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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2007年12月04日 第168回 臨時国会 財務金融委員会 【420】 - 質問

振込詐欺被害者救済法案「不正口座の凍結を迅速に」

 2007年12月4日、財務金融委員会で、振り込め詐欺などの犯罪被害者の救済を目的にした議員立法が与党と民主党から出され審議が行われました。
 佐々木憲昭議員は、それぞれ「前向きな内容だ」と評価した上で、両案に共通する内容についてただしました。

 両案とも、振込先金融機関の預金口座に凍結されている被害金を円滑に返還し、犯罪被害者の支援の充実をはかろうとするものです。
 法案では金融機関が預金口座の取引停止をおこなう際、犯罪に利用されていることの証明として、「捜査機関等」の情報提供を要件にしています。
 しかし、佐々木議員は「捜査機関の場合は犯罪の認定・手続きに時間がかかることが多い。迅速に対応するためには、被害者からの情報提供によっても預金口座の取引停止をできるようにすることが必要ではないか」とただしました。
 民主党の提案者は、「信頼できる形での情報提供があれば、口座凍結はすべきと考えている」と述べました。
 佐々木議員は「被害者が複数人いるばあい、「被害金の分配はどういう割合になるのか」とただしました。
 自民党の提案者は、「(被害者に)按分比例で配分する」と回答しました。

