2003年02月20日 第156回 通常国会 予算委員会≪「政治とカネ」問題集中質疑≫ 【187】 - 質問
赤字ゼネコンからの献金受け取りをやめよ 総理が「無配の会社からは求めない」と答弁
2003年2月20日、予算委員会で「政治とカネ」の集中質疑がおこなわれ、小泉総理が出席し、審議の模様はNHKテレビで中継されました。
佐々木憲昭議員は、公共事業をゆがめるゼネコンからの献金問題で3点にわたり小泉総理の対応をただしました。このなかで総理は、無配当の会社からは献金を受けない考えを述べました。
小泉総理がこのような見解を示したのは初めてのことで、この質問は、夕方のニュースや翌朝の新聞各紙で取り上げられました。
自民党の政治資金団体である国民政治協会は、先月末から今月はじめごろ、ゼネコンの業界団体・日本建設業団体連合会(日建連)に、約3億円の献金を要請しています。佐々木議員は、その事実関係を小泉総理にただしました。
小泉総理は、「毎年支援団体に対してあいさつにまわっている。その際、一般的な支援要請や寄付の依頼がなされた」と事実を認め、「正常な資金調達活動だ」と述べました。
佐々木議員は、「公共事業受注企業からの献金が、これだけ大問題になっている時期に、例年やっているからと要請する、その感覚が国民から問われている」「総理の答弁には、政治献金にたいする自民党の無感覚ぶりがあらわれている」と批判しました。
2月12日に、福井地裁で準大手ゼネコンの熊谷組による自民党=国民政治協会への献金について、違法だとする判決が出ました。熊谷組は、1997年度から株主への配当ができず、無配がつづき、業績が落ち込んで経営再建中でした。本来、株主が出資した資本金を元に事業を営む会社は、株主への配当を優先的に支払う義務があります。無配というのは、配当に回すお金がなかったということです。それにもかかわらず、熊谷組は、自民党=国民政治協会に対して、求められるままに政治献金を続けました。そのことが、経営者として民法上の「注意義務違反」にあたるとして、元社長に返還命令が出されたものです。赤字で配当もできないような会社は、政治献金を優先して配当を怠るなどあってはならないという判決です。
配当ができない会社が献金をしている例は、熊谷組だけではありません。佐々木議員は、上場建設会社のうち、1996年から2002年までの7年間に無配に転落したことのある企業をリストアップして「政治資金収支報告書」をもとに自民党への献金の有無を調べ、献金企業37社の一覧を予算委員会に配布しました。無配当のときに献金をしている建設会社が29社あり、3期以上連続して無配が続いているのに自民党にはその期間も毎年献金している企業が11社、2期以上無配が連続している企業を加えると20社に達します。
佐々木議員が「このような企業からには献金を求めない、受け取らないという姿勢に立つべきではないか」と見解を求めると、小泉総理は、「経営者も無配の状況で献金することはあってはならない」「自民党も無配の会社からの献金を求めないという態勢にしていかなきゃならぬ」と答弁しました。
最後に佐々木議員は、「ゼネコンが、株主には配当しないで、どうして自民党にだけ献金するのかが問われている。公共事業をめぐるゼネコンと政権政党との深い関係があるからではないか」と指摘し、野党4党が共同で提案している公共事業受注企業からの献金を禁止する法案の実現のために全力をあげることを表明しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。公共事業受注企業からの政治献金について、自民党総裁でもあられる小泉総理にただしたいと思います。
まず、事実関係でありますが、自民党の政治資金団体であります国民政治協会は、先月末か今月初めごろに、ゼネコンの業界団体、日本建設業団体連合会、いわゆる日建連に約3億円の献金を要請したそうでありますが、これは事実でしょうか。
○小泉内閣総理大臣 具体的な詳細は承知しておりませんが、自民党は通常、毎年各支援団体に対しましてあいさつに回っております。その際、一般的な支援要請あるいは寄附の依頼がなされたということではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 一般的に3億円というのはびっくりする金額でありまして、公共事業受注企業からの献金というのは、これだけ大問題になっているわけであります。そういう時期に、例年やっているからということで要請する、私は、そういう自民党の体質といいますか、感覚というのが問われているんじゃないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 これは、各党法律に従って、正常な資金調達活動ですから、これは私は、法律にのっとって正規の手続を踏んで資金活動するのは何ら批判に当たらない、そう思いますけれども。
○佐々木(憲)委員 政治資金に対する無感覚ぶりというのが非常によくわかったわけであります。
要請を受けたあるゼネコンの役員は、こう言っておられるんですね。表立っては反対を口にできない、しかし、自民党もいいかげんにしてくれというのが率直な気持ちだ、このように我々に語っております。そういう意味で、この自民党の無感覚ぶりというのが非常に問題だ、総理自身もやはりそういう状況にあるということであります。
2月12日に、献金をめぐる重要な判決が福井地裁で出されました。準大手ゼネコンの熊谷組の自民党に対する献金が問われた裁判であります。ここに判決文がございます。
熊谷組は、1997年度から株主への配当ができず無配が続き、業績が落ち込んで経営再建中でありました。本来、株主が出資した資本金をもとに事業を営む会社というのは、株主への配当を優先的に支払うという義務があります。無配というのは配当に回すお金がないということでありますが、それにもかかわらず、自民党、国民政治協会に対して、言われるままに政治献金を続けた、そのことが経営者としての注意義務違反に当たるということで、元社長に返還命令が出されました。
