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金融(銀行・保険・証券), 雇用・労働

2009年04月08日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【507】 - 質問

内定取り消しまねいた銀行の横暴を追及

 2009年4月8日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員が質問しました。
 とりあげたのは、3月31日に新卒者19人の内定を取り消した中堅造船会社「カナサシ重工」(静岡市清水区)の問題です。
 原因となった三菱東京UFJ銀行の貸し渋りを告発し、金融庁に調査・是正を求めました。

 佐々木議員は、日銀が銀行に潤沢な資金を供給するもとでも、「大銀行は、経営の厳しい中小企業には貸し渋り・貸しはがしをしている」と批判しました。
 「カナサシ重工」は、新造船の受注残が約722億円もあります。
 それにもかかわらず、メインバンクの三菱東京UFJ銀行から必要な運転資金の融資が受けられなくなり、4月1日から操業を停止しました。

 佐々木議員は、「内定取り消しが学生と家族に大きなショックを与えている」と告発し、「少なくとも4月分の給与は保証されるべきだ」とただしました。
 厚生労働省の渡延忠審議官は、「内定取り消しは解雇にあたる」と答弁しました。
 そのうえで「合理的な理由を欠く内定取り消しは、権利の乱用であり、無効だ」と指摘し、30日前の解雇予告、もしくは解雇予告手当の不履行があれば、監督指導すると表明しました。

