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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 不良債権処理, 金融機関の破綻)

2003年05月21日 第156回 通常国会 財務金融委員会 【205】 - 質問

りそな銀行への公的資金投入 銀行を経営難に追い込む「竹中プラン」を批判

 2003年5月21日、財務金融委員会で、政府がりそな銀行への公的資金投入を決定したことを受けて、りそな問題の質疑が行われました。佐々木憲昭議員が質問に立ち、りそなの経営難は、政府が前年10月に打ち出した「金融再生プログラム」(「竹中プラン」)がもたらしたものだと批判しました。

 今回りそな銀行に公的資金を投入することになった直接の引き金は、監査法人が繰延税金資産の額を従来より厳しく評価したため、資本が過小となったことです。今回の監査について、竹中金融担当大臣は、監査法人が従来のルール通りにやっただけだと説明しています。竹中大臣の発言に対し佐々木議員は、今年2月に公認会計士協会が発出した会長通牒を示し、政府の「金融再生プログラム」が繰延税金資産の「厳正な監査」を方針としたことを受けて監査法人がりそなをより厳格に監査したことを明らかにし、今回の事態は、政府が従来ルールの運用を変えるよう求めた結果だと指摘しました。
 さらに佐々木議員は、「金融再生プログラム」が監査の厳格化を求める理由として、「主要行を取り巻く不確実性が大きい」ことをあげていることを強調し、主要行が将来の収益を見積もることが困難な状況をつくったのは、小泉内閣の政策がデフレを加速させてきたからだと追求しました。佐々木議員は、「政府がみずから『不確実性』をつくっておきながら、銀行資産の査定をさらに厳しくすれば、銀行は外と内の両面から攻められて経営困難にならざるを得ない」と述べ、金融政策の根本的転換を要求しました。
 竹中大臣は、りそなの自己資本比率の低下は、株価の下落などデフレに直接からむ要因があることを認めつつ、政策の変更には応じませんでした。

 また佐々木議員は、今回の公的資金投入の前提となっている金融情勢について、福井日銀総裁と竹中大臣の認識をただしました。
 佐々木議員の「いまの金融情勢はシステミック・リスクの淵に立っているという認識か」との質問にたいし、福井総裁は、「基本的に危機状況にあるとは思わない」と述べつつ、金融機関の体力が衰えているため、一金融機関の破綻が他に波及しかねない、潜在的なリスクがある状況だとの認識を示しました。
 さらに佐々木議員は、これまで竹中大臣が、現行預金保険法に基づく公的資金投入について、「システミック・リスクが発生した場合の対応措置」「危機宣言をした上で対応する」と説明してきたことを指摘。さらに、現行の公的資金投入策導入を決めた3年前の法案審議のなかで、当時の林芳正大蔵政務次官が、システミック・リスクについて、ほかの金融機関の連鎖的な破たんが発生するような場合、連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難になる場合、大規模な貸し出し抑制や回収等資産の圧縮をすすめる動きが生じるようなおそれがある場合、との具体例を述べていたことを示し、「いまの金融情勢は、そういう状況にあるほど、不安定化しているという認識なのか」と竹中大臣をただしました。
 これに対し竹中大臣は、現状では預金の取り付けや資本調達の困難はおこっていないが、自己資本比率が2%になった銀行を市場にさらせば、そういう事態が生じるおそれがあると判断したと述べ、「正しい判断だった」と強調しました。
 佐々木議員は、当時の宮沢大蔵大臣が、「(この制度の意図するところは)10年、20年あるいは30年に一遍でも起こっては困るような、そういうことを言っておる」と、答弁していることを示し、法案審議の際には、まれな危機的状況に対応するものだと答弁しながら、今回、「おそれがある」として、公的資金の投入を決めた政府の対応を批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、金融情勢の認識ということで、日銀総裁にお聞きをしたいと思います。
 りそな銀行がこういう状況になったということで、現在の金融情勢は大変厳しい局面にあるということは事実だと思うんですね。福井総裁は、今の金融情勢について、システミックリスクのふちに立っているというふうにごらんになっているのか、それとも、厳しい情勢だけれどもまだそのような危機的な状況には至っていないという認識なのか、お伺いをしたいと思います。
○福井参考人(日本銀行総裁) お答え申し上げます。
