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金融(銀行・保険・証券) (偽造・盗難キャッシュカード問題)

2005年03月30日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【291】 - 質問

偽造カード対策の遅れ 背景に銀行の批判 佐々木議員が政府責任をただす

 2005年3月30日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は偽造キャッシュカード等の被害を防ぐ問題について質問しました。

 盗難・偽造カードによる被害が、社会問題となっています。
 これまでの経緯から見て、(1)ATMなどの利便性のみが優先された結果、セキュリティーが二の次になってきたこと、さらに、(2)損失については預金者にのみ負担を押しつけ、金融機関が事実上負担しなくてすむ仕組みがつくられ、過失がないという立証責任を預金者に負わせるといった事が、事態をいっそう深刻にしました。
 欧米では、70年代から80年代にかけて、盗難・偽造カードについての対応が整備されてきました。
 たとえば、預金者によほどの重大な過失がない限り「損失を預金者に押しつけない」という原則が確立しています。アメリカには「50ドル・ルール」、ドイツには「10%ルール」があります。
 預金者の負担に一定の上限を設け、悪意や重過失がない場合、あとは銀行がすべて負担するというルールがつくられています。また、欧米では、預金者に過失があるという立証責任は金融機関が負うことになっています。
 カードや通帳が盗まれたり紛失した場合の「損失補てん」も同じように銀行の負担でおこなわれています。
 佐々木議員は、日本の預金者への補償が、欧米と比べて大きく遅れていると指摘。
 過去にも、預金者・消費者を保護するという原則を確立するチャンスがありました。たとえば、1987年の金融制度審議会で、金融消費者保護についての法整備が議論されています。調査会のなかにエレクトロバンキング専門委員会をつくり、88年には具体的な立法化の検討に入りました。
 佐々木議員は、法整備が議論されながら、実現しなかった背景に銀行業界の猛反発があったとして、銀行いいなりの政府の姿勢を批判。
 銀行の約款改正など業界まかせにせず、横断的・包括的な金融消費者保護のための法整備を求めました。
 さらに、佐々木議員は、この問題について検討を深めるため、全国銀行協会会長やカード被害問題に詳しい識者や弁護士など4人を参考人として招致することを要請しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 偽造キャッシュカード問題に関連してお聞きをしたいと思います。
 私も被害者の話を聞きましたけれども、本当にひどい実態でありまして、ある日気がつくと、預金が何百万円も何者かによって何度も引き出されて、残高がゼロになっていた。びっくりして、銀行の窓口に行きまして、どういうことなんだ、何があったのか、こう聞きましても、銀行は、ともかく警察に行ってくれと。警察に行きますと、あなたはお金はとられていない、とられたのはプラスチックのカードで、あるいは電子データだ、お金をとられたのは銀行だから銀行に被害届を出してもらいなさい、こう言われる。そこで、銀行に行きますと、何を言うんだ、うちはATMにカードと暗証番号を入れた人にきちんと払いましたよ、どこがいけないんですかと。これが実態なんです。被害者は一切救われない。これが実際に起きているわけです。そこで、社会問題になり、大問題になってきている。
 なぜそうなったのかという点ですが、私は、ATMなどの利便性が優先された結果、セキュリティーの面が二の次になってきたのではなかったのか。さらに、損失について、預金者に負担を押しつけ、金融機関が事実上負担しなくて済むような仕組みがつくられている。例えば、無過失の立証責任を預金者に負わせるということもその点であります。
 これらが今回のような事態にしてしまった、そういうことだと私は思っておりますが、伊藤金融担当大臣の認識をまずお聞きしたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 お答えをさせていただきます。
 一般論として、金融機関は、その時々の犯罪技術などの実態や利用者のニーズを踏まえながら、金融サービスの提供における適切なセキュリティー対策を講じることが求められていると認識をいたしておりますし、また、偽造キャッシュカード問題についても、その重要性を十分認識し、顧客のニーズなどを総合的に判断した上で、最も適切と考えられるセキュリティー対策というものを積極的に講ずることが求められていると考えているところでございます。ATMシステムの利便性と安全性はある意味ではトレードオフの関係にありますので、両面に留意をしながら、預金者のニーズに応じてどうバランスをとっていくのか、このことが非常に重要なことであります。
 金融庁といたしましても、現状においては、セキュリティー対策の強化が必要になっている、そうした認識を有しているところでございまして、このような基本認識に立って、今監督局にスタディグループを設置させていただいて、そして、被害に遭った預金者への補償のあり方を含め、犯罪防止策、犯罪発生後の対応のあり方を検討いただいているところでございます。
