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金融(銀行・保険・証券) (中小企業融資)

2004年10月29日 第161回 臨時国会 財務金融委員会 【259】 - 質問

包括根保証が「企業債権の妨げに」佐々木議員が追及

 2004年10月29日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、企業が倒産した際、保証人に無期限・無制限の返済責任を負わせる「包括根保証」が企業再建の障害になっているのではないか、という問題について質問しました。
 80年代半ばから、中小企業の廃業が起業を上まわる傾向が強まり、毎年7万から9万社の企業が減っています。佐々木議員は、「包括根保証によって身ぐるみはがされた中小業者は、再起どころか多重債務に陥り、なかには自殺に追い込まれる例もある」と指摘。
 中小企業が減っている要因のひとつとして「包括根保証」の問題があることを、伊藤達也金融担当大臣も認めました。
 佐々木議員は、「包括根保証」を廃止する条項を盛り込んだ法案が国会に提出されていることにふれ、根保証にも限度額を設定、保証期間も5年以内になっていることは、大きな前進と述べました。さらに、「包括根保証」の廃止にともなって、金融庁の「監督指針」を書き改めるよう求めました。
 伊藤達也金融担当大臣は、「法が成立したら、指針の改訂をきちんとおこないたい」と答え、見直しを約束ました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 金融機関の中小企業向け貸し出し問題についてお聞きをしたいと思います。
 初めに数字を確認したいんですが、2001年3月から直近までの金融機関の貸出残高、その増減はどのようになっていますでしょうか。総額、それから大企業、中小企業向け、それぞれお答えをいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 日本銀行の貸出先別貸出金国内銀行という資料がございまして、これから引用させていただきたいと思います。
 まず、貸出総額でございます。平成13年3月に469.3兆円だったものが、平成16年3月には408.6兆円ということで、60.6兆円の減少でございます。
 それから、この資料における大企業向けという数字を見ますと、100.1兆円から84.3兆円ということで、15.8兆円の減少。それから、中小企業向けにつきましては、233.4兆円から184.9兆円ということで、48.5兆円の減少ということでございます。
○佐々木(憲)委員 今、数字を示していただきましたが、貸出総額が小泉内閣になってから60兆円マイナスになる、しかも、その中で中小企業向けが非常に比率が高い、約50兆円近い減少であります。
 なぜこういう状況になっているのかというのが大変重要でありまして、私は二つ要因があると思っております。まず一つは、銀行の貸し渋り、貸しはがしというものが依然として改まっていないというのがある。二つ目は、資金需要全体としての低下があると思っております。
 まず、不況の影響はもちろんあります。同時に、融資対象となっている中小企業そのものの数が減っているのではないか。例えば、統計を見ますと、この15年間で、企業数は543万社から474万社と、約70万社、これだけの数が減っているわけです。率にしますと約13%でございます。この五年間をとりましても、毎年毎年、7万社から9万社減っているわけです。これも融資残高が減少していく一つの要因ではないかというふうに私は思いますが、大臣、どのような認識でしょうか。
○伊藤金融担当大臣 貸出残高が減少している理由としましては、今御指摘がございましたように資金需要の低迷、それだけではなくて、今、中小企業も過剰な債務を抱えております。借りたお金を返さなければいけないということで、一生懸命債務の返済に努めているところであります。そうした努力や、あるいは不良債権のオフバランス化の進展、貸出債権の流動化など、さまざまな要因があるところではないかというふうに思っております。
 そうした中で、今、金融庁といたしましては、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムに基づいて、各金融機関に対しては、中小企業に対する資金の円滑化を図るための努力を進めていただきたい、そのことを繰り返し要請しているところであります。
 こうした要請を受けて、今、金融機関としては地域金融機関としての機能強化に向けての努力がなされているわけでありますが、中小企業に対する金融機関の貸し出し態度、これは日銀短観等がございますけれども、こうしたものを見てみますと、15年第1・4半期から第2・4半期連続して改善をしてきておりますし、16年6月の調査では、9年9月調査以来、6年9カ月ぶりにプラスに転じるなど、改善の動きも出てきているところではないかというふうに思っております。こうした取り組みをさらに進めることによって、中小企業に対する資金の円滑化というものをしっかり図っていかなければいけないというふうに思っております。
 さらに、中小企業が減少していることも大きな理由ではないかという御指摘がございました。先ほどの日銀短観においても、例えば、飲食でありますとか宿泊、こうした部門は大変厳しい傾向にあるということがあらわされています。その中でも改善傾向があるわけでありまして、そうした中で、例えば、不況業種と言われる飲食店舗においても、新しく店をやろう、あるいは多店舗展開をする人たちもおります。そうした方に対する資金供給の円滑化を図っていくということも大変重要な視点ではないかというふうに思っております。
 今、中小企業はさまざまな点でいろいろな努力をされているわけでありますから、そうしたニーズにこたえた金融機関としての金融の円滑化を図っていくということは非常に大切なことだと認識をしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 私が聞いたことに端的にお答えをいただきたいんです。いろいろな周辺のお話はもちろん大事だと思いますが、時間が短いものですから。
