金融(銀行・保険・証券), その他 (同意人事)
2008年04月08日 第169回 通常国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【450】 - 質問
議運委で日銀総裁候補と同副総裁候補の所信聴取と質疑
2008年4月8日、議院運営委員会で、政府が前日に示した日銀総裁に白川方明同副総裁を昇格させ、その後任の副総裁に渡辺博史一橋大学大学院教授(前財務官)をあてる国会同意人事について、両候補の所信聴取と質疑をおこない、佐々木憲昭議員も質問しました。
白川氏は所信表明で、総裁空席は「異例の事態だ」とし「早急に解消される必要がある」と強調しました。
また、国際的な金融市場の動揺について、日銀として「上下両方のリスク要因などを注意深く点検し、それにもとづいて、必要かつ適切な政策を機動的に実施することが重要だ」と指摘しました。
渡辺氏は「中央銀行の独立性と透明性は、金融政策の新任を得るうえできわめて重要である」とのべました。
佐々木議員は、質疑後の記者会見で、白川氏について超低金利政策など「これまで日銀・政府がすすめてきた金融政策の枠組みの外に出ない発言が目立った」と指摘しました。
また、渡辺氏については「超低金利政策についても、銀行への公的資金投入についても、基本的には必要との立場を表明した」とのべました。
4月9日の衆参両院の本会議で、政府が提示した日銀の正副総裁人事案について採決がおこなわれ、議院運営委員会で、佐々木議員が意見表明をおこないました。
議事録
【佐々木議員の質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、投機資金についてどう対応するか、お考えを聞きたいと思います。
最近、物価が非常に急上昇して国民生活を直撃しております。その背景に、実需から離れた国際的な投機活動があると思うんです。その背景に、サブプライム問題、低金利、世界的な過剰流動性などがあって、短期的な利ざやをねらったヘッジファンドなどの投機資金が国際的な原油市場あるいは穀物市場などに流入する、こういう構造になっております。
したがって、この巨大な投機資金、その国際経済、金融市場への影響、これをどのように把握しておられるか。また、その投機資金について国際的な規制の強化、これも議論されていると思いますが、間接的な規制には限界があるので、税金などのような直接的な規制が必要ではないかという議論もありますが、どのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
もう一つは、総裁となりますと、大変大きな責任と決断力が求められると思います。とりわけ、日本の通貨・金融政策の対外的な自律性、自主性というのが求められると思うんです。国内的には、財務当局からの一定の独立性というのが求められると思います。副総裁の場合よりもそのことが強く求められると思いますが、その決意はいかがでしょうか。
例えば、政府から、国債の大量増発を背景とした量的緩和への圧力とか、あるいは事実上の国債大量引き受けにつながるような要求を受けた場合、どのようなスタンスで対応されるか、この点をお聞きしたいと思います。
以上です。
○白川参考人(日本銀行総裁候補者(日本銀行副総裁)) お答えします。
まず最初の投機資金への対応でございますけれども、現在、国際商品市況は大変上がっております。この背景は、一つは、世界的に先行きのインフレ傾向を懸念するという動きでございます。
二つ目は、その背景にある要因でございますけれども、新興国が非常に成長していく、その結果、原材料あるいは食料品に対する需要が長期的にふえていくということを見越しての物価の上昇でございます。
三つ目は、これは多少テクニカルな要因でございますけれども、今、証券化商品が非常に複雑になって、その結果、そのリスクがわからないためにこれをみんな売っているわけですね。そうすると、比較的簡単な商品は何なのかといいますと、これは国際商品で、非常に構造が単純であります。したがって、こっちに資金が向かっているということだというふうに理解しています。そういう意味で、投機資金がこういう国際商品に向かっているというのはそのとおりでございます。
それでは、これをどうするか、どうやって把握をするかということでありますけれども、まず、把握の面でいきますと、世界のいろいろなファンドの動きを中央銀行自身がつぶさに理解をする、把握するというのは、これはなかなか難しくなっております。
と申しますのは、まず、余りにも多くの主体がいるということもありますけれども、これは、中央銀行がある主体から、おまえのすべてのポジションを、財産を明らかにしろということは、逆に言いますと、それに伴う義務というものが発生するわけであります。つまり、規制をしていくということになってくるわけであります。そうしますと、今度は逆に、問題が起きたときにそのファンドを、規制の裏腹は、いざという場合に救済をするということになってきやすい面があって、これは、情報をとればとるほど、実はそういう潜在的な保護の範囲を拡大してしまうという問題がございます。ここはやはり市場の活力を使った方がいいという面はございます。
そういう意味で、中央銀行自身が直接的に強制的に情報を集めるというのは、基本的にはやはり銀行それから証券会社というところにして、その外縁部につきましては間接的に情報を集めるというアプローチの方が結果として望ましいだろうという判断をしております。
今、各国の中央銀行、監督当局が行っていますことは、与信を行う銀行に対して、ファンドに対してどういうふうに与信をしているのかということについて、従来よりかは情報を集めるようにしております。そういう間接的なアプローチをとっておりますけれども、私としては、そういう間接的なアプローチの方が、トータルで考えた場合には望ましいのではないかというふうに思っております。
それから、税金を使ってはどうかということであります。