 非常に大きくとらえますと、日本の金融システム、かつての高度成長を支えた金融メカニズムから、これからの新しい時代、つまり、かつてのような高成長は期待できないけれども、イノベーションのスピードがうんと速い時代に適応しなければいけない新しい金融メカニズムへ移行のまさに途上にあるというふうに思います。
 その過程で非常に重要なことが起こっていまして、一つは土地神話の崩壊、かつて金融機関が土地を担保にさえとっていれば安全に融資ができるというシステムは過去のものになって、企業が新しい仕事にチャレンジしていく場合に、その企業価値とリスクというものをきちんと評価できる金融機関に変わっていかなきゃいけない。
 もう一つ重要なことは、株式の持ち合い構造が急速に崩れているということでありまして、これは将来に向かう正しい方向だと思うんですけれども、その過程では、株価の変動が金融機関の経営を大きく揺さぶる、こういう現象が起こっています。
 したがいまして、その株価変動のリスクを遮断しながら、不良債権の処理もやり、そして将来に向かって企業価値とリスクをきちんと評価できる経営体制を整えた金融機関に仕立て上げる、つまり、みずから変容を遂げていかなきゃいけない、そういう過程にあると思います。
 したがいまして、現在は、その過程において金融機関の体力が相当衰えてきている。しかし、金融機関自身も、それからこれをサポートしていく金融当局も、方向性はしっかり確認しながらその努力を進めているところでありますので、基本的に危機状況にあるとは思いません。
 しかし、金融機関が押しなべて共通の問題に苦しみ、そして程度の差はあれ、現在はやはり体力をかなり減退させている状況でありますので、問題の処理を誤ると、一つの問題が大きく不安感を呼んで、他の金融機関に波及しかねない状況というのは潜在的にいつもある。そういう意味では、潜在的な危機というもののリスクを常に含んでいる、そういう状況だというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 銀行は体力が衰えてきていて、危機的状況にあるとは言わないけれども、潜在的には危機と言ってもいいかもしれない、こういう答弁でありました。
 そこで、竹中大臣にお聞きしたいんですが、昨年の10月30日の記者会見で、大臣は、預金保険法102条についてこういうふうに言っておられますね。「これは、金融危機、広い意味でのシステミック・リスクが発生した場合の対応措置です」というふうに述べておられますし、また、昨年11月13日に、この委員会で私の質問にお答えになりまして、「現行の預金保険法102条というのは、いわゆる危機を想定して、その危機時の対応の中で、危機宣言をした上で対応するということになっているわけでございます。」こういうふうに答弁をされています。
 そうしますと、今回のりそな銀行に対する措置は、危機時の対応の中で、危機宣言をした上での対応だ、こういうことになると思うわけですが、そうしますと、竹中大臣は、今回はシステミックリスクの中にあるという情勢認識だったというふうに見ていいわけですね。
○竹中金融担当大臣 制度の御説明などを申し上げますときに、102条は危機のときに発動するんだ、そういうほわっとしたといいますか、一般的な言い方をすることは確かにございますし、そういうことを今御引用してくださったんだと思います。しかし、これは言うまでもありませんが、条文そのものは、危機ないしは、それを放置する場合はそのおそれがある場合という場合でございます。
 今回の場合は、「りそな」自身に取りつけ騒ぎが起こっているとか、資本調達が難しくなっているとか、そういう意味での危機ではございませんが、このまま放置しておくとそういった信用秩序の崩壊につながりかねないおそれがあった、そういう認識のもとに今回金融危機対応会議を開いたものでございます。
○佐々木(憲)委員 システミックリスクという問題について、何度もここで議論になったわけですが、3年前の国会で、当時の林芳正政務次官はこう言っているんですね。「ほかの金融機関の連鎖的な破綻が発生するような場合ですとか、連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難になる場合、またあるいは大規模な貸し出し抑制や回収等資産の圧縮を進める動きが生じるようなおそれがある場合、」こう述べているわけです。
 また、当時の福田政府参考人は「ある金融機関の破綻または経営悪化によりまして連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難となる場合がやはり該当すると思いますし、あるいは、ほかの金融機関の連鎖的な破綻あるいは大規模な貸し出し抑制、回収等、資産の圧縮を進める動きが生じるおそれがある場合」と答弁しているわけですね。
 今回は、こういう状況にあるほど、今の金融情勢は不安定化している、そういう認識だということですね。
