アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

財政(予算・公共事業)

2009年04月28日 第171回 通常国会 本会議 【516】 - 質問

2009年度補正予算案 党を代表し政府の財政演説に対して質問

 2009年4月28日、本会議が開かれ、前日行われた与謝野財務大臣の財政演説に対する各党の代表質問がおこなわれました。
 日本共産党を代表して、佐々木憲昭議員が質問に立ち、「今必要なことは、バラマキ補正ではなく、国民の命と暮らしを直接守る緊急対策だ」と求めました。

 佐々木議員は、補正予算の問題点について、次の4点を指摘。
(1)総額15兆円が、国民の生活実態から積み上げられたのではなく国内総生産(GDP・500兆円)の3%という「総額先にありき」なのではないか
(2)3―5歳の子どものいる家庭への手当てなど「一回限り」の対策では効果がなく、社会保障制度の改悪からの転換が必要ではないか
(3)大企業だけに大盤振る舞いで、まともな中小企業対策や大企業の「派遣切り」をやめさせる方策がないのではないか
(4)バラマキのツケは消費税増税で国民に回すことになるのではないか
 「日本経済の底辺を支えてこそ、外需依存から家計中心の内需主導型経済に切りかえることができる」と強調しました。

 また佐々木議員は、財源について「大企業中心の過大な減税措置を見直すべきだ」と強調。歳出面では、米軍への「思いやり予算」の即時中止や不要不急の大規模開発の抑制・中止などの「ムダ遣いをなくすべきだ」と主張しました。
 麻生太郎総理は、なぜ「一回限り」の対策なのかについての説明はまともにできず、社会保障費抑制路線について「基本的方向性は維持する」と明言しました。
 さらに、「財政にたいする責任と社会保障に対する国民の安心強化を図るために消費税を含む税制の抜本改革を行う必要がある」とのべ、財政「健全化」と社会保障財源を口実に、消費税を増税する方針を改めて示しました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説について質問します。(拍手)
 質問に先立ち、メキシコから世界に広がった新型インフルエンザに対して、日本政府は、国民に正確な情報提供を行い、水際で防ぐことはもちろん、国内での感染を防止する、地域の保健医療体制を緊急に整備することを強く求めるものであります。

 最近の急激な景気の落ち込みは、日本経済に深刻な衝撃をもたらし、大量の失業と倒産を発生させ、国民に大きな不安を広げています。3月に本予算が通った途端、4月に大規模な補正予算を組まなければならないというのは、本予算が欠陥予算であったことを証明しております。
 以下、具体的にお聞きします。

 第一に、15兆円という数字はどこから出てきたのでしょうか。
 経済対策というなら、国民の生活の実態から見て何が必要か、緊急の雇用対策や中小下請企業に対する支援をどうするか、介護や医療、福祉の改善をどうするか、緊急を要する生活関連公共事業はどうするかなど、きちんと積み上げなければなりません。ところが、今回、政府は、GDP500兆円の3%で15兆円という決め方をしたのであります。
 日本は、当初、アメリカ政府と歩調を合わせ、GDPの2%程度の財政支出を主張しておりました。ところが、それに麻生総理が悪乗りして、GDPの3%としたのであります。このような総額先にありきの決め方は、余りにも無責任ではありませんか。

 第二に、なぜ一回限りの対策なのでしょうか。
 政府の経済危機対策では、盛り込まれる各施策が一時的な措置であることをわざわざ明記しています。
 具体的に言えば、例えば、不況下の子育て世代支援として、就学前の3歳から5歳の子供がいる家庭に3万6千円を配るという子供版給付金が提案されています。これは、なぜ一回限りなのでしょうか、なぜ3歳から5歳なのでしょうか。
 また、女性特有のがん対策が挙げられていますが、これも、ことしの対象となる人は一回だけ受けられますが、来年はありません。これで、どれだけ効果があるのでしょうか。
 これでは、理念のない、選挙向けの一時的なばらまきではありませんか。
 その一方で、母子家庭の児童扶養手当のカットは、その撤回を当事者が切実に求めているのに、なぜ、直そうとせず、無慈悲に続けるのでしょうか。生活保護の母子加算や老齢加算の削減も、なぜ直さないのでしょうか。
 高齢者の怨嗟の的となっている後期高齢者医療制度をなぜやめないのでしょうか。応益負担の名で障害者と施設に耐えがたい負担を課し、自立を破壊する障害者自立支援法をなぜ変えようとしないのでしょうか。しかも、社会保障の自然増を毎年2200億円削減する基本方針をなぜ続けるのでしょうか。
 以上述べた国民の切実な声を無視して一時的なばらまきを幾らやっても、不安は一層拡大するばかりであります。これまで自民党と公明党が進めてきた社会保障の制度改悪を根本的に転換することこそ、真っ先にやるべき仕事ではないでしょうか。

