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平和・憲法

2004年05月27日 第159回 通常国会 テロ・イラク特別委員会 【251】 - 質問

「国連新決議案に日本はどう対応するのか」アメリカに追随するだけの日本政府を追求

 2004年5月27日、佐々木憲昭議員は、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会で、イラク暫定政府をめぐる主権の問題について川口外務大臣をただしました。

 佐々木議員は、イラク暫定政府の発足後に多国籍軍が駐留するかどうかの決定権をイラク暫定政府が持つのかどうか、多国籍軍に参加する米軍の作戦の決定権をイラク暫定政府が有するのかどうかなど、川口外務大臣の見解をただしました。
 川口外務大臣が明確な答弁を避けたため、佐々木議員は、フランスやドイツが国連新決議案について、イラク暫定政府の完全な権限が保障されていないと批判し、多国籍軍の任務は暫定政府との合意による、イラク国軍の関与が求められた場合に暫定政府は拒否する権利を持つ、警察については暫定政権が全権を持つという提案をしていること、中国も独自の提案をしていることなどを示し、日本が新決議案にたいしどのようなスタンスで望むのかを明らかにするよう迫りました。
 川口外相が、具体的な答弁をしなかったため、佐々木議員は、「アメリカが主張していることについて批判的なことは一切言わないというのが日本政府のスタンスで、日本のスタンスは何もないというのが大変よくわかった」と批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 6月30日をもってイラクに暫定政権をつくるとされまして、イラクをめぐる新たな国連決議案についての議論が行われております。
 そこで、外務大臣に基本的なことをお聞きしたい。現在、イラクの主権はだれが握っているのでしょうか。
○川口外務大臣 難しい御質問ですけれども、主権という言葉の意味をどう考えるかということですけれども、非常に厳密に考えれば、主権はイラクに存在をする、それを行使する権限、これを今はイラク人が持っていないということであろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 主権はイラクにあるが行使する権限は持っていないということは、実態的にはイラクにはない、こういうことですか。
○川口外務大臣 ですから、厳密な意味ではというふうに申し上げたわけでございますけれども、イラクを統治する権限、統治するすべての権限という意味に現実的には主権という言葉は使われている、使われる場合もあるかと思います。
○佐々木(憲)委員 ブッシュ大統領は、暫定政権の成立によりまして完全な主権を確立すると言っていますし、あるいは、昨日のテレビを見ていますと、完全かつ本物の主権移譲と言っているわけですね。
 完全な主権というのは、すべての決定権をイラク暫定政府が持つということだと思うんですが、そういうことですか。
○川口外務大臣 ブッシュ大統領がどのような主権の定義を使っておっしゃっているかということは、私、ちょっとよくわかりませんけれども、いずれにしても、CPAはなくなる、占領軍は存在しなくなる、そういうことをおっしゃっていらっしゃるんだと思います。
○佐々木(憲)委員 現在、国連で新たな決議案が議論されておりまして、報道では、アメリカの決議案によると、6月30日以後も多国籍軍を駐留させるというわけであります。
 しかし、外国の軍隊である多国籍軍をこれからも駐留させるかどうか、その決定権というのは、完全な主権を持つと言われているイラク暫定政府にあると思うんですが、それはどうでしょうか。
○川口外務大臣 今まさにその点についていろいろな議論が行われているということであるかと思います。安保理決議についても案が出ているということでありまして、そしてその前に、大統領、首相といったような人たちを、ブラヒミさんが今、人を選んでいるという過程になっているわけでございまして、そのような過程と、国連決議でその部分をどのようにエンドースするかということが一つの議論の争点であるかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 それは、今行われている議論の内容はいろいろあると思いますが、私がお聞きしたいのは、日本政府はどういう立場なのかということです。つまり、多国籍軍を駐留させるかどうか、その決定権というものはつくられるイラク暫定政権にある、そういうふうな立場で見ておられるのか。
○川口外務大臣 基本的にはそういうことであるかと思います。
