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財政(予算・公共事業), 金融(銀行・保険・証券)

2003年03月18日 第156回 通常国会 経済産業・財務金融委員会連合審査 【192】 - 質問

産業再生機構の損失負担 当事者の銀行は500億円だけ 国民は最大10兆円の負担

 2003年3月18日、産業再生機構法案の質疑のために、経済産業委員会と財務金融委員会の連合審査会が開かれ、佐々木憲昭議員が、産業再生機構と国民負担の関係について、谷垣産業再生機構担当大臣に質問しました。

 産業再生機構法案は、銀行の不良債権処理と産業再生を一体で行うために、新たに産業再生機構を設立するための法案です。産業再生機構は、銀行間の利害が対立して再建計画が進まない経営不振の企業を対象に、メインバンク以外の金融機関から債権を買い取って債権を一本化し、不採算部門の整理などによって企業再生を進めます。機構が債権を買い取るための資金調達の際に10兆円の政府保証がつけられるため、仮に企業再生がうまく行かず、機構に損失が出れば、国民負担が発生します。
 法案では、銀行業界など民間も機構設立のために出資金を拠出することになっており、機構が5年間の業務を終えて解散する時に損失を抱えていれば、まず拠出金で穴埋めされ、埋まりきらなければ政府保証が履行されて国民負担が発生する仕組みになっています。

 佐々木議員は、国民には最大10兆円も負担させる仕組みをつくろうとしているのに、当事者である銀行業界の拠出金がその200分の1の500億円にすぎないことをとらえて、「当事者たちには限定的な負担で、国民には莫大な負担をかぶせる仕組みとなっている。一企業の経営不振について、国民に責任があるのか」と国民に負担を求めることの不当性を追及しました。
 これに対し谷垣大臣は、「再建計画をきちっと立てれば、ロスを生まないか、ロスを生んでもすべてが赤になるとは考えにくい」などと述べて、質問に正面から答えませんでした。佐々木議員は、「一番の責任は企業と銀行にある。責任者がほとんど負担せずに、国民に負担を押しかぶせる仕組みをつくったことに一番の問題がある」と強調しました。