 第三に、なぜ大手企業にばかり大盤振る舞いするのでしょうか。
 財界、大企業は、ため込んだ膨大な内部留保を取り崩さないまま、政府に対して、さらに大規模な財政出動を求めています。麻生内閣は、この要請に唯々諾々とこたえ、昨日の国幹会議において、小泉内閣時代に白紙にしたはずの高速自動車国道計画の着工を新たに決めるなど、大型公共事業を大規模に推進しようとしております。
 大企業中心の研究開発減税は、法人税の3割の減税を4割にまで拡大し、繰越期間を最大3年に延長するという、至れり尽くせりであります。その上、15兆円の枠組みとは別で、株価を買い支えるための借り入れに対して政府保証枠を50兆円も用意し、さらに、産業活力再生特別措置法で、従業員5千人以上の大企業にも資金注入ができる仕組みをつくるというのであります。余りにも大企業一辺倒ではありませんか。
 赤字が続く中小企業には、まともな対策がありません。強い企業を助け、弱い企業を切り捨てる路線の転換こそ必要ではありませんか。
 また、体力のある大手企業への支援よりも、派遣切りをやめさせ、職や住居を失った労働者を救うことこそ優先されるべきであります。
 派遣期間制限の3年を超えて働かされるなど、違法派遣状態のまま派遣切りに遭った労働者がその是正を求めて申告しても、労働局の対応が余りにも冷たいという声が上がっています。詳細な書類の提出がないという理由で受理しなかったり、立会人も認めず、尋問のように聴取するケースもあります。解雇通告され、切迫した状況に置かれている労働者の立場に立ち、実情に応じた対応をすべきではありませんか。
 少なくとも、申告があったら速やかに調査に入り、必要な指導助言を行うこと。申告は口頭であっても文書であっても受理し、親身に対応すること。派遣期間制限を超えて働かせている場合、指導助言は直接雇用を進めるという立場で行うこと。これらを効果的に進めるため、労働局の体制拡充を図ること。この際、この四点に対する総理の明確な答弁を求めておきます。

 第四に、ばらまき補正のツケは、消費税の大増税で国民に回すことになるのではありませんか。
 政府の経済危機対策では、税制の中期プログラムの必要な改訂を早急に行うとしています。与謝野財務大臣は、4月14日の記者会見で、相当な規模の補正予算になるので後始末をつけなければならないと発言しています。
 中期プログラムにも国税法の附則にも、法人税の一層の引き下げを検討すると明記しています。そうなると、すべてのツケを消費税の大増税で国民に回すことになるのではありませんか。
 中期プログラム改訂の内容は、消費税増税の目的を、社会保障財源だけでなく、赤字財政の穴埋めへと変更することではありませんか。明確にお答えいただきたい。

 財源が必要だというなら、これまで行ってきた大企業中心の過大な減税措置を直すべきであります。歳出面では、米軍への思いやり予算は今すぐ中止し、グアムの米軍基地建設と運営に日本の税金を使う計画を取りやめるべきであります。不要不急の大規模開発や道路、港湾等の公共事業を総点検し、抑制、延期、中止するなど、無駄遣いをなくすべきであります。

 今必要なことは、財政規模をむやみに膨らませるばらまき補正ではありません。がけから突き落とされたような衝撃を受けている労働者、中小企業、農林漁業者の命と暮らしを直接守る緊急対策であり、高齢者、障害者の社会保障制度を抜本的に改善することであります。
 日本経済の底辺を支えてこそ、外需依存から家計中心の内需主導型経済に切りかえることができ、新たな経済発展の軌道に乗せることができるのであります。
 このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)