 イラクの暫定政権が仮に多国籍軍に出ていってくれと言ったら、これは外相会議の後の記者会見でもございましたけれども、我々はいなくなるということでありますので、そういう意味ではおっしゃるようなことかなと思います。
○佐々木(憲)委員 それでは、具体的に聞きたいんですが、多国籍軍が駐留しているという場合を想定して、その多国籍軍と暫定政府の方針が違った場合、どちらに決定権がありますか。
○川口外務大臣 これは、まさに今議論されている問題の1つであるというふうに思っております。さまざまな議論が安保理の中で行われている、何らかの形で具体的に決まったということではないというふうに考えます。
○佐々木(憲)委員 川口外務大臣はどちらにあるべきだと思われますか。
○川口外務大臣 これは、一概に抽象的に申し上げるということは難しいと思います。例えば、どういうことについて議論がなされているか、どういうことについて方針が違うかということも議論されなければいけないというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 では、具体的に聞きましょう。
 暫定政権は、例えば米軍のある作戦が行われるという場合に拒否ができるかどうか。例えば、米軍の指揮権は実際に掃討作戦を行う場合に発動されていくわけですけれども、その掃討作戦について暫定政府が、それはやめてくれ、こういうことを言う場合があり得る。その場合、暫定政府の側に決定権があるというふうに日本政府としては考えているのか。それとも、そうではなくて、米軍に決定権があるんだ、米国に指揮権があるんだと。どちらですか。
○川口外務大臣 これも、抽象的に一概に申し上げるということは難しいというふうに思いますけれども、現実問題として考えれば、これは一方で、両方の意見が大きく異なるという場合には、それでは米軍が独自で行動をとることができるかということであると、なかなか難しいという現実があると思いますし、また他方で、安全、治安、この問題についてどこまで多国籍軍が権限を持つかということにもよるというふうに思います。
 ですから、暫定政権でありますから、移行政府ではまだないわけでございまして、そういった過程で、イラクの将来に非常に大きく影響を与えてしまうようなことをどこまで暫定政権として力を持つことができるかというような議論も必要であろうかというふうに思います。
 いずれにしても、両方の意見が一致をする形でないと現実的には難しいということはあるだろうというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 暫定政権が最終決定権を持っているとは言わなかったわけでありまして、そうしますと、暫定政権に権限が移譲されても、それは極めて部分的であるということになりますよね。極めてといいますか、部分的な権限移譲にすぎない。
 例えば、パウエル米国務長官は25日にこういうことを言っているんです。結局のところ、ある時点において、イラク暫定政権が望むようなことと完全に合致しないかもしれない形で、米軍がみずからを守ったり、任務を果たすという場合、米軍は米国の指揮下にとどまり、みずからを守るために必要なことを実行する。つまり、暫定政権と意見が合致しない場合には、米国の指揮のもとで行動をする、こう言っているんです。
 それから、ブッシュ大統領は、5月24日のペンシルベニア州の陸軍戦争大学で、駐留米軍は現在の兵力13万8千人を必要な限り維持する、主権移譲後も米軍と連合軍は重要な役割を担い、米軍は国連の多国籍軍の一部として米軍指揮下で活動する。つまり、作戦を展開する場合には、米軍は米国の指揮下で活動すると明言をしているわけであります。
 したがって、暫定政権に権限を移譲するといいましても、それは完全な移譲ではない。非常に限定された形での権限移譲であって、これは、アメリカが、ブッシュ大統領が完全な主権確立だとか言っておりますけれども、実態はそうではないということは、このことで、みずからの発言でそうおっしゃっているわけですから、明らかだと思うわけであります。
 日本政府は、その米国の主張をそのとおりだと聞いているんですか。それとも、もっと暫定政権に権限を与えるべきだ、こういう立場なんですか。
○川口外務大臣 先ほど申しましたように、占領を終わる、これは明確であるわけです。
 それで、今、委員が限定的な主権の移譲であるというふうにおっしゃられましたけれども、それは私は必ずしもそのように申し上げているわけではございませんで、そもそも一番の基本的な議論というのは、移行政権は選挙によって選ばれる政権である、そういう意味で、その国民のトラストが100%あるというわけですね。暫定政権はそこまでいっている政権ではないということが前提であると思います。
