億円以上とか預金8千億円以上とか、地方銀行では預金1兆円以上といったモデルケースを示し、これを一つの基準に合併するとの意見もある。すると、信用金庫が3つ、4つ集まるケースも出てくるのではないか。」と、具体的な再編方法にまで言及しました。建前上は金融機関の合併は自発的なものだと言うけれども、これでは、最初に合併ありき、上からの合併促進となるのではありませんか。答弁を求めます。
 今、政府に求められているのは、地域金融機関をつぶすことではありません。信用金庫、信用組合など協同組織金融機関が、地域に密着し、協同を広げることができるような環境をつくり出すことであります。
 これらの金融機関は、本来、会員、組合員の相互扶助のための機関であり、基本的には、構成員である中小企業の出資によって支えられているものであります。上から合併を促し、資本不足になったら税金を投入する、こういう発想はまさに本末転倒であります。
 本法案は、合併等によって金融機関の自己資本比率が低下した場合、その低下分を補う措置として、預金保険機構が存続金融機関の株式等を買い取る仕組みをつくるというものになっております。
 しかし、買い取った株式等が毀損した場合には政府保証で穴埋めすることになり、結局は、国民負担になるではありませんか。地域金融の機能を弱体化させながら税金投入の仕組みをつくることは、到底認められるものではありません。根本的な再検討を求めるものであります。
 本来、金融機関の評価は、地域経済、地域の中小企業への貢献度によって行われるべきものであります。小泉総理は、我が党の地域金融活性化法案に対して、一律の基準を適用することはよくないと言われました。しかし、政府のやり方こそ、自己資本比率や検査マニュアルなどで一律で画一的な基準を押しつけ、地域の金融機関を破綻させ、金融機能を弱体化させるやり方ではありませんか。
 我が党の提案は、貸し渋り、貸しはがしなどをやめさせ、地域に必要な資金を供給し、国民の暮らしと中小企業・業者の営業を育てる金融機関に変えるものであります。この方向でこそ、長い目で見て地域金融機関を安定化させ、国民の金融への信頼を回復させる道であります。このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐々木議員にお答えいたします。
 不良債権問題の責任に関するお尋ねであります。
 14年3月期における不良債権の状況については、積極的な最終処理が行われた一方、その残高は前年度末に比べ増加しておりますが、これは、厳しい経済情勢の影響があった一方で、金融庁の特別検査などにより、むしろ、不良債権の徹底的な洗い出しを行ったこと等によるものであると考えております。
 不良債権問題については、日本経済再生のため、その終結に向けて不良債権処理を確実に進めていくことが私の責務と考えております。
 銀行の保有する債権をRCCと産業再生機構に移す場合の区分けについてのお尋ねでございます。
 金融再生プログラムでは、特別支援を受けることとなった金融機関の経営を改革し、早期健全化を行うため、その資産等を新勘定と再生勘定に分離し、適切に管理することとしておりますが、特別支援金融機関における資産管理の方法その他の経営のあり方については、今後検討していくこととしております。
 また、改革加速のための総合対応策においては、新たな機構を創設し、再生可能と判断される企業の債権を金融機関から買い取り、企業の再生を進めることとしております。
 このため、具体的なスキームの構築に向けて早急に検討を進め、その中で、新たな機構とRCCとの役割分担などについても整理していくこととしております。
 不良債権処理の加速がデフレの加速や貸し渋りなどを引き起こし、経済システム、金融システム全体にダメージを与えるという御指摘がございました。
 不良債権の処理は、金融機関の収益力の改善や貸出先企業の経営資源の有効利用などを通じて、新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野における構造改革とともに実施することにより、デフレの克服及び我が国経済の再生に必要なものであると考えます。
 なお、不良債権処理の加速に伴う雇用、中小企業経営への影響に対しては、細心の注意を払い、セーフティーネットには万全を期す必要があると考えており、今般取りまとめました、改革加速のための総合対応策においては、税制改革、都市再生、規制改革などの構造改革の加速策に加え、離職者に対する再就職支援のための新たな助成措置の創設、地方公共団体による緊急かつ臨時的な雇用の創出などの雇用対策、金融機関による不当な貸しはがしなどを防止するためのモニタリング体制の強化、やる気と能力のある中小企業への資金供給円滑化のための信用保証の拡充などの中小企業対策を講じることとしているところであります。
 ペイオフ解禁、機械的に2年間という期限を切って解禁するやり方は乱暴であるというお尋ねでございます。
 不良債権処理は構造改革を進める上での最重要課題であり、その加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要であり、そのような観点から、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の17年4月から実施することとしたものであります。
 したがって、企業つぶしとか金融機関つぶしというものを目指すものではなく、金融システムの健全化を目指すものであります。
 決済用預金と保険金支払い限度額についてのお尋ねであります。
 決済用預金は、決済機能の安定確保策として、金利ゼロ等の要件を満たす預金を金融機関が破綻した場合に全額保護するものであり、この預け入れられた資金の性格は問わないこととしております。したがって、御指摘のマンション管理組合の修繕積立金や自治体の公金についても、決済用預金に預け入れれば全額保護されることとなります。
 一預金者当たり1千万円の保険金支払い限度額については、我が国の一人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加等を勘案すると、現時点でこの水準を引き上げる必要はないと考えております。
 金融機関組織再編特措法案における中小企業への影響についてでございます。
 本法案は、金融機関の経営基盤強化の有力な手段である合併等の組織再編成を円滑化し、金融システムの強化と経済の活性化に資することを目的としております。
 また、借り手中小企業の保護についても、組織再編成による経営基盤の強化が金融機関の融資対応力の強化につながるものと考えられることに加え、本法案においても、政策支援の前提として金融機関等が提出する経営基盤強化計画の認定に当たって、金融の円滑が阻害されないことを要件とするなどの配慮を行っているところであります。
 金融機関組織再編特措法案に関連して、最初から合併ありきの上からの合併促進ではないかとのお尋ねであります。
 本法案は、あくまで、各金融機関が自主的に合併等の組織再編成を選択した場合に、これを円滑化するための措置を講ずるものであり、上からの合併促進との御指摘は当たらないものと考えております。
 金融機関組織再編特措法案における資本増強について、国民負担となるのではないかとのお尋ねでございます。
 預金保険機構が資本増強を行うために必要な資金を低コストで安定的に調達するため、政府は保証を付することができることとされておりますが、本法案においては、自己資本比率が健全な水準にある金融機関同士が合併等をするケースを対象とし、経営基盤強化計画の認定や計画のフォローアップ等により収益性の向上等をチェックすることとしており、安易に国民負担につながることのない仕組みを設けているところであります。(拍手)

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