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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業), 景気回復 (消費税, 法人税, 大企業減税, 定率減税の廃止, 道路特定財源)

2008年02月19日 第169回 通常国会 本会議 【431】 - 質問

所得税法等の一部改正案 衆院本会議で代表質問

 2008年2月19日、衆議院本会議で、歳入関連法案である国税関連2法案の趣旨説明が行われ、佐々木憲昭議員が質疑にたちました。

 国税関連2法案のうち、所得税法等改定案には租税特別措置法改定案が含まれ、大企業優遇の研究開発減税のいっそうの拡充とともに、ガソリン税などの暫定税率の10年延長が狙われています。
 佐々木議員は、大企業には研究開発減税などを拡充しながら、国民には「年金財源のため」という口実で、定率減税廃止や年金課税増税に加え、消費税の増税まで押しつけようとしていることを批判。
 さらに、「臨時」「暫定」といいながら、新たな税目の創設、税率引き上げを繰り返してきた道路特定財源の異常さを強調し、高速道路に偏重した「道路中期計画」の問題点を示して、「『暫定税率』は撤廃すべきであり、(道路特定財源は)全額を道路にも社会保障にも使える真の一般財源化に踏み出すべきだ」と主張しました。
 福田康夫首相は、「道路特定財源の暫定税率を廃止すれば、大幅な歳入減となる」などと述べ、法案を強行する姿勢を示しました。