○竹中金融担当大臣 当時の林政務次官の御答弁は、例えばということで例示をされていたというふうに認識をしております。あらかじめこれと限定的に決めておくことは難しいんだということを先におっしゃった上で、例えばということで今おっしゃったようなことの御説明を林政務次官はなさっていると思います。
 御質問の件でございますが、今回の場合は、総資産規模40兆円を超える銀行を自己資本比率2%程度で市場の中にさらす場合には、やはり信用秩序に重大な支障が生じるおそれがあるというふうに判断したわけでございます。
○佐々木(憲)委員 例えばということは、極めて具体的な事例としてこれが起こるおそれがあると、具体的に述べているわけであります。
 この今回の発動は、102条の規定からいいますと、私は、大変拡大解釈ではないかという感じを持っております。システミックリスクにつながるおそれがあるというのは、非常に危機的な、危機のふちに立っているというような状況でありまして、果たして今回はそういう状況だったのかどうか、これは大変疑問に思います。
 当時宮澤大蔵大臣は、この102条についてこう言っているんですね。「このシステムの、この制度の意図するところは、いわゆる102条の意図するところは、10年、20年あるいは30年に一遍でも起こっては困るような、そういうことを言っておるわけでありまして、」と答弁しているんです。20年か30年に一遍起こるかどうかわからないような大変まれな危機的状況、こういう状況に対応するものだというふうに答弁しているわけです。非常に狭いんです、これは。つまり、危機でないときには使わないという姿勢だったわけですね。
 ところが、あれからわずか2年ほどで、10年も20年もたっていないわけでありまして、しかも今度は、危機ではないけれども未然に防ぐんだ、こういうことであります。これは、102条にある「おそれがあると認めるとき」、この「おそれ」という条項を使って、さじかげん一つでどうにでも拡大解釈ができるような、そういう対応をしている。ですから、この委員会で危機的な状況に対応するんだというふうに提案されたこの法律を非常にいわば拡大解釈をして、危機ではない事前の段階で適用する。私は、これは非常にいいかげんな対応ではないかというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 次に、今度の事態の直接の引き金を引いたと言われている監査法人の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 金融再生プログラムの「繰延税金資産の合理性の確認」というところで、こういうふうに書いてあります。主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求めるとともに、主要行の繰延税金資産が厳正に計上されているかを厳しく検査する。」これは、これまでとは違う、新しい厳しさをもって対応するんだ、こういうことであります。
 このもとで外部監査法人に繰り延べ税金資産についても厳正な監査を求めまして、その方針を受けて監査法人がりそな銀行をより厳格に監査をした、こういう経過であった。これは大臣、このとおりですね。
○竹中金融担当大臣 まず、前半で御指摘になられた102条の解釈でございますけれども、おそれがある場合ということでありますから、当然のことながら、幅がある問題であろうかと思います。しかし、我々の判断としまして、もしも40兆円規模の銀行が2%になるまま市場に放置して、それで102条を発動しなかったら、それは正しい判断と果たして言われたかということを考えますと、やはり私にはそうは思えないわけでございます。その意味では、ここは我々としては正しい判断を行ったつもりでございます。
 それと、繰り延べ税金資産の話でありますが、これは先ほども答弁させていただきましたように、過去の問題で改めるべきところは改めて、2年半後に不良債権問題を終結させる、そのために何をすべきかということの議論の中で、この繰り延べ税金資産という非常にわかりにくい問題に関して、何か明確な基準を設けたらどうかというような議論も出されたわけでございます。しかし、ルールを短期間に変えるということを結論するのはいかがなものかという議論が非常に幅広く出された。それで、この問題については引き続き専門家を集めて金融審で検討する。
 であるならば、当面は、今までルールがあるわけでありますから、そのルールどおりにやりましょうということを金融再生プログラムにうたっている。これはまさに厳正にやろうということでありますから、厳しくやる、厳格にと書いてあればこれは厳しくというようなニュアンスもあろうかと思いますが、ここは厳正にやるということを書いているわけでありますので、まさにルールどおりにしっかりとやりましょうということをそのプログラムには書かれているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 102条の問題については、今言われたように幅がある、そういう認識が問題なわけですよ。この委員会ではそんな幅があるような話はなかったわけですから、この法律がつくられるときには。それをわざわざ幅がある解釈が可能なんだという、そこが私は問題だと言っているわけです。