これは、30年前ぐらいに、アメリカで有名なトービンという学者が、税金を課してはどうか、トービン・タックスということを提案いたしました。
しかし、これは、今もそうですけれども、物すごい勢いで先々商品が上がっていくというふうに投機家が思ったときに、仮に税金を5%かけても10%かけても、やはりそれ自体としてその投機的な動きを抑えるだけの十分な力はない。本当に熱狂的にこの商品が上がると思った人に対しては、税金というのは、これはしょせんわずかなものであります。もし本当に税金でこの投機資金を全部つぶしてしまおうと思いますと、これはもうとてつもなく高い税金をかける、そうすると、今度は経済自体が破壊されてしまうというジレンマに逢着いたします。
そういう意味で、私は、税金というアプローチはなかなかワークしにくいんじゃないか、それよりか、情報をできるだけ開示していく、これは直接の開示もありますし間接の開示もありますけれども、そういうことを通して全体をコントロールしていくという方が望ましいのではないかというふうに考えております。
それから、三番目の、財政から圧力が加わったときの覚悟いかんということであります。
これは副総裁のときもそうでございましたけれども、改めて日本銀行法の規定を読み返しますと、この規定というのは非常に重たいという感じがいたします。物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということが目的としてうたわれております。それから、決済の円滑な運行を確保して金融システムの安定を確保するということが掲げられております。
日本銀行の政策は一人がやるわけではなくて、もちろん政策委員会で最終的に決定いたしますけれども、私自身が副総裁あるいは総裁という立場で一票を投じるときに、私自身が何によって評価をされるのかといいますと、この一点において評価されるわけであります。しかも、その評価というのは、その時点の評価ではなくて、少し長い時間を経て、この結果日本経済がどういうふうになったか、その一点において私は評価されるという感じがいたします。
私が日本銀行に入りましたのは偶然的な事情で入りましたけれども、あるときから、中央銀行の仕事というのは非常におもしろいし、奥が深いし、大事である、そういうふうに思って仕事をやってまいりました。それだけに、自分自身が今度こういう立場になって、その目的、使命を果たせなかった場合、自分自身のプロフェッショナルといいますか職業人としての誇りというものが失われるという気がいたします。
そういう意味で、私自身、政府からのいろいろな御意見、これは当然、日銀法に定めた規定に従いまして対応する方針でございます。つまり、日本銀行法の第四条は、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というふうに規定しております。この規定は一方で十分に受けとめ、他方で、最終的に中央銀行の金融政策の目的である物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということに、最後はこの原則に従って判断をしていくという覚悟でございます。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
二つ、過去の政策の評価を聞きたいと思います。
一つは、バブルを引き起こした要因として、プラザ合意後の低金利政策があったという認識があるかどうか、そこからどのような教訓を引き出しておられるか、これが一点。
二点は、1998年の金融危機の際、30兆円規模の国民の税金を注ぎ込む公的資金投入が行われました。私たちは銀行業界の責任と負担ということが重要だということでこれに反対をしましたが、その公的資金投入について、現時点でどのように評価をされているか。
この二点、お聞きしたいと思います。
○渡辺参考人(日本銀行副総裁候補者(一橋大学大学院商学研究科教授)) お答え申し上げます。
プラザ合意の後に円高が、多分その当時の担当者などの想定を超えて進行した、その結果、非常に日本経済に対して重荷を与えたという状況がありますが、そのときに、財政もやや過剰に反応いたしましたし、金利の方も、本来、先ほど申し上げましたような理由で形成される金利よりもやや低いところで維持されたというところがございます。
いずれにせよ、経済が大きく崩れていくときにはカンフル注射的なものを入れるということも必要な場合があるわけでありますが、それについては、いつそれをやめるか、つまり入っていったものをいつやめるかということについての強い意思を持っていかないといけないということで、一方的に低くする、一方的に高くするということについては、これからも我々としては身を引き締めて考えていかなければならないというふうに思っているところであります。
それから、98年の金融危機のときの問題でありますが、金融システムというのが、特に銀行システムというのが日本の場合には非常に大きなウエートを占めておるわけでありますから、そういう意味で、システムが崩壊するのを避けるということでの措置が必要であったというふうには思っておるわけでありますが、正直申し上げまして、住専の後、いろいろな御批判を受けたために、やや初動動作においておくれがあり、結果としてその投入額が大きくなったのではないかという反省を我々はしているところであります。
御指摘のように、責任をとるべきものは責任をとり、その中でどうやってなるべく有効に資金を活用していくかということは、これからもそういうことが起こってほしくはありませんけれども、最近の欧米での状況を見ておりますと、そういうことについても我々は気を配りながら対応をしていく必要があると思っておりますが、そのときにはやはりなるべく国民の負担を小さくするということから、適時適切にどうやって対応するかということについて常にシミュレーションを、今でもやっておりますが、そういうことを考えていきたいというふうに考えております。