 佐々木議員は、「原因は三菱東京UFJによる融資拒否だ」と強調し、「調査の上、融資を再開させるべきだ」と求めました。
 与謝野馨財務・金融担当大臣は「是正すべき点があれば、是正していただかなければならない」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、今の経済危機のもとで銀行の果たすべき役割という問題についてただしたいと思います。
 まず、日銀にお聞きしますけれども、日銀は銀行に対して潤沢な資金を供給しているということでありますが、銀行から先に資金が流れないというのが大変問題になっているわけでございます。それを示すのが信用乗数とかあるいは貨幣乗数と言われるものでありまして、皆さんにお配りした一番最初の1ページのところにそのグラフが、これは日銀から提供していただいたものでありますが、掲げてあります。最近の特徴について、まず説明をしていただきたいと思います。
○中曽参考人(日本銀行理事) お答え申し上げます。
 貨幣乗数あるいは信用乗数とは、先生御指摘のとおり、マネーストックをマネタリーベースで割って求めた指標でございます。90年代以降、分子でございますマネーストックが比較的安定的な伸びを続けておりました一方、分母のマネタリーベース、特にその構成要素でございます日本銀行当座預金残高が大きく変動したため、結果的に振れの大きな展開をたどってきてございます。
 すなわち、配付資料の1のグラフにございますように、量的緩和政策が採用された2001年以降、日本銀行当座預金残高の増加に伴いまして、この貨幣乗数ですが、大きく低下をしてございます。
 その後、2006年に量的緩和政策が解除された後は、日本銀行の当座預金残高の圧縮によって、貨幣乗数は今度は大きく上昇してございます。
 さらにその後でございますけれども、昨年秋以降は、国際金融資本市場の動揺が深刻化したことを背景に、日本銀行は積極的な流動性供給を再び拡大してきてございます。このため、日本銀行の当座預金残高はまた大きく拡大をしてきてございます。一方、マネーストックの方は2%程度の安定的な伸びを続けておりますため、結果として、このグラフにございますように、足元では貨幣乗数は低下をしてきてございます。
○佐々木(憲)委員 簡単に言いますと、日銀が潤沢に、表現は別として、じゃぶじゃぶと資金を供給しているわけであります。ところが、銀行から先に流れない。このグラフが下向きになっているのは、そういう状態を示しているわけであります。
 中曽理事は御退席いただいて結構です。これだけ確認したかったんです。
 そこで、与謝野大臣にお伺いしますけれども、3月13日の金融審議会でも同様のことが指摘されておりまして、配付した資料の2枚目には、最近の中小企業向け融資が減少をしているということが指摘をされているわけです。そこで、銀行から先に融資が流れない理由、原因、これをどのようにとらえておられるか、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 要因を一概に申し上げることは困難でありますけれども、例えば、中小企業の投資スタンスの慎重化等を受けた設備資金需要の減少、あるいは金融機関の貸し出し態度の厳格化などがあると承知をしておりますが、むしろ、この二つの理由の中では、貸し出し態度の厳格化ということが主な理由だろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 そこが大変大事な点だと私も思います。
 資金の流れがなぜうまくいかないかというと、銀行の貸し出し態度が、優良な格付の高い大企業に対してどんどん貸し出す、ところが、格付が低い企業に対して、大企業でも格付が低いところにはなかなか貸さない。ましてや、中小企業は全体として景気が余りよろしくない、経営が厳しい。そういうところにはほとんど貸したくないといいますか、貸し渋りというような事態というのが現に生まれているわけです。
 ですから、ここにやはり行政としては注目をして、大臣が御指摘になったように、その部分を改善していく、こういうことが大変大事だろうというふうに私は思うわけです。
 そこで、具体的な事例を指摘したいんですけれども、静岡市の清水区、昔、清水市と言っておりまして、港のある、風景も大変美しいところですけれども、この清水区の造船会社の事例なんです。この会社は、お配りした資料を見ていただければいいんですが、3枚目に、これは朝日新聞の4月3日付に報道されたものですけれども、突然、内定取り消しというのが大変大きな問題になったわけです。
 この会社は、メーン銀行である三菱東京UFJ銀行から必要な運転資金の融資が受けられなかったということで、4月1日から工場の操業を一時停止するという事態になったわけです。それまで、内定をしていて、4月1日に入社式を予定していたわけです。3月31日になって、新卒者19人の内定が取り消された。
 これは大変な事態でありまして、ともかく、あしたから新入社員だ、会社で働くんだといって大変希望に燃えていたわけですが、その前の日になりまして突然、あなたの内定は取り消します、来なくていい、これは大変なショックでありまして、本人はもちろんですけれども、家族も非常に大きな失望を受けているわけです。
 そこで、まず厚労省に確認をしたいわけですけれども、一般論として、内定というものは雇用契約が成立しているということではないかと思います。入社の前に、前日に内定を取り消すというのは違法ではないか。そのような場合、厚労省はどう対応しているのか。簡潔にお答えいただきたい。
○渡延政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) お答えいたします。
 一般論としては、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合、要は単なる雇用予約ではない場合でございますが、内定取り消しは労働契約法の解雇に当たるため、労働契約法第16条の規定により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない内定取り消しは、権利の濫用として無効となる、このように法で規定されております。
 私ども厚生労働省、労働基準行政といたしましては、労働契約法は民事の法規でございますが、出先機関を通じまして啓発指導に努めておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 内定を取り消すという場合は、非常に厳格な要件を満たした場合でなければ認められないわけでありまして、前の日になって突然取り消しだ、こう言われても、これはとてもたまったものじゃないわけでありまして、例えば4月分の給料ぐらい払えというのは当たり前なんですけれども、そういうことはできないんですか。
○渡延政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) お答えいたします。
