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その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP)

2008年04月08日 第169回 通常国会 財務金融委員会 【451】 - 質問

通関情報処理センター民営化法案について質問

 2008年4月8日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で通関情報処理センター民営化法案の質疑をおこないました。

 佐々木議員は、一般論として技術革新を否定するものではない、通関に関する情報処理のシステムの統合=シングルウィンドウ化についても同じであると述べ、問題は、なぜそれを「民営化」しなければならないのか、ただしました。
 財務省は、2001年9月4日に「特殊法人等の廃止又は民営化に関する報告」を出して、NACCS(通関情報センター)の業務は、国固有の業務なので「民営化による処理は馴染まない」と言っていました。
 ところが、それに反して、今回出されている法案は「民営化」法案です。
 佐々木議員は、なぜその考え方を変えたのか、と質しました。しかし、額賀大臣からはまともな答弁はありませんでした。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 最初に、次世代シングルウインドー化というのは簡単に言うとどういうものか、御説明をいただきたいと思います。
○青山政府参考人(財務省関税局長) 極めて技術的な話でございますので、私の方から説明いたします。
 シングルウインドーという概念でございますが、税関を初めといたします水際における関係省庁のそれぞれのシステムにつきまして、利用者の利便性向上の観点から、今NACCSの端末と申しておりますが、その端末から必要な情報を一回入力することで所要の手続を行うことができる機能を持つということでございます。
○佐々木(憲)委員 一般論として、私たちは技術革新というものを否定するものではありません。通関情報処理のシステム統合あるいはシングルウインドー化ということについてもこれは同じであります。問題は、なぜ民営化しなければならないのかという点であります。
 財務省は、2001年9月4日に特殊法人等の廃止または民営化に関する報告というものを出していると思うんです。NACCSセンターの業務は民営化による処理はなじまないと言っていたのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○額賀財務大臣 確かにおっしゃるように、通関情報処理センターについては、特殊法人でありましたが、平成13年の特殊法人の見直しの一環として独立行政法人とすることとした、これは、平成13年当時は、対象地域を全国に拡大するとともに、入出港手続など業務範囲についても大幅に拡大した海上システムが稼働したばかりであって、通関情報処理センターを民営化した場合、安定的に業務、事業が実施されるかどうか若干判断が難しい状況にあったということを聞いております。
 その後、NACCSは全国規模の基幹システムとして安定的に運営をされました。また、現在は、我が国の港湾、空港の国際競争力を強化するために非常に有効に機能しておりますし、民間利用者にとって利便性の高いシステムを構築することが非常に重要になっている。そういうことから、さらに一層競争力をつけていき、効率化を図っていくために、NACCSセンターを特殊会社として考えていこうということにしたものと思っております。
○佐々木(憲)委員 安定的に運営されるかどうかという不安があったということではないんじゃないですか。
 その報告によりますと、「輸入・納税申告の受理、徴税といった国固有の業務をNACCSにより処理しているが、以下の理由により国の関与を存続させ、特定業界ないし特定企業の利益に偏らないよう中立的かつ公正な運営とするとともに、業務の要請に迅速に対応させる必要があり、民営化による処理は馴染まない」、こういうふうに言っているんですよ。その際、どういう理由を挙げていましたか。
○額賀財務大臣 理由としては、輸入・納税申告の受理、輸入許可の通知、徴税等の国固有の業務については、国の関与のもとで適切に行われる必要があるということ。また、毎年度の関税改正や関税関係法令等の変更、税関手続の国際的調和化、標準化への対応、品目分類に関する条約の変更等について、時期を失することなくNACCSのプログラムを的確に反映させなければならない、そのために国の関与が必要であるということ。さらには、農水省の検疫手続、厚生労働省の食品輸入といった国固有の業務を処理するシステム等と連携するなど、種々の国の業務、手続と密接に関係があるというようなことを挙げておりました。
○佐々木(憲)委員 そういうことなんですね。今、お手元に、皆さんのところにお配りしておりますけれども、これは当時の財務省が書いた文書であります。廃止か民営化かということについて、廃止もだめです、民営化もいけませんというのが当時の財務省の立場です。
 今大臣から御紹介をいただいたのは、下の黒い点が三つあります、その説明をされたわけです。これはなぜかといいますと、こういう理由のために民営化による処理はなじまない、こういう説明だったわけです。民営化になじまない理由がこの三つなんですね。
 これは、いつからなじむようになったんでしょうか。
○青山政府参考人(財務省関税局長) お答え申し上げます。
 NACCSの関係でございますが、まず、平成11年に海に係りますSea―NACCSの更改をやりました。それで全国に広げました。実は、平成3年にSea―NACCSをつくりましたとき、いわばEメールでデータを送るだけということでございましたが、これをかなり充実したものにしたわけであります。
