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金融(銀行・保険・証券) (粉飾決算, 西武グループ事件)

2005年03月11日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【287】 - 質問

西武事件 再発防止のために 証券取引等監視委員会の機能強化を 佐々木議員要求

 2005年3月11日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、西武グループの有価証券報告書虚偽記載問題について、伊藤金融担当大臣に質問しました。
 2004年12月1日の財務金融委員会で、佐々木議員は西武グループの有価証券虚偽記載事件をとりあげ、「親会社であるコクドが非上場企業であるため、経営内容が不透明となっている。上場企業と同じ水準まで開示させるべきだ」と、伊藤金融担当大臣に迫りました。
 これにたいして、伊藤大臣は、金融審議会での「専門家の議論を踏まえて対応したい」と答えていました。
 この日の閣議で、「証券取引法」改正案が決定されました。
 これにより、上場会社の議決権の過半数を直接又は間接に保有する会社(親会社)の情報公開を義務づけることとされています。
 開示させる内容は、(1)株式の所有者別状況および大株主の状況、(2)役員の状況、(3)商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書、付属明細書等。
 しかし、この改正案によって、西武グループのような有価証券虚偽記載が発生しない保障、防ぐ手だてが盛り込まれているとはいえません。
 佐々木議員は、その報告内容が正しいかどうかについて、「きちんとチェックできる権限が付与されなければ、虚偽記載を阻止できないのではないか」と指摘。
 さらに、「昨年の金融庁における検討段階では、違反した場合、課徴金を課す案があったのに、なぜ抜け落ちたのか」と質問。
 伊藤金融担当大臣は、他省庁との協議のなかで合意できなかったことを認め、「課徴金については断念したわけではない。検討したい」と答えました。
 日本のチェック機関である証券取引等監視委員会の権限は、基本的に告発や行政処分などの勧告に止まるのに対して、アメリカのSECは、民事制裁金を課したり、不当利益の返還、違反行為の差し止め命令、排除命令をおこなったり、民事訴訟から刑事協力まで幅広い権限を与えられています。
 また、日本の監視委員会は「相場操縦、インサイダー取引などの犯則事件」についてのみ、「捜査、差押え等の強制捜査権」が認められています。しかし、それははっきりと「犯則事件」と断定できる場合だけです。
 日本の証券取引等監視委員会の人員は、440人。アメリカの証券取引委員会(SEC)の人員は、3592人で、権限も陣容も、雲泥の差があります。
 佐々木議員は、「今回のような事件を引き起こさないようにするためには、証券取引等監視委員会の機能を強化が重要である」と指摘しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 西武グループに君臨してきました前コクド会長の堤義明氏が証券取引法違反容疑で東京地検に逮捕された事件というのは、大変大きな衝撃を与えております。
 昨年12月1日の財務金融委員会で、私はこの西武グループの有価証券報告書虚偽記載事件を取り上げまして、そのときに、親会社であるコクドが非上場企業である、そのために経営内容が不透明になっている、上場企業と同じ程度の水準まで当然開示すべきじゃないのかという質問をさせていただきました。これに対して伊藤大臣は、金融審議会で専門家の議論を踏まえて対応したいというふうにお答えになっておられたわけです。
 その後、証券取引法の改正案というものが検討されて、きょうですか、閣議決定をされたそうですが、非上場企業である親企業の情報開示というものはどのようにするおつもりなのか、内容についてお答えいただきたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 この点については、委員から前回も御質問をいただいたところでございますし、私どもといたしましても、昨年の11月16日に公表した、ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応の中で、本年三月期から、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、親会社の株主、役員、そして財務の状況等に係る情報の開示を義務づけることとし、現在そのための内閣府令の改正案について広く一般の御意見を求めているところでございます。
 しかしながら、子会社の有価証券報告書において親会社に係る情報の開示を求めても、親会社が協力をしない、こうした場合があるわけでありますが、そうした場合にその実効性が限定されてしまうことになります。
 したがって、私どもとして、親会社に当該親会社自身の株主、役員、財務の状況等に係る情報の開示を義務づけるべく、今般証券取引法改正案を閣議決定し、そして国会での御審議をお願いさせていただきたいと考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 問題は、この有価証券報告書虚偽記載をどのようにして防ぐことができるかという点であります。今回の改正案によってこの虚偽記載を防ぐ手だてというものはどういう形で盛り込まれているのか、そういう手だてはあるのか、お聞きしたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 これは今回の改正案だけではなくて、先ほどお話をさせていただいた、私どもとしてこの一連の不適切な事例に対する対応策を発表させていただいたところでございますけれども、本年の7月より、有価証券報告書の虚偽記載等に係る検査監督権限等を、関東財務局から証券取引等監視委員会に移管するなど、有価証券報告書に係る審査体制の強化を目指した措置が盛り込まれているところでございます。
 さらに、この対応策の中では、情報をしっかり集めていくために、ディスクロージャー・ホットラインというものも設置をさせていただきましたし、また、情報分析能力を向上させていくということも非常に重要でありますので、EDINETの機能充実という対応策もこの中に盛り込ませていただいたところでございます。