 同グループにおいては、3月の末に中間報告を取りまとめて、そして4月の下旬には最終報告を取りまとめていただきたいということで、今鋭意作業を進めていただいているところでございますけれども、このスタディグループの検討結果を踏まえて、実効性のあるさらなる対応策というものを着実に実施していきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 セキュリティー対策は当然でありますが、問題は、この被害を受けた善良な預金者が金融機関の責任によって被害をきちんと補てんされるということが大事なことであります。
 そこで、国際的な比較をお聞きしたいんですけれども、欧米の場合、70年代から80年代にかけまして、盗難、偽造キャッシュカードについての対応策というものが整備されております。例えば、預金者によほどの重大な過失がない限り損失を預金者に押しつけないという原則が確立しております。例えば、アメリカには50ドルルール、ドイツには10%ルールというものがあるわけです。預金者の負担に一定の上限を設けて、悪意や重過失がない場合、あとは銀行がすべて負担する、そういうルールがつくられていると思うんですが、そういう点、確認できるでしょうか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先生今御指摘のとおり、偽造カードの場合、主要国、イギリス、アメリカあるいはドイツ、フランス等でございますが、ここにおきましては、偽造カードによる被害につきましては、まず預金者に重大な過失または過失がない場合には当該被害を基本的に金融機関が負担するというふうになっていると承知をしております。それから、同じく預金者の過失の立証責任の問題でございますが、これも主要国、今申し上げましたイギリス、アメリカ、ドイツ、フランス等でございますが、そのいずれにおいても金融機関が負うルールになっているというふうに考えています。
 ただし、これは、御承知のように、法律の場合と約款等に基づく場合があるということでございます。
○佐々木(憲)委員 アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、EU、カナダ、オーストラリア、これは金融庁も調査されたようですけれども、その資料によっても、立証責任は金融機関が負う、それから、被害についての補償は銀行が行うというのが原則になっているわけであります。
 お聞きしますけれども、盗難に遭った場合、カードや通帳が盗まれたり、それから紛失をした場合、その損失補てんというのはどのようになっていますか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 今先生御指摘の盗難とかあるいは紛失カードによる被害でございますが、これにつきましては、預金者に重大な過失または過失がない場合に預金者に負担を求めないこととしている国もございます、カナダあるいはオーストラリアでございますが。その一方で、預金者に一定の負担を求めるルールとなっている国、例えばイギリスとかフランス、こういったものもあるというふうに承知をしております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁で明らかになりましたように、国際的に見まして、日本の制度というものがいかにおくれていたかということだと思います。
 なぜそうなったのかという点ですね。これは、やはり金融庁として、今日のような事態に至るまで放置をしてきた責任というのがあるのではないか。その点で、大臣はどのような責任をお感じですか。
○伊藤金融担当大臣 やはり、取引の実態というものをしっかり注視して、そして、利用者を保護していく観点から適切な対応をとっていかなければいけないというふうに思っております。
 偽造キャッシュカードの被害の状況を見ますと、平成13年度は1件、平成14年度は3件だったわけでありますが、平成15年から16年にかけて被害が急増をしてまいりました。
 私どもとしても、そうした被害の急増、最近の急増に対応して、全銀協を初めとして各金融機関に対し、実効性のある犯罪防止策を速やかに検討するよう要請を繰り返してきたところでございます。また、先ほどもお話をさせていただいたように、金融庁として、法律家やあるいはシステムの専門家から成るスタディグループというものを設置して、今検討作業を進めさせていただいているところでございますけれども、こうした検討結果を踏まえて、被害に遭った預金者への補償のあり方についてのさらなる対策を検討し、逐次実行に移していきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 今、最近問題になってきたので対応策を考えているかのようなお話がありましたが、経過的に見ますと、これは随分昔から問題になっているんです。欧米では、70年代、80年代、もう既にその対応策というものがとられているわけであります。日本の場合も、預金者、消費者保護の原則を確立していくチャンスというのは幾らでもあったと私は思っております。
 例えば、1987年の金融制度調査会で、金融消費者保護についての法整備が議論されておりました。調査会の中にエレクトロバンキング専門委員会をつくり、88年には具体的な立法化の検討に入ったというふうに聞いております。
