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雇用・労働 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP)

2004年03月16日 第159回 通常国会 財務金融委員会 【233】 - 質問

差別人事の是正を要求「差別あってはならない」と財務大臣が答弁

 2004年3月16日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、全税関労組組合員に対する異常な差別人事の是正を求め、谷垣財務大臣の対応をただしました。

 谷垣大臣は、「差別はあってはならない」とし、厳正に対処する考えを示しました。
 財務省の税関職員でつくる全税関組合員に対する当局による人事差別は、27年にわたる裁判闘争の末、2001年に東京税関と横浜税関の事案について最高裁で差別の事実を認める判決がくだり、組合員が勝訴しています。
 しかし、勝訴判決後2年が過ぎたにもかかわらず、いまだに差別人事は是正されていません。
 佐々木議員は、組合差別の実態を示す資料として、1963年採用職員の統括官昇任の推移を一覧表にして示しました。これによると、非組合員の場合は、1988年から昇任が始まり、1995年までに35人のうち34人が統括官になっている一方で、全税関組合員は、2001年にようやく昇任が始まり、現在でも19人中9人が未承認のまま残されています。うち2人は3月末で差別的取扱いのまま定年退職となり、残る7人も来年3月に退職となります。
 佐々木議員は、「これが差別でなくて何なのか」と強調し、最高裁判決にしたがって、ただちに差別を是正するように求めました。
 谷垣財務大臣は「厳正にやるように督励したい」と答弁しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。関税法の改正案についてお聞きをします。
 この間、日本の輸入量というのは大変ふえております。輸入許可承認件数を見ますと、日本への輸入が平成9年から平成14年の間に43%増、大変な伸びであります。これをきちっと処理しなければならないわけです。対応する税関職員というのはどうなっているのか。ふえているのかどうか、まずこれをお聞きしたいと思います。
○木村政府参考人(関税局長) お答え申し上げます。
 5年間のお話でございましたので、平成15年度の税関の定員は8,334人でございます。この5年間で63名の増となっております。
○佐々木(憲)委員 63名の増、それはパーセントにすると、どのくらいの伸びになるんでしょうか。
○木村政府参考人 まことに恐縮でございますが、私ちょっと今計算してまいりませんでしたが、8,275名に対します63名でございますから、1%は欠けているということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 全体の人員を実質的にどのくらいかというので、私、計算してみますと、配付した資料で見ていただければと思うんですが、0.7%しかふえていないわけであります。つまり、輸入の件数は43%ふえているにもかかわらず、それを取り扱う職員はほとんど伸びていないという状況であります。
 今回、提案をされているこの法案にも関連をするわけですけれども、その伸びていない定員の中で、一方では、テロ対策、社会悪をしっかりと抑える、ところが同時に、事後調査、税的審査の面で、書類を中心に事後調査、そこに重点を置く、こういうふうになりますので、実際に関税業務の面で、人員の配置というのが手薄になるのではないかと思うわけでございます。
 実際に、この数字を見ましても、通関の分野の配置はマイナス2.7%でありまして、これはもう事実上そこがマイナスになっているわけです。これでは大変だと思うんですけれども、この業務がおろそかになるということはないんでしょうか。
○木村政府参考人 まず第一に、先ほど15年度の定員まで申し上げました。16年度の税関の定員について一言申し上げさせていただきたいと思います。
 今回、予算におきまして、185人の新規増員を行うこととしておりまして、この新規増員から定削等の85名、それから、再任用短時間勤務職員、定数増見合いの削減定員七名を引きました、対前年度で定員といたしまして93名ということで、かなり大幅な増員にはなっております。
 それから、通関部門の配置の人員の減の話がございましたが、これにつきましては、非常に、私ども、与えられた厳しい状況の中で、IT化や業務運営の効率化を図ることによりまして省力化等を行ってきた結果であると考えております。
 それで、今回の関税法の改正でございますが、今お話のありましたとおり、まさに限られた人員の中で、輸出入通関の際における社会悪物品等の不正輸出入に対する取り締まり、これはきちっと強化していかなければならない。したがいまして、いわゆる税的審査、関税等の適正税額審査についてでございますが、これにつきましては極力事後の調査にゆだねまして、全体として輸入通関の一層の迅速化への要請にもこたえようとするものであることは御承知のとおりでございます。