 この法案は、与党案・民主党案とも撤回し、修正されたものが委員会提出法律案として、5日に可決しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 与党案、民主党案、それぞれ振り込め詐欺の被害を救済するというものでありまして、両案とも私は前向きな内容であるというふうに思います。
 そこで、両案に共通する問題点を幾つかただしておきたいと思います。
 本法案が言う振り込み利用犯罪行為というのは、「詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたもの」こういうふうになっているわけですね。つまり、犯罪行為の要件は被害者の預金口座への振り込みということである。
 この法案提出の背景は、振り込め詐欺事件、これを中心で考えられたと思いますけれども、被害者の預金口座への振り込みというふうになりますと、少し広いと思うんですね。
 そこで、その他対象となる犯罪というのはどういうものを想定されているか。まず、これは与党の方にお聞きをしておきたいと思います。
○葉梨議員 ほとんどが詐欺であることは間違いございません。先ほど刑事局長の答弁にもありましたとおり、振り込め詐欺の態様というのは非常に多くのものがある。
 詐欺以外で何だという御質問だと思いますけれども、刑法犯として典型的なものは恐喝がございます。恐喝で振り込ませる。それから、あと特別法犯の場合がございまして、例えば、やみ金融などで預金口座への振り込みが利用されるといったような、経済犯といいますか、特別法犯ですね、こういったものがこの対象となってくるわけです。
 いずれにいたしましても、刑法、特別刑法の中であっても財産犯である、それから振り込みが利用されているというこの二つの要件を我々は考えております。
○佐々木(憲)委員 振り込め詐欺というような犯罪の場合は、利得を確保するために、入金されたらすぐ引き出してしまうというのが通例ですね。そこで問題は、一番最初の段階が大変重要でありまして、残っていなければ配分もできませんからね。ですから、最初の、犯罪利用預金口座の疑いのある口座に「取引の停止等の措置を適切に講ずる」判断基準、ここが大変大事だというふうに思います。
 そこで、両提案者が想定している要件は、「捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があること」と「その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがある」こういうふうになっておりますが、捜査機関等からの情報の提供、これは従来の我々の体験からいうと、偽造・盗難カードの被害あるいはやみ金被害、こういう場合は、警察に言ってもなかなかすぐ対応してくれないということで、なかなか警察自体が犯罪行為と認めないということが多いんです。捜査機関からの情報提供というふうになりますと、認定する手続に非常に時間がかかり過ぎまして、結局のところ救済に役立たない、こうなってしまいます。
 例えば、これは日弁連等が提案しているんですけれども、捜査機関の情報提供以外にも、例えば、本人確認がなされた被害者が被害の具体的事情を申告し、凍結等の要請をしたとき、その他これに準ずる事情、そういう場合も取引停止というようなことをやるべきではないか、こういう提案をされているんです。
 こういう立場は、私はなるほどと思いまして、迅速な預金口座の凍結を行う上でこれは効果があると思いますが、この点、民主党の提案者はどのようにお考えか、お聞きをしたいと思います。
○階議員 委員御指摘のとおりでございまして、まず口座凍結をしないことには被害回復はままならない、そのためには口座凍結を速やかにする必要があるということで、おっしゃるとおり、捜査機関の情報提供をまつまでもなく、信頼できる形での情報提供があれば「捜査機関等」の「等」に当たるということで、口座凍結はすべきだというふうに考えております。
 また、この点については、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた上でガイドラインなどの形で統一的な基準が定められるものというふうに伺っております。この点については、実は私も、金融機関に勤めていた時代も、捜査機関の情報提供がなくても、弁護士さんからそういうような情報提供があったり、また、被害者の方とよく面談して、信用性があるというふうに判断した場合には、実務上、口座凍結をしておりました。
 そういった形で今度のガイドラインも定められるものというふうに考えておりますので、御懸念の点は大丈夫かと思います。
○佐々木(憲)委員 次に、預金等に係る債権の消滅手続という問題ですが、法案では、疑うに足る相当な理由があると金融機関が判断した場合となっておりますね。法案では、相当な理由を判断する基準ということで四点挙げておるわけですね。一つは捜査機関等からの情報提供、それから被害状況について行った調査の結果、それから名義人の住所への連絡等による名義人の状況についての調査の結果、預金口座等に係る取引の状況、この四つを挙げられているわけです。
 相当な理由という場合、預金口座を債権の消滅を行う場合には、この四つが基準になっている。しかし、凍結を判断する場合、最初に私が申し上げました凍結、最初の凍結という場合の判断、これは判断基準に差があるわけですね。そういう認識でよろしいですね。では、与党案。
○柴山議員 この部分は、民主党の提案と私どもの提案で差がないものと考えますので、私の方から答弁をさせていただきます。
 今、階議員の方から御答弁がありましたとおり、口座の凍結ということに関しましては、要は、名義人、いわゆる加害者がこれを引き出すのを何とかして食いとめなければいけないということで、もちろん金融機関側の債務不履行のリスクというものはありますけれども、比較的迅速性に重きを置いた形で凍結等の運用をしなければいけないという必要性があるのに対しまして、佐々木委員が御質問されたとおり、失権という部分に関しましては、むしろ、より名義人の権利保護にしっかりと重きを置いた形での扱いが必要になるというわけで、御指摘の法四条の各号に、失権をさせてもやむを得ないという形で、これはあくまでも例示列挙でありますけれども、相当の理由というものを書かせていただいた次第でございます。
