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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (消費税, 大企業減税, 証券優遇税制, 定率減税の廃止)

2009年02月12日 第171回 通常国会 本会議 【488】 - 質問

09年度予算関連の国税法案について本会議で麻生総理に質問

 2009年2月12日、佐々木憲昭議員は2009年度予算関連法案である税制「改正」法案への質問で、「大企業・大資産家には減税を行いながら、なぜ庶民に増税を押し付けるのか」「重要なことは、輸出依存・外需頼みから、家計を中心とする内需主導に経済の基本を転換することだ」とただしました。
 佐々木議員は、同法案に盛り込まれている、企業の海外子会社からの配当を非課税にする制度は「大企業にきわめて有利な減税措置だ」と指摘。証券優遇税制の延長については「大資産家へのとてつもない減税だ」と批判しました。
 また、法案の付則に、2011年度までに「消費税を含む税制の抜本的な改革」を行うための法制上の措置をとると明記したことについて、佐々木議員は「雇用がますます不安定になっているなかで、麻生内閣が消費税の増税を打ち出したことは不安をいっそう増幅させている」と述べ、消費税増税ではなく、消費税の食料品非課税を行うよう求めました。
 麻生太郎総理は「現在、食料品に非課税措置を講ずるのは適当ではない」と答弁。「来る総選挙において、税制改正、社会保障制度のあり方、財政責任の取り方などを問うことで、国民生活に責任を持つ政党はどこなのかを競いたい」と述べました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税等改正案、公債発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例法案について麻生総理に質問します。(発言する者あり)
○議長(河野洋平君) 御静粛に願います。
○佐々木憲昭君(続) 初めに、この本会議が与野党の合意のないまま強行されたことに強く抗議するものであります。
 昨年来の米国の金融危機は、急速に世界じゅうの景気を悪化させ、日本経済は深刻な事態を迎え、いまだ出口が見えない状態であります。

 初めに、基本認識を伺います。
 総理は、金融危機について、米国のサブプライムローン問題に端を発するものと、対岸の火事のような言い方をしました。しかし、原因は米国にのみあり、日本には一切責任はないと言えるのでしょうか。
 今回の金融危機の原因は、金融の自由化、規制緩和のもとで、金融の証券化が進み、投機的な売買を通じて金融バブルが膨らみ、それが崩壊したことが原因であります。しかし、その原因をつくったのは米国だけではありません。日本もEU諸国も、金融の自由化、金融のビッグバンを競うように進めてきました。
 日本銀行は、低金利政策のもとで、市場に資金をじゃぶじゃぶ供給し続けました。この低金利資金が、円キャリートレードなどを通じてアメリカの過剰流動性を増幅させ、国際的な投機資金を膨らませてきたのであります。政府と日銀は、その責任をどう感じているのでしょうか。
 今日の深刻な事態を増幅させたのは、小泉内閣以降推し進められてきた構造改革路線であります。それは、市場原理と競争によって弱肉強食の社会をつくり、弱者を排除する一方で、大企業には優遇税制など手厚い支援を進めてきました。法人税率の連続的な引き下げ、連結納税制度の導入、研究開発減税の拡大、欠損金繰越期間の延長など、至れり尽くせりの大企業優遇税制が実行されてきたのであります。(発言する者あり)
○議長(河野洋平君) 御静粛に願います。
○佐々木憲昭君(続) 本法案においても、引き続き大企業減税が拡充されました。外国税額控除の見直しであります。
 本税制改正案では、間接外国税額控除制度にかえて、外国子会社からの配当を益金不算入、つまり配当を非課税とする制度が導入されています。海外に工場など子会社を持つ大企業に極めて有利な減税措置であります。
 政府は、本制度のねらいについて、海外子会社がため込んでいる内部留保金を国内の投資に還元させるものと説明しています。しかし、その保証はどこにあるのでしょうか。
 日本機械工業連合会等のアンケート調査では、本制度により日本法人への配当が増加と回答したのは、たった13・5%の企業です。その大半が、影響は小さい、わからないと回答しているのであります。
 何を根拠に、海外の内部留保が国内に還元し国内投資がふえると言えるのでしょうか。また、どの程度の国内投資の増加を見込んでいるのか。具体的にお示しいただきたい。
 政府の至れり尽くせりの優遇政策の結果、自動車、電機を初め輸出関連産業の大企業は史上空前の利益を上げてきました。大企業は、潤沢な内部留保を抱え、役員報酬、株主への配当を急増させたのであります。しかし、労働者の賃金はかつてなく抑え込まれ、家計を冷え込ませたのであります。これが今日の格差拡大を招いたという認識は、総理にあるかどうか、伺いたいと思います。

