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その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP, 農林漁業・食の安全)

2004年11月05日 第161回 臨時国会 財務金融委員会 【260】 - 質問

日本・メキシコ経済連携協定の関税暫定措置「改正」案に反対

 2004年11月5日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、日本・メキシコ経済連携協定に定められた農産品などの関税を軽減・撤廃するための関税暫定措置法「改正」案について質問しました。
 このなかで、工業製品を中心に輸出で4000億円の利益が発生する一方で、輸入による日本農業への打撃については、試算すらないことが明らかになりました。
 また、被害を受ける国内農業については、既存のセーフガード以外に新たな対策もありません。 
 佐々木議員は、「あまりにも不誠実で無責任なやり方だ」と、反対しました
 法案は、自民、公明、民主、社民の賛成で可決されてしまいました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 提案されている法案は、日本・メキシコEPA、経済連携協定、これに定められた農産品などの関税を軽減、撤廃するための国内措置と、それから二国間セーフガードを定めたものであります。
 まず前提として、経済産業省にお聞きしたいんですが、この協定によって輸出面で日本に幾らの利益が発生すると見ているか、試算を示していただきたいと思います。
○三輪政府参考人(経済産業省大臣官房審議官) 答弁申し上げます。
 メキシコは、1994年にNAFTA、2000年にEUとの自由貿易協定を締結しておりまして、この結果、主要先進国がメキシコの市場に有利にアクセスする一方で、我が国の企業は平均約16%の関税負担をこうむり、競争上不利な立場に置かれてきました。この結果、1994年、NAFTA締結直前のメキシコの日本からの輸入のシェアは6.1%でございましたが、99年には3.7%に減っております。
 この数値を用いまして、1994年から99年まで、仮に日本よりの輸入のシェアが維持されたとしたときに日本が幾ら輸出機会を逸したかということを経産省において試算しておりまして、この数値が4千億円ということでございます。
 今後どれだけの利益がという御質問でございますが、経産省としては、これで欧米企業と対等の立場で日本の企業がメキシコ市場において競争することが可能となりましたので、今後漸次アクセスが改善されるのに伴ってビジネスが従来どおり拡大していくものと期待しております。
○佐々木(憲)委員 輸出では4千億円の利益というふうに想定をしていると。そのほとんどが工業品であります。
 では、輸入の面で、これは関税局長に、この関税引き下げあるいは廃止で幾ら輸入がふえると想定しておられますか。その試算はありますか。
○木村政府参考人(財務省関税局長) 直接お答えするのはなかなか難しいわけでございますが、今回の日・メキシコ協定におきましては、先ほどもお話し申し上げましたとおり、全体で日・メキシコ間の貿易額の9割以上が無税化されるということで、今後、両国間の貿易が促進されることが期待されるわけであります。
 同時に、その関税引き下げにおきましては、これも先ほど農水省の方から説明がありましたように、個別品目の事情に応じまして関税撤廃の例外品目や関税割り当てを設定することなどによりまして、国内への影響を極力回避できるよう対応してきたところであります。
○佐々木(憲)委員 要するに、数字はないわけですね。数字はないんですね。あるかないか。
○木村政府参考人(財務省関税局長) お答え申し上げます。
 定量的に数字でお示しすることはなかなか難しいと思います。
○佐々木(憲)委員 農水省に聞きますが、日本にメキシコの農産物が幾ら入ってくると見ておられますか。それは日本農業にどのような損失をもたらすというふうに想定していますか。数字があったら示してください。時間がないので簡単に。
○吉村政府参考人(農林水産省大臣官房審議官) ただいま財務省からも御答弁ありましたように、今回の協定におきましては、品目ごとの農林水産業における重要性等を勘案して、必要に応じて関税撤廃の例外としたり経過期間を設定するなど、国内農林水産業への影響を極力回避するとともに、仮に輸入が急増した場合には、国内で影響が生じた場合に発動できる二国間セーフガードを確保しているところであります。
 関税の引き下げや撤廃による農林水産物の輸入の増加につきましては、為替レートの動向や他の国からの輸入動向等を勘案することが必要であり、個別品目の具体的な輸入増加量を見通すことは困難というふうに考えておりますけれども、さきに申し上げたような措置によりまして、輸入が急増することはないというふうに考えております。このため、直ちに国内対策を講ずることが必要な状況になるとは考えておりません。
○佐々木(憲)委員 要するに、数字がないわけですね。
 つまり、輸出の面で、工業品が今まで輸出できなかったものができるようになる、それが約4千億であると。しかし、輸入で、幾ら輸入されるか、その想定はない。農産物にどういう影響があるか、これも具体的な数字はない。被害を受ける側は数字はない。具体的な保護措置といいますか法措置あるいは補償措置、それも、今話がありましたように、被害が想定できないと言いながら具体的な措置もとらない、セーフガード以外にないと。
 どうもこれは、大臣、輸出と輸入の面で、工業品の輸出者は利益を受けるけれども、被害の方の想定はないと、ちょっとこのバランスが欠けるのではないか。ちょっとどころか大変バランスが欠けるのではないかと思いますが、どう思われますか。
○谷垣財務大臣 今までの御答弁にもありましたように、定量的な数字でどうなるかと示すのはなかなか難しいことだと思っておりますが、委員が御関心の農業に対するマイナスの影響という点は、この協定を結ぶに当たって関係者が一番意を用いたところであるというふうに思っております。
 具体的に申しますと、農林水産業の多面的な機能を損なうことにならないかとか、それから食糧の自給率あるいは安全保障という観点もあると思いますし、それから、日本国内では農業をより強いものにしていくための構造改革の努力が進んでおりますけれども、そういうものに水をかけることにならないかというようなことを考えながら、向こうの相手のあることでありますから、議論をしてまとめたのがこの案でありまして、その具体的なあらわれは、今までも御議論をいただいておりますけれども、例外品目とか関税割り当てとか、あるいは二国間セーフガードというような制度ではないかと思います。したがいまして、もし問題があるという場合には、今申し上げたような制度を適切に使うということで弊害を乗り越えていかなければならないと思っております。
○佐々木(憲)委員 どうも、輸入の面での損害といいますか、それが想定されるのにその試算はないと。つまり、交渉でいろいろやるというのは、それは確かに影響が少ないようにやるというのは当然だと思うんです。その場合、最初の相手側の要求からいうとこのぐらいの大きな影響が出る、しかしそれはこの程度にとどめたんだというような具体的な数字も示さないというのは、私は、これは説明として国民に対してやはり不誠実ではないかと思います。影響が想定はされるがわからないがと言いながら、では具体的にその影響が出た場合の補償措置というのはセーフガードしかないんです。セーフガードの発動も非常にやりにくい、これが現実ですね。
 ですから、私はこういうものが、もちろん、日本とメキシコの間で今回こういう法案が提起されておりますけれども、しかし、これはアジア、フィリピンですとか、さらにマレーシアですとかタイですとか、あるいはそのほかの国々に広がっていく、そうなりますと、その影響は積み重なっていくわけです。
 影響の試算はできません、しかし影響はあるでしょうと言いながら、現実にはそれに対する保護措置がない。私は、これは全く無責任だと思いますので、今回のこの二国間協定、初めて農産物が入ってまいりましたが、第一歩でそういうあいまいなやり方ではこれは賛成することはできないということを申し述べまして、終わらせていただきます。

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