判決文にはこう書かれているわけであります。少なくとも会社に欠損が生じて以後の政治資金の寄附に関しては、厳格な審査を行い、欠損の解消にどの程度の影響があるか、株主への配当に優先して寄附を行う必要があるかを慎重に判断することが求められる、そのような判断を経ることなく寄附することが許されると解すべきではない、これが判決の文章でございます。
要するに、赤字で配当もできないような会社は、政治献金を優先し配当を怠るということはあってはならない、こういうふうに言っているわけでございます。
この熊谷組の献金というのは、自民党の資金管理団体であります国民政治協会、すなわち自民党に対する献金であり、要請に応じて献金を続けてきたというわけであります。
自民党の総裁でもあられる総理は、これからもこういう会社に対して献金の要請を続け、受け取り続けるというつもりなのかどうか、そこをお聞きしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 この熊谷組の問題につきまして判決が出たということは承知しておりますが、政治資金規正法によりますと、「3事業年度以上にわたり継続して政令で定める欠損を生じている会社は、当該欠損がうめられるまでの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。」と規定されているわけです。
だから、これは、してはいけないんです。してはいけないのにするということは、経営者のモラルの問題なんですよ。だから、こういうことから当然、自民党はそういう企業に対して献金を要請するようなことはしない。
○佐々木(憲)委員 この判決で言われている熊谷組は、今総理がおっしゃったように、政治資金規正法上の3期連続赤字の企業ではありません。しかし、配当ができないような会社、それほど経営が困難になっている会社という判断でございます。そういう会社であるけれども注意義務を怠って経営者が献金をする、それが民法上許されない、こういう判断なのでございます。ですから、総理が言っていることと違うんです。
ですから、経営者の責任として、無配の会社からの献金というのはよろしくない。実質的に赤字が続いている、そういう意味では、3期連続赤字という、これは実質判断として行われたわけですね。そういうことでございます。
ですから、赤字で配当もできない、あるいは法人税も払えない、にもかかわらず自民党には献金する。つまり、株主には配当しないけれども自民党には配当する、大体そういう性格のものなんですね。ですから、これは重大な問題としてやはり受けとめていただかなければならないわけであります。
ちょっと資料を配っていただきたいわけですけれども、配当ができない会社が献金をしている例というのは、これは熊谷組だけではないんです。大変たくさんあります。今資料でお配りしましたけれども、これは、建設会社の経営状況と自民党への献金を調べたものでございます。上場している建設会社のうち、1996年から2002年までの7年間の間に無配に転落したことのある企業をリストアップいたしまして、政治資金収支報告書をもとに、自民党への献金の有無を調べたものでございます。
その結果、献金している37社、これを一覧表にまとめました。ここの37社というのは、すべて無配の会社、無配当の会社であります。この表の黄色い部分というのは、無配当のときに献金をしている部分でございます。これは29社もこの中にはあります。この29社には、上場している売上高上位47社のうち、25社が含まれている。そういう意味では、この表を見てわかりますように大変なものでありまして、3期以上連続して無配が続いているのに、自民党にはその期間も毎年献金している企業が11社あるわけです。2期以上連続している企業を加えますと、20社にも達するわけであります。この黄色い部分ですね。これは、見たら非常に全体として黄色いわけですよね。ですから、大変わかりやすくつくってあるわけです。
総理にお聞きしますが、こういう状況というものが国民に理解を得られると思われるのかどうか。このような企業にはやはり献金は求めない、受け取らない、こういう姿勢に私は立つべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 これは経営者も、そういう無配の状況で献金するということは、これはあってはならないということをよく気をつけなきゃいけないと思っております。自民党も求めるわけではありませんが、恐らくこういう経理状況を知りませんからね、一般的に。そういう中で、今言った、御指摘の点も含めまして、私は、こういうような無配の会社からは求めないという体制にしていかなきゃいかぬなと思っております。
○佐々木(憲)委員 これは大変重要な御答弁が出されました。こういう無配の会社から受け取らない、これは私は、改革の第一歩として大変重要な今答弁だったというふうに思っております。やはり、この熊谷組の場合の献金も、政治資金規正法上違法ではないけれども、株式会社のあり方として正しくない、裁判で返還命令が下されたわけであります。
総理はこれまで、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要だとおっしゃいました。そういう意味で、こういうところからは献金を受け取らないと今おっしゃいましたので、必ずそれが実行されるように我々も監視をしていきたいというふうに思っております。
それでは、この表をもう一度見ていただきたいのですけれども、この表の中には、政治資金規正法上の規定に照らして違反している、そういう献金もあります。これは、3期連続赤字の会社は献金したらいけないわけで、違法なんです。表を見ていただきますと、この赤い印のついているところですね。赤の印のついているこの会社というものは、貸借対照表上の欠損金、3期どころか4期連続して赤字でありますが、その間も毎年献金をしているわけでございます。