 次に、金融・証券税制についてお聞きします。
 2008年度の税制改正で、源泉所得税及び配当益に対する10%の軽減税率は、2年間の経過措置の後、原則廃止と決められました。にもかかわらず、またまた本法案により軽減税率の延長が図られています。そもそも、昨年の原則廃止は、大資産家優遇を是正する目的で導入したのではなかったでしょうか。そもそも、上限の規制もない、海外に例を見ない軽減税率は大資産家へのとてつもない減税となっているとの認識を麻生総理はお持ちでしょうか。
 このような優遇税制でなく、投機的売買が横行しない公正公平な証券市場を整備することこそ、政府のやるべき仕事なのではありませんか。
 大企業、大資産家には減税を行いながら、なぜ庶民に増税を押しつけるのでしょうか。
 本法案の附則では、2011年度までに消費税を含む税制の抜本的な改革を行うための法制上の措置をとることが盛り込まれました。しかし、国民の多数は、たとえ社会保障の財源であっても消費税の増税に反対の意思を表明しているのであります。雇用がますます不安定になっている中で麻生内閣が消費税の増税を打ち出したことは、不安を一層増幅させています。総理は、国民の声をどう受けとめているのでしょうか。
 今重要なことは、輸出依存、外需頼みから、家計を中心とする内需主導に経済の基本を転換することであります。
 ある経済学者は、国内総生産に対する個人消費の比率は55%、輸出の比率は16%です、だから、消費を1%ふやせば輸出が3%落ち込んでもカバーできる、消費を3%ふやせば輸出が10%落ち込んでも大丈夫と指摘しております。つまり、個人消費を直接支えることが内需主導の持続的成長に決定的な効果があると説いているのであります。
 例えば、3割強しか消費拡大に寄与しない定額給付金と違って、消費税の食料品非課税措置を行えば、そのまま消費拡大に回るのであります。総理は、なぜ、検討結果を国民に提示することもなく、消費税の減税は適当でないと一方的に決めつけるのでしょうか。
 総理、どうしても消費税を増税したいというなら、衆議院を解散して国民に信を問うのが当然ではありませんか。

 最後に、埋蔵金の流用について聞きます。
 公債発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例法案では、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源として、2009年度、2010年度について、財政投融資特別会計の準備金から財源を手当てすることになっています。これは、2011年度の消費税増税までの間、いわゆる埋蔵金で基礎年金拠出金の財源を確保しようとする考えから来ているのではありませんか。
 昨年、福田前総理も認めたように、自民党、公明党は、定率減税の縮減、廃止の増収分を、基礎年金拠出金に対する国庫負担の割合の引き上げに充てると説明してきました。
 定率減税の廃止に伴う年間2兆8千億円もの増税は、一体どこに消えてしまったのでしょうか。明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(麻生太郎君) こちらも事前通告があっておりませんので、少々順番等々違っているかもしれませんが、あらかじめお断りしておきます。

 今回の金融危機についてのお尋ねが最初だったと存じます。
 今回の世界的な金融危機というものにつきましては、米国のサブプライムローン問題に端を発するものであって、日本の金融システムは欧米に比べて相対的に安定をしているということは事実で、世界じゅう皆同様に言っております。しかし、この危機は、グローバルな金融市場というものを通じて世界じゅうに拡大し、世界の景気後退、実体経済、実物経済に関して景気後退というものをもたらしております。
 したがって、現下の危機というものを克服し、金融市場というものを安定化させるためにも、世界経済の成長を回復するとともに、各国に共通の責務があるのではないかと認識をしておるところであります。

 次に、低金利政策及び過剰流動性についてのお尋ねがあったと存じます。
 日本銀行は、バブル崩壊後のデフレという極めて厳しい経済、物価情勢に対応するため、御指摘の金融政策を講じたものだと考えております。1990年代前半の話です。
 なお、金利水準が投資行動、市場の流動性にどのような影響を及ぼすかについては、国内外の経済や金融市場の動向によってさまざまな面が考えられるところだろうと存じます。

 外国子会社から受けるいわゆる受取配当の益金不算入制度の趣旨についてのお尋ねがありました。
 日本の経済の活性化の観点から、日本企業が海外市場で獲得する利益につきまして必要な時期に必要な金額だけ国内に戻せる制度を整備することは、日本のいわゆる経済にとりましても重要なことだと考えております。
 このため、今般、外国子会社からの配当を益金不算入とする制度を導入することとしており、本制度が導入されることにより、国内に還流されます利益というものが、日本企業の設備投資、また研究開発、もちろん雇用を含めまして、そういう幅広い分野で多様な利用が図られるものだと期待をしておりまして、我が国の経済の活性化につながるものだと理解をいたしております。

 海外子会社からの配当を益金不算入とすることによって国内投資がふえるかという御質問もあっておりました。
 昨年、経済産業省が実施しておりますアンケート調査によれば、この制度を導入すれば、半数を超える企業が、海外子会社の内部留保について、配当による国内還流を増加させると回答しております。また、国内還流した場合は、その資金については、半数以上の企業が国内投資に振り向けることになるだろうと回答もいたしております。
 なお、具体的にどれだけの金額を還流、投資させるかにつきましては、為替や金利の状況もあろうと存じまして、こういったものに依存しておりますので、事前に正確に予測するということは困難であろうと思います。