 ただ、これは、極力事後の調査にゆだねると申し上げましたが、税的な審査を通関段階で全く行わないというわけではもちろんございませんで、例えば現物を検査しなければ品目分類がわからない、そういったものにつきましては、これは従来どおりきちっと通関段階で審査していくことになるわけでございます。
 いずれにいたしましても、通関時におきます審査、検査等、事後調査等をあわせました税関業務全体で見ました場合、これまでと同様、適正な業務処理を確保できるものと考えておりまして、いずれにいたしましても、今後とも厳しい行財政事情のもとではございますが、私どもといたしまして、所要の税関定員の確保に最大限努力していくことが第一ではないかと考えておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 全体として九十何人程度のふえ方では、貨物の大幅な輸入増ということを考えますと、非常に対応できないのではないかと思うんです。
 財務大臣、この人員の確保ということ、これは大変重要だと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
○谷垣財務大臣 税関業務もいろいろな問題を抱えておりますので、必要な人員はきちっと確保しなければいけないと思っております。
○佐々木(憲)委員 必要なというのはどの範囲かというのは、今の状況ですと非常に足りないわけです。実際に長時間労働あるいは過労死というような状況さえ出ているわけでありまして、そこはしっかりと人をふやすということを考えていただきたい。
 それからもう一つは、適正な人員配置とともに、職場の労使関係、これはやはり良好なものでなければならないと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○谷垣財務大臣 これは、職場というものは、職務職責に対する緊張感がなければならないことはもちろんですけれども、そこでの労使関係とは、私はやはり、和をもってたっとしとなす、こういうことがあるべき姿ではないかと思います。
 税関におきましても、労使関係を一層健全で良好な関係にするように努力するのは当局の職責ではないか、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 最高裁が2001年12月13日、27年にわたる、労働組合である全税関の組合員に対する賃金差別裁判の最終判断を下しました。その判決文によりますと、そのまま読みますけれども、「東京税関長は、本件係争期間中、原告組合を嫌悪し、差別する意思を有し、前記(2)のとおり原告組合分裂の動きを助長し、支援したほか、前記(4)の各差別を行った。これらは、原告組合に対する支配介入に当たり、不法行為を構成し、被告は国家賠償法一条一項に基づいて、原告組合が被った無形の損害を賠償すべき義務を負う。」こういう判決があったわけです。これは全税関組合に対する当局の団結権侵害を認めたものであります。
 これに対して、当時の関税局長は、最高裁からこのような判決が出たことについて、厳粛に受けとめる、同じ税関で職場をともにしている労使が、27年6カ月もの間、裁判で争ってきたこと自体決して好ましいことではない、労働組合の重要性を理解するとともに、健全で良好な労使関係の醸成に努める気持ちを一層強めているところである、このように述べているわけです。
 財務大臣、この判決をどのように受けとめておられますか。
○谷垣財務大臣 佐々木委員がおっしゃった全税関訴訟の最高裁判決でございますけれども、これは、神戸、大阪の事案においては国側の主張が認められたわけですが、東京、横浜事案では、委員が言われましたように、一部団結権の侵害ということで国側の主張が認められなかったところでございます。最高裁からこのような判決を受けて、これは必ず慎め、こういうことでございますから、私も厳粛に受けとめなければいけないと思っております。
○佐々木(憲)委員 この点について、例えば2002年6月25日、参議院の財政金融委員会で、当時の尾辻財務副大臣がこう答弁しているんです。「組合所属のいかんなどによって人事処遇上の取扱いを異にすることがないように、こんなことは決してないようにきちんと行ってまいりますことはしっかりとお約束をさせていただきたいと存じます。」こう答弁をされております。
 では、実際に、組合員に対する人事処遇上の差別というものは是正されたのかどうか、これはいかがでしょう。
○谷垣財務大臣 これは、当時の副大臣である尾辻参議院議員が副大臣としてこういうふうに発言をされたということは私も承知しておりまして、まことにしかるべき発言であるというふうに思っております。
