金融(銀行・保険・証券) (不良債権処理, 金融機関の破綻)
2004年06月02日 第159回 通常国会 財務金融委員会 【252】 - 質問
四日市商工共済協同組合・商工貯蓄共済組合の被害者救済を=「対応すべきところは対応していく」と金融担当相
破産した四日市商工共済協同組合と商工貯蓄共済組合破産の被害者救済を求め、2004年6月2日の財務金融委員会で佐々木憲昭議員が質問しました。
2002年5月に破産した両組合は、預金保険に入っていないために積み立てた資金が組合員に返済されず、のべ3500人におよぶ深刻な被害が広がっています。金融庁検査を受けた三重銀行が両組合を不良債権だと認定し、資金回収を迫ったことが、破たんの引き金となりました。
佐々木議員は、金融庁の厳しい検査がこの2つの組合を破産させ、多くの被害者をつくったことに対する責任をただすとともに、被害者の救済策をとるよう求めました。
竹中金融担当大臣は、金融庁検査と組合破産の因果関係は否定しつつ、被害者救済については、「しかるべく対応すべきところは対応を当然していく」と答弁しました。
この日の財務金融委員会では、民主党が提出した「銀行貸付適正確保法案」が審議されました。
この法案は、銀行貸し付けをめぐって、法律規制が一切されてこなかった現状を踏まえ、銀行に対して貸付契約などを締結する際に、顧客に書面を交付する義務などを課すものです。
佐々木議員は、法案を評価する立場から、貸金業規制法では貸付契約締結の際の書面交付を義務づけていることを紹介しつつ、提案者に対して、銀行に法律で義務付けてこなかったためにどのような問題が生じているのか、現状認識と法案の効果について質問しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、民主党の法案提出者に対しましてお聞きをします。
貸付契約締結の際の書面交付についてであります。貸金業規制法では業者に交付を義務づけている、しかし銀行に対する法律上の義務規定はない。この法律の不備のもとで、現在どのような問題が生じているのか、それをこの法案ではどう改善しようとしているのか。
時間が短いので簡潔にお答えいただきたい。
○中山(義)議員 こういう規制をする法律がなかったというのは、やはり財務省の怠慢、もともと大蔵省が怠慢をして、要するに、銀行同士が談合をして、調子のいい、自分たちの勝手なやり方をつくってしまったんだと思うんですね、それを規制できなかった政府にやはり問題があった、このように私は思います。
そのかわり、どういうことがあったかといいますと、例えば提案型融資なんかそうです。おたくのここは道路上にあって30階建てられるから建てなさい、金は全部出します、中のテナントから何から全部うちが紹介しますと言いながら、一転土地が下がったら徹底的に返済を迫るというような、過去にそういうものが随分ありました。
提案型融資なんかについても、契約した時点で説明義務と書面交付義務がないために、連帯保証とか、いろいろなふうになっている人たちの実際が説明されていないんです。また、そこがちゃんと自分に書面として残っていない。そこで不幸が起きた、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 大変よくわかりました。
それで、次に竹中大臣にお聞きします。
貯蓄共済組合の問題なんですけれども、四日市商工共済協同組合と商工貯蓄共済組合というのがあります。これは2002年5月に破産をいたしました。両組合員は延べ3500人ぐらいおります。預金保険に入っておりませんでしたので、積み立てた資金が組合員に返済されずに、いわば預金がゼロになる、こういう被害であります。
その引き金を引いたのは、三重銀行が、この組合を不良債権だということで認定をしまして、強引な資金回収を迫ったということにあったと言われているわけであります。
金融庁は、三重銀行に対して検査を実施したのはいつだったか、この2002年にあったのかどうか、これをお聞かせいただきたい。
○伊藤金融副大臣 三重銀行に対しましては、平成14年3月期を対象といたしまして、東海財務局が平成14年の4月22日より5月23日まで立入検査を実施いたしまして、15年1月24日に検査結果の通知を行ったところでございます。
○佐々木(憲)委員 この検査のときに、三重銀行の自己査定が甘いという指摘をして、金融庁は、これは破綻認定すべきだ、こういうふうに断定をして、その結果、組合は貸付金の返済を求められた。それで、2002年4月に2億円の定期及び株式を売却することで返済することにしたわけですが、これによって資金繰りがつかなくなりまして、破産をした。
つまり、金融庁の厳しい検査がこの2つの組合を破産に追い込んだのではないか、被害者をつくったということになると思うんですが、その認識はありますか。
