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財政(予算・公共事業), その他 (国際協力・ODA)

2009年03月25日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【504】 - 質問

「IMF改革なしに3100億円も増資していいのか」佐々木議員が批判

 2009年3月25日、財務金融委員会が開かれ、午前中には一般質疑が行われ、午後にはIMFへの日本の増資を3100億円とする提案がおこなわれ、佐々木憲昭議員も質問しました。
 佐々木議員は、「国民の生活が大変苦しい時期であり、財政的にも非常に深刻な状況にある中でこれだけのお金を出すというなら、それにふさわしいIMFの改革というものがともなわなければならない」と問題提起しました。

 佐々木議員が提案した改革の内容は、第一にIMFの融資政策の改革、第二に途上国の意向が適切に反映するガバナンス改革が必要ということです。
 まず、融資政策のポイントは、融資を受けた国の経済主権とIMFの政策介入、これをどう考えるかという問題。融資を受ける側の経済政策の自主性と、IMFが融資をした側としてその国の経済政策に対してどこまで介入すべきかということです。

 与謝野馨財務大臣は、「IMFがかつて東南アジアあるいは他の国に十数年の間でいろいろやったときには、やはり各国の自主的な政策とIMFの方針がぶつかった。これは決していい結果を生まない」と答えました。
 財務省の玉木国際局長は、「IMFは2002年に、コンディショナリティー、融資条件に関するガイドライン」で、「融資条件の策定に際しては、支援対象国自身の自主性を重視することや、融資条件を必要最小限に限定すること等を明確にしております」と答えました。
 そのうえで「例えば国営企業の民営化等、マクロ経済の安定に必要不可欠とは言えないような構造政策を余りにも過度に課してきてしまったのではないかという議論にこたえたものだ」と述べました。
 佐々木議員は、途上国の要望にくらべて、きわめて不十分だと指摘しました。

 次に、佐々木議員は、だれがこれを決定するのかという意思決定の問題をただしました。
 従来から、先進国中心、大国中心ではないかというような批判があります。
 例えば投票権のシェアについては、発展途上国とりわけ低所得国の比重を底上げする調整も行われていると言われます。しかし、重要事項の決定は総投票数の85%以上となっており、16%強を占めているアメリカがノーと言ったら決まらない仕組みになっています。
 佐々木議員は、アメリカにだけ拒否権がある状態は変わるのかと聞きました。
 玉木国際局長は、「米国の投票権シェアは増資前と同じ16.73%となっているので、特別多数決の成立のためにはアメリカの賛成が必要だという構図には変わりない」と答えました。
 アメリカの拒否権の廃止や先進国中心の運営の是正は、ほとんど行われていないことが明らかになりました。

 佐々木議員は「この点の改革なしに増資だけが先行して、日本はどんどんお金を出せばいい、ATM、現金自動的な引き出し機みたいな国でいいのか」と指摘しました。
 依然として、従来のアメリカ中心の運営、あるいは緊縮財政、規制緩和、資本自由化、こういう新自由主義的な政策運営の根本的な是正にはつながっていません。

