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金融(銀行・保険・証券)

2008年11月18日 第170回 臨時国会 本会議 【477】 - 質問

金融サミット報告に対し代表質問

 2008年11月18日、衆議院の本会議で、米国・ワシントンで14〜15日に開催された金融サミットの報告がおこなわれ、佐々木憲昭議員は、日本共産党を代表して質問しました。
 麻生総理は、サミットで金融危機への短期的な対策として、金融機関に公的資金を投入する意義や、IMF(国際通貨基金)に最大10兆円(1000億ドル)相当の融資を行う用意があると表明したことなどを報告しました。
 佐々木議員は、「巨大金融機関やヘッジファンドを規制・監督する具体策について、麻生総理自身がどのような提案をしたのか」とききました。
 麻生総理は、「資本移動がグローバル化した状況の下で、金融監督や規制において国際的な協調の重要性を指摘」したなどと、抽象的な言葉を繰り返すだけでした。
 佐々木議員は、具体的な規制策を提案しないで、10兆円の資金融通だけを表明するのは、日本が「気前よくお金を出すだけの存在」とみなされると指摘するとともに、これまでの日本の公的資金投入などについて「何の責任もない国民に、金融機関の乱脈経営の犠牲を転嫁するものだ」と批判しました。
 そのうえで、「カジノ経済」の破綻のツケを国民に回さない対策として、次の点を求めました。
 (1)大企業による派遣社員、期間社員をはじめとする大量解雇を中止し、雇用を維持するために最大限の努力をするよう、経済団体・主要企業に指導・監督を強化すること。
 (2)中小企業に対する銀行の「貸し渋り、貸しはがし」をただちにやめさせること。
 麻生総理は、雇用に関しては「派遣契約を解除する際には、関連企業での就業あっせんなどをおこなうよう指導たい」と答弁しました。しかし、中小企業向け金融については「金融機能強化法の改定により民間金融機関の資本基盤を強化」と、従来の施策を踏襲する立場を表明しました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、金融サミット報告に対して質問します。(拍手)
 まずお聞きしたいのは、巨大金融機関やヘッジファンドを規制、監督する具体策について、麻生総理自身がこの会合でどのような提案をしたのかという点であります。
 この10年来、アメリカでは金融業界に大きな変化が起こりました。金融緩和、自由化政策のもとで、銀行の貸出債権を売却し、それを証券化し、さらに他の金融商品と組み合わせて金融派生商品を次々とつくり出し、それらの投機的な売買を通じて価格をつり上げ、金融バブルを発生させてきたのであります。それを推進してきた張本人が巨大な複合金融機関とヘッジファンドであったことは明らかであります。麻生総理にその認識はあるのでしょうか。
 サミットで配付された麻生提案のどこを見ても、その活動を具体的に規制する提案がないのはなぜでしょうか。
 麻生提案の中で、自由な市場原理に基づく競争が成長の基礎であると述べていることは重大です。これまで、アメリカ政府は、経済の活性につながるとして投機活動を放置し、まともに規制しませんでした。麻生総理の提案は、それを容認するものになっているのではありませんか。
 金融サミットの宣言は、アメリカの政策立案者、規制当局及び監督当局に対して、リスクを適切に評価し対処しなかったと批判しています。総理はこの指摘をどう受けとめているのでしょうか。
 また、日本は、異常な低金利政策を長い間続け、円を低金利で大規模に調達し、金利の高いドルで運用する円キャリートレードを増幅させたのであります。これがアメリカの金融バブルを発生させる一因となったことは金融当局も認めており、日本にも重大な責任がありました。総理にその認識はあるのでしょうか。
 結局、麻生総理は、金融サミットで、自由市場原則を強調するアメリカに追随し、巨大金融機関やヘッジファンドを規制する具体策を示すこともなく、目玉政策として10兆円の資金融通を提案したのであります。これでは、日本は単に気前よくお金を出すだけの存在と思われるだけではありませんか。
 総理は、日本の経験を世界に伝えると言われました。しかし、日本がやってきたことは何でしょうか。乱脈経営で危機に陥った大銀行に対して国民の税金を大規模に投入したこと、不良債権処理の名で中小企業に犠牲を押しつけたこと、リストラで労働者を減らし利益を上げたことであります。これらは、何の責任もない国民に、金融機関の乱脈経営の犠牲を転嫁するものだったのではありませんか。
 このため、失敗しても最後は税金で救ってくれるという安易な依存心を日本の銀行業界に蔓延させました。これまでの銀行甘やかし政策こそ見直すべきではありませんか。
 最後に、カジノ経済破綻のツケを国民に回さない対策です。
 金融危機と景気後退を理由に、大企業が先頭に立って、派遣社員、期間社員を初め労働者を大量に解雇する動きが広がっております。例えば、トヨタ自動車とそのグループ企業では7800人、日産780人、マツダ800人など、名立たる大企業が相次いで派遣社員や期間社員の削減計画を発表しています。
 これらの大企業は、減益になったとはいえ、依然として莫大な利益を上げており、巨額の内部留保も抱えているのであります。こうした不当な人減らしを放置すれば、日本経済はますます深刻な事態となります。政府は、大量解雇を中止し雇用を維持する最大限の努力を払うよう、経済団体、主要企業に対して指導と監督を強化すべきであります。
