税制(庶民増税・徴税), 景気回復, 雇用・労働 (定率減税の廃止, 高齢者への年金課税強化, 非正規雇用)
2008年02月20日 第169回 通常国会 財務金融委員会≪大臣所信に対する質疑≫ 【433】 - 質問
「庶民負担増の反省なし労働の規制緩和の見直しせず」政府の経済政策ただす
2008年2月20日の午後、財務金融委員会で大臣所信に対する質疑が行われ、佐々木憲昭議員が質問にたちました。
なお、この質疑は、前日開かれた委員会で、民主党の質問に大臣の答弁をめぐって委員会が中断し、予定されていた民主党のひとりと佐々木議員の質疑が持ち越しとなっていました。
政府は、1月の月例経済報告で、「景気は、一部に弱さが見られるものの、回復している」との判断を示しています。
佐々木議員は、政府が示す「景気回復」判断が、輸出大企業の好調さに牽引されたものであることを指摘。輸出大企業の空前の利益が労働者や下請けにまわっていない実態を示し、「輸出大企業に依存した景気回復と内需の低迷とは裏腹の問題だ」と力説しました。
額賀福志郎財務大臣は、「最近の景気回復が輸出主導によるもの」と認め、消費を安定させるために、経済界にも「賃上げ」や「非正規雇用の正規化」を要請したと述べました。
ところが、佐々木議員が「企業努力を求めるだけでなく、非正規雇用を拡大してきた労働法制の規制緩和を見直せ」ともとめると、額賀大臣は「(企業も労働者も)お互い様の努力がなければいけない。制度上の問題だけでなく時代の流れを見極めた上で考えるべき」とのべるにとどまりました。
さらに、佐々木議員は、内需低迷の要因に、小泉内閣以降、国民に押し付けられてきた12兆7000億円もの負担増があると指摘。
しかし、額賀大臣は、この問題についても、庶民負担増は「給付と負担のバランス、世代間・世代内の公平を考えてきたものだ」と強弁。負担増を「持続的社会保障制度をつくるための知恵だ」と合理化しました。
佐々木議員は、「庶民負担増の反省もなく、労働の規制緩和を見直そうともしない政府には(日本経済のたて直しは)期待できない」と強調しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
所信への質疑ということですが、きょうは財務大臣にお聞きをしますので、金融担当大臣はどうぞ御退席いただいて結構でございます。
そこで、景気の現状認識と対応策ということでただしていきたいと思います。
これまで、景気が回復してきたと言われておりましたが、ことしに入りまして後退局面が明確になったという指摘もあります。まず最初に額賀大臣に、どのような認識か、伺いたいと思います。
○額賀財務大臣 これは、19年度の経済見通しも下方修正をしたわけでございまして、これの直接的な原因、理由は、改正建築基準法による大幅な住宅着工の減少によるものと言われているわけでございます。しかし、企業収益がいいし、消費も、伸び悩んでいるところはありますけれども、動いている。その意味では、20年度は基本的には景気回復の軌道をたどっていくだろうというふうに推定をしております。
ただ、いろいろな問題がありまして、アメリカの実体経済がどういうふうになっていくのか、そういうものが世界経済にどういうふうに反映をしていくのか、あるいはまた、原油価格とか穀物飼料の上がり方等がどういうふうに実体経済に影響を及ぼすのか、そういった不確定な要因がありますから、よく注意深く見ていかなければならないというふうに思っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 最近までの景気回復というのが何によって主導されてきたかということを、よく現状を認識する必要があると思います。
そこで事実関係をお聞きしますが、内閣府にお尋ねします。
国民経済計算の実質経済成長に対する民間最終消費支出と、財貨・サービスの輸出、その寄与率ですね。80年代前半と比べて2000年代の前半、これはどういうふうになっていますでしょうか、お聞きをしたいと思います。
○大脇政府参考人(内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長) お答え申し上げます。
1980年から85年の5年間の実質成長率、これは16・5%でございました。これに対する民間最終消費支出の寄与度は8・8%ポイント、輸出の寄与度は3・0%ポイントでございました。
一方、2002年から2007年までの5年間の実質成長率は11・1%となっております。これに対する民間最終消費支出の寄与度は4・0%ポイント、これに対しまして、輸出の寄与度は6・4%ポイントでございます。