 この立場から、日本共産党はIMF増資法案に反対しましたが、自民党、民主党、公明党などの賛成多数で可決されました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回提案されておりますIMFへの日本の増資は、日本円で3100億円、大変巨額でございます。国民の生活が大変苦しい、そういう時期であり、また財政的にも非常に深刻な状況にある、そういう中でこれだけのお金を出すわけですから、それにふさわしいIMFの改革というものが伴わなければならない、私はそう思っております。果たして、前提が整っているのかどうかというのがきょうの問題提起でございます。
 一つは、IMFの融資政策の改革であります。それからもう一つは、途上国の意向が適切に反映するような改革、これが行われなければならないと思うわけですね。
 そこで、まず政策内容についてでありますが、そのポイントは、融資を受けた国の経済主権とIMFの政策介入、これをどう考えるか、この問題であります。融資を受ける側の経済政策の自主性と、それからIMFが融資をした側として経済政策に対して物を言う、この関係をどう考えるか。与謝野大臣、まずその基本的な見地をお聞きしたいと思います。
○与謝野財務・金融担当大臣 うまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、IMFがかつて東南アジアあるいは他の国に十数年の間でいろいろやったときには、やはり各国の自主的な政策とIMFの方針がぶつかったわけでございます。これは決していい結果を生まないということで、国際局長に答弁させますが、IMFもその辺は、最近は十分わかり始めたと思っております。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) 1997年以降のアジア通貨危機における批判、それに基づく反省というものが、長年にわたってIMFを中心に行われてまいりました。
 こうした議論を踏まえて、IMFは2002年、今から6、7年前ですが、コンディショナリティー、融資条件に関するガイドラインというのを策定いたしましたが、その際、融資条件の策定に際しては、支援対象国自身の自主性を重視することや、融資条件を必要最小限に限定すること等を明確にしております。これは、例えば国営企業の民営化等、マクロ経済の安定に必要不可欠とは言えないような構造政策を、余りにも過度に課してきてしまったのではないかという議論にこたえたものでございます。
 最近、またIMFの資金支援が活発に行われておりますが、ここにおいては、こうしたガイドラインにのっとりまして、特に構造政策にかかわる融資条件を制限的にしたり、あるいは財政再建目標について、支援対象国の自主性を尊重しある程度の柔軟性を持たせるものにするなど、全般的に支援対象国自身の自主性が重視されるようになってきていると考えております。
○佐々木(憲)委員 1997年のアジア通貨危機のときは、大変な批判がIMFに対しても起こったわけであります。例えば、あの当時、マレーシアと韓国の対応というのは随分違っていたと思います、それぞれの国のIMFに対する対応です。
 私は当時、あの危機の直後に東南アジアを日本共産党の代表団、団長は不破哲三さんだったんですが、その一員として参加したことがありまして、99年の9月にマレーシアに行ったときのことを大変印象深く覚えているんですが、その内容は、「日本共産党の東南アジア訪問」という本にもまとめてありますけれども、その中で、当時、マレーシアの経済計画庁で説明を受けました。
 そのときに、IMFの介入、干渉に対して、その押しつけを排除したとマレーシアの側は言っておりました。独自の経済政策を実行したんだということで、IMFの政策とマレーシアの経済政策を並べて表にしまして、これだけの違いがあるんだ、こういう説明を受けたわけであります。
 特に、97年以来の国際通貨危機で投機的な資本がマレーシアに大量に流入して、ざっと引き揚げようとした。そのときにIMFは、アメリカもそうだったんですけれども、市場経済なんだから規制するな、経済は自由である、こういうことで、そういうことをやらせないような圧力があった。これに対してマレーシアは、いやいや、そうではないということで、独自の政策、規制政策、管理政策を対置して、実際はそれでうまくいったわけです。その後、IMFはそのことを評価して、マレーシアの資本管理の状態を、これは有効である、こういうふうに認めて再評価をしたわけです。
 それがマレーシアの例ですけれども、例えば韓国の場合はこれとは全く違いまして、当時IMFは、市場開放それから規制緩和、こういうことを要請しました。韓国はこれに十分に従って、市場開放、規制緩和、構造調整に努めた。その結果、外資にとって資金の流入、流出が自由な、活動しやすいオープンな資本市場になった。そのことが、その後の韓国にとっての通貨管理というのが非常にやりにくくなった。
 例えば、今回の危機に対応して、資本の流入、流出の自由化ということが韓国ではずっと行われてきたために、9月の段階で韓国に貸し付けていた短期の外資の流入がなくなるんじゃないかということで、韓国の経済危機というものが非常に深刻なものであるというふうに評価をされる、こういう事態になったわけであります。
 したがって、先ほど少し説明がありましたが、IMFの各国の経済政策に対する介入というものは、一体どこまでどうあるべきか。私は、アジア通貨危機の反省というのは、すべて自由化するということに対してやはり慎重でなければならなかった、こういう反省だというふうに先ほどの説明も伺いました。果たして、それが今回のIMFの改革と言われる中で十分に行われているのかどうか、その反省を十分踏まえて改革が行われているかどうかであります。
 先ほどの説明によりますと、コンディショナリティーに対するガイドラインというのが発表されて、自主性の尊重、融資条件の合理化というようなことがやられたというんですけれども、まだ短期の緊縮的な財政金融指標を押しつけるとか、融資の条件の設定目標を削減することがまだ不十分であると。世界銀行の方は大幅に削減をした、しかし、IMFの方はまだそういうふうになっていないのではないかという評価があります。与謝野大臣は、その辺はどのようにお感じですか。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) 先ほど申し上げましたようなコンディショナリティーのガイドラインに沿って、今回、例えば中東欧の国々のプログラムなどにおいては、やはり97年、98年当時のコンディショナリティーとかなり大きな違いがあると見ております。