議事録

○佐々木憲昭君 日本共産党を代表し、所得税法等の一部を改正する法律案等に対して、福田総理に質問します。(拍手)
 本題に入る前に、本日午前4時7分、千葉県野島崎沖合において、海上自衛隊のイージス艦が漁船清徳丸と衝突し、漁船乗組員二人が行方不明になる事故が発生しました。軍艦が民間漁船と衝突し、大破、沈没させるなどということは絶対にあってはならないことであります。
 厳しく抗議するとともに、何よりも行方不明者の捜索救助を最優先にすることを求めます。また、なぜこのような事故が発生したのか、イージス艦の前方確認はどうだったのか等、原因の徹底究明を求めるものであります。
 本題に入ります。
 今ほど税のあり方が根本的に問われているときはありません。法案の提案理由は、持続的な経済社会の活性化を実現するためというものであります。しかし、活性化というなら、肝心なのは国民生活の活性化であります。それに逆行する政策を進めてきたのは、政府自身だったのではないでしょうか。小泉内閣以来、政府が実施した10兆円を超える大増税、負担増が国民生活を直撃し、今日の消費の低迷を生み出してきたのであります。総理にその認識があるかどうか、お答えをいただきたい。
 とりわけ、一昨年から昨年にかけて実施された所得税、住民税の定率減税の全廃は、国民に大きな衝撃を与えました。もともとこの減税措置は、法人税率の引き下げや所得税最高税率の引き下げと一体のものとして実施されたものであります。つまり、景気対策と称して実施された恒久的減税でありました。
 大田経済財政特命大臣は、企業の体質は格段に強化されたが、賃金上昇に結びつかず、家計への波及がおくれているとの認識を示しました。そうであるなら、今必要なことは、企業部門から家計部門に政策の軸足を移すことではないでしょうか。
 ところが、家計に対しては定率減税の廃止で大増税を押しつけながら、史上空前の利益を上げている大企業には法人税の減税を継続しているのであります。やり方が全く逆ではありませんか。答弁を求めます。
 提案された法案では、大企業の体質強化と称して、研究開発減税の一層の拡充が盛り込まれております。従来の減税とは別枠で、さらに当期法人税額の10%を上限に税額控除を受ける制度を新設するものであります。法人税額の最大30%まで税額控除を受けることができ、売上高と比べて試験研究費の割合が高ければ、それだけで減税を受けることができるのであります。新たに研究開発投資をふやさなくても、多額の研究開発費があるというだけで恩恵を受ける。これは、投資のインセンティブをより高めるといった当初の趣旨もどこかに行ってしまい、単に研究開発費の額が多ければ減税される仕組みではありませんか。
 この研究開発減税の拡充は、大企業のみならず中小企業にも適用されると言われます。しかし、現行制度でも減税額の約9割が大企業に集中しておるのであります。本法案の制度拡充による減税効果も、430億円、そのうち420億円、98%に当たる分が大企業向け減税であります。これでは巨大企業のための税金ばらまきではありませんか。
 大企業に向け減税を継続する一方で、政府は、国民にさらに増税を押しつけようとしております。
 福田総理は、1月21日の本会議の答弁で、消費税の増税について、平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるとされていることを踏まえて、早期実現を図る必要があると述べました。しかし、基礎年金の国庫負担を引き上げるためといって実行したのが所得税、住民税の定率減税廃止や年金課税の増税だったのではなかったですか。
 2003年12月、自民党と公明党は、2004年度税制改正大綱で、基礎年金国庫負担引き上げ分の財源として、年金課税と定率減税廃止を充てることを合意したのであります。しかも、それを工程表まで決めて実行してきたのであります。
 ところが、国庫に入った2兆8000億円のうち、基礎年金に充当されたのは7000億円、4分の1にすぎなかったのであります。全額、基礎年金の国庫負担引き上げのために使うという説明は、一体どうなったのでしょうか。国民を欺くものではありませんか。そのことを不問にしたままで、基礎年金の財源が足りないから、今度は消費税増税だと言う。これでは二重に国民を欺くものであります。総理の見解を求めます。
 経済力のある大企業に応分の負担を求め、生計費には課税せず、累進制とする、この基本方向に税のあり方を根本的に転換することを求めるものであります。
 次は、道路特定財源についてです。
 この制度は、極めて特異な存在であります。戦後、1949年に一般税として導入されたガソリン税が臨時措置として道路目的税とされたのが1954年でありました。それ以来、道路整備計画が、五カ年といわず3年ごとに倍増するテンポで、12次にわたって繰り返されてきたのであります。また、この間、地方道路税、石油ガス税、自動車重量税、軽油引取税、自動車取得税など、新たな税目の創設と税率の引き上げが繰り返され、74年5月からは、暫定税率という形で税率がほぼ2倍に引き上げられたのであります。
 こうして、当初、臨時措置や暫定と言われたものが常態化し、莫大な規模で大衆収奪が行われたのであります。その財源で、12次にわたる道路整備計画は、必ず前の計画を上回る金額が投入され、一度たりとも減らされたことはありませんでした。社会保障関係費の自然増分さえカットしてきたことと比べて、余りにも異常な聖域扱いではありませんか。
 1971年に自動車重量税を導入したとき、総理の父上に当たる福田赳夫大蔵大臣は、こう答えました。71年からの5カ年計画ができれば国道はほとんど整備されるという状態になる。それにもかかわらず、これで一段落とはなりませんでした。なぜでしょうか。その後も、道路にしか使えないあり余る財源が入ってきたからではありませんか。答弁を求めます。
 政府は、2008年度から始まる10年間の道路中期計画に59兆円も注ぎ込むとしております。しかも、バブル期の1987年に策定した第四次全国総合開発計画、四全総で決めた1万4000キロに及ぶ高速道路建設にしがみつくだけではありません。さらに、7000キロに及ぶ地域高規格道路、伊勢湾口道路など6本の長大橋道路まで進めようとしているのであります。必要性や採算性が疑問視されてきた計画をそのまま進めようとするのは、到底認められるものではありません。答弁を求めます。
 アメリカの圧力のもとでつくられた630兆円の公共投資基本計画は、2002年1月に廃止されました。また、2003年につくられた社会資本整備重点計画法で、国土交通省関連の長期計画が一本化され、あらかじめ計画の総額を決める総額方式は原則としてなくなったのであります。しかし、一つだけ残ったのが道路整備計画であります。
 この際、道路特定財源という仕組みを根本的に見直し、道路にしか使えない目的税方式を改め、暫定税率は撤廃すべきであります。ごまかしの一般財源化ではなく、全額を道路にも社会保障にも使えるようにする真の一般財源化に踏み出すべきではありませんか。このことを求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(福田康夫君) イージス艦と漁船清徳丸との衝突事故の件でございますけれども、このような衝突事故を起こしましたことは極めて遺憾であります。現在、海上自衛隊と海上保安庁が乗員の方の捜索救助に当たっておりますが、残念ながら、いまだ救助されたという情報は得ておりません。乗員の方を一刻も早く全員無事に救助できるよう、全力を挙げているところであります。