 今日の格差拡大についてのお尋ねがあっております。
 私は、所得格差というものが大きな社会問題になっているということは、これはゆゆしき事態なのであって、大変憂慮すべきものである、これは大前提として申し上げておきたいと存じます。
 その上で、日本では、1980年代から、いわゆるジニ係数、所得の格差を示す指数、よく御存じのとおりですが、徐々に上昇してきております。これは、明らかに、年齢の高い層が、若年層に比べ、相対的に所得格差が大きくなりますので、高齢者の比重が高まってきているという点もひとつ理解をしておいておかないといかぬのではないか、いわゆる独居老人を含めまして、そういったことになってきておるのではないかなという面も否定できないのではないかと思っております。

 証券税制についてお尋ねがありました。
 平成21年度税制改正法案では、現下の厳しい経済金融情勢を考えて、金融市場を活性化させるその目的から、現行の軽減税率を3年間延長を行うことといたしております。ただし、その後は、金融所得課税の一体化を推進するという観点から、本則税率に戻したいものだと考えております。
 いずれにいたしましても、金融所得課税につきましては、個人投資家が投資しやすい環境を整備する観点から、簡素でわかりやすい税制を構築することが重要ではないかと考えておる次第です。

 公平公正な証券市場の整備についてのお尋ねがあっておりました。
 今般の金融市場におきます世界的な混乱というものを考えた場合、金融市場におきましては、いわゆる一定の規律づけというものが必要ではないか、特に、これは日本だけではなく、国際的に見て。
 平成21年度の税制改正法案における金融・証券税制の措置というものをあわせまして、市場の公正性、透明性というものの確保など、国民が安心できるような環境整備に引き続き努めていかねばならないものだと考えております。

 平成21年度税制改正法案の附則と消費増税についてのお尋ねがあっておりました。
 私は、かねてから日本経済は全治3年と申し上げてきております。まずは、事業規模75兆円の大胆な対策を打つことにより、今年度を含みます3年以内の景気回復に最優先で取り組むことといたしております。
 他方、大胆な財政出動というものを行うからには、中期の財政責任というものを明確にしなければなりません。とりわけ、社会保障を安心なものとして、子や孫に負担を先送りしないためには、安定財源確保に向けた道筋を国民にお示しする必要があろうと存じます。
 したがって、平成21年度税制改正法案の附則について、消費税を含みます税制抜本改革の道筋を盛り込んだということであります。

 消費税の食料品非課税措置についてのお尋ねがありました。
 社会保障制度を将来にわたり持続可能で安心できるものにすることは、国民の不安を払拭するというために大きな意義を有するものであります。消費税は慎重な対応が必要ですけれども、極めて重要な役割を果たしているものであると認識しております。
 したがいまして、こうした中で、今、事業者の事務負担や減収規模などを勘案すれば、将来はともかく、ただいま現在、食料品につきまして、非課税措置を講ずるというのは適当ではないのではないかと考えております。
 いずれにせよ、消費税の税率構造のあり方につきましては、今後、税制抜本改革の中で検討してまいりたいと考えております。

 次に、消費税を引き上げる前に衆議院を解散すべしとの御指摘がありました。
 今国会は、消費税を含む税制抜本改革の道筋を盛り込んだ法律を提出させていただいております。実際の税制改革には、個別税目に関する具体的な改正の内容を別に法律で定める必要がありますのは御存じのとおりです。その際に、国会で税制の具体的な姿というものを審議していただくことになります。
 来る総選挙におきましては、税制改正だけでなく、社会保障制度のあり方、財政責任のとり方などを問うことで、国民生活に責任を持つのはどの党であるかというものをきちんと競いたいものだと考えております。

 基礎年金国庫負担割合の引き上げの財源についてのお尋ねもあっておりました。
 今般、世界の金融市場が100年に一度と言われる金融危機に陥る中で、今年度から3年間のうちに景気回復を最優先で実現することを目的といたしてやっております。
 こうした中で、平成16年年金制度改革の柱の一つである基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げを実現するため、昨年12月に閣議決定された中期プログラムにおきまして、中期プログラムに従って行われる税制抜本改革により所要の安定財源を確保した上で恒久化する、平成21年度及び平成22年度の2年間は、財政投融資特別会計から一般会計への特例的な繰り入れによりまして臨時の財源を手当てし、基礎年金の二分の一を国庫で負担するということにいたしております。税制抜本改革の実施に当たって、予期せざる経済変動に対応する、そういう場合には、それまでの間につきましても、臨時の財源を手当てすることにより、基礎年金の二分の一を国庫で負担する措置を講ずるものとしております。
 以上でありまして、このような内容の法律案を去る1月30日に国会に提出したところであります。

 定率減税廃止による増収分はどこへ消えてしまったのかという御質問です。
 平成17年度及び18年度の税制改正における定率減税の縮減、廃止に伴う平成17年度予算から平成19年度予算における所得税の増収分約2・6兆円につきましては、32%、約0・8兆円は、地方交付税法に基づきまして、地方交付税に充てられております。
 残余の約1・8兆円、国の取り分につきましては、使途が決定されていない一般財源でありますので、厳密に特定することは甚だ困難でありますが、与党における御議論を踏まえて、定率減税の縮減、廃止に関連づけられた歳出項目として、これまでの基礎年金国庫負担割合の引き上げに充てられた金額は約0・3兆円となっております。
 以上であります。(拍手)

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