 ですから、例えば、ちょっと例は違いますけれども、石油の利権あるいは発掘権なり開発権を、では、暫定政権が自分の思うようにどこかにばらまいてしまっていいかというと、多分そうではないだろうということがあるわけでございまして、それはおのずから、暫定政権という性格上、イラクの国民がどこまでの力を暫定政権に与えたいかという部分というのはあるだろうということを申し上げているわけです。
 いずれにしても、米軍と、あるいは多国籍軍と暫定政権との関係、これは、先ほど申しましたように、治安の維持のために多国籍軍はいる、あるいは復興支援のためにいるということであるわけですから、そういった形で仕事を、活動をしていくためには、暫定政権と何らかの調整メカニズムができるということである。そのような形になっていくことが望ましいと考えます。
○佐々木(憲)委員 私が質問したことにはまともに答えなかったわけでございまして、では、もうちょっと具体的に聞きましょう。
 フランスやドイツなどは、新決議案について、イラク暫定政府の完全な権限が保障されていないというふうに批判をしております。そして、こういう提案をしているんですね。多国籍軍の任務は暫定政府との合意による、それから、イラク国軍の関与が求められた場合、暫定政府は拒否する権利を持つ、それから、警察については暫定政権が全権を持つという提案を、そうすべきだという提案をしているわけです。
 それからまた、中国は、政治、経済、治安維持、司法を初め、石油など天然資源の取り扱いを含む主権を暫定政府に完全移譲する、それから、多国籍軍の駐留期限は来年1月までとし、延長の場合は暫定政府の合意を得て安保理が決める、こういうふうな提案をしているわけです。
 つまり、アメリカ、イギリスの提案に対して、それでは本当の主権移譲ではない、本来ならばこのようにすべきだという提案をしているわけです。
 それで、先ほど、川口大臣の答弁は、一体どこにスタンスが基本的にあるのか、非常によくわからない。アメリカが言っていること、つまり、米軍、多国籍軍の指揮権というものを優先させて、意見が違った場合にはそちらが優先されなければならない、そういうアメリカ側の主張に対しては否定をされない。
 それで、今、そうではないという国際的な議論が高まっている。そのときに、では、日本はどういうスタンスなんですか。ドイツやフランスやあるいは中国のこういう提案について、国際的な議論の中で、こうあるべきだと。日本はどうしたいんですか。そこのところを具体的に言っていただきたい。
○川口外務大臣 申し上げていることは、オール・オア・ナッシングではないということを申し上げているわけです。暫定政権ということの性格、これはイラクの国民によって選挙で選ばれた政権ではないということからくるおのずからの、どこまで主権を持った政府として力を行使することができるだろうかということを考えなければいけないということを1つ申し上げて、これは基本的に、根本的に議論をしていかなければいけない点であるということだと思います。
 オール・オア・ナッシングではないということを申し上げた意味は、それは具体的に、中国が石油の利権もとおっしゃられましたけれども、そういう、すべて具体的に何をどうするかという議論があるべきであるということであって、そういったその政権の性格。
 それからもう1つは、実際にこれは7カ月間の政府であって、その間にイラクの治安をいかに回復することができるかという課題も抱えている政権であるわけです。そういった課題を新しい政権としてどのように実行に移していくことができるかということも、もう1つの大きな考えなければいけない要素であるというふうに思います。
 イラクの現実を離れて、現実を捨象して制度だけ考えるということはできない。大事なことは、6月30日に統治権限をイラクの暫定政権に渡すことであり、その先、これが現実的な世界でうまく機能していくような政権となることが必要だということを申し上げているわけです。
○佐々木(憲)委員 どうも、いろいろなお話をされますけれども、日本政府としてこうすべきだという主張は持っておられないように思う。今、話を聞いていると、主権は、暫定政権という性格上、一定の制約がある。もっと具体的に、今、提案されている中国その他の意見あるいはアメリカ側の意見、それに対して日本は何を主張するかということについては何もない。これが今、日本のスタンスだということでありまして、これは今後大いに議論をしていきたい。
 日本政府は、どうもアメリカが主張していることについて批判的なことは一切言わないというのがスタンスで、では、日本のスタンスは何か、日本のスタンスは何もないというのが大変よくわかりました。

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