 さらに、二番目でございますが、関係省庁のいろいろなもろもろのシステムが、先ほど来申し上げておりますような農林水産省なりあるいは厚生労働省の食品関係等々のシステムがようやくでき上がりつつあって、その中でこれを接続したというような、いわばまだよちよち歩きの段階だったわけでございます。それをシングルウインドーということでつなげて、さらにそれをバージョンアップさせるようになったということで、システムの安定的な稼働が見られるようになったということが大きな今回の、まさに特殊会社化、民営化へのいわばきっかけとなったということでございます。
○佐々木(憲)委員 安定的な稼働になったから民営化ができるというのは、私は当時の説明とは全く違うと思いますよ。安定化しても国固有の業務というのは国固有の業務であって、これは何も変わっていないわけですよ。
 例えば、輸入・納税申告の受理、輸入許可の通知、徴税、これは国固有の業務として今もやっているわけでしょう。当時は、それがあるから民営化になじまないと言っていたわけですよ。何も安定していないから民営化してはいけないとは言っていないんです。この固有の業務があるから民営化しちゃいけないと言ったわけです。
 それを、突然、何かどこかから民営化の方針が降ってきたかのように態度がころっと変わっちゃう。これは全然整合性がとれていませんよ、説明が。私は、そういう意味で、今度の法案というのは、何か最初に民営化ありきで、当時説明していたことと全く矛盾だらけで、民営化しなきゃならぬ、そういう理由が全く説明になっていないというふうに思います。
 次に、具体的に聞きますけれども、例えばシステムにトラブルが発生した、一時的にこれが利用できなくなった、そういう場合、人と物の入出国の手続に影響が出ます。場合によっては、国の安全、国民の健康と安全に重大な影響が出るということがあり得るわけです。システムダウンとかシステムの不備というのは排除しなければなりません。万が一発生しても限りなく影響を少なくする、そういう体制づくりが私は必要だと思うんですね。
 今回のNACCSの場合、どのようなバックアップの措置等々をとるのか、コストをどのぐらい見込んでいるか、説明をしていただきたい。
○青山政府参考人(財務省関税局長) システムトラブルの問題でございます。
 今回、10月に更改する予定の通関情報処理システムでございますが、システムトラブルが重大な事態を招かないように、セキュリティー確保には万全を期す必要があると思っております。このため、新システムの稼働に合わせまして、大規模災害等によります障害に備え、NACCSのバックアップセンターを設ける予定にしてございます。今、本体は品川にございますが、バックアップセンターは茨城県の古河市に置く予定にしております。
 なお、この運営経費でございますが、8年間でトータルで約43億円という数字でございます。
 いずれにいたしましても、こういう形で、このセンター自体への国の関与なりなんなりということも含めて、セキュリティーの観点から私どもでは十分注意を払っていこうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 セキュリティーの確保をするためには、当然コストがかかるわけです。
 そこで大臣にお聞きしますけれども、こういう体制を厚くすればするほど設備投資等々が必要になるわけです。それは、それ自体としては収益を生まないわけですね。NACCSセンターの民営化が行われた場合は利潤を中心とした運営に変わります。しかし、安全確保の体制を厚くするインセンティブというのはなかなか働きにくいのではないか。この点はいかがでしょうか。
○額賀財務大臣 おっしゃるように、これは、国際競争力を物流面で強化していく一環としてNACCSセンターで効率化を図っていく、それをより一層民間的な発想、手法で能率を上げていく意味で官民の共同のシステムをつくっていく、一方で、さっき言ったように、国の関与もして公共性が強いものは維持していく、安全面もしっかりしていくという形をとっているわけでございます。
 そこで、そこのもうからないところというか、利益が出ないところには金を使わないではないかということでございますけれども、安くしていかなければならないけれども適正な水準に維持していかなければならない。その点は第三者委員会みたいなシステムをつくって、これが適正な水準で料金等が設定されるようにしていきたい。一方で、国が関与して公共性は保っていきたい、そういうことであります。
○佐々木(憲)委員 これはなかなか矛盾する問題なんですね。先ほども議論がありました利用料金、これを引き下げるということをねらっているようですけれども、輸出入それから港湾、空港手続、関係業務の課題というのは、リードタイムの短縮、手続の簡素化、そして利用料金の引き下げ、こういうことが言われているわけですね。民営化すると一定の利益を上げなければならない、NACCSセンターは利用料金は下げなければならない、これは非常に大きな矛盾であります。これは一体どういう手段で達成するつもりでしょうか。
○青山政府参考人(財務省関税局長) NACCSにつきましては、10月から稼働中のシステムを更改しまして新しいシステムに変えるということでございますが、今までNACCSにつきましては随契でやっておりましたが、次期システムにつきましては一般競争入札に移行したところでございまして、この結果、調達コストが大幅に削減されたということでございまして、これらを踏まえた形での新しい料金体系の設定をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 システムの統合で共通事務を一元化するとか、そういうことをいろいろ言われていますけれども、結局、人件費の削減ということもその要素として入っているというふうに考えてよろしいですか。