 これらの方策というものを生かしながら、証券取引等監視委員会と密接に連携をしながら、有価証券報告書にかかわるチェックの強化に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 なお、本日閣議決定させていただきました証券取引法改正案におきましては、先ほど御説明をさせていただきましたが、上場会社等の親会社が継続開示会社でない場合に当該親会社に情報開示を義務づける等の内容が盛り込まれており、これによりまして、上場会社等のコーポレートガバナンスの状況の把握に関して一定の進展が期待されているというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 具体的にお聞きしますけれども、例えば今回のコクドの事件ですけれども、実際に西武鉄道の発行済み株式の64%余りを事実上持っていたわけですね。しかし、西武鉄道社長らと共謀して一部を隠して、有価証券報告書には43%という、いわばうその保有率を記載していたということであります。
 こういう事態というものを今度の新しい対応策によって事前にチェックできるのかどうか、そういう権限があるのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 先ほど少し答弁をさせていただきましたけれども、本年7月以降、有価証券報告書の虚偽記載等に係る検査そして報告徴求権限については、関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することになっているわけであります。したがって、7月以降は監視委員会が、検査、報告徴求権限に基づき、公益または投資者保護のために必要かつ適当であると認められるときは、有価証券報告書等の提出者やあるいはその関係者に対して立入検査を実施することが可能となるわけであります。
 監視委員会におきましては、今後とも、有価証券報告書等の虚偽記載の事案に対して新たに付与されるこれらの権限というものの行使を含めて、厳正に対処を行っていくものと考えております。
○佐々木(憲)委員 その際問題になりますのは、課徴金の問題なんですね。つまり、虚偽記載が行われていた場合、これを調査をし発見をした、その際、具体的な罰則あるいは課徴金というものがなければ、これは中途半端な問題でうやむやになってしまう。
 したがって、昨年末まで、たしか金融庁は、この虚偽記載に関連をして課徴金制度を設ける、こういう案を検討されていたと思うんですが、それは一体どうなったんでしょうか。
○伊藤金融担当大臣 お答えをさせていただきます。
 金融庁はこれまで、有価証券報告書などの継続開示書類の虚偽記載に対する、委員お尋ねの課徴金制度の導入に向け、法制面の詰めの作業を行ってきたところでございます。
 現行の証券取引法の体系のもとで継続開示義務違反に対する課徴金を導入するためには、継続開示義務違反により会社に生じる経済的利得を定量化する必要がありますが、継続開示義務違反による利得は抽象的、間接的であり、利得があるとは言えないのではないか等の指摘があるところでございます。
 このように、経済的利得をめぐり政府部内で調整が現在ついておりませんので、本日閣議決定した証券取引法改正案では継続開示義務違反に対する課徴金の導入は盛り込んでいないところでございます。しかしながら、金融庁といたしましては、継続開示義務違反に対する課徴金の導入の検討自体を断念するわけではございませんで、今後さらに検討を深めていきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 この課徴金制度というのは、アメリカでもそういう制度も採用されているということでありますし、極めて重大な、こういう虚偽記載の事件を受けた後の対応として、当然金融庁自身も検討されていたということでありますし、これからも検討するというんですけれども、これは政府として当然この程度のことはやるべきだと。
 問題はその計算方法ですよね。それは技術の問題であって、例えば有価証券報告書の虚偽記載に関連をした課徴金は違反企業の株式時価総額というものを基準にするとか、検討されていると思うんですけれども、当然そういう具体的な計算方法というのはあるわけで、例えばアメリカの場合は一体どうなっているのか、そういう事例なども参考にすればこれは十分可能だと思いますが、いかがでしょうか。
○伊藤金融担当大臣 今委員からも御指摘がございましたし、私も先ほど御答弁させていただいたように、この継続開示義務違反に対する課徴金制度を導入していくためには、継続開示義務違反により会社に生じる経済的利得を定量化する必要があります。この定量化に当たって政府の中で今さまざまな議論がなされているところでございまして、そのことについて、政府部内での調整が今日までまだつく状況ではございません。
 したがって、私どもとして、この継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入ということを断念したわけではございませんので、引き続き、この経済的利得をめぐる議論をしっかり検討していきながら、対応を考えていきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 こういう事件を引き起こさないために、証券取引等監視委員会の権限の強化というのは大変重要だというふうに私は思っております。
 これはよく比較されるわけですけれども、日本とアメリカの違い、アメリカの証券取引委員会、SECは大変強い権限を持っているというふうに聞きますけれども、このアメリカのSECの権限というのは一体どういう内容になっているのか、それについて説明していただきたい。
○七条金融担当副大臣 この点について、私の方からお答えをさせていただきます。
 日本の場合、証券取引等監視委員会、これは平成16年度末の定員が今財務省を含めて四百四十人になっております。権限についてということでございますけれども、権限としては、インサイダー取引の犯則事件の調査あるいは証券会社に対する検査を所掌する、そういうようなことを委員長及び委員が独立して職権を行うということになっております。
