金融(銀行・保険・証券) (証券取引所, 粉飾決算, 西武グループ事件)
2004年12月01日 第161回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【270】 - 質問
西武鉄道上場廃止について、佐々木議員が東京証券取引所社長に質問
2004年12月1日財務金融委員会で、東京証券取引所(株)代表取締役社長の鶴島琢夫氏が参考人として招致され、質疑がおこなわれました。
佐々木議員は、西武鉄道グループの有価証券報告書虚偽記載事件について質問しました。
佐々木議員は、西武鉄道の親会社であるコクドは、西武グループの中核企業としてグループ全体を支配してきたが、非上場企業であるため、その経営内容がきわめて不透明であることを指摘。
佐々木議員は、事件の再発を防ぐためには、上場企業を実質的に支配している親会社の経営内容の開示をすすめることが重要であると、鶴島参考人をただすとともに、不正をチェックする体制について質問しました。
これにたいして、鶴島参考人は捜査権限がないため限界があるとのべました。
議事録
【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 鶴島でございます。よろしくお願いをいたします。
まず、西武鉄道株式の上場廃止につきまして説明をするようにとあらかじめ御指示をちょうだいしておりますので、この件に関します私どもの対応、考え方について御説明を申し上げたいと存じます。
御案内のとおり、私ども東京証券取引所では、11月の16日に、西武鉄道株式の上場廃止を決定し、公表をいたしました。
西武鉄道は、去る10月13日、個人が所有しているとしてきた株式のうちに、実質的には、同社の大株主であるコクド及びその子会社であるプリンスホテルが所有している株式が多数存在することが判明した旨を開示いたしました。
これを受けまして、私どもでは、同日、西武鉄道株式を監理ポストに割り当て、上場廃止のおそれのある銘柄として、投資者の注意を喚起するとともに、西武鉄道からその原因等について報告を求め、株券上場廃止基準に規定をいたします虚偽記載に係る上場廃止基準及びその他公益または投資者保護に係る上場廃止基準に該当するかどうか、これにつきまして審査を行ってまいりました。
その結果、一つ、西武鉄道は投資者の投資判断の基礎となるコクドからの支配の程度や同社株式の分布状況に関する情報について誤った開示を長期間にわたって継続してきたこと。また、その影響は、過年度において、上場廃止基準において充足要件としております少数特定者持ち株比率に継続的に抵触する水準にまで及んでいたことが確認されました。そして、三つ目に、こうした事態が成立し得る事情といたしまして、西武鉄道における組織的な取り組みがあったと推認されるに至ったものでございます。
加えまして、西武鉄道における株式事務は、議決権や配当など株主の権利にかかわる事務処理について不適当な行為を継続してきております。また、所有の態様に疑義のある多数の株式の存在を発見してからこれまでの間の対処についても、開示の遅滞あるいは開示前におけるコクドによる株式の売却への関与、こうした状況が見られるなど、投資者の信頼を裏切るともいうべき問題が認められました。
こうしたことから、私どもでは、西武鉄道は株券上場廃止基準に規定する虚偽記載を行い、かつ、その影響が重大であると認める場合、及び、その他公益または投資者保護のため上場廃止を適当と認めた場合、こうした規定に該当するものとして西武鉄道の上場廃止を決定したものでございます。
なお、同株式は、11月17日付で整理ポストに割り当てられました。整理ポストは上場廃止が決定した銘柄について投資者に換金の機会を提供するため設けられているものでございまして、その期間は原則として1カ月間となります。したがいまして、同株式は、本年12月16日木曜日を最終売買日とし、12月17日金曜日に上場廃止となります。
ところで、10月13日の西武鉄道の有価証券報告書の訂正以降、私どもの上場会社において、西武鉄道以外にも、伊豆箱根鉄道、日本テレビ放送網など、有価証券報告書における重要な情報の記載の訂正を理由として監理ポストに割り当てられる銘柄が相次いでおります。
このうち、伊豆箱根鉄道につきましては、審査の結果、上場廃止基準に該当するとして上場廃止を決定し、日本テレビ放送網につきましては、上場廃止事由に当たらないと判断し、監理ポスト割り当てを解除しておりますが、いずれにせよ、私どもでは、先般来、短期間のうちにこのように多くの投資者の信頼を損なうような事例が相次いで判明し、上場会社並びに証券市場に対する社会的な信頼の失墜を招きかねない事態が生じている事態を大変重く受けとめております。
まず、私どもでは、10月の29日に全上場会社の代表者に対しまして、会社情報の適切な開示に関する要請文を送付しておりますので、その内容から御説明を申し上げたいと存じます。
要請内容について概略を申し上げますと、先般来、多くの投資者の信頼を損なうような事例が相次いで判明し、上場会社並びに証券市場に対する社会的な信頼の失墜を招きかねない事態が生じている状況を踏まえまして、全上場会社の代表者に対しまして、情報開示に関係する社内管理体制等の検証を行うなど、万全の対応をとるよう要請をいたしました。
また、上場株券の公正な価格形成及び円滑な流通を確保する上で、財務内容を初めとする重要な会社情報が適時適切に開示されることは不可欠なものでありまして、投資者の証券市場に対する信頼の根幹をなすものでございますので、上場会社の代表者に対しまして、投資者の視点に立った会社情報の適切な開示ということの重要性について改めて認識を深めていただきますよう要請をいたしました。