 このような事故は絶対にあってはなりません。乗員の方の捜索救助が最優先でありますが、あわせて、なぜこのような事故を未然に防ぐことができなかったのか、徹底した原因究明を行わなければならないと考えております。
 改革による負担増が消費の低迷を生み出しているのではないか、企業部門から家計部門に政策の軸足を移すべきではないかというお尋ねがございました。
 我が国は、人口減少や少子高齢化、厳しい財政状況などに直面しており、これらを乗り切り、将来にわたり持続可能な社会をつくっていくためには、税や社会保障制度等についても、将来を見据えた改革を引き続き進めていくことが不可欠であります。
 一方、景気が息の長い回復を続ける中でも、足元では賃金が伸びず、景気回復の家計への波及がおくれていることは事実であります。このため、景気回復の果実が家計に十分波及し、国民が景気回復を実感できるよう、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差是正や、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどの施策に積極的に取り組み、すべての人が成長を実感できるようにする全員参加の経済戦略等から成る経済成長戦略を早急に具体化し、国民の活力を引き出してまいります。
 定率減税の廃止と法人税の減税についてのお尋ねがございました。
 近年、経済のグローバル化等の経済社会の構造変化に対応するとともに、我が国経済の国際競争力の強化を図る観点から、法人課税の見直し等を行ってまいりました。
 一方、平成11年に導入された定率減税は、当時の厳しい経済情勢に対応した景気対策として導入されたものでありました。近年の経済状況の大幅な改善等を踏まえ、平成18年、平成19年の2年間で段階的に縮減、廃止したものであります。
 研究開発税制についてお尋ねがございました。
 平成20年度税制改正においては、研究開発税制の拡充を行うこととしておりますが、御指摘の制度は、売上高に占める試験研究費の割合が一定水準を超える場合にも税額控除を可能とする仕組みでありました。その割合を高めるよう、さらなる投資へのインセンティブになると考えております。
 また、研究開発税制の拡充は、大企業のみならず中小企業にも同様に適用されるものであります。現行制度においては、中小企業は大企業より高い税額控除率が適用される仕組みになっております。大企業と中小企業とではおのずと投資規模が異なることを踏まえれば、減収規模が大きいことだけをもって巨大企業のための税金ばらまきとの御指摘は当たらないと考えております。
 基礎年金国庫負担割合引き上げのための財源についてお尋ねがございました。
 基礎年金国庫負担割合の引き上げに関し、平成16年度与党税制改正大綱においては、年金課税の適正化により確保される財源は、「平成16年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担の割合の引上げに充てる」、定率減税の縮減、廃止による増収分について、「これにより、平成17年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の段階的な引き上げに必要な安定した財源を確保する。」とされております。
 これらを踏まえまして、各年度の予算編成過程において、与党における御議論を経て、定率減税の縮減、廃止による増収分のうち、各年度の基礎年金国庫負担割合の段階的引き上げに充当されるものを決定するなど、適切に対応してきたものであります。
 基礎年金の財源と消費税についてのお尋ねがございました。
 今後、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る必要があり、政府としては、まずは社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて、社会保障国民会議において国民的な議論を行っていくこととしております。
 このため、現時点において、消費税のみを取り上げて、その具体的方向性等を申し上げる段階にはありませんが、いずれにせよ、基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、所要の安定した財源を確保した上で、平成21年度までに2分の1に引き上げることが法律で定められていること等も踏まえ、その実現に向けて取り組む必要があると考えております。
 今後の税制のあり方についての御質問がございました。
 税体系の抜本的改革については、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うとの観点を踏まえるとともに、所得再分配機能のあり方の見直しや、経済の活性化、国際競争力の強化といった課題への対応も念頭に置きながら、所得、消費、資産等への課税のあり方について総合的な見直しを行う必要があると考えております。
 道路特定財源が聖域扱いされているとのお尋ねがございました。
 これまでも、特定財源があるからといって道路予算が優遇されているわけではなく、道路予算は、19年度で、ピーク時である10年度の4割減となっているように、大幅に削減してまいりました。その一方で、社会保障関係費は、同じ期間で大幅増となっております。
 さらに、今後の中期計画の事業量についても、現五カ年計画の事業量を2割以上縮減した水準としており、道路財源が聖域扱いされているとの御批判は当たらないものと考えております。
 国道の整備についてのお尋ねがございました。
 道路行政においては、戦後の荒廃、道路の絶対的不足への対応から、急激なモータリゼーションの進展に伴う渋滞や環境問題への対応など、時代の要請に応じた取り組みを行ってきたところであります。
 国道についても、自動車への依存度の高まり等を背景に計画自体を拡大しながら、地域、国民生活に根差したニーズにこたえ、重点的、効率的な整備に努めてきた結果、現時点で十分な幅員を備えた国道は9割に至りました。
 道路の中期計画の必要性等についてお尋ねがありました。
 道路の中期計画の素案は、国民各層からの意見を踏まえ、渋滞対策などの政策課題ごとに対応を要する箇所を具体的に洗い出し、さらに、今後10年間で重点的に対策を講じる箇所数を整理し、事業費を算出したもので、十分に必要性の吟味を行っております。
 また、個々の道路を実際に整備するか否かは、地元自治体等の費用負担者の意思や採算性も含めた厳格な事業評価により判断されるものであります。
 道路特定財源の暫定税率の撤廃及び一般財源化についてお尋ねがございました。
 道路特定財源については、暫定税率を維持し、真に必要な道路整備を行うとともに、これを上回る額は、納税者の理解を得られる範囲で一般財源として活用することとし、法律改正を行うこととしております。
 御指摘のように暫定税率を廃止すれば、大幅な歳入減となり、道路予算やその他の歳出の大幅な削減が避けられず、一般財源化しても、現実に社会保障などに使える財源は生じないものと考えております。
 以上であります。(拍手)

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