 そこで聞きますが、当時の大蔵省はどのような意図でこの立法化を検討されていたのか、報告をしていただきたい。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 今先生御指摘の委員会でございますが、昭和62年、1987年、旧大蔵省時代でございますが、金融制度調査会にエレクトロバンキング専門委員会というのが設置されました。そのときには、金融機械化をめぐる諸問題について幅広く検討を行うということで発足をいたしまして、それで、63年の6月には、電子資金取引に関する法制につきまして、かなり幅広くいろいろな報告をしてございます。
 例えば、手形、小切手から電子資金取引へという資金取引方法の変化、あるいは電子資金取引の性質上、全体を一つの決済機構としてとらえる必要性、諸外国のルールづくりへの取り組みについての対応の必要性等を踏まえまして、我が国においても積極的に検討を行う必要があるというようなことが指摘された、そういった経緯がございます。
○佐々木(憲)委員 消費者保護の問題も当然そのとき議論になっていたわけであります。その動きが、立法化を検討されていたけれども、実際には消費者保護については立法化されなかったということは事実ですね。一体、それはだれが反対してそうなったんですか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたエレクトロバンキング専門委員会の中間報告が出された以降でございますが、電子資金取引に関する法制整備につきましてさらに専門的な観点から検討を行うために、その委員会のもとに法制懇談会というものが設置されまして、相当何回も議論を行いました。平成六年十月に報告書が取りまとめられたわけでございます。
 この法制懇談会では、電子資金取引に関する法制整備について、その対象とすべき範囲、あるいは当事者間の権利義務関係、無権限取引等のさまざまな観点から検討が行われまして、その報告の中で、法的安定性の確保の観点等から早期の立法化が望ましいとする意見がある一方で、現行法により解決し得ないほどの問題はまだ生じておらず、約款の整備で対応可能であり、立法化は時期尚早とする意見などもありまして、結局、報告書においては両論併記という形になったと承知をしております。
○佐々木(憲)委員 いや、だから、だれが法制化に反対をしたのかというのを聞いたわけです。
 ここに、先ほどもお話が若干出ていましたけれども、岩原紳作教授の書いた「電子決済と法」という本があります。この中でその経緯について書かれておりまして、「大蔵省では、昭和62年に金融制度調査会において電子資金移動に関する法律問題を取り上げ、翌年からその法制整備の検討に入ったが、銀行界の立法への反対に会ったため、平成7年に僅かな約款整備を行っただけで、事実上法制整備の検討を終えている。」つまり、銀行界の反対に遭ったんだと。この点は、先ほど中塚議員も指摘をされました柳田邦男さんの「キャッシュカードがあぶない」という本の中にも紹介されていて、この中には、猛烈な反対があったというふうに言われているわけです。実際そういう経過だったんですね。そうかそうでないかとはっきり答えてください。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先生今御指摘の点、私どもその当時の状況を必ずしも詳細には承知しておりませんが、その当時、もちろん銀行界の方々あるいは専門家の方々が入っていただいて御議論をしていただいた結果だと思っております。その結果、いずれにしても、銀行としては、その当時、この議論の過程で、平成6年4月に全銀協がカード規定の試案を改正したというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 結局、銀行業界が、こういう法的な整備をされたんじゃたまらぬ、自分たちで勝手にやらせていただきますと言わんばかりのことがあったわけです。
 したがって、法的な整備というのが非常に今大事なんです。今、盗難、偽造カード等についての法整備を至急行わなければならないというふうに思います。銀行の約款での対応では、これは個々ばらばらの対応になりますし、また、銀行の裁量に任すということになってしまう。そうではなくて、やはり先ほども紹介ありましたように、無権限取引の規制ということが極めて重要でありまして、この点に踏み出すべきだという点を言っておきたいと思います。
 さらに、横断的、包括的な金融消費者保護のための法整備というものが求められております。今、投資家保護の法整備が検討されているということを聞いていますけれども、預金者など金融消費者を保護するための法整備というのはやはり必要だと思うんです。
 時間がありませんのでこれ以上は申しませんけれども、これに関連をして、私も参考人の招致をぜひお願いしたいというふうに思います。
 お一人は全銀協の会長であります西川さん、それから金融庁の偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ座長で東大大学院の岩原紳作教授、それから預貯金過誤払被害対策弁護団の野間啓弁護士、それから「キャッシュカードがあぶない」の著者の柳田邦男氏、この四名、委員長、ぜひ理事会で検討して、実現をしていただきたい。最後にこの点を申し上げたいと思います。
○金田委員長 佐々木憲昭君の申し出については、理事会にて協議させていただきます。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。

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