さらに、私どもでは、今申し上げました上場会社に対する要請事項の実効性を上場制度の側面から確保するための検討を急ぎ、11月16日に、会社情報等に対する信頼向上のための上場制度の見直し、制度要綱として公表をいたしました。この内容につきましては、来年1月初旬を目途に実施をしたいと考えております。
制度改正の概要でございますが、上場会社の誠実な業務遂行に関する基本理念を上場規則にまず設けることといたします。
これは、上場会社においては誠実に業務を遂行することが社会的に期待されているということを改めて意識していただくため、上場会社が遵守すべき基本理念、すなわち、「上場会社は、投資者への適時適切な会社情報の開示が健全な証券市場の根幹をなすものであることを十分に認識し、常に投資者の視点に立った迅速、正確かつ公平な会社情報の開示を徹底するなど、誠実な業務遂行に努めなければならない」旨を私どもの取引所の規則において定めるものであります。
次に、タイムリーディスクロージャーの重要性に対する上場会社の一層の意識向上を促す観点から、会社情報の投資者への適時適切な提供について真摯な姿勢で臨む旨の宣誓を行っていただくことといたします。
これは、今次相次いだ投資者の信頼を損なうような事例の発生を踏まえまして、全上場会社の代表取締役が投資者に対して誠実な行動を約束することが証券市場への信頼を回復するために有効であると考えて実施をするものでございます。具体的には、代表取締役等が異動したときまたは前回の宣誓から5年を経過するたびに宣誓書を提出していただくことといたしまして、宣誓事項について重大な違反を行った場合には上場廃止基準の対象とすることといたします。
次に、上場会社に対し、有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する確認書、具体的には、有価証券報告書等の提出者の代表者がその提出時点において当該有価証券報告書の内容に不実の記載がないと認識している旨を記載した書面の提出を求めることといたします。
さらに、親会社等の会社情報の適時開示ルール等の見直しを行うことといたします。
現行制度におきましては、平成7年以前に上場した会社につきましては、親会社等の会社情報の適時開示は任意となっておりますが、投資者に提供される会社情報の充実を図るため、非上場の親会社等を有するすべての上場会社に対して、親会社情報の適時開示を求めることといたします。
また、親会社等を有する上場会社に対し、現在、決算短信への記載を要請しております親会社等の持ち株比率及び当該親会社等との取引の開示について、規則上も開示を求めることといたします。
以上、御説明をいたしました会社情報に関する経営者の意識向上策と親会社情報の充実化が今回の対応の大きな柱でございます。
なお、そのほか、株式の権利処理について適切な手続の実施を確保するため、株式事務代行機関の設置をすべての上場会社に義務づけることといたしまして、上場後に代行機関への委託をしないこととしたときには上場を廃止することとするなど、幾つか所要の手当てを行いましたが、やや技術的な見直し内容も含まれておりますので、詳細は省略をさせていただきます。
以上が、今回の一連の問題発生を踏まえて私ども東京証券取引所が取り組む施策の概要でございます。
私どもでは、10月13日の西武鉄道の問題発生以降、証券市場の信頼回復のためには一刻の猶予もない、こうした意識を持って臨み、このような対応策を迅速に策定したところでございますが、今後も、市場運営者として投資者が安心して参加できる環境を提供できるよう一層の努力を払いたい、こう思っている次第でございます。
以上でございます。
○金田委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
― 中略 ―
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今度の有価証券報告書虚偽記載事件で問題になりましたのは、経営内容の見えにくい非上場企業が上場企業の実質的な支配をしているという場合ですね、この非上場企業に経営内容の開示をどのように求めていくかということが問われているわけであります。
それで、なぜ長期にわたって実態をつかむことができず、不正を放置したままで来たのか、この原因を究明することが大事だと思いますが、それはどのようにお考えでしょうか。
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 御指摘のように、長期間これが見つからなかった、こういうことに対しては、私どももこれを重く受けとめております。
私ども、先ほど申しましたように、法定開示資料である有価証券報告書の記載事項、これを前提にもろもろの仕組みを組み立てているということもございます。したがって、私どもが積極的にこの有価証券報告書の記載事項を洗い直す、あるいは不実の記載を突きとめるということは、私どもの権限からいってもなかなか難しいところがございます。
今回の反省の一つとして、親会社であるコクドの情報が何もわかっていなかったということがございます。したがいまして、今度の改善案の中では、こうした親会社の情報の適時開示ということを規定上義務づけるという措置をとりました。これで全部が今回のようなことがなくなるかどうかというのはなかなか難しいところもありましょうけれども、私どもは、非上場の親会社の情報を開示していただく、そういう点では大きく前進をする措置であろう、こう考えております。