 それで、外部監査人の監査の問題ですけれども、これは厳正にというわけでありますが、厳正にということは厳格な検査を行うということでありまして、何か厳正と厳格が違うかのようなことを言っていますけれども、より厳しくということは当然なことであります。大体、金融再生プログラムにも書いているわけです。主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求める」と言っているわけです。
 つまり、金融再生プログラムに基づいて、今までのようなやり方ではなくて、より厳密に、より厳格に監査をやるんだ、それを公認会計士協会に求めているわけです。
 現に、公認会計士協会、2月25日の記者会見ありました。そこで発表された文章は、こういうふうに書いているんですね。「金融庁からの要請に基づき、」と。新たに金融庁が要請したわけです。「要請に基づき、「金融再生プログラム」で示されました金融機関の資産査定の厳格化に関する施策のうち、」ここでは「厳格化」とはっきり言っているんですね。「主要行において、暫定的に定められている1年基準及び3年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行ってまいりましたが、別紙のとおり、」「取りまとめましたので、お知らせいたします。」こういうふうに新しい方針が出されたと言われているわけです。
 それから、2月24日の会長通牒、公認会計士協会の会長の通達です。ここでは、金融再生プログラムに掲げられている「繰延税金資産の合理性の確認」と「外部監査人の機能」ということで、金融庁の要請を受けて、「主要行の財務諸表監査を担当する会員に対して、これらの諸点について、より一層の厳正さを求め、監査に当たり留意すべき点を明らかにするものである。」
 こういうことで、つまり、金融庁が要請をして、公認会計士協会がより一層厳格な監査を実施するということになった。こういう経過は極めて明確だと思うんですが、いかがですか。このとおりですね。
○竹中金融担当大臣 繰り返し申し上げますが、私が申し上げたいのは、ルールそのものを変えたわけではないということですね。そのルールに関しては、公認会計士は常に厳しくこれを適用している。
 当面、ルールは変えないからそのルールどおりに、従来どおりですけれども、これは従来どおりのルールで厳しくやってもらいたいということを、これは金融再生プログラムにも書かれておりますし、それを受けて我々は、それをアクションプログラムといいますか、工程表に移していく段階で、これについては公認会計士協会の方でよろしく御対処いただきたい、これについては例えばRCCについて御対処いただきたい、その工程表をつくりましたから、それに基づいてそのようなお願いを公認会計士協会にしたということでございます。
○佐々木(憲)委員 私は、ルールを変えたと言っているんじゃないんです。ルールを変えないままに、金融再生プログラムの中で、それを厳正に厳格に適用するんだよ、今までのような適用はだめなんだよ、簡単に言うとそういうことを決めて、そして公認会計士協会にそれを要請し、公認会計士協会はそれを受けて、そして今まで以上の厳格な監査をやります、通達を出す、方針を出す、それでやらせていった、こういうことになっているわけであります。だから、ルールは変えないけれども、運用を厳格にしたわけですよ、運用を。そのことによって、今までと違う監査結果が出た、こういうことなんですね。
 具体的に言いますと、繰り延べ税金資産をどこまで認めるかということに尽きるわけでありまして、5年を主張したりそな銀行と、3年しか認めない監査法人の間で激しい議論があった。結局、3年になった。そのために自己資本比率が大幅に低下した。自己資本比率低下の理由の7割が、繰り延べ税金資産の評価の厳格化によるものだった。自己資本比率が、3月には6%台前半だった、ところが5月17日には2%台の前半になった。下落幅は四ポイントですね。このうち2・6ポイント、約7割が繰り延べ税金資産の厳格化、これが理由になっているわけです。これは事実ですね。