○佐々木(憲)委員 私は寄与率をお聞きしたんです。今、寄与度を説明されましたが、寄与率はどうなっていますか。
○大脇政府参考人 寄与率を申し上げます。
1980年から85年の5年間でございますけれども、民間最終消費支出の寄与率、これは成長率全体の53・2%でございます。これに対しまして、輸出でございますけれども、18・1%でございました。
2002年から2007年の成長でございますけれども、この間の成長に対する民間最終消費支出の寄与率、これは36・0%でございます。一方、輸出でございますけれども、57・9%でございました。
○佐々木(憲)委員 今お聞きしておわかりのように、民間最終消費支出というのは、その中心は家計支出であります。その寄与率が、80年代の前半は53・2%でありましたが、最近は36%に落ちております。その反面、輸出の寄与率は、18・1%だったのが57・9%。つまり、輸出牽引型経済成長、こういうふうに言えると思うんです。
そこで、昨日の日経新聞にこういうのが出ております。これは特別編集委員の方の解説ですけれども、「米国の住宅バブルによる消費主導の成長と、中国など新興国の投資主導の成長による世界経済の需要拡大で潤ったのは外需の恩恵を直接受ける大企業・製造業だ。鉄鋼、自動車などの輸出産業は高度成長期以来の二ケタ近い売上高の伸びを続け、設備投資を増やしながら労働分配率を大幅に引き下げて、空前の利益を上げた。」こういうふうに言っているわけですね。
つまり、日本の経済というのは、内需、つまり家計消費よりも、輸出に依存してきた。その輸出の中心は大企業であり、その大企業は、それで大幅な利益を上げながら、労働分配率は下げてしまった。したがって、内需は労働分配率の面では低迷したわけであります。こういう構造だったと。これが輸出主導型経済成長の一番のかぎになる部分であります。
この点についての大臣の御認識はいかがでしょうか。
○額賀財務大臣 今、内閣府の方から御説明があったように、最近の景気回復の軌道は輸出主導であったと思います。その分析からいっても、80年から85年の5年間と2002年から2007年の対比をすると、輸出の寄与度が5分の1から2分の1に、そして個人消費の分野が2分の1から3分の1というふうになっていますから、先生のおっしゃるような形で動いているというふうに認識をしております。
○佐々木(憲)委員 外需依存型で景気回復があったけれども、内需は抑えられている。この関係というのは裏腹の関係であります。自動車、電機、鉄鋼、これらの大企業は非常に輸出比率が高いわけです。日本の輸出全体に占める輸出上位10社、これを取り上げますと、私の計算では、1980年には27・9%、2005年、これが33・7%です。つまり、輸出の3分の1がわずか10社、これによって占められているわけであります。
このようにして利益を上げた大企業は、結果的には、経常利益は、例えばこの5年間だけをとりましても2倍ぐらいになっております。しかし、役員給与は2倍ですけれども、配当金は4倍、従業員の給与はマイナス、これが法人企業統計調査、財務省の調査でございます。
このようにして、輸出主導型の景気回復というのは、実態は、大企業の利益回復とそれから株主への配当、こういうところに回って、労働者や下請の方にはなかなか回らない。いわば搾取、収奪の上に成り立った企業の利益であった、こういうことが言えるんじゃないかと私は思います。今後、問題は、こういう輸出に依存するこの体質がこのままいくのかどうか。
そこで問題になるのは、先ほども日銀総裁のお話がありましたが、ダウンサイドリスクが高まりつつある。これは、アメリカの経済の低迷であります。先日、私は財務金融委員会で日銀総裁にお聞きしたところ、「予想以上のものとなるリスクというのはやはり明確にあります。」こうおっしゃっていました。日本のこの輸出依存型経済というのは、今後やはり壁にぶつかるのではないか。
問題は、そうなりますと、内需がどうなるかです。内需は何がかぎかといえば、GDPの5割以上を占める家計消費であります。この家計消費をどうするのかというところが今後の経済運営の非常に大事な視点になってくると思います。
福田内閣は生活重視ということをおっしゃっていました。家計に重点を置くというのは今後の経済政策で大変重要だと思いますけれども、額賀大臣はどのようにお考えでしょうか。
○額賀財務大臣 共有できるところもあるわけでございますけれども、これだけ冷戦が崩壊してから世界経済が拡大していく中で、やはり、世界の市場を相手にしていかなければならないということが一つあります。中小企業でも、そういう開かれた分野にいるところは元気があると思います。したがって、あと、内需に依存するところの中小企業、中堅企業がどうすれば成長していくかということを考えていかなければならないことが一つあると思います。