 一方で、米国、アメリカのSECはどうなっているかといいますと、合議制の独立行政委員会であり、2004年会計年度の定員は3,591名と聞いておりまして、権限の方につきましては、制度の企画立案から検査、監督、調査などを含め、証券行政を一元的に所掌しておられるということを聞いております。
○佐々木(憲)委員 日本の場合、相場操縦あるいはインサイダー取引などの犯則事件についてというふうに、ほぼ確実にこれは法違反であるということが認定されて初めて捜査権限が認められているということなんですね。つまり、疑わしいというだけでは捜査権限は発動できないということになっていると思うんです。
 しかし、アメリカはもっと広い権限があって、そういう情報を得た場合、独自に調査を行うという権限がある。あるいは、資料の押収などについても、裁判所との関係でそういう権限がある。こういうことで、日本の場合とアメリカでは権限の内容について随分決定的な違いがあるというふうに私は思うわけです。
 今後の法改正で、この権限というのはふやされたんでしょうか、強まったんでしょうか、日本の場合。
○伊藤金融担当大臣 お答えをさせていただきます。
 委員は、アメリカと比較をして日本の監視委員会が十分な権限を持っていないのではないか、そういう点から御質問いただいたというふうに思っております。
 先ほどもお話をさせていただいたように、有価証券報告書等の虚偽記載等に係る検査そして報告の徴求権限、これは今まで関東財務局にございましたが、本年7月から関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することになります。したがって、7月以降は監視委員会が、検査、報告徴求権限に基づきまして、そして公益または投資者保護のために必要かつ適当であると認められるときは、有価証券報告書等の提出者やあるいはその関係者に対して立入検査を実施することが可能となりますので、そうした意味からすると、アメリカの当局と比較しても、機能的には基本的には同じ権限を有するものになるというふうに考えておりますし、こうした新しい権限というものを活用しながら監視委員会は厳正に対処していくものと考えております。
○佐々木(憲)委員 権限がどこからどこに移行したとか、それは権限の場所の移動であって、権限の中身が強まったということではないと私は思います。ただ、証券監視委員会が持つということは、それはそうかもしれない。
 しかし、例えば先ほど言ったように、まだ課徴金自体もどうなるかわからない。それから、不当利益の場合の返還、あるいは違反行為の差しとめ命令、排除命令、こういうことはできるんですか。それはできないですよね。
○七条金融担当副大臣 先に、先ほどお答えさせていただきました、アメリカの場合の2004年度の会計年度の定員が、3,591と言いましたけれども、3,592であったということだけ、ちょっと訂正させていただきたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 ディスクロージャーの問題に差しとめということはないというふうに思います。
 ただ、先ほどお話をさせていただいたように、監視委員会は、関東財務局から権限の移譲を受けて、そして検査と報告徴求の権限を持つことができるわけでありますから、こうした権限というものを活用しながら、市場に対する信頼性、公正性を確保するために厳正に対処していくことができるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 ディスクロージャーに限ったわけではなくて、広い、違反事件、法違反に対する権限、それに対応する権限のことを私は言っているわけです。先ほど大臣はアメリカと遜色ないような状況になるとおっしゃいましたから、ではこういう点はどうなんですかと聞いたわけです。それは日本にはないわけです。課徴金もない、あるいは不当な利益を得た場合にはその返還、あるいは違反行為そのものの差しとめ命令とか、そういう権限は日本にはまだ与えられていない。したがって、私は、アメリカのそういう権限を参考にして、日本も質的に権限の中身を強める必要があるという点を提案しているわけです。
 それからもう一つは、先ほども数字をおっしゃいましたけれども、体制が余りにも貧弱である。この点についてもきちっとした対応策をやらないといけない。こういうさまざまな問題点が日本の場合はまだ非常に多いというふうに私は思いますので、抜本的な改善をする必要がある。
 例えば、人員を抜本的にふやすという方向は、はっきりと目指すということを言わないとこれはふえないわけであって、金融担当大臣自身が、アメリカ並みに、アメリカを目指してこの証券監視委員会のメンバーをふやすんだ、そういう決意があるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
○七条金融担当副大臣 人数ということでございましたから、私の方からお答えさせていただきます。
 平成17年度における、いわゆる今度の予算案の中にも入っておりますけれども、証券取引等監視委員会全体で44名の増員をしたい、あるいはさらに、証券会社等の検査の一元化に伴い、検査局から35人を振りかえることといたしておりまして、証券取引等監視委員会の定員は、平成16年度末の237人から、平成17年度末には総勢で307名に増員することといたしておりますが、それも含めまして、先ほど申し上げました四百人等々ということで、財務局を合わせていきますとこれは五百名を大きく突破することになるのではないか。今のところ、推測でございますが、局のことでございますから、その程度でございます。
○伊藤金融担当大臣 今副大臣からも御答弁をさせていただきましたが、私といたしましても、やはり市場の信頼性というものを確保していくために監視委員会の機能というものを充実させていく、そのために、その体制面の整備、また組織としてのやはり質の向上ということは極めて重要だというふうに思っております。
 したがって、16年度から17年度にかけて、人員状況も大変厳しい状況でありますけれども、全体として70名増員することができましたし、また、質の向上のためにもさまざまな努力をいたしておりますので、こうした努力というものを引き続き続けていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
 ありがとうございました。

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