 もとより、人事というのは、職員個々の勤務成績とか能力とか適性とか、こういったことを総合的に判断して行うのが基本でございますから、どこの組合に所属しているからというようなことで差別をするというのは、これはあってはならないことだと思っておりますし、また、そのように是正されているというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 そのように是正されているのかどうかという点でありますが、税関長の裁量権の範囲を越えて行った不法行為であると断定されたにもかかわらず、どうもそうなっていない。
 配付した資料を見ていただきたいんですけれども、これは大きな紙に印刷をしてありますが、判決が出て既に2年以上経過しているわけであります。ところが、組合員に対する差別的な人事というのは全く改善されていないんですよ。この表は、昭和38年、1963年、この年に採用されました職員の統括官昇任の推移を示した一覧表でございます。上の方が非組合員です。これは名前が本当は入っているのですけれども、これは片仮名で示しましたが。下の方が、これはA、B、Cですが、全税関の組合員であります。
 これを見てわかりますように、非組合員の場合は、既に1988年、この年から統括官に次々と採用されているわけであります。1988年は2人、89年は六人、90年は5人、91年は7人というように、その後も採用され続けております。
 ところが、この全税関に所属をしている職員の場合、これは下の方を見ていただきたいんですけれども、非組合員がすべて昇任された後四年間は全く認められず、5年後の2000年になってようやく2人、2001年に3人、こういう状況で、2003年になりましてもまだ九名残されているわけであります。しかも、その中で2人はことしの3月末で定年退職を迎えるわけであります。昇任のないままです。そういう事態になる。
 これは、この一覧表を見ただけでも、いかに全税関に所属している組合員が人事上の差別を受けているかということ、これを示しているわけであります。
 大臣は、これは是正されたとおっしゃいましたけれども、この表を見て、率直な感想をお伺いしたいと思います。
○谷垣財務大臣 これを拝見、やはり人事というものは、先ほど申しましたように、それぞれの職員の勤務態度であるとか経験であるとか力量、こういうものを見て行うわけですから、これだけ今お示しいただいて、コメントを述べろと言われても、ちょっと、正直申し上げまして、コメントするだけの材料が私にはございません。
 ただ、先ほど申しましたように、きちっと本来見るべきものを見て、見るべきでないものを考慮に入れるようなことは、これはあってはならないことでございますから、今後ともそこのところは厳正にやるように私としても督励をしたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 厳正にやるように督励ということでありまして、最高裁の判決で、裁量権の範囲を越えて、意識的に、特定の組合に所属しているその職員に対して差別をしたという認定をして、証拠も採用されましてそういう認定をしているわけです。にもかかわらず、定年間際までこういう状況が判決後も是正されていない。これは63年採用だけではなくて、その後の64年に採用された方々も同じような、2枚目の表、それでありますが、やはりここは余りにも差が開き過ぎているというのはだれが見ても歴然としているわけであります。
 組合員ではない方はすべて統括官に任用されている、ところが、それ以外は組合に所属しているという理由でこういう差別を最後まで受けるというのは余りにもひどいので、大臣、やはりここはしっかりと事実を把握していただいて、是正すべきは是正する、こういう姿勢にきちっと立っていただきたいと思いますが、再度その決意をお願いいたします。
○谷垣財務大臣 先ほど申しましたように、人事は厳正にやるようにこれからも督励したいと思っております。
○佐々木(憲)委員 最後に、法案に戻りますけれども、提案されている関税法の改正案に盛り込まれている、知的財産権侵害物品の認定手続の充実ですとか、あるいは農産品の特別緊急関税及び牛肉または豚肉の関税措置の延長、それから輸入者が保存すべき帳簿書類等の明確化、延滞税の計算期間を短縮するための特別措置、外国貿易船等の入出港の際の旅客氏名表の提出の義務化、こういうものがあるんですね。これらは、我々は賛成できる面もございます。
 しかし、暫定関税率の適用期限対象品目のうち、ウルグアイ・ラウンド合意で関税化した米それから麦、こういうものは、その関税化自体が日本の農業、農業経済に大変大きな打撃を与えたものでありまして、これを延長するということについては私どもは反対という立場を表明しておきたいと思います。
 このことを最後に表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。

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