○内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐々木議員から14問ちょうだいしました。

 まず最初に、補正予算額の根拠についてのお尋ねがありました。
 今般の対策は、景気の底割れを絶対に防ぎ、雇用を確保し、国民の痛みを軽減するとともに、未来の成長力強化につながるものとするとの考え方に立って策定をいたしたものであります。こうした分野の政策に重点化した結果、財政支出は15兆円、名目GDPの3%となったものであり、総額先にありとの御指摘は全く当たらないと存じます。

 子育て応援特別手当についてお尋ねがありました。
 今般の子育て応援特別手当につきましては、現下の不況下で家計の所得が減少しつつあることを考え、平成21年度に限り、対象者を第一子まで拡大して実施することとしたものであります。
 対象者につきましては、幼児教育期の子育て世代を支援するという観点から、幼稚園や保育所に共通して通う年代である小学校就学前3年間の児童としたところであります。

 女性特有のがん対策についてのお尋ねもあっております。
 女性特有の子宮頸がん、乳がんは、検診を通じた早期発見が極めて重要であります。このたびの対策により、これまでがん検診を受診する機会のなかった方々にも、今後の継続的な受診を促す効果が期待できるものと考えております。
 今後も、早期発見、早期治療を基本とする女性特有のがん対策に取り組んでまいりたいと考えております。

 母子家庭の児童扶養手当や生活保護についてのお尋ねもあっております。
 母子家庭の児童扶養手当につきましては、受給期間が5年を超える場合でも、就業や求職活動などの自立を図るための活動をしている方には手当の一部支給停止を行いません。障害や病気などの事情がないにもかかわらず就業意欲が見られない方についてのみ一部支給停止を行う取り扱いとしたところであります。
 生活保護の母子加算や老齢加算につきましては、これらを含む支給総額が一般の母子世帯や高齢者世帯の平均的な消費水準を上回っていたことから段階的に廃止したものであり、適正かつ必要な見直しであったと考えておるところであります。
 なお、今回の補正予算におきましては、一人親家庭の支援や生活保護における子供の学習支援のための給付の創設など、低所得世帯の支援を強化しているところであります。

 長寿医療制度についてのお尋ねがありました。
 長寿医療制度におきましては、医療費の自己負担を現役世代より低い1割負担とし、低所得者の保険料の軽減も行うなど、高齢者が心配なく医療を受けられる仕組みとなっております。しかしながら、制度の説明不足や高齢者の方々の心情にそぐわない点があったものと考えております。
 しかし、この制度をなくせば問題が解決できるというようには全く考えておりません。制度を廃止するのではなく、先般の厚生労働省の検討会や与党の取りまとめを踏まえ、高齢者を初め、広く国民に納得していただけるよう、さらに具体的な検討を進め、よりよい制度への見直しを実施してまいりたいと考えております。

 障害者自立支援法についてお尋ねがありました。
 障害者自立支援法の利用者負担につきましては、法律上、サービス量の1割負担が原則、いわゆる応益負担となっておりますが、所得に応じて負担上限額を大幅に引き下げた結果、実質的には既に応能負担となっておるのは御存じのとおりです。
 今国会に提出をした改正法案におきましては、負担能力に応じた負担が原則であることを法律上明記するなどの見直しを行うことといたしております。

 社会保障の自然増削減についてお尋ねがありました。
 日本の財政が極めて厳しい状況である中で、社会保障分野におきましても、医師確保対策や必要な対応を行いつつ、歳出改革の基本的方向性は維持することが必要であろうと考えております。
 今後とも、少子高齢化の進行に伴い社会保障費の増大は確実であろうと存じます。安定財源の確保と並行して、社会保障の機能強化を図っていくとともに、コスト削減、また給付の重点化などの効率化を進めて、社会保障を安心なものとしていかなければならないと考えております。

 社会保障制度に関するお尋ねもありました。
 近年の一連の改革は、高齢化の進展などに伴い社会保障費が増大する中で、制度の持続可能性を確保するために必要なものであったと考えております。
 一方、社会保障の現状を見ますと、医師不足、介護人材の不足など、国民が不安を抱く課題に直面しているのも事実であります。
 そのため、今般提出した補正予算におきましては、現在の経済情勢を踏まえつつ、中長期的な成長などの観点も考慮し、緊急雇用対策の拡充強化や地域医療の再生、介護機能の強化などに関する施策に取り組むことといたしております。
 さらに、昨年末策定した中期プログラムに基づき、持続可能で安心できる社会保障の構築とその安定財源の確保に取り組んでまいります。