 なお、これに加えまして、先ほど階議員の方から法3条の方について御説明があったのと同様、金融機関が行う認定方法の詳細につきましては、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた形でガイドライン等の統一的な基準ですね、口座売買を疑わせる相当な理由ですとか、あるいは異常な入出金、過去の履歴等と比較して異なる形での取引履歴が発生しているような場合等々、精緻な検討がされているというように承知をしております。
○佐々木(憲)委員 具体的な事例でお聞きしたいんですが、例えば、被害者Aという方が、1000万円を振り込んだ直後にそれが詐欺だと気がついた。その後、振り込み先の口座が凍結をされた。その口座の残高を見ると1000万円であった。しかし、所定の手続に従って公告を行ったら、その以前の、過去の被害者が九名出てきて、各人1000万円の被害を申し出る。そして、その被害は確認をされる。そういう場合、被害回復分配金は、このAさんを含め10人になりますから、100万円ずつ、1人100万円ということになりますね。
 被害者Aさんへの回復というのは、自分のお金が最後に残ったわけですから、本来それは被害救済を厚くすべきではないのか、そういう議論がありますけれども、与党はこの点はどのようにお考えですか。
○葉梨議員 先ほども議論がございましたけれども、ケースがたくさんあるんですね。私も遺失物法の担当の課長補佐を2年間、詐欺罪の捜査を6年間やっておりましたけれども、いろいろなケースがございます。まさに佐々木先生言われるようなケースというのも結構ございます。そして、今、銀行の実務を聞いてみましたら、どういうふうにやっているかというと、まず直近の1000万に返してしまうという銀行もあれば、ほかの10人が名乗り出てくるかもわからないから返せないという銀行もあれば、もう本当に銀行ごとにばらばらなケースになってしまっている。
 そこで、私ども考えましたのは、だからこそこの失権手続というのをかっちりやらなきゃいけないんですけれども、一つには、そういう方というのは、まず、1000万円で被害を受けたら、すぐに銀行に届ける。一番最初に届け出をしたから、1000万円私のところに返ってくるという大きな期待感があるんです。ところが、この法律で失権で60日ということになって、その後30日になりますと10人に分けられてしまう。100万円ずつになってしまうという方は、多分1000万円を、一番直近のもので、その前がゼロだから、訴訟手続に乗せてくれという形で、訴訟手続に乗せるということもあるだろうと思います。
 それから、ちょっとこのケースとは違いますけれども、実は、振り込め詐欺の対象口座というのは、この法律によってだあっと広がってまいります。本当に一部しか返すことが今までできませんでした。ところが、恐喝の振り込みについても返すことができる、あるいはやみ金の振り込みについても返すことができるということになりますと、その口座の中に、生活口座と一緒になっている口座というのも結構出てくるだろう。そういう場合の失権手続というのはしっかりとかっちりやっておかないと、実際、生活口座と一緒になっているようなところに振り込みが行われているというものもありますので、まず失権手続をかっちりやるということにいたしましたが、今のような場合ですと、まずその1000万円をぜひ返していただきたいという方については、訴訟手続によっていただくということになるだろうと思います。
 そして、この法律は、簡易の公告という手続でやるということになりますと、破産手続あるいは民事執行手続における配当、こういったものを考えまして、比例案分ということでそこのところは我慢していただこう、この法律の手続に乗っていくときは比例案分ということで考えております。
○佐々木(憲)委員 同じケースで、これは民主党にお聞きしますけれども、いわば最後の被害者Aさんが被害と気がつかないという場合がある。その場合、前の九人に対して配分される。そうすると残らないわけですね。しかし、後で、一定期間たった後、Aさんが被害に気づいて被害回復分配金の支払いを請求してきた。しかし、もうないよということで払われない。これは何らかの措置が必要ではないかと思いますが、民主党はどのようにお考えでしょう。
○階議員 委員御指摘のとおりでございますが、その点については、被害者がこの手続に漏れなく参加できるように、政府として周知広報の規定をまず設けました。
 また、多分に理念的ではございますけれども、仮に被害者がこの手続で救済を受けられなかった場合でも、民事上の加害者に対する損害賠償請求とか不当利得に基づく返還請求といったことで被害回復をする余地は残っているということを申し添えておきます。
○佐々木(憲)委員 時間が迫ってまいりました。
 あと一点だけお聞きしますが、被害回復分配金が決定した後で、預金口座の名義人が申請を行い、犯罪利用預金口座ではないということが認められる場合、消滅預金等債権は回復するという規定になっていますね。そして、この名義人には、権利の回復は、後でも期限は特にないわけですね。しかし、先ほどのAさんの場合は、一定期間後にはその権利を失うということになっていますね。これはバランスがとれていないんじゃないかと思いますが、最後に、与党にこの点をお聞きしたいと思います。
○石井(啓)議員 お答えいたします。
 口座等の名義人の預金等債権が誤って失権された場合については、本法案のような救済手続を設けないことには、もはや、民事手続によってその神聖な権利の回復ができないということになってしまいます。一方で、被害回復分配金を受けられなかった方については、この法案によって救済されなかったといたしましても、加害者に対する損害賠償請求権あるいは不当利得に基づく返還請求権が消滅するわけではない。こういったことから、理論的には権利行使の機会は残っているというふうに思っています。
 なお、つけ加えて申し上げれば、今回の法律案の中では、60日の失権公告の期間あるいは30日の支払いの公告の期間、こういう適切な期間を設けている。あるいは金融機関に対しては、被害を受けたことが疑われる者に対して情報提供その他の措置を適切に講ずるということで、被害者に対して周知の努力をしっかりと行わせていただいていることも申し添えたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 両案ともいろいろ特徴がありますが、調整不可能ではないと私は思いますので、ぜひ、全体で調整した上で、できるだけ早く成立をさせていただければということを申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。

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