 さらに佐々木議員は、政府の預金保険機構等への公的資金の一覧を資料として示し、産業再生機構に対する10兆円の政府保証枠の新設によって、従来の70兆円公的資金枠が来年度は73兆1500億円へと約3兆円も拡大することを指摘。「70兆円公的支援策のもとで、今日までに30兆円以上が使用され、そのうち約11兆円は、国民負担として確定している。今回の新たな国民負担は、このような国民の痛みの上に上乗せするものだ。これが国民の理解を得られると思うか」と谷垣大臣の認識をただしました。
 谷垣大臣が、「どういう再生計画を立てて深掘りしていくかという、損失の出ない工夫をしている」との答弁を繰り返したため、佐々木議員は、「国民の疑問に対してまともな回答になっていない」と批判し、「なぜ国民負担を増やす仕掛けをつくる必要があるのか。本来、銀行と産業界が民間同士でしっかりした計画を立てれば済む。国民の負担を増やす必要はない」と主張しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、産業再生機構と財政負担の関係について、谷垣大臣にお聞きしたいと思います。
 この機構は、銀行間の利害が対立をして再建計画が進まない経営不振の企業を対象にして、非メーンの金融機関から債権を買い取り、企業再生を進めるというものだとされております。債権の買い取り資金には政府保証がつけられているために、仮に企業再生がうまくいかず機構に損失が出れば、財政負担、国民負担が発生する、その金額は最大10兆円に上る。一方で、法案では、国とともに銀行、産業界なども機構設立の拠出金を出す、こういうことになっているようであります。機構の解散時に損失があれば、まずその拠出金で穴埋めをし、埋まり切らなければ国民負担が発生する、そういう仕組みになっていると思いますが、まず確認をしておきたいと思います。
○谷垣産業再生機構(仮称)担当大臣 委員のおっしゃるように、十分に買い取れるように買い取り資金の政府保証の枠を10兆円に限定しております。それから、個々の事業計画で深掘りをできるだけして、二次ロスが出ないような工夫をしなければならない、これは大前提でございますが、それにもかかわらず、最後に閉めたときに赤が出ている、それは第一次的には出資金で埋めていく、それでも埋められない場合には国が予算措置をとって補てんすることができる、こういう定め方をしております。
○佐々木(憲)委員 そうすると、問題の当事者である銀行業界あるいは産業界の出資金が一体どうなるのか。出資金の金額が多ければ国民負担は少ない、少なければ国民負担は多くなる、こういう関係にあると思うんですね。
 そこで、銀行業界に対して幾らの拠出金を求めていくのか、この点について伺いたいと思います。
○谷垣産業再生機構(仮称)担当大臣 まだ最終的に決まったわけではありませんけれども、おおよそ500億程度の拠出をしていただくという方向で今調整をしているということであります。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、国民負担が最大10兆円というような仕組みでありますが、銀行の拠出金が500億ということになりますと、当事者がいわば国民負担の200分の1しか負担をしない、こういう仕掛けになっているわけでありまして、不良債権処理を企業再生と一体で行うための機構だといいながら、当事者はほとんど負担しない、国民に膨大な負担をかぶせる、こういう仕組みになっているわけであります。
 そこで、谷垣大臣にお聞きしたいんですが、一つの企業が経営不振になった、しかし、国民にその責任が果たしてあるのかどうか、国民に一体どんな責任があるんですか。
○谷垣産業再生機構(仮称)担当大臣 まず最初に、10兆に対して500億じゃ200分の1だというのは、賢明な佐々木委員にしては、いささか誇張の過ぎた強調であるというふうに思います。個々の再生計画をきちっと立てれば、それは結果として、ロスを生まないという場合もあるでしょうし、ロスを生んだとしても買ったものが全部赤になるということはまず考えにくい、こういうことであります。
 それから、そもそもこういうものをつくって個別企業を結局再生させるのではないか、こういう……(佐々木(憲)委員「国民負担」と呼ぶ)そうすると、それが最終的に失敗すれば国民負担になるのはなぜかと。
 これは、今の経済情勢のもとで、先ほど申し上げましたように、有効な経営資源をどんどん散逸させていけば、結局は、雇用にも響いてくるし、国民経済に大きなダメージを生ずる。したがって、そこはどんと背中を押してやる必要があるということでやっている、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 私が申しましたのは、10兆円というのは最大そういう仕掛けになっているということでありまして、結局、銀行は最大限500億しか負担しないわけですから。そうでしょう。それ以上負担をしないわけでしょう。そうしますと、それ以外の10兆円までの枠の負担は全部国民がかぶるという仕掛けになっているじゃありませんか。そのことを私は言っているわけです。
 それからもう一つ、国民にどういう責任があるのかとお聞きしたんですけれども、その点については全く答えずに、雇用が大変だとかいろいろなことをおっしゃいましたが、一番の責任はその企業の経営者と銀行の側にあるわけですね。その一番の責任者が全くほとんどの負担をせずに、国民に負担を押しかぶせるような仕掛けをつくった、これが私は一番の問題だと思うわけでありまして、企業が経営がうまくいかないといって、大手の企業だと思いますが、国民の税金で身ぎれいにしてやる、民間同士で解決すればそれは済む話でありまして、どうしてこういう仕掛けをつくらなきゃならぬのか。
 配付した資料を見ていただきたいんですが、これまで政府は70兆円の公的資金を準備してまいりました。来年度予算では、特例業務勘定の交付国債と政府保証枠が廃止されるにもかかわらず、今回の産業再生機構に対する10兆円が新設されるため、公的資金枠は73兆1500億、3兆円拡大するということになっているわけであります。この70兆円の公的支援策のもとで、今まで30兆円以上が使用されております。そのうち、約11兆円が国民負担として確定しております。
 今回の新たな国民負担の仕組みは、このような国民の痛みの上にさらにそれを上乗せするということになるわけで、これはやはり国民の理解は得られないと私は思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○谷垣産業再生機構(仮称)担当大臣 先ほどからの御議論は、賢明な佐々木委員としては、初めからとにかく損失があるんだあるんだ、つまり、全く一文の価値もないものを10兆円全部買い集めるんだという前提で御議論をされているように思うんですね。そこを委員が一生懸命おっしゃいますので、私もそれには一生懸命反論しなければならない立場に置かれているわけでございまして、やはり再生計画を立て、どう深掘りしてやっていくかということで、損失の出ない工夫をこの機構はいろいろしているわけでございまして、ぜひそこをよく見ていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 谷垣大臣の答弁は、国民の疑問に対して、全くまともな回答にはなっておりません。
 私が言っているのは、それは損失が出たり出なかったりということはあり得る、しかし、仕掛けとして最大限10兆円の国民負担が生まれる、こういうことをこの法律の仕組みとして問題を指摘しているわけでありまして、なぜそういうふうに国民負担をふやす仕掛けをつくる必要があるのか。こういうのは本来、銀行と産業界が民間同士でしっかりした計画を立てればいいわけでありまして、国民の負担をふやすという仕掛けをつくる必要はありませんよ、これは。今までも、公的資金をどんどん入れて何の役にも立ってこない、不良債権はどんどんふえる、そういう状況をつくっておきながら、また新しい国民の負担をふやす仕掛けをつくるということは、やはり私は納得ができない、このことを強調して、時間が参りましたので終わります。

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