 一般論として申し上げれば、内定取り消しでありましても、ただいまお答え申し上げましたとおり、労働契約が成立している場合は解雇に当たりますので、解雇ということであれば、労働基準法上の手続としてはいわゆる解雇予告が必要でございます。
 これは、30日前に行うか、その予告期間が30日に満たない場合は、満たない日数分の平均賃金の支払いが解雇予告手当として必要とされるものでございます。この不履行につきましては、労働基準法上罰則の定めがございます。
 労働基準監督機関としましては、監督指導を通じまして、そうした最低労働基準に係る法規の履行確保に努めておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 この問題では塩谷文部科学大臣も大変ショックを受けたらしくて、一番最後の新聞記事にありますように、これは静岡新聞の夕刊ですけれども、4月3日午前の閣議後の記者会見で、あすから仕事だという前の日に取り消すというのは、学生の立場に立てば普通では考えられない、とんでもないことだと批判して、舛添厚生労働大臣と連携して対処していく考えで一致したというふうに述べています。
 与謝野大臣、この内定取り消しについてどう思われますか。
○与謝野財務・金融担当大臣 内定をするということは、学生が他の就職機会を選択する機会を奪うことになりますので、私は、内定という名前の雇用契約は成立していると考えるのが当たり前だと思っております。
 ただし、金融の側面から見ますと、今我々が考えておりますのは、中小企業の金融というのは信用保証制度で一応ある程度のことはできておりますけれども、やはりこれから資金繰りで大変になりますのは、今先生が例示をされたような中堅中型の企業の資金繰りというものをちゃんと政策的に考えていかないと、こういう社会的な悲劇が起きるということで、我々としては、新しい経済対策の中では、中小企業のみならず、もう少しサイズの大きい、地域を支えるような中堅中型企業にも政策金融の恩恵が行き渡るようにしなければならないと思っております。
○佐々木(憲)委員 この造船会社がこのような事態に立ち至った理由としては、銀行の融資の問題があるわけです。メーンバンクであります三菱東京UFJ銀行が、必要な運転資金の提供を拒否したというところに原因があるわけなんですね。
 この会社というのはどんな状況かといいますと、現在、新造船の受注残高が722億円あるわけです。これだけの仕事をまだ抱えているわけです。この受注残というのは大変優良な仕事として残っている。この仕事をやりますと、かなり利益が見込めるということになっているわけですね。前期は、経常利益は一時的に赤字になったんです。しかし、その前は黒字だったわけです。この仕事をこなせば今期は黒字になる、こういうふうに説明をしているようであります。
 ですから、受注した新造船を建造していけば、一定の経営の改善と利益の黒字化ということが見込まれる。その前提としては、運転資金がきちっと供給されるということが前提なわけです。これが切られると、ぱたっととまってしまう。4月1日から現にとまっちゃったわけでありますから。
 この静岡新聞の記事にありますように、この会社の労働組合執行委員長ら役員三人が清水商工会議所と市の経済局を訪れまして、メーン銀行に対して融資を再開するようお願いしてほしい、こういうふうに要望をしたわけです。これに対して清水商工会議所の専務は、地元の企業を守るのは我々の務めである、市と協力して、意に沿うようにバックアップしたい、こういうふうに答えているわけです。市の方も、前向きに対応したいと言っているわけです。
 ですから、この地域では、この造船会社というのは、下請もありますし、地域経済にとっては非常に重要な役割を果たしているわけですね。まさに今、労使ぐるみなんですよ。それから、地元の経済界ぐるみであり、また行政も、銀行の融資を何とかしてほしい、こういうふうに要望をしているわけであります。
 この会社は、今は、これだけ受注残を抱えておりますので、再開がいつでもできるようにということで、会社の幹部や労働組合の役員も交代で出勤して、資材だとか機材、それから工具、こういうものを一生懸命磨いて保守保全に当たっているわけですね。融資が実現すれば操業はすぐ再開できる、そうすれば、内定取り消しをした対象も正規にちゃんと雇用します、こういう話までしているわけですね。
 だから、決定的なかぎは、この大手銀行が運転資金をきちっと供給するという、それでもうすべて解決するわけなんです。こんなに地域ぐるみで大変大きな問題になっているにもかかわらず、それを放置するというのは、これは非常に私は問題だと思うんですよね。
 やはり、大臣が先ほど御答弁になったように、銀行のあり方というのは、単に庭先だけきれいにして、あとほかの家はどうなってもいいというんじゃなくて、社会的な役割を果たすべきだというふうにおっしゃいました。この場合もやはりそうすべきだと私は思うんですけれども、大臣はいかがでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 銀行というのは、リスクをとるのがもともとの仕事なので、こういう難しい状況になったときに全部リスクを回避しますと、きちんとした金融仲介機能を果たさない。これは実は情けない話なので、我々もいろいろ申し上げますけれども、やはりそれでは間に合わないということになれば、静岡市の御要望のように、日本公庫あるいは中小企業の信用保証制度、こういうものも活用しなければなりません。
 さらに、先ほど申し上げましたように、中堅企業とか中規模の企業のところに政策金融の光が当たらないと、どんどんだめになるところが出てくるということで、やはり、例えば政策投資銀行の役割とかそういうものも少し拡大をして、こういうときこそ、政府が持っているあらゆる政策手段、政策金融手段を動員できるような体制をもう一度再整備しなければならないというふうに私は今考えております。
○佐々木(憲)委員 政策融資も大変大事なことでありますが、今私が問題にしているのは民間の大手銀行の融資態度の問題であります。やはり、今こういう事態になっているのは直接的にはそこに問題があるわけですので、調査をして、問題があれば是正するというのが私は当然だと思いますが、最後にその点をお聞きしたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 今、金融庁は4月から、大手行を含めて、きちんとした金融仲介機能を果たしておられるかどうか、一応検査という形で各行の状況を調べております。その結果がどうなるかはわかりませんけれども、やはり是正すべき点がありましたら是正していただくということでなければならないと思っております。
○佐々木(憲)委員 これはぜひ是正していただきたいということを最後に申し上げまして、終わります。

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