 支援対象国自身が自主的に選択した、すなわちオーナーシップの尊重であるとか、それから構造コンディショナリティーの対象を、今般特に問題になった金融部門に限定するとか、あるいは他の国際金融機関やバイ支援国を含めた、全体的な国際的な協調のもとの支援とかといったような考え方が盛り込まれていると考えています。
 世界銀行との比較でいえば、世界銀行の方がより長期的な視野、貧困削減のために有効なコンディショナリティーという考え方に立っているのに対して、IMFの場合には短期的に、今生じている危機を安定させなければいけない、一定の強度を持ったコンディショナリティーを導入しなければその目的が達成できないという意味で、コンディショナリティーの目的に差があることは否めないと思います。
○佐々木(憲)委員 そこが評価が若干違うわけでございまして、もう少しこれは、途上国の側からいうとまだ足りないということで、今議論が行われているんだと思います。
 さて次に、問題は、だれがこれを決定するのか、つまり意思決定の問題であります。人事もそれに含まれるわけですけれども、いわゆるガバナンスでございます。
 この点については従来から、先進国中心ではないか、大国中心ではないかというような批判がありまして、例えば投票権のシェアについては、先ほども少し説明があったように、投票権の配分の仕方についても、発展途上国、とりわけ低所得国の比重を底上げする、そういう調整も行われているというふうに聞きました。
 しかし、重要事項を決定する場合に、総投票数の85%以上で決めるわけです。そうすると、アメリカは16・何%ですよね。重要事項は、アメリカがノーと言ったら決まらないわけです。つまり、拒否権があるということであります。これは変わるんでしょうか。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) IMFにおいては、IMF協定の改正あるいは増資の決定といった限定された重要事項については、特別多数決として85%の多数を要求しております。
 今般、米国の投票権シェアは増資前と同じ16・73%となっておりますので、特別多数決の成立のためにはアメリカの賛成が必要だという構図には変わりありません。
○佐々木(憲)委員 その点では、これは変わらないということでございます。
 では、ほかの国際機関、例えば国連は、各国の投票権というのは、こういうお金の出す比重あるいは経済力によって投票権に差をつけるというような機関はほかにあるんでしょうか。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) IMF、世銀も国連の専門機関でございますが、こうした出資額比例、経済力に比例した発言権という構図を持っているのは、基本的にIMFと国際開発金融機関に限られると思います。
○佐々木(憲)委員 つまり、各国の平等ということを考えますと、もちろん経済的な力関係というのはありますから、それは一定の反映というのは必要だと思いますが、平等、各国の主権ということを考えますと、大きな国は経済力があるんだからすべて決定権があるんだ、とりわけアメリカは拒否権まであるんだ、こういう仕掛けを直そうというのが今の大きな流れでありまして、私は、今回まだこういうところが改革の対象になっていないというところに、非常に大きな問題点を感じているところであります。
 それから人事ですけれども、24カ国の理事会の人事は、出資額上位五カ国は選挙なしで選出される任命理事である、こういうことですね。したがって、先進国が独占をしておりますし、IMFを代表して活動する専務理事、第一副専務理事、これは前者がヨーロッパ人、後者はアメリカ人と、最初から何か指定席のようになっているわけですけれども、これは変わりましたか。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) IMFの加盟国は185カ国に及んでおりまして、これが24の理事を出すに際しては、一定のグルーピングが行われるのが常でございます。その場合、大出資国は発言権も高いので、自動的に理事のシートを与えられるという構造は変わっておりません。
 IMFの専務理事、第一副専務理事に、例えば専務理事はヨーロッパ人、第一副専務理事はアメリカ人という任命が続いていることは事実でございますが、先ほども御説明いたしましたように、IMFのトップである専務理事の選任においては実力本位の選考をすべきであるということが、先般のG20の財務大臣会合でもうたわれておりますし、副専務理事、3人おります中の一つのシートは、現在ブラジル、その前はメキシコというように途上国からの参加になっております。
○佐々木(憲)委員 例えば、数年前にロシアが手を挙げて立候補したという話も聞いたことがありますが、そういうことがあっても、なかなかこれはそういうふうにはならぬわけでありまして、今、若干緩和したような話がありましたけれども、こういう点でも、出資上位5カ国は選挙なしというようなことも、これは果たして公正なのか、平等なのか。途上国から言わせると、ちょっとこれは大国の、横暴とまでは言わないけれども、余りにも発言権が強過ぎるんじゃないか、こういうふうに受け取られるわけであります。今回も、アメリカの拒否権の廃止ですとか先進国中心の運営の是正というのは非常に不十分であり、ほとんど行われていないというふうに私は思います。
 この点の改革なしに、増資だけが先行して、日本はどんどんお金を出せばいいんだと、何かATMみたいに、自動的な引き出しみたいな、そういう国にされてはたまらないわけでございまして、一定の改革に向けての平等な仕掛けですとかあるいは各国の主権の尊重ですとか、そういう方向で日本がイニシアチブを発揮するというのが大変大事なことであります。ただ日本が、お金を出すんだから発言権もよこせ、あれもよこせと言うのは果たしていいのかどうか、これも私はよろしくないと思っております。
 そういう意味で、今回の法案は、従来のアメリカ中心の運営、あるいは緊縮財政、規制緩和、資本自由化、こういう新自由主義的な経済運営、政策運営の根本的な是正にはつながっていないというふうに私は思います。それから、決定権、ガバナンスの問題についても十分な改革が行われたとは言いがたい、そういうふうに思いますので、今回出されている増資法案については、以上の立場から、我々は反対という態度を表明しておきたいというふうに思います。
 以上で私の質問を終わります。

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