 私がお聞きしたのは、毎年7万から8万の企業数が減っておりますので、融資対象がもちろん減るわけですから、それも一つの融資残高減少の要因となっているのではないかという一点を聞いたわけでありまして、そう思うのか思わないのかということを改めて答えていただきたい。
○伊藤金融担当大臣 先ほどからお答えさせていただいておりますように、融資残高の減少はさまざまな要因があろうかというふうに思います。その中で、資金需要が低迷しているということもあるというふうに思いますし、中小企業が減少するという傾向があれば、これもやはり要因になるだろうというふうに思います。だからこそ、新しいニュービジネスでありますとかベンチャービジネスというものを振興していくということも非常に重要な点ではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 新しく企業を起こしていく、起業ですね、これは非常に大事なことだと思うんです。現実はどうかといいますと、廃業する企業と新しく起こす企業というのはどちらが多いかといいますと、廃業の方が最近上回っておりまして、この15年間廃業がまさっております。したがって、全体として企業数が減少しているという傾向なんですね。
 これはなぜそうなるのかという点ですけれども、例えば経営に失敗して倒産をする、廃業する、しかし、その後立ち上がることがなかなかできないという状況があるのではないか。その要因として、例えば包括根保証という、当委員会でも取り上げられた問題ですけれども、企業が倒産した際に、連帯保証、第三者保証まで求める、社長そのものにも求めるということで、その企業が負っている負債の全責任をそういう方々に負わせてしまう、こういう仕組みが大きな社会問題になってきているわけです。
 金融機関が融資を確実に回収するというために、経営者本人、親族、知人、そういうところに包括根保証の契約を求める、その結果、倒産した場合、こういう方々が負債を全部かぶって、身ぐるみはがされるといいますか、大変な状況になっているわけでありまして、中には多重債務に陥る、あるいは自殺をするという方もいらっしゃる。やはりこういう問題が日本の大きな、新しい企業を再生していく上でネックになってきたのではないかというふうに思うわけであります。
 この包括根保証を取り扱っている銀行は現在どの程度あるのか、示していただきたいと思います。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) この8月末で、私どもでヒアリング調査をした結果でございますけれども、包括根保証を何らかの形で取り扱っているという銀行は、主要行等で13行、地方銀行では65行中44行、第二地方銀行では49行中26行ということで、合計いたしますと83行で取り扱っている。母数は127行でございます。
○佐々木(憲)委員 この包括根保証というものの見直しというのが、今度、これは法務委員会ですか、民法の改正ということで政府が提案をされているようですが、この方向に進むべきだと私は思っております、根保証は限度額を設ける、それから、保証期間を制限して、保証人は一定期間だけ責任を持つ。こういう内容に転換するというのが大変重要だと思うんです。この方向で金融行政を進めていくということが今後求められると思いますが、大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 これからこの法案の御審議が進んでいくことになろうかというふうに思いますけれども、この法案が成立をいたしましたら、それに基づいて金融行政を展開していかなければいけないというふうに思っております。
 先ほど委員から御指摘がございましたように、やはり担保や保証に過度に依存したそういう仕組みそのものが、中小企業が再生を期していくに当たっての大きな障害になっていたという問題意識を私も強く持っております。
 そうした中で、契約を結ぶに当たっては、しっかりとした説明責任を果たしていくということが金融機関に問われているわけでありまして、私どもの事務ガイドラインにおいてもそうしたことを明記して、検査や監督の16年度の基本方針の中でもそうした留意点というものを明確にいたしておりますので、この法案に対応した形で私どもとしてもしっかりとした金融行政を行っていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今触れられましたガイドラインの中には、「契約締結の客観的合理的理由の説明」という項目がありまして、その中に、経営に実質的に関与していない第三者に保証を求める場合、特に包括根保証契約については債権保全の観点から見て有効性に限界があると指摘されていることも踏まえた客観的合理的理由の説明、さらに、経営者等に包括根保証を求める場合の客観的合理的理由の説明を行わなければならないとなっております。
 包括根保証の説明をきちっとやりなさいよというのがこのガイドラインですよね。したがって、包括根保証そのものが廃止されるということになりますから、当然、このガイドラインも書きかえるというのが当たり前だと思うんですが、大臣、どうなさるおつもりですか。
○伊藤金融担当大臣 今委員から御指摘がございましたように、現在の監督指針の中では、包括根保証契約に当たってしっかり説明をしてほしいということが書かれているわけでありますけれども、包括根保証の法案、この改正の法案が成立した場合には、当庁としても、監督指針の記載を改めるなど必要な改定を行っていきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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