○竹中金融担当大臣 3月の時点からの変更という意味でのお尋ねでございますけれども、6%台と予想されていたものが2%台になった、約4ポイントの低下、そのうち繰り延べ税金資産の評価に係るものが2・6、あと株価の下落等々で0・4ポイント、御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 今言われたように、繰り延べ税金資産の厳格化ということによって、自己資本比率のうちの7割が低下をする。それから、さらに、不良債権処理で0・4ポイント、株安による影響が0・4ポイントであります。
 つまり、一つは経済情勢が悪化して、りそな銀行の経営困難を引き起こしたということは、これは外側の要因として、つまり、外側といいましても、これまでの小泉内閣の経済政策の結果でありますけれども、ともかくそういう形で経済的圧力が加わった。
 もっと言いますと、小泉内閣の経済政策は、不良債権の早期最終処理というものを期限を切って強引に進めてきているわけです。そのために倒産と失業が増大する。政府も、不良債権処理はデフレ要因だというのは認めているわけであります。その上で、ことしから来年にかけて4兆4千億円の負担増、これを国民に押しつける。小泉総理も、この数字はそのとおりですと認めているわけです。
 こういう形で小泉内閣の政策がデフレを加速させているということははっきりしているわけですね。そのことが銀行経営を困難にした一つの要因になっている、このことはお認めになりますね。
○竹中金融担当大臣 先ほどの「りそな」で数字が出ておりますので、その例で申し上げさせていただきますと、6%台が2%台になった、その中でデフレに直接絡む要因、株価の下落という要因がございますが、4%低下のうち、株価の下落要因というのは確かにありますが、数字は0・4%でございます。その意味では、その要因はあることはもちろんあるわけですけれども、今回の「りそな」の問題に関して決定的であったというふうには思えない。
 今回の場合は、あくまでも繰り延べ税金資産に関する公認会計士の評価の変化ということにあると思います。しかし、マクロ的な要因が重要であるということはもちろん私は否定をいたしません。マクロ経済の安定によって不良債権処理も進む。しかし、不良債権処理が進まないとマクロが安定しないという難しい関係にあるというのが今の現状であろうかと思います。
 今、4兆円を超える負担増の話もございましたが、そういった意味では、負担増を解消するという意味も含めて、マクロでバランスさせるために、昨年度末の補正予算及び先行減税等々を実施しておりまして、マクロのバランス維持には我々としては細心の注意を払ってこれを運営しているつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 マクロのバランスを図っていると言いますけれども、実際上、国民の消費生活にかかわる部分はどんどん負担がふえているわけです。あるいは、リストラが進んで労働者の所得が大幅に減っている。雇用不安が広がり、失業がふえている。そういう状況が現実に進んでいるわけです。そういう状況をつくってきたのは、政府のまさに構造改革路線と言われるこのやり方なんですよ。
 ですから、先ほど「りそな」の問題で数字をおっしゃいました。0・4ポイントというのは大きくないと言いました。しかし、0・4ポイントというのは、1割あるわけです。不良債権処理要因がさらに1割あるわけです。合わせて2割なんですよ。つまり、資産査定の厳格化、繰り延べ税金資産の評価を厳しくしたということと、これを合わせて6%台から2%台に減ったわけですから、まさに金融再生プログラムで述べていますように、主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、」と言いますが、不確実性をつくり出したのは政府の政策なんです。「翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しい」、こういうふうに言っているわけですけれども、そういう状態をつくったのは政府の責任なんですよ。
 主要行を取り巻くこういう状況をみずからつくっておいて、そして今度は、内部の経営の実態について査定をさらに厳しくする。こうなってきますと、銀行は、政府によって外側から追い込まれ、そしてまた、状況が悪化したらその悪化した以上に査定を厳しくする、両面から追い込まれていく。
 だから、政府のやり方というのは、これは銀行の経営を回復させるんじゃなくて、まさに銀行の経営を非常に困難にさせ、金融そのものの破壊を促進することになるというのが我々の見方でありまして、どうもその辺が全く発想が逆転していると思うんです。
 ですから、私は、不良債権処理をやり、銀行を厳しくしたら、ますます日本経済がおかしくなって奈落の底に沈むような状況になってくるということなので、この点の根本的な転換を、もう時間が来ちゃいましたけれども、要請しまして、質問は終わらせていただきます。

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