それは、医療だとか教育だとか、あるいは社会福祉の分野だとか、さまざまな分野でそういう企業が活躍できる分野が出てこないのかくるのか。そして、技術革新をもって、技術をもってそういう分野で開拓していくことができるのかできないのかということが一つあるのではないか。
もう一つは、先生がおっしゃるように、やはりGDPの相当な割合を占める家計部門、これをどういうふうに消費を安定した形にしていくのかということが大事なことだと思います。
端的には、この前、経済界の人たちとお会いしたときも、収益の上がる企業はやはり従業員に対して給料を上げてもらうようなことが労使間できちっとされていくことが望ましいですよね、それから、非正規雇用の雇用を正規化していくかとか、そういうことについてしっかりと考えてほしいという意見交換をさせていただいたところでございます。
それと同時に、やはりもう一つは、社会保障制度で将来への不安、少子高齢化社会の不安をどう解決していくのか、道筋をつけていくのか。それは、負担と給付の問題でございます。
そういうことについて、やはり国民的な理解を得て形をつくっていくことが大事だというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 総論では何か少し似たような感じでございますが、具体策になりますとかなり根本的に違ってくる、どうもそんな感じがするんですね。
配付した資料を見ていただきたいんですが、雇用者所得は、例えば1996年から2006年、この10年間、約10兆円減っているんです。可処分所得は8兆7千億円減りました。貯蓄はどうか。22兆8千億円減っているんです。つまり、家計部門、この分野は非常に圧迫をされているわけですね。
ところが、その反面、例えば企業所得を見ますと、約16兆円増大しているわけです。現に、一昨日発表された昨年分の毎月勤労統計調査、これによりますと、常用労働者の平均月間現金給与総額は3年ぶりに減少に転じた、33万になった、こういうことであります。
つまり、企業と労働者、家計、この関係を見ますと、利益は拡大したが賃金は上がらない、こういうことでございます。もちろん、賃金の引き上げについては、政府が関与してどうこう言うものではなくて、労使間で決まる、いわばそういうことでございます。
しかし、問題は、先ほど少し触れましたように、全体の賃金水準、これを決めるには、非正規雇用、これをどう解決して正規雇用に引き上げていくか。その際大事なことは、やはり制度上の問題があると思うんです。
その前に、非正規雇用の賃金に対する関係を見ますと、一昨年の12月、内閣府の日本経済2006―2007、いわゆるミニ経済白書ですけれども、それによりますとこう書いてあるわけです。「非正規雇用者の賃金は正規雇用者に比較すると相対的に低い水準にあり、企業内で非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになる。」つまり、非正規雇用の比率が高ければ高いほど全体の賃金水準を押し下げてしまう、こういうふうに分析をしているわけです。
先ほども財界とのお話の一端を御紹介いただきました。その中でも非正規雇用の話がされたと言われていますが、この非正規雇用を正規雇用に変えるということは、企業の努力だけでそれで十分かといえば、制度上の問題がある。例えば日雇い派遣をどうするという問題も、この国会でもいろいろ議論になりました。制度上、政策上、そういう問題を規制して、非正規雇用から正規雇用にきちっと転換し安定した収入が得られる、そういう環境をつくるというのが政府の役割じゃないか、そういうふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。
○額賀財務大臣 私は、この非正規雇用の若い人たちというのは、バブル経済崩壊後、企業も元気がないし、就職もできなかった方々が多いんだと思うんですね。そういう人たちがやはり安い給料でいると、幾ら少子化対策といったって、若い人たちがきちっと家庭生活が持て得ないような状況ではこの少子対策も乗り切っていくことができないわけですから、安定した職場につけること、あるいは技術力を持っていくこと、そういうことによって結婚もすることができる。そういう環境づくりをしていくことは、これは政治の役割だと思います。
だから、いい意見があればどんどん言ってください。