これは明らかに政治資金規正法違反であって、罰金の対象なんです。これは渡した企業だけが罰金の対象ではない、受け取った自民党も違反しているわけでありますから、罰金の対象になるわけですよ。これはきちっと調査をしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
そこで、今示したこのゼネコンの一覧表は、道路ですとか港湾あるいはダム、こういう公共事業を受注している会社なんです。公共事業によって利益を上げているという会社でございます。それが、株主には配当をしない、できない、そうしていながらどうして自民党にだけ献金をするのかということが問われておりまして、公共事業をめぐってそういう会社が献金をするのは、やはり政府・与党、政権党と深い関係があるからではないのか。
私は、昨年、国会で鈴木宗男議員の疑惑を追及いたしました。ムネオハウスの問題を取り上げました。せめて、そのときには、公共事業受注企業からの献金は禁止すべきではないか、こういう提案を総理にいたしました。これに対して小泉総理は、それを含めて検討したいというふうにおっしゃいました。1年経過いたしましたが、どうも結論がいつまでたっても出てこない。先ほども質疑が行われましたが、やはりこれは大至急きちっとした結論を出していただきたい。今の無配の企業からの献金も受け取らないということも含めまして、しっかりした方針を出していただきたい。いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 今、無配で赤字が3年継続しているというのは、これは寄附をしてはならないということになっておりますので、こういう点につきまして、受け取る側はそういうことを知って受けてはならない。知らない場合があったと思うんです、自民党も。だから、これは経営者の判断の問題だ。これは大事だ。
だから、こういう点についてどういう制限が必要か、自由民主党も、公共工事の問題についてどういう制限が必要かということについて今真剣に検討しております。だから、このような経営者が当然してはならないような献金もしている事態があるということがわかったわけです。しかし、それを受ける側も知らない場合、みんなあると思うんですよ、気がつかないで。一々調査して、この人はどうか、この企業はどうかといって調査して資金を受けるわけじゃないですから。そういう点も考えて、今言ったような、どういう制限が必要かという点について、前進できるような措置をできるだけ早く検討していきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 私は、なぜそういう事態が起こるかということをぜひ考えていただきたいんです。
といいますのは、毎年、今ごろになりますと、自民党の資金管理団体であります国民政治協会は、いろいろと回って歩いてお願いをするわけです。献金をよろしく、こう業界団体、例えば先ほど紹介しましたような団体に申し入れをします。申し入れをするときには、そういう会社、つまり赤字が続いているような会社からは献金は要りませんからとは言わないんです。すべて、団体、よろしくお願いしますとやるんです。そうするとその団体はどうするかというと、資本金の規模に応じて献金額をずっと配分するわけです。一律にやるわけですね。そうなりますと、結果的には、献金を要請された側は、これはうちの会社だけが断るわけにいかないということで、結局、断れないわけです。つまり、事実上の強制力が働いて、自民党は赤字企業からもどんどんどんどん、だから違法な会社からも知らないうちに献金を受け取ってしまうんです。
そこに問題があるわけでありまして、要請する側は問題はないけれども、出す側が問題だというだけでは問題は解決しないんです。要請する自民党のそういう献金要請の仕方、ここをしっかりと、そういう会社には要請しない、それだけではやはり足りない。つまり、公共事業の会社にどんどん献金を要請するという、公共事業受注会社に要請するという、一律に要請する、そういうやり方をやめなきゃいけない。
その点、総理、どのように対応されますか。
○小泉内閣総理大臣 一律に要求するというか、自民党の支援者に対して、あるいは支援団体に対して、責任者いますから、担当者が。そういう方に対しては、健全な政治資金、協力お願いしますというのは、これはもう政党として私は何ら批判されるものではないと思います。
ただし、これから、献金できない企業もあるんですよということを徹底したいと思います。経営者の判断ですから。法律で禁止されているのに、寄附してはいけないということを知らないで献金している経営者も中にはあるのではないかと思います。だから、こういう企業は献金できませんよということもやはりよく周知徹底して、そして、それぞれの団体については、健全な資金は協力をお願いしますというのは、これは政党として私は正規の政治活動ではないかなと思っております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁は大変あいまいでございまして、公共事業受注企業に対して一律献金要請するという姿勢そのものが問われております。ですから、そういうことはもう一切、公共事業受注企業からの献金は受け取らない。つまり、受け取るということは、国民の税金を使って仕事をする会社から献金もらうんですから、税金を懐に入れる、間接的にはそういうことになるんです。だから我々は、即規制をやるべきだと。
日本共産党は、企業・団体献金の禁止、このことを主張しながら、公共事業受注企業からの献金は全面的に禁止するということを、野党四党一緒に今要求して、法案も提出しております。その実現のために全力を挙げて頑張っていく決意を申し上げまして、質問を終わります。
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