 中小企業への不当なしわ寄せを許さないことも重要です。景気後退を理由とした、中小企業に対する銀行の貸し渋り、貸しはがしが強まっております。直ちにやめさせなければなりません。
 このことを求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐々木議員の質問にお答えをさせていただきます。
 まず最初に、今回の金融危機の原因についてお尋ねがあっております。
 今回の金融危機は、証券化商品などに代表されます新しいビジネスモデルが急速に拡大していく中で、金融機関などの市場参加者がそのリスクを適切に管理できず、金融市場が深刻な混乱に陥ったものと認識をいたしております。
 巨大金融機関やヘッジファンドの活動の具体的規制の提案についてのお尋ねがあっております。
 今回の首脳会合におきましては、御指摘の点を含むさまざまな論点があります。私からは、資本移動がグローバル化した状況のもとで、金融監督や規制において国際的な協調の重要性を指摘しております。
 金融機関やヘッジファンドに対する規制については、共同宣言におきましても、情報開示の徹底、ベストプラクティスの策定などを含むさまざまな提言がなされておりますのは御存じのとおりです。日本としても、今後、同宣言に盛り込まれた事項について、具体的な施策に移していきたいと考えておるところです。
 自由な市場原理に基づく競争についてのお尋ねがありました。
 私は、自由な市場原理に基づく競争が今後とも成長の基礎であり続けることを確信しております。他方、今次の金融危機の発生には、新たな金融商品の出現やグローバル化に各国政府による監督、規制が追いついていかなかったという問題があると認識をしております。
 したがって、金融危機の再発防止のためには、金融規制、監督の改革、協調を進めていくことが重要であると認識をいたしております。
 金融サミットの宣言における指摘についてお尋ねがありました。
 今次首脳会合で合意された首脳宣言は、各国による監督、規制が金融の技術革新についていけなかったとの認識に立って、さまざまな金融危機への当面の措置、中期的措置が盛り込まれております。私も同様の認識を持っており、アメリカにおきましても、今後、今次の合意の着実な実施に取り組んでいくものと理解をいたしております。
 低金利政策及び過剰流動性のお尋ねがありました。
 日本銀行は、バブル崩壊後のデフレという極めて厳しい経済物価情勢に対応するため、御指摘の金融施策を講じたものと考えております。
 なお、金利水準が投資行動、市場の流動性などにどのような影響を及ぼすかにつきましては、国内外の経済や金融市場の動向によってさまざまな面が考えられるところであります。
 IMFへの融資についてお尋ねがありました。
 国際金融システムが大きな危機に直面している状況におきまして、日本によるIMFへの融資の意図を表明したところです。このことにより、金融支援を必要とする国々のニーズにこたえる十分な財源をIMFが有しているという信頼感を高め、金融市場の混乱に対する新興市場国の抵抗力を強めることになります。ひいては、このことが国際的な金融市場の安定維持に大きく貢献するものと考えております。
 過去の我が国における金融危機の際の政策対応についての御質問がありました。
 バブル崩壊後の日本の経済におきましては、金融機関の不良債権の処理、十分な資本の確保などが課題となっておりました。こうした課題に対応するため、不良債権処理の促進や公的資本増強を行ったものであります。
 これによりまして、金融機関の財務の健全性や金融システムの安定が確保されるとともに、金融仲介機能の発揮にも寄与したものと考えております。したがって、議員の御指摘の点は当たらないものと考えております。
 これまでの銀行甘やかし政策こそ見直すべきではないかとのお尋ねがありました。
 公的資本を増強した銀行に対しては、必要に応じ、経営責任の明確化を求めるなど厳格に対処しており、これまでの政策が甘やかしであったとの御指摘は当たらないと考えております。
 派遣社員などの雇用の維持についてのお尋ねがありました。
 雇用情勢が下降局面となる中、非正規労働者の雇用の安定の確保というものは重要な課題であると認識をいたしております。そのため、大企業を含め、派遣先が派遣契約を解除する際には、関連企業での就業をあっせんするなどにより、就業機会の確保を行うよう指導を行ってまいりたいと考えております。
 最後に、中小企業に対する貸し出しについてのお尋ねがありました。
 現下の経済情勢のもと、中小企業の業況が厳しい状況にあるのは御存じのとおりです。こうした中、年末を間近に控え、資金繰りに不安を感じる中小企業も多いと思っております。
 中小企業に対する円滑な金融は、民間金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をいたしております。政府としても、緊急保証制度を先月末から開始するなど、しっかりとした資金繰り支援を迅速に講じているところでもあります。
 さらに、金融機能強化法の改正により、民間金融機関の資本基盤を強化し、中小企業に対する金融仲介機能の発揮に万全を尽くしてまいりたいと考えております。(拍手)

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