○佐々木(憲)委員 では提案をいたしますが、正規雇用を非正規雇用に移すことを可能にした労働法制の今までの緩和がありましたね。やはり、非正規雇用を認める方向に来たことが問題だったと私は思います。それを見直す。もう一度派遣というのを一定の限定した分野にとどめる。これは90年ごろには限定されたものでした。それが今はもうどんどん広がって、製造業一般に広がっている。それが全体の水準を押し下げているわけです。したがって、そういうふうに労働法制をもう一度再検討する。こういうお気持ちはありますか。
○額賀財務大臣 私の認識は、基本的には、高等学校とか大学の生活自体、やはり世の中が変わっているわけでございますから、従来どおりの延長線上ではなくて、これから企業が求めているところと、それから自分がやりたいこととのギャップをどうやって埋めていくような形をとっていくのか。あるいはまたそして、そういう非正規雇用の人たちにもそういう職業訓練だとか勉強の機会を与えていく。そういう中で自分のライフサイクル、仕事をつくっていく。企業もそういう人材を採用していく。それはお互いさまの努力がなければいけない。制度上の問題だけではなくて、やはり、そういう時代の流れというものをよく見きわめた上で考えていく必要があるのではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 突然歯切れが悪くなったんですが、私が言っているのは、制度上の問題があると言っているわけです。労働法制の規制緩和があったからこそ、これだけ、労働者の3分の1もですよ、非正規雇用になっているわけです。それを是正するという方向に政府が踏み出さない限りはもとに戻らない。実際に、2枚目を見ていただければわかりますが、正規雇用も昨年の7―9月期になりますと減り始めております。非正規雇用もふえております。これは、全体として非常に状況が悪化していると言わざるを得ません。
ですから、企業にお任せしますという話ではないし、職業訓練で何とかなるという話でもないわけです。そこを認識していただきたいと思っているわけです。
それからもう一つは、家計を活性化するには、家計の負担感を減らす、これが非常に大事だと思います。
大臣にお聞きしますけれども、資料の3枚目にありますように、これまで、小泉内閣以来どれだけ国民が負担を押しつけられてきたか。これは全部政府が出したものでありますが、これだけの負担を押しつけたという認識はありますか。
○額賀財務大臣 それぞれ、税とか社会保険料というのは、社会保障における負担と給付のバランスを考えていくわけですね。あるいはまた、世代内の公平感あるいは世代間の公平感、そんなことを考えながら手を打ってきた政策であるというふうに思っております。
これは、先ほども言いましたように、医療関係とかそれから社会保障関係が多いわけでございますけれども、年金にしろ医療にしろ介護にしろ、やはり社会的に面倒を見ていかなければならないという形になってきつつあるわけだけれども、その際に、やはり若い世代の負担とそれから給付を受ける側とのバランス、そういうことをよく考えた上で、我々も、公平感をつくりながら、持続できる社会保障制度、社会のシステムをつくるためにいろいろと知恵を出してきたということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 ともかく社会的に面倒を見ると言うのなら、ちゃんと国が財政的に支えるのは当たり前ですし、世代間の負担と言いますけれども、高齢者を中心に非常に大きな負担がかかっているわけです。ここに挙げただけでも何十項目にも上るようなものでありまして、合わせると12兆7023億円ですよ。10兆円を超える負担をしておけば、これは内需が低迷するのは当たり前ですよ。それを、今お話を聞いても全く反省がない。当たり前のことをやってきたような話をする。
これは、先ほどの労働法制の緩和の問題もそうですけれども、日本の内需の一番の核になっている、55%程度が家計消費でございます。その家計消費を支えている賃金ですね。それで、この平均賃金を押し下げる要因である非正規雇用、これを法的にも直そうとしない。あるいは家計に対する負担ですね。この負担は、これだけ負わせていながら全く反省がない。これでは内需拡大になんかつながりませんよ。
一般論で何か家計重視だとか生活重視と言っていますけれども、現実にやっていることは全く違う。全然違う方向に行っている。これではこの政府にだれも期待できない、私はこういうふうに思います。
以上で終わります。
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