○竹中金融担当大臣 破綻認定というお言葉を使われましたけれども、金融庁が実施する検査では、いわゆる経営破綻や、経営破綻に陥る可能性が高い債務者に関しては、これは検査マニュアルに基づいて区分をいたします。
要するに、法的、形式的な経営破綻の事実が発生している債務者を破綻先とする、法的、形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり再建の見通しがない状況にあって、実質的に破綻している債務者を実質破綻先にする、経営破綻の状況にはないけれども、経営難の状態にあって経営改善計画等の進捗状況が芳しくない、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者を破綻懸念先として、それぞれ適切な区分がなされているかを検証する、債務者区分を検証するというのが我々のいわば検査の仕事でございます。
検査は、これは言うまでもなく、自己査定の正確性、その上で引き当てなどが適切に行われているか、つまりリスク管理体制を検証していくものでありまして、金融検査は、その上で融資を行うか否かといった金融機関の経営方針や融資姿勢にまで立ち入る、経営に干渉するというものではございません。各金融機関の個々の融資対応というのは、金融機関みずからの経営判断によって行われるものであるというふうに承知をしております。
○佐々木(憲)委員 質問に直接お答えになっていないんですけれども、債務者区分を変更した、より厳しく変更したと。
このことについて、ここに三重県がつくった文書があります。こういうふうに書かれているんですね。「三重銀行が金融庁検査を受けた際、当該組合が破綻認定された。」ということですね。もちろん正確な表現かどうかは別としまして、より厳しい債務者区分に変更された、その結果、このような三重銀行の資金回収という事態を招き、それがこの両組合の破産につながり、3500人の積立金を拠出していた方々が、その資産がパアになってしまった。大変重大なことであります。
もちろん、この組合側の資金運用の問題点というのはあったようです。その運用に対して三重県の、これは認可したわけですから三重県の責任もあると思うんですね。そういう問題はもちろんあります。しかし、重大なのは、やはり金融庁の検査がこういう結果を招いたわけでありまして、間接的にですよ。その認識がないということになればこれは極めて重大だと思うんです。
被害者の家族は自殺未遂、一家離散というような大変悲惨な事態が次々と生まれているわけであります。やはり、これに対して何らかの救済策とか対応、そういうものを検討する必要があるのではないかというふうに思いますけれども、大臣の見解をお伺いしたい。これは竹中大臣に最後に、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○竹中担当大臣 委員の御指摘は、検査を行ってこういう問題が生じたんだから検査に責任があるのではないか、短絡すればそういう御主張かと思いますが、我々は検査で、債務者区分についてこういう問題があるという事実を指摘するわけでございます。その事実に基づいて経営判断で融資がなされるかどうかということを、当然これは経営判断としてなされるわけであります。
したがって、検査があったからそういう結果がもたらされたという、その因果関係のような言い方をされるのは、これは少し違うのではないかと思います。我々は、いわば検査でありますから、健康診断のようなものを行った。健康診断を行ったから病気になったんだと言われているような気がいたしますが、決してそうではないという、事実の問題でございます。
個別の問題につきましては、いろいろ大変御苦労なさった方がいらっしゃるんだと思います。これについて個別のことを申し上げる立場にはございませんが、いずれにしましても、これは法令にのっとってしかるべく対応すべきところは対応を当然していくわけでございますし、個別の救済の問題というのは、県においてもいろいろな対応策がございますでしょうし、国としてやるべきことがあればしかるべく対応はなされているものと認識をしております。
○佐々木(憲)委員 因果関係はないとおっしゃいますけれども、間接的な因果関係は明確にあるわけです。そのことの認識がどうもないようでありまして、検査によって査定を厳しくし、その結果、銀行の貸し出し姿勢に変化が生じ、資金回収に回る。ということは、間接的に検査によって債務者が破産に追い込まれていくという関係が極めて明確なんですよ。
そういう認識なしに、ただ診断しただけなんだ、あとはどうなるかはそれは銀行の経営なんだ、こういうのでは極めて無責任でありまして、その点を最後に指摘して、時間が参りましたので終わります。