○青山政府参考人(財務省関税局長) 人件費でございますが、そもそも今の、現行のNACCSセンターにおきましても、平成15年の10月からの独立行政法人への移行以来、事務の効率化ということでございますが、人件費等を含めて削減をやってきたというところでございます。業務運営の効率化あるいは給与水準の適正化でございますが、これは当然のことながら不断に取り組むべき課題でございまして、私どももそういう形で指導監督してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
 ちなみに、職員数におきましては、平成14年に132名だったのが今は115名でございます。
○佐々木(憲)委員 人件費の削減ということになりますと、例えばNACCSセンターの齊藤理事が昨年6月の貿易実務ダイジェストという雑誌の中で、人員を減らすと「業務面でいろいろとご期待に沿うことが難しい面が出てくる」ということを書いているんですよ。つまり、人件費を圧迫するということになりますと、もちろん労働者にとっても困るわけだけれども、しかし余りやり過ぎると期待に沿えなくなると。
 現に、今132から115というふうにおっしゃいましたが、それがさらに料金引き下げということになりますと、先ほどの人件費も含めて削減をやるという話ですから、そうなるとこれはなかなか、実際にはかなり厳しい事態が生まれかねない。そうなりますと、人件費をある程度維持しようとすると、これは引き下げというのもなかなかできないということになりますので、かなり矛盾する形になってくるんじゃないですか。
○青山政府参考人(財務省関税局長) 今人員の点の話を申し上げましたが、このセンターでございますが、ラスパイレス指数は必ずしも低くございません。したがいまして、給与水準の見直しを含めてこれはお願いしているというところでございます。また、常勤職員の削減計画はなされているわけでございますが、足りない部分につきましてはもちろん派遣等々の手法を用いてやっていこうというふうに考えておるわけでございます。さらに、予算の効率的、効果的な執行でございますが、汎用品の活用等々、さらには事務所を、今まで東京にありましたのが今現在川崎にございますが、そういう形でのいろいろな経費削減、さらには地方事務所でございますが、これも13カ所から4カ所に削減してございます。
○佐々木(憲)委員 労働者を常用から派遣に切りかえるというのは、全体としては、今はそれを何とか逆転させようというのが世の中の大きな流れなんですよね。それを、派遣をさらにふやすような方向というのは私は到底賛成できませんし、むしろしっかりした専門の能力のある方々を確保するということこそ大事だということを申し上げておきたい。
 それから、民営化ということになりますと、当然コスト削減ということが非常に重視される、いろいろな形でしわ寄せが出てくる。それから、利益を上げようとしたら、利益の上がるところしか仕事をしないという傾向が生まれる。そういう意味で、私は、このNACCSセンターの今後の問題については広い意味でもう一度全体的な問題点を洗い直す必要がある、見直す必要があるというふうに思います。輸出入、港湾、空港手続の関係業務に関しては、どういう体制をとるかというのは国の専権事項でもあるわけです。国の安全、国民の健康と安全を守る、そういう水準を、民間企業の利益を図る、競争力ということだけを効率的に求めることによってそれをおろそかにしてはならないというふうに思います。
 私は、これは郵政民営化と非常に似た形になってきているなという印象を受けるわけです。郵政民営化でサービスが低下したとか、いろいろな不安が起こっているわけです。料金が上がって逆に大変だったというようなことも起こっているわけですね。そういうこともありますので、私はNACCSセンターの民営化ということについてそういうことが絶対にあってはならないという立場で、この民営化そのものには賛成はできません。
 最後に大臣に、どのような方向で今後これを運営していくか、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
○額賀財務大臣 やはり日本は貿易立国でありますから、空港、港湾の物流の基地をきっちりと整備していかなければならない、効率化を図っていかなければならない、電子化をしていかなければならない。私も、シンガポールの港を、つい2、3年前に見てまいりましたけれども、それはもう全然、当時の日本とは違った形でしたよ。そういう意味で、やはりきちっと整備していかなければならない。
 それから、アメリカのテロの事件が起こってからは、セキュリティーとか安全面もきちっとしていかなければならない。これは、一定の国の関与がなければならない。それをうまく、きちっと両立させていこうということで、官民共通のシステムで民営化を図ろう、特殊会社化しようということであります。
 この流れをしっかりと、世界の模範となるようなものをつくって、それで問題点があればきちっと見直していけばいいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので終わりますが、国固有の業務があるので民営化してはならないという今までの方針がなぜ変わったのかという疑問に対しては、明確な回答がなかったということで、引き続き議論をしていきたいと思います。
 以上で終わります。

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