○佐々木(憲)委員 親会社の情報開示ということは大変重要だと思うんですが、問題はどこまで求めるかというその内容です。これは今まで掌握できなかったという反省に立って、やはり可能な限りの徹底した開示は必要だというふうに思いますので、その点を念頭に置いてやっていただきたいと思います。
さらに、チェックの体制ですけれども、虚偽記載などの不正をチェックする権限はどの程度あるのかというのが非常に問題になるわけであります。東証としては、どの点に限界を感じているのか、そしてまた、それを克服するためにはどのような手段が必要なのか、例えば行政に対してこういう点をぜひやってほしいということですね。その点ありましたら、ぜひお答えいただきたいと思います。
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 有価証券報告書の記載について不実があるかどうかということについて、私どもが調べ直す権限自体持ち合わせていないのだろうというふうに考えております。
ただ、仮に、物理的にできるのかということになりますと、2千数百社の有価証券報告書あるいは半期報告書、こういうものを、全部、一から私どもが洗い直してその不実の記載を見つけるということは、物理的にも能力的にも無理だろうというふうに考えております。
ただいま先生から、行政に対する期待というものが何かあるか、こういうことでございますが、11月の16日に、金融庁から、有価証券報告書等の審査体制の整備を初めとしたディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応というものが既に打ち出されております。したがって、こうした対応が効果を発揮して、ディスクロージャー制度、ひいては証券市場に対する信頼性確保というものが図られることをその面では期待をしている次第でございます。
○佐々木(憲)委員 西武はインサイダー取引の疑いも持たれておりまして、これは非常に重大なことだと思うのですが、調査はやっておられるのか、その際、何に着目してチェックをされているのか、お聞かせをいただきたい。
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 個別銘柄についてどんな調査をしているか、その調査状況がどうなっているかということについては、従来からコメントを差し控えさせていただいておりますが、一般論として言えば、重要事実が発生した場合には自動的に私どもはインサイダー取引のチェックというものをいたしております。今度の西武につきましても、上場廃止という重要事実が発生をしておるわけでございますので、当然その対象になっていると御理解をいただいて結構だと思います。
ただ、今マスコミ等で言われております、コクドがいろいろな会社に対して株を売ったんではないかと、売ったとする、そして、それの買い戻し請求が出ている、これが事実を隠して売ったとすればインサイダーの疑いがあるのではないか、こういうことがございますが、これは私どもが直接立ち入るところではないわけでございます。
私どもの証券市場の中で、今申し上げましたような重要事実が発生をした場合に、それに対して売買審査部というところできめ細かいチェックを行っていく。これは、あくまでも証券会社、取引参加者を通じて、その後ろにいる顧客というものに対して資料あるいは情報の提供をいただく。直接その当事者に対して、私どもはこれまた手が及びません。したがって、ある程度の調査をいたしますと、その先は監視委員会の方に調査結果を報告し、その先の調査を進めていただく、こういう体制になっているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 この上場廃止決定の当日、西武の側はジャスダックに上場するんだという記者会見をされています。この原因究明ですとかあるいは再発防止をする前にこのような発言をするということについて、どのように見ておられますか。
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 実は、昨日の参議院の財政金融委員会でも同じ御質問を受けました。
私どもは、確かに上場廃止という処分を下しました。ただ、ジャスダックというのは独立した市場でございまして、我々が運営管理をしているわけではございませんので、私どもがこれに対して何か意見を言うという立場にはないのではないかというふうに考えておりますと昨日もお答えしましたが、本日もそうお答えをさせていただきたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 しかし、証券市場を律していく立場にあるわけですから、原因の究明のないまま東証がだめならジャスダックだということは極めて安易でありまして、また、企業の行動倫理からいって極めて私は重大だと思うんですが、コメントをしないというのもこれまたどうかなと思いますが、これは真っ当なやり方だというふうにお思いなんでしょうか。
○鶴島琢夫参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 基本的に情報開示、それが正確な情報の開示であるということは、証券市場を支える基本的な根幹部分の要件だというふうに思っております。
したがって、私どもは、今回の一連の事件に対して、全上場会社の経営者の方々にも要請文を出したり、今後の対応を急いで取りまとめたという姿勢で臨んでおります。それが私どもの基本的な考え方であるということを御理解いただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。