 大企業への支援についてのお尋ねがありました。
 御指摘の対策は、広く日本経済の底割れを防ぐために講ずるものであります。
 また、今般の経済危機対策では、緊急保証枠の拡大などの資金繰り対策や、物づくり中小企業の支援などの、専ら中小・小規模企業などを対象としたきめ細かい対策も講ずることといたしております。
 政府としては、平成21年度補正予算の成立後、できるだけ速やかにこれらの対策を実施し、早期の景気回復とともに、中長期的な成長を図ってまいります。

 中小企業対策についてのお尋ねがありました。
 我が国の産業、雇用、暮らしを支えております約420万に及びます中小・小規模企業を守るということは、政府の最も重要な政策の一つであろうと考えます。
 21年度の補正予算案におきましても、現下の不況に苦しむ中小・小規模企業への資金繰り融資や、また弱い立場にあります下請企業への対策の強化を図っておるところであります。

 派遣切りについてのお尋ねがありました。
 いわゆる派遣切りに伴う雇いどめや解雇が発生していることについては大変憂慮いたしております。このため、労働契約法に関する啓発指導や、労働者派遣法に違反する事業主に対する指導監督を行っているところです。
 また、職や住居を失った方々に対しては、昨年末以来、住宅・生活支援のための資金貸し付けなどを実施してきたところであります。
 さらに、今回の補正予算案におきましては、訓練・生活支援給付や、また住宅手当の創設を行うことにより、職業訓練、再就職、生活の支援を充実強化していくことといたしております。

 労働者派遣法に基づく申告についてのお尋ねがありました。
 都道府県労働局に対しましては、派遣労働者から申告として受理した事案については他の事案に優先して取り扱うこと、また、申告者に対しては親身に対応を行うこと、派遣先が派遣期間制限に違反している場合には、労働者の雇用の安定を図りつつ是正を行うことを基本として対応するよう指示しているところであります。
 都道府県労働局における指導監督に当たる人員につきましては、今年度、拡充したところではありますが、今後とも、労働者派遣法違反が疑われる事案につきましては、最大限の努力を行い、厳正、的確に対処してまいりたいと考えております。

 今般の対策と消費税の関係についてのお尋ねがありました。
 今般の対策は、日本の危機的な経済状況にかんがみ、将来の成長力を高める施策により民需の自律的回復を目指すためのものであり、ばらまきとの御指摘は当たらないと存じます。
 また、財政に対する責任と社会保障に対する国民の安心強化を図るため、消費税を含む税制抜本改革を行う必要があり、今後、所得、消費、資産などの税体系全般について見直しを進めてまいりたいと考えております。

 最後に、財源として、企業向け減税措置の見直しや、在日米軍駐留経費負担などの取りやめや、公共事業への歳出の見直しを行うべきではないかとのお尋ねがありました。
 法人課税のあり方につきましては、我が国企業が国際競争力を強化し、それにより経済社会の活性化を実現することが重要と認識をいたしております。先般成立をいたしました税制改正法の附則に示された方向性に沿って、今後、具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。
 在日米軍駐留経費負担につきましては、日本の安全保障にとって不可欠な日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を確保するためのものであります。また、在沖縄米海兵隊のグアムへの移転は、沖縄の負担を軽減するためにも、ぜひとも実現させるべきものだと考えております。
 公共事業の実施に当たっては、厳しい財政事情のもと、真に必要な事業に絞り込むよう、事業の特性に応じ事業評価を実施しております。こうしたことによって、透明性を確保しながら適切な執行を確保していく必要があると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

○国務大臣(与謝野馨君) 佐々木議員の御質問にお答えをします。
 中期プログラムの改訂の内容についてのお尋ねがありました。
 中期プログラムについては、持続可能な社会保障とその安定財源確保という目的に沿って、必要な見直しをすることになると考えております。
 その具体的内容については、例えば、中長期的に講ずべき社会保障の機能強化と対策で講じた社会保障関連措置との関係などの論点がございますが、いずれにせよ、安心社会実現会議や経済財政諮問会議においても御議論をいただきながら、今後、検討を進めてまいるつもりでございます。
 以上です。(拍手